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企業のSDGsへの取り組み事例8選!具体的な取り組みや方法、メリットを分かりやすく紹介

持続可能な社会の実現に向けた動きが世界的に高まっている今、企業に対してもSDGsに対する取り組みをすることが求められています。

企業がSDGsの取り組みを行うことは地球規模の課題を改善できるだけでなく、企業にとっても多くのメリットがあります。

今回はSDGsに対する取り組みを検討している企業担当者向けに、企業がSDGsに取り組むメリットや、日本企業8社の具体的な取り組み事例、取り組む際の手順と注意点などをご紹介します。

SDGsとは

SDGsとは

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。

SDGsは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている国際目標で、2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」で採択されました。

2030年までに持続可能でよりよい世界を目指し、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。

具体的な目標として、SDGsでは「17の目標」とそれに紐づく「169のターゲット」が設定されています。

SDGsの17の目標

SDGsでは、2015年から2030年までの15年間で以下の17の目標を達成し、持続可能な社会の実現を目指しています。

SDGsの17の目標は以下の通りです。

1. 貧困をなくそう
2. 飢餓をゼロに
3. すべての人に健康と福祉を
4. 質の高い教育をみんなに
5. ジェンダー平等を実現しよう
6. 安全な水とトイレを世界中に
7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8. 働きがいも経済成長も
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
10. 人や国の不平等をなくそう
11. 住み続けられるまちづくりを
12. つくる責任つかう責任
13. 気候変動に具体的な対策を
14. 海の豊かさを守ろう
15. 陸の豊かさも守ろう
16. 平和と公正をすべての人に
17. パートナーシップで目標を達成しよう
(出典:国連公式サイト

SDGsの169のターゲット

SDGsが掲げる17の目標には、これらを達成するための、より具体的な数値目標などが定められた169のターゲットが紐づけられています。

例えば、SDGsが掲げる「目標1:貧困をなくそう」では、以下のターゲットが設定されています。

目標1:貧困をなくそう
1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。
1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.4 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害や脆弱性を軽減する。
1.a あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1.b 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。

(出典:農林水産省「SDGsの目標とターゲット

SDGsに対する取り組みが企業に求められるようになった背景と現状

企業がSDGsに対する取り組みを求められている理由

SDGsの目標は世界規模であるため、取り組みの主体は国家と捉える人もいるかもしれませんが、企業・個人に対しても目標達成に向けた取り組みが求められています。

特に1990年代以降は、温室効果ガスの排出量削減目標を初めて決めた国際条約「京都議定書」が採択されるなど、環境問題への取り組みが企業に求められるようになりました。

環境問題に対する取り組みをはじめ、持続可能な社会に向けた企業の役割はますます大きくなっています。

しかし、帝国データバンクが行った「SDGsに関する企業の意識調査」(2021年)によると、50パーセント以上の企業が「SDGsという言葉は知りつつも、具体的に取り組んでいない」と回答しています。

また、SDGsに積極的な企業は「大企業」が55.1パーセント、「中小企業」が36.6パーセントと、企業規模で差があることが分かっています。

これは、企業がSDGsに対する取り組みを行っていくためには、時間や費用、人的なコストがかかることや、SDGsに対する取り組みは義務として課せられているわけではないことなどが関係していると考えられます。

ですが、SDGsに対する取り組みは、企業にとっても大きなメリットがいくつもあります。次項で詳しく見ていきましょう。

企業がSDGsに取り組むメリット

企業がSDGsに取り組むことのメリット

企業がSDGsに取り組む代表的なメリットは以下の3つです。

  • 企業のブランドイメージが向上する
  • 新たなビジネスチャンスの創出につながる
  • ステークホルダーとの関係構築につながる(資金調達がしやすくなる)

