総研レポート・分析

ESGスコアとは?評価項目や算出方法、評価機関、日本企業のランキングを分かりやすく解説!

ESGスコアとは、企業が行う社会的・環境的に配慮した取り組みを第三者機関が評価した指標のことです。

近年、社会的・環境的に配慮した企業の取り組みはESG投資家から大きな注目を集めています。

ESG投資家は、第三者機関が評価するESGスコアを参考に投資対象を考えるため、資金調達を考えている企業はESGスコアの向上を目指します。

本記事では、第三者機関が評価するESGスコアの評価項目や算出方法を解説します。

また、日本国内のESGスコアが高い企業をランキング形式で紹介しているので、ESGスコアを高める際の参考にしてください。

ESGスコアとは

ESGスコアとは

ESGスコアとは、第三者機関によって企業の社会的・環境的に配慮した取り組みを評価することで算出される指標のことを指します。

企業活動においても社会・環境に配慮した取り組みが注目される昨今、ESGスコアは投資家から大きな注目を集めています。

ESG投資家はESGスコアを参考に投資対象を比較・検討することが多いです。

そのため、ESGスコアが高い企業では投資家からのスムーズな資金調達が期待できます。

ESGスコアの評価項目と算出方法

ESGスコアの評価項目と算出方法

本章では、第三者機関によって評価されるESGスコアの評価項目と算出方法を紹介します。

ESGスコアを高めようと考えている企業は、ESGスコアの評価項目と算出方法を理解することが重要です。

ESGスコアの頭文字はそれぞれの評価項目を意味しています。以下でESGスコアの算出方法と併せて解説するので、取り組みを行ううえで参考にしてください。

E:環境

ESGスコアのEとは、Environment(環境)を意味しています。

ESGスコアが示すEは、大きく以下の点について評価する項目です。

  • 二酸化炭素(CO2)排出量の削減、廃水による水質汚染の改善、海洋中のマイクロプラスチックといった環境問題対策
  • 再生可能エネルギーの使用や生物多様性の確保

企業の環境へ配慮した取り組みがESGスコアとして評価されます。

S:社会

ESGスコアのSとは、Society(社会)を意味しています。

ESGスコアが示すSは、大きく以下の点について評価する項目です。

  • 適正な労働条件や男女平等など職場での人権対策
  • ダイバーシティ、ワーク・ライフ・バランス、児童労働問題、地域社会への貢献

ESGスコアでは、企業に属する従業員の働きやすさの向上や社会的な人権問題への取り組みが評価されます。

G:ガバナンス

ESGスコアのGとは、Governance(管理)を意味しています。

ESGスコアが示すGは、大きく以下の点について評価する項目です。

  • 業績悪化に直結するような不祥事を回避する仕組み作り
  • リスク管理のための情報開示や法令順守
  • 資本効率に対する意識の高さ

企業としての管理体制もESGスコアに大きな影響を与えます。

ESGスコアの算出方法は評価機関により異なる

企業のESGスコアを算出する評価機関は世界に複数あります。

ESGスコアは環境・社会・管理の評価項目をもとに総合的に算出されますが、企業の取り組みを評価する評価機関によっては評価配分などの算出方法が異なります。

そのため、自社の取り組みを正しく評価してもらい、ESGスコアを高めるためには、各評価機関の特徴について理解することが重要です。

ESGの評価機関

ESGの評価機関

ESGスコアを算出する評価機関は様々ありますが、その中でも特に代表的な評価機関は以下の5つです。

  • MSCI
  • FTSE Russell
  • Sustainalytics
  • S&P Global
  • 格付投資情報センター(R&I)

それぞれの評価機関の特徴を確認します。

MSCI

MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)は、1969年に設立されたアメリカ合衆国・ニューヨークに本拠を置く金融サービス企業です。

MSCIは、先進国や新興国などの市場別や国・地域別、産業分類別など多岐にわたる株価指数を提供しています。

MSCIは、世界にある数千社の環境・社会・ガバナンスに関連する企業の業務について、詳細な調査・格付け・分析を行うことでESGスコアを算出しています。

FTSE Russell

FTSE Russellは、1995年にイギリスのロンドンで設立された金融サービスを提供する企業です。

ロンドン証券取引所をはじめ世界の多くの取引所が同社の提供するインデックスを利用しています。

FTSE Russellでは、世界市場を測定および分析するために必要な様々なツールを提供しているため、投資家が投資戦略を立てるのに活用されています。

Sustainalytics

Sustainalytics(サステナリティクス)は、1992年にオランダのアムステルダムで設立された企業です。

Sustainalyticsは、上場企業の環境・社会・企業統治のパフォーマンスに基づいて持続可能性を評価する取り組みを行っています。

日本を含む世界16拠点で、数百社に及ぶ世界有数の資産運用会社や年金基金と提携している巨大な金融機関です。

S&P Global

S&P Globalは、1917年に設立されたアメリカのニューヨークに本拠を置く金融サービス企業です。

S&P Globalでは、過去10年間にわたりESGの専門知識を蓄積してきました。

当社はESG投資家が確信のある意思決定に役立つ重要なデータを提供しています。

S&P Globalは、多くの投資家が参考にしている評価機関の1つです。

格付投資情報センター(R&I)

格付投資情報センター(R&I)は、1975年に日本経済新聞社によって設立された信用格付会社です。

格付投資情報センターは日本最大の格付会社であり、信用格付をはじめ年金運用コンサルティング・投信評価など、様々な金融情報サービスを提供しています。

格付投資情報センターは、2016年に日本企業で初めてESGスコアを提供しました。格付投資情報センターは日本におけるESG評価の先駆者として貢献しています。

日本企業のESGスコアランキングトップ5社

日本企業のESGスコアランキングトップ5社

自社のESGスコアを高めたい場合は、ESGスコアが高い他の企業の取り組みを参考にすることがおすすめです。

2022年9月現在で、日本企業のESGスコアランキングにおけるトップ5社は以下の企業です。

  • ヤマハ
  • ポーラオルHD
  • ナブテスコ
  • 塩野義製薬
  • コーセー

各企業の取り組みを理解することで、自社がESGスコアを高めるための取り組みを行う参考にしてください。

出典:Quick ESG研究所「【ESGブックのスコア】9月末はヤマハが国内首位に

1位:ヤマハ

ヤマハは社内のガバナンスを強化するために、指名委員会による経営の執行と監督の役割を明確に分離しています。

ヤマハでは、取締役として8人中6人を指名委員会が選ぶことで、公正な企業運営が行えるよう工夫されています。

社内ガバナンスを徹底するために社外からのモニタリングを強化したことが評価され、高いESGスコアの獲得につながっています。

2位:ポーラオルHD

ポーラオルHDは社内での女性の働きやすさ向上のため、様々な取り組みを行っています。

これまでポーラオルHDでは、女性の雇用比率の向上や管理職比率の向上を目指した取り組みが進められてきました。

ポーラオルHDは、女性の活躍を推進する取り組みが評価されて高いESGスコア獲得につながっています。

3位:ナブテスコ

ナブテスコは、CO2の排出量削減に向けた長期目標を立てています。

ナブテスコはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに沿って、気候変動問題に対する自社の取り組みを開示しています。

2015年よりCO2排出量の削減を進めており、2030年には2015年比の60%の削減を目指しています。

ナブテスコは、CO2排出量削減という環境問題への積極的な取り組みが評価され、高いESGスコアを獲得しています。

4位:塩野義製薬

塩野義製薬は資源の循環・省資源化に力を入れています。

近年ではプラスチックゴミの不法投棄によりゴミ問題や資源の枯渇問題が頻繁に取り上げられています。

塩野義製薬は、廃プラスチックの再資源化を進めるためにプラスチックゴミを回収し、自社で製造する薬を包むパッケージとして再利用しています。

塩野義製薬では、資源の再利用が評価されて高いESGスコア獲得につながっています。

5位:コーセー

コーセーは、社内で地球環境委員会を組織し、生産現場の廃棄物を無くすための「ゼロエミッション」を進めています。

コーセーは原料や材料の選択に厳しい基準を設け、使い終わった後の分別のしやすさや廃棄のしやすさ、廃棄量を少なくすることも考慮して商品の製造を進めています。

製造の際に出るゴミを無くす取り組みが評価されたことで、高いESGスコア獲得につながっています。

企業がESGスコアを高める方法

企業がESGスコアを高める方法

本章では、ESGスコアを高める方法として以下の3つを紹介します。

  • ESG情報を積極的に開示する
  • 各評価機関に共通する高く評価される項目に優先的に取り組む
  • 社内の労働環境や資本金の配分を見直す

以下でそれぞれ解説するので、ESGスコアを高めるための参考にしてください。

方法①:ESG情報を積極的に開示する

企業によるESG情報の開示とESGスコアの高さには、一定の相関関係があります。

そのため、自社で行っているESGの取り組みを可能な限り開示することがESGスコアの向上につながる可能性が高いです。

ESG情報を開示する代表的な場所として、統合報告書や公式ウェブサイトなどがあります。

ESG情報を開示する際は、ESGに関する自社の目標、取り組み、成果、及びそれらの裏付けとなるデータの開示がおすすめです。

参照:ESG スコアに関する実証分析「ESG スコアの違いの度合い

方法②:各評価機関に共通する高く評価される項目に優先的に取り組む

高いESGスコアを目指している企業では、どの評価機関でも高く評価される項目に対して優先的に取り組むことがおすすめです。

各評価機関では重視する評価項目が異なります。各評価機関が共通して高く評価する項目を理解し重点的に取り組むことで、安定して高いESGスコアの獲得が期待できます。

特にCO2の排出量削減などは地球規模の問題となっており、各評価機関で高い評価を受けることができます。

ESGスコアにおいて高スコアを目指している企業は、各評価機関に共通する重点項目を理解し、評価項目にあった取り組みを行いましょう。

方法③:社内の労働環境や資本金の配分を見直す

ESGスコアでは、社会や環境への配慮だけでなく、社内の管理体制も評価されます。

そのため、従業員の労働環境の改善や適切な資本金の配分を行うことでESGスコアを高めることが可能です。

社内の労働環境や資本金の配分を見直す際は、自社の取り組み内容を評価機関が分かるように改善点を開示することで正しい評価が期待できます。

ESGスコアが抱える課題

ESGスコアが抱える課題

企業はESGスコアを高めることで、ESG投資家からスムーズに資金調達ができるなどメリットがあります。

メリットがある一方で、ESGスコアには以下の課題があります。

  • 企業がESGスコアを高めるためには長期的な取り組みが必要
  • ESGスコアの評価には明確な定義がない

あらかじめ課題を理解しておくことで、取り組みを行う前に様々なリスクヘッジが可能です。以下でそれぞれ確認します。

企業がESGスコアを高めるためには長期的な取り組みが必要

ESGスコアによる評価を行うにあたって、企業の短期的な取り組みでは成果を正しく判断するのは困難です。

ESGスコアは、企業の取り組みが社会的・環境的にどの程度配慮できているかを測る指標です。

そのため、企業の短期的な取り組みではESGスコアを測ることが難しく、企業がESGスコアを高めるためには長期間にわたって社会・環境問題への取り組みが必要になります。

ESGスコアを上げる取り組みは費用がかかるため、長期間にわたる取り組みは企業としても大きな負担になります。

ESGスコアの評価には明確な定義がない

ESGスコアを算出する機関は複数ありますが、ESGスコアの算出方法は評価機関により異なります。

そのため、企業のESGスコアには明確な評価基準がありません。

評価機関によってESGスコアの算出方法が異なるため、企業としてもどのような取り組みを行うべきか不明確です。

ESGスコアの算出方法の統合が今後の課題といえるでしょう。

ESGスコアに関するQ&A

ここまでESGスコアの評価項目や算出方法、評価機関などについて網羅的に解説しました。

最後に、ESGスコアに関してよくいただく質問をまとめています。

Q&A形式で紹介するので、ぜひ参考にしてください。

投資においてESGスコアは今後も重視される?

投資家からの出資を受けるにあたり、今後ますますESGスコアの獲得が重要になります。

現在、2030年までに地球規模の課題を解決するためにSDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みが広がりを見せています。

それに伴い、各国の政府や企業では地球規模の課題に対する積極的な取り組みを進めています。

世界的に社会や環境への配慮が進められる中で、ESGスコアは投資家が投資対象を検討するうえでより重視される項目になることが予測されます。

ESG投資家からの出資によりスムーズな経営資産の確保を目指している企業は、積極的に社会・環境に配慮した取り組みを進めてください。

ESGスコアを高めてスムーズに経営資産を調達しよう

企業はESGスコアを高めることで、ESG投資家からより多くの投資を受けられます。

多くの経営資産を調達することができれば、自社事業に多くの資金を配分することが可能です。

今後、自社の事業拡大を目指している企業では、ESG投資家から多くの出資を受けるためにESGスコアを高める取り組みが重要です。

ESGスコアが高い企業の取り組みを参考にすることで、自社のESGスコアを高めるための工夫を行ってください。

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。

 

免責事項
当レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではございません。また、本内容は現時点での判断を示したに過ぎず、データ及び表現などの欠落、誤謬などにつきましては責任を負いかねますのでご了承ください。当レポートのいかなる部分もその権利はククレブ・アドバイザーズ株式会社及びククレブ・マーケティング株式会社に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、無断で複製または転送などを行わないようお願いします。