2025年度 上場企業による企業用不動産(CRE)売買動向に関する分析
ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門「ククレブ総合研究所」が上場企業の適時開示資料を独自集計したところ、2025年度は上場企業3,915社のうち115社が合計151件の不動産売却、75社が合計122件の不動産取得を公表したことが確認された。売却企業数はコロナ禍以降の落ち着き局面を経て再び増加傾向に転じ、前年度を上回る水準となった。背景には2023年3月の東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営」要請以降の浸透があり、CRE戦略は「防衛的な資産圧縮」から「成長投資と一体化した攻めの経営施策」へと、その役割を質的に変化させつつある。
本稿では、ククレブ総合研究所が2025年度(2025年4月~2026年3月)を対象に上場企業が適時開示した不動産売買に関するプレスリリースを独自集計※1。業界別・アセット別の動向を分析する。
※1.当該レポートに掲載した図表はTDnetに開示された上場企業の開示資料において「固定資産」の譲渡/取得に関するリリース文書をもとに、ククレブ総合研究所にて集計(上場REITは集計対象外)。
関連レポート:2024年度 上場企業による企業用不動産(CRE)売買動向に関する分析
不動産売却 – 企業数は前年度よりも増加、資本効率を意識した動きが浸透 –
当研究所では2018年度以降、上場企業が開示した不動産売却に関するプレスリリースの独自集計を行っている。2025年度における開示状況(2026年3月31日)に関しては、上場企業数3,915社※2のうち115社(2.9%)の企業において合計151件の不動産売却が実施されたことが確認された。

(ククレブ総合研究所作成)
なお、本数値はあくまで適時開示基準※3に該当する不動産売却に限られており、当該基準に抵触しない案件を含めた実態ベースでは、実際に不動産売却を行っている企業はさらに多いと考えられる。そのため、本稿は市場全体の傾向を示すトレンド指標として参照されたい。
※2. 2026年3月31日時点の日本取引所グループの開示する上場会社数(外国会社除く)に基づく
※3. 直前連結会計年度において連結純資産・連結経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益のいずれかが30%を超える固定資産譲渡が適時開示基準に該当
売却企業数は2023年度と同水準に回復

(ククレブ総合研究所作成)
売却企業件数に関しては、コロナ禍のピーク時と比較すると落ち着きが見られるものの、前年度を上回り2023年度と同水準に達した。背景としては、2023年3月に東京証券取引所から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」に関連する取り組みの浸透が挙げられる。同要請以降、資本効率向上施策の一環として保有不動産の見直しを進める企業が増加しており、企業不動産(CRE)戦略を重要な経営手段として位置付ける動きが顕在化している。
中期経営計画で資本効率関連キーワードに言及する企業は増加傾向
当社のテキスト解析型IRデータベースツール「CCReB Clip」を用いて中期経営計画における資本コスト関連キーワードへの言及状況を分析した結果、これらに言及する企業数割合は年々増加していることが確認された。資本効率を意識した経営へのシフトが進んでいると捉えられる。
2022年度~2026年度で中期経営計画を公表した資本効率関連のワードを言及企業数割合
| 対象期間 | 言及企業数割合 |
| 2022年4月~2023年3月 | 58.4% |
| 2023年4月~2024年3月 | 65.9% |
| 2024年4月~2025年3月 | 79.1% |
| 2025年4月~2026年3月 | 82.1% |
(ククレブ総合研究所調べ)
売却企業の中期経営計画にみる経営目標
2025年度に売却を実施した企業の開示資料では、「経営資源の有効活用」「資産の効率的運用」「第三者への譲渡による有効活用」といった売却理由が明記されている。CRE施策が財務KPI改善および企業価値向上に資する戦略的取り組みとして位置付けられていることが読み取れる。
こうした動きは、各社の中期経営計画にも明確に反映されている。以下、2025年度に売却を実施した企業のうち、事例として3社の中期経営計画における経営目標を取り上げる。
■アンドエスティHD(2685)
- 成長と還元を両立し、15%以上の高ROE経営を継続
- 国内外物流ネットワークの再編
- 主力100工場への集約
■電通グループ(4324)
- 経営基盤の再構築:2025年に一時費用を計上し、組織の簡素化と、業務の標準化・高度化を強力に推進
- 加速してきた政策保有株等の非事業資産売却を継続
- 2027年にROE10%台中盤を達成する目標を設定し、企業価値・株主価値を高める経営に邁進
■堺化学工業(4078)
- 資本コストを上回るROEの達成・PBR改善
- キャッシュフロー経営、有効活用できていない固定資産売却による資産圧縮
- 高付加価値品へのシフトを企図した事業ポートフォリオ入替え
売却件数・業界別の傾向
売却不動産件数ベースでは、151件と前年度比で15件減少した。前年度は複数資産を一括売却するバルク取引が件数を押し上げていた影響もあり、単年比較では増加となったものの、企業数が同水準である2023年度よりもやや多い結果となった。

(ククレブ総合研究所作成)
卸売業の注目事例:ワールド(3612)S&LBによる本社売却
業界別では、卸売業における売却が例年10件以上を維持しており、昨年は落ち込んだものの、安定した実施傾向が見られた。アセット内訳としてはオフィス比率が高く、自社またはグループ利用の本社・事務所の移転や、セール&リースバック(以下、S&LB)を伴う売却事例が確認された。
S&LBとは、不動産売却と同時に賃貸借契約を締結することで、売却後も継続利用を可能とするスキームである。企業は賃料負担を伴うものの、売却により得た資金を成長投資へ再配分することが可能となるため、近年では本社ビルを対象としたS&LB事例が相次いでいる。
例えば、株式会社ワールドは、2026年1月に神戸市内のオフィス売却を発表した。
同社の中期経営計画では、
- ROE10%を実現、財務体質の強化に目途をつけてギアチェンジ
- 潤沢なキャッシュフローを背景に成長投資や株主還元の弾力的な運用が可能な状態を目指す
- 選択と集中による成長加速
といった目標が掲げられており、本売却についても「保有資産の圧縮による資本効率の向上および創出キャッシュの戦略的再配分」を目的とする旨が示されている。ワールドは売却後も現本社を2年間使用した後は、神戸市内への移転を予定している。
当社の不動産売買予測ツールCCReB AIの「固定資産情報ダウンロード機能」(上場企業が発行する有価証券報告書のなかで「主要な設備の一覧」に記載の内容を集約したデータ)を活用し、ワールド本社における従業員の年次推移を確認したところ、以下のようになっていた。
| 年 | 従業員数 |
| 2016 | 432 人 |
| 2017 | 391 人 |
| 2018 | 74人 |
| 2019 | 67人 |
| 2020 | 60人 |
| 2021 | 45人 |
| 2022 | 51人 |
| 2023 | 56人 |
| 2024 | 59人 |
| 2025 | 55人 |
(ククレブ総合研究所調べ)
2017年から2018年にかけて従業員数が391人から74人へと一気に減少している。その後も微減しており、オフィスに余剰スペースが生じた状態が続いていたと推測できる。こうした従業員の推移も本社移転の兆候を掴むひとつのシグナルとなりうるだろう。
食料品の注目事例:雪印メグミルク(2270)- 四谷本社の売却
食料品業界においては、直近7年間で最多となる売却件数を記録した。特にオフィス資産の売却事例が増加しており、代表例として雪印メグミルクの本社売却を挙げる。
同社は2025年12月に本社を虎ノ門に移転するに伴い、四谷本社ビル(本館・別館)の売却を公表している。
2023年5月に公表した中期経営計画では、
- 資産圧縮による基盤・成長投資
- 資本効率を意識した経営の実践:資産の効率化(不動産等資産売却)
- 働き方改革の推進による労働生産性の向上
などが掲げられており、本件はこれら方針の実行施策の一環と位置付けられる。
こうした食料品業界における不動産売却の活発化の背景には、業界全体が直面する経営課題の深刻化がある。
農林水産省によれば、食料品製造業の労働生産性は就業者1人当たり711万円と、全製造業平均の971万円を大きく下回っている。多品種少量生産や生鮮原料の取り扱いといった業界特有の事情により、機械化・自動化が他業種ほど進めにくい構造的な課題を抱えている。
加えて、原材料・エネルギー・物流・人件費の上昇が同時進行しており、企業努力だけではコスト上昇を吸収しきれない局面が長期化しているといえる。
こうした環境下で、食品各社は事業構造そのものの見直しに踏み込みつつある。ニチレイは2026年4月に、傘下のニチレイフーズ(加工食品)とニチレイフレッシュ(水産・畜産)を統合し、調達・販売機能の重複を整理することで資本効率の改善を目指すと公表している。
事業再編に伴う本社機能の集約や生産拠点の最適化は、保有不動産の見直しと直結する動きであり、今後同様の再編に連動したCRE戦略の活発化が予想される。
参照:食品製造業をめぐる情勢(令和8年1月)|農林水産省
参照:ニチレイグループにおける食品事業統合に向けた機能再編に関するお知らせ|株式会社ニチレイ公式サイト
不動産売却アセット内訳–インダストリアルが安定のトップ。次いでオフィス–
不動産売却のアセット内訳では、インダストリアルが全体の3割強を占め最多となった。

(ククレブ総合研究所作成)

(ククレブ総合研究所作成)
対象不動産としては、本来は新設を前提に取得された工場・倉庫の建設用地やラボ開発用地が含まれていたが、近年の建築費高騰やグループ全体における事業ポートフォリオの見直しといった経営環境の変化を背景に、計画の延期または中止に伴い売却に至るケースが見受けられた。
加えて、同業種間において既存の生産拠点を売買する動きも散見されており、自社で新設するのではなく、既存設備を活用することで投資回収期間の短縮や初期投資負担の抑制を図る傾向が強まりつつある。
例)食料品:セイヒョーが森永北陸乳業の富山工場および同工場の生産設備を取得
例)化学:日本色材工業研究所がハーバー社から小諸工場(土地・建物・機械設備)を取得
このような動きの背景には、建築コスト上昇の影響により新設プロジェクトの採算性が悪化していることに加え、事業環境の不確実性が高まる中で投資判断の柔軟性を確保する必要性があると考えられる。今後は、既存設備をそのまま活用可能な、いわゆる居抜きニーズの拡大とともに、同業種間での工場資産の売買が増加していく可能性が示唆される。

(ククレブ総合研究所作成)
S&LB取引のアセット構成を見ると、オフィス比率の上昇が確認された。これは前述の通り、成長投資を目的とした本社売却案件の増加傾向を裏付ける結果となった。
また、S&LB取引の件数自体はコロナ禍と同水準にあるものの、当時に見られた流動性確保を目的とした対応とは異なり、足元では資本効率向上や成長投資原資の創出といった中長期的な経営戦略に基づく売却が中心となっている可能性が示唆される。
不動産取得 – 成長投資と安定収益源確保を見据えた取得の進展 –
2025年度における不動産取得の動向についても調査を実施したところ、上場企業のうち75社(全体の約1.9%)が合計122件の不動産取得を実行したことが確認された※9。

(ククレブ総合研究所作成)
なお、本数値はあくまで適時開示基準に該当する取得案件に限られており、基準に抵触しない取得案件を含めた実態ベースでは、より多くの企業が不動産取得を実行しているものと考えられる。そのため、本稿は全体傾向を把握するためのトレンド指標として参照されたい。
※4.直前連結会計年度において連結純資産の30%を超える固定資産取得が適時開示基準に該当
取得企業数は2018年度以降で過去最多

(ククレブ総合研究所作成)
取得を実施した企業数は、2018年度以降で過去最多となり、前年度を上回る結果となった。取得理由の内訳を見ると、約8割が自社またはグループ会社における利用を目的とした新工場やオフィスの取得であり、企業による成長投資や設備投資の拡大が背景にあることが窺える。
また、前年度からの流れを引き継ぎ、蓄電池用地の取得など再生可能エネルギー関連事業への参入を見据えた動きも散見され、安定的な収益源の確保を目的とした投資行動として注目される。
加えて、賃貸用不動産を中心とした信託受益権の取得も一定数確認された。信託受益権とは、不動産を信託銀行や信託会社等の専門機関に信託し、当該不動産から生じる収益を受け取る権利を指す。不動産そのものを直接保有するのではなく、収益受益権として取得する仕組みであるため、不動産取得税や登録免許税などの取引に伴う税負担の軽減が可能となるほか、権利移転の手続きも比較的容易であることから、現物不動産と比べて高い流動性を確保できるメリットがある。
また、パートナー企業との共同投資スキームにおいて信託受益権が活用される事例も見受けられており、今後もこうした取引形態の継続的な活用が見込まれる。
業種別動向:サービス業は前年比2倍、化学は成長領域への集中投資
業種別に見ると、サービス業の取得件数が前年度比約2倍となり最も顕著な伸びを示した。インバウンド需要の構造的拡大、深刻化する人手不足への対応、再生可能エネルギー事業への参入など、複数のマクロトレンドへの応答として多様なアセットへの投資が活発化している。一方、化学業界は取得件数こそ前年度と同程度であるものの、半導体材料・高機能化学品関連の生産拠点やR&Dセンターへの集中投資が鮮明となり、業界全体の事業ポートフォリオ再編の動きを反映した内訳の変化が確認された。

(ククレブ総合研究所作成)
サービス業:マクロ環境の構造変化を背景に取得件数が前年度比2倍
2025年度に取得件数の伸長が顕著であったのは「サービス業」で、前年度比で約2倍となった。取得対象アセットの内訳としては、インダストリアル施設(工場・倉庫等)に加え、オフィス、ホテル、蓄電池用地(設備を含む)など多様な用途にわたっていた。
≪各社のリリース記事より抜粋≫
・工場:供給制約を解消するため、新工場を新設し、生産能力の拡大と生産効率・品質水準の向上を通じて、同社の持続的な成長と市場競争 力の一層の強化を図ってまいります。(ヨシムラ・フード・ホールディングス(2884))
・オフィス:本社機能強化と利便性向上(メイホーホールディングス(7369))
・ホテル:ホテル事業の拡充を進めることで、インバウンドおよび国内の宿泊需要を取り込んでまいります。(ベストワンドットコム(6577))
・蓄電池用地:新たな事業として再生可能エネルギー事業に進出することといたしました。収益基盤を長期に渡り安定させ、早期黒字化に向けて事業の推進をしてまいります。
サービス業における不動産取得の急増は、業界を取り巻くマクロ環境の構造変化を反映したものと考えられる。
日本銀行が2025年12月に公表した全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業非製造業の業況判断DIが+34と高水準を維持しており、インバウンド需要の動向に敏感な「宿泊・飲食サービス」「対個人サービス」を中心に景況感の改善が続いている。一方、全規模全産業の雇用人員判断DIは▲38と34年ぶりの「人手不足超」水準となっており、特にサービス業で深刻化している。
帝国データバンクの調査によれば、2025年度の国内旅館・ホテル市場は事業者売上高ベースで6.5兆円に達し、過去最高を更新する見通しである。訪日外国人数が2025年に4,000万人超となるなど、インバウンド需要の構造的拡大が市場を押し上げている。こうした事業機会の拡大に加え、深刻な人手不足を背景とした省人化投資・拠点再編ニーズ、脱炭素化を見据えた再生可能エネルギー事業への参入など、多様な経営課題への対応が同時進行している。
サービス業における不動産取得の多様化は、単発的な事業拡大ではなく、インバウンド需要の取り込み、人手不足への対応、新たな収益基盤の確保といった複数のマクロトレンドへの応答として捉えられる。業界全体が新たな成長フェーズに入ったことを示す動きといえる。
化学:取得件数は前年同程度も、内訳に大きな変化
「化学」業界においては前年度と同程度の取得件数で推移したものの、インダストリアル施設やR&Dセンターの取得が中心であり、生産体制の強化や研究開発機能の拡充を目的とした着実な投資が進められていることが示唆される結果となった。
≪各社のリリース記事より抜粋≫
・インダストリアル:当社の三重工場は、当社グループの国内における主要なコンパウンド製造拠点であります。将来に向けた生産能力増強と効率化のため、隣接地を取得し工場を拡張することを決定いたしました。(リケンテクノス(4220))
・インダストリアル:AI 向け需要の高まりを背景とした半導体製造装置市場の拡大に対応するため、宮崎県延岡市に所在する工場を譲り受け、新たな生産拠点として整備することを決定しました。これに伴い、生産能力は約3倍に増強される見通しです。(旭有機材(4216))
・R&Dセンター:人的資本経営の一環として、職場環境改善のための投資を重要施策と位置づけています。現在のR&Dセンターは老朽化に加え、今後更なる従業員の増加が見込まれる中で研究開発設備やスペースの確保が課題となっています。こうした課題を解決し、研究開発力をより強化するために、香川県綾歌郡宇多津町の現R&Dセンター敷地内に新R&Dセンター(仮称)を建設(四国化成ホールディングス(4099))
化学業界における不動産取得は、業界全体の構造転換を反映した動きとして捉えられる。
日本政策投資銀行の調査によれば、化学業界の国内設備投資は製薬や環境配慮素材などの開発投資を背景に前年比大幅増となり、4年連続の増加が見込まれている。また、一般財団法人建設物価調査会の調査では、2025年度の化学業界の設備投資計画は前年比6.7%増と見込まれ、半導体材料をはじめとする電子材料、電動車関連の高機能化学品、医薬品分野の需要拡大が投資を牽引している。
研究開発投資においても同様の傾向がみられる。同調査によると、化学業界の2024年度研究開発実績は前年比6.9%増となり、医薬品・半導体材料をはじめとする高機能品開発が進められた。2025年度の研究開発計画は前年比7.8%増と一層伸びが高まっており、技術起点での差別化を目指す動きが加速している。
投資対象の偏りの背景には、業界全体の事業ポートフォリオ再編がある。PwCのレポートによれば、中国勢による基礎化学品の供給過剰、地政学リスク、エネルギーコスト上昇といった逆風のなかで、日本の化学企業は「事業ポートフォリオの再編、高付加価値領域への集中とスケーラビリティの獲得、生産性の改善」という構造課題に直面している。汎用品から高機能品への事業シフトが鮮明となっており、企業は成長領域への経営資源の集中を迫られている。
これらの潮流が、化学業界におけるCRE動向に直接的な影響を及ぼしている。インダストリアル施設では、半導体材料・電子材料・電動車関連の高機能化学品を製造する拠点への投資が中心となる一方、既存の汎用品生産拠点については統廃合・稼働最適化が進んでいる。R&Dセンターの新設・拡張も、高付加価値領域への事業シフトを支える研究開発基盤の強化として位置づけられる。すなわち、取得件数が前年度と同程度にとどまるなかでも、その内訳は「成長領域への集中投資」という明確な方向性を示している。
なお、化学業界の構造転換は、化学品の生産拠点のみならず、その周辺インフラの需要にも波及している。特に、危険物を扱う化学品の保管・流通を支える「危険物倉庫」は、事業ポートフォリオ再編と新たな成長領域への投資が進むなかで需要が拡大している代表的なアセットである。
本サイトの提供元であるククレブ・アドバイザーズでは、危険物倉庫のマスターリース事業を開始している。詳細は「危険物倉庫の開発プロジェクトへの参画およびマスターリース事業開始のお知らせ」をご参照いただきたい。
【関連記事】
危険物倉庫とは?知っておきたい設計・建設時の基準や法令も解説
参照:2025年度設備投資計画調査(2025年8月公表)|日本政策投資銀行(DBJ)
参照:【2025年】PwCの視点(1)見えざる価値の覚醒~今、日本の化学産業は再評価の好機を迎えている|PwC Japanグループ
まとめ:防衛的CREから攻めのCREへ
日本企業を取り巻く事業環境が引き続き大きく変化する中、資本効率の向上を重視した経営の浸透に伴い、企業不動産(CRE)を経営資源の一部として再評価する動きは一層強まっている。
2025年度においては、不動産の売却による資産圧縮を通じてキャッシュを創出する取り組みが継続的に見られた一方で、事業成長に資するアセットについては取得を進めるなど、売却と取得を組み合わせた戦略的な資産再配分の動きが顕在化した。
特に売却領域においては、S&LBを活用した本社売却など、資金調達を目的とした流動性確保にとどまらず、創出した資金を成長投資へと再配分することを企図した案件が増加している。
また、取得領域においても、自社利用を目的とした工場や研究開発拠点の取得に加え、再生可能エネルギー関連事業への参入を見据えた蓄電池用地の取得や、信託受益権を活用した収益型不動産への投資など、多様な取得目的・手法が確認された。
これらの動向は、企業が保有不動産を単なる固定資産としてではなく、資本効率の改善および企業価値向上に資する経営資源として位置付け、ポートフォリオの最適化を図ろうとする姿勢の表れといえる。すなわち、CRE戦略は従来の資産圧縮を主眼とした防衛的な手段から、事業成長や収益基盤の強化に向けた戦略的投資と一体となった経営施策へとその役割を変えつつあると考えられる。
また、“株主還元”は2025年のビジネス環境において重要なホットワードのひとつとなっており、企業価値向上施策の実現に向けて、CRE戦略を経営上切り離すことのできない重要な手段として位置付ける企業が増加していることが窺える。
当研究所では、2026年度においても引き続きこうした動向を注視し、企業によるCRE戦略の変化について継続的な分析・情報発信を行っていく予定である。
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以上、本レポートでは上場企業の開示する不動産売買に関するプレスリリースを元に分析を行った。こうした企業動向をタイムリーに把握する手段として、ククレブグループが提供する最新の経営トレンドに特化したビジネス情報メディア「CCReB GATEWAY」内の『IRストレージ』機能では、日々上場企業が開示する適時開示資料をカテゴリ別に仕分けしている。「固定資産譲渡」もカテゴリのひとつであり、企業用不動産の動向をタイムリーに効率的に把握する手段としてご活用頂きたい。
※出典の記載無き無断転載を禁じます。

監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立し、2024年11月に創業から5年で東証グロース市場に上場。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。