それぞれ詳しく解説していきます。

企業のブランドイメージが向上する

SDGsは、貧困問題やジェンダー問題、環境問題に関する取り組みなど、社会的課題に対して取り組む目標です。

そのため、SDGsに取り組む企業は「社会に対して責任を果たす企業」として認識され、企業のブランドイメージ向上に効果的です。

また、社会問題に貢献する企業としてブランドイメージが向上することは、採用においてもメリットがあります。

日本の労働人口が減少している今、企業が持続的に成長していくためには優秀な人材の獲得が必要不可欠です。

最近では、社会問題に対する関心が強い若者が多いため、こういった企業イメージの向上は採用においても大きなメリットがあると言えるでしょう。

新たなビジネスチャンスの創出につながる

SDGsに対する取り組みを企業が行うとき、問題解決のための新規事業の創造や、他業種とのコラボなど、さまざまな取り組みが考えられます。

利益を追うだけではなく、「社会課題の解決」という目標を中心にすることで、これまでにないイノベーションや事業開発ができる可能性が高まります。

SDGsに対する取り組みを進める中で、企業間による活動・ノウハウの連携やイベントの共同運営など、他社との接点も生まれるでしょう。

そのような他社とのつながりは、新たなビジネスチャンスの創出につながります。

ステークホルダーとの関係構築につながる(資金調達がしやすくなる)

近年、ESG投資額が増加傾向にあります。

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字から作られた言葉で、ESG投資家とは、社会・環境問題に取り組む企業に対して積極的に投資を行う投資家のことです。

SDGsは、世界が抱える社会課題を解決するための目標です。

投資家が投資判断をする際、その企業が社会貢献につながる取り組みを行っているかどうかは、判断基準の一つとして一般的になりつつあります。

そのため、企業がSDGsに対する取り組みを行うことは、投資家たちの注目を集めるひとつのきっかけとなり得ます。

SDGsに取り組むことで、ステークホルダーとの関係性向上につながり、結果として資金調達もしやすくなるのです。

SDGsに取り組む日本企業と具体的な事例8選

SDGsに取り組む日本企業の事例

SDGsには、日本航空株式会社(JAL)やNECグループ、株式会社島津製作所、アートコーポレーション株式会社、ヤクルトグループ、トヨタ自動車株式会社など、様々な企業が取り組んでいます。

具体的にどのような取り組みをしているのか企業事例を5つご紹介します。

事例1:日本航空株式会社(JAL)

JALグループは、SDGsで設定されている「17の目標」全てに対して、取り組みを行っている企業です。

たとえば「目標1 貧困をなくそう」においては、ユニセフ支援、特定非営利活動法人TABLE FOR TWO Internationalが取り組む、開発途上国の飢餓と先進国の肥満や生活習慣病の解消を目指した、日本発の社会貢献プログラム「TABLE FOR TWOプログラム」への参画などを行っています。

ユニセフ支援においては、成田=ニューヨーク線にて、海外旅行で使い残した外国の通貨をユニセフ募金として集める機内募金「Change for Good®」や、日本国内で集まった外国の通貨を無償で各国へ輸送する支援、成田・羽田・関西空港のラウンジにユニセフ募金箱を設置(国際線のみ)、ユニセフロゴの機体塗装、街頭募金などのチャリティーイベントに社員がボランティアとして参加するなど、航空会社の特性を活かした支援を行っています。

また、日本の最重要課題である「目標5 ジェンダー平等を実現しよう」への取り組みも積極的にしており、2021年にはその取り組みが評価され、「2021 J-Winダイバーシティ・アワード」にて、航空会社として初の企業賞・個人賞の同時受賞を果たしています。

企業サイトでは17の目標別に取り組みが紹介されていますので、SDGsへの取り組みを検討している企業、担当者はぜひ参考にしてみてください。

(参照:JAL企業サイト

事例2:NECグループ

NECグループも、SDGs目標達成に向けてさまざまな取り組みを行っている企業の一つです。

たとえば、紛争被害の国内避難民にITソリューションで必要物資のアクセスを支援しているプロジェクト。

NECの子会社がジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関UN Womenと連携しているプロジェクトで、モザンビーク北部で紛争の影響を不当に受けている女性と女児という最も取り残された人々のために、テクノロジーを活用して物資支援を行っています。

従来の紙などのアナログ管理での物資の支援では、政府や支援組織に支援物資を送った後、実際に避難民に届かない物資もあったそうですが、避難民自身がそれぞれに必要な物資を選んで購入できるため、「必要な物資を必要なだけ確実に届ける」という支援が実現しているとのこと。

また、NECでは、従業員一人ひとりが良き企業市民として「できることから少しずつ/Think Globally, Act Locally」をスローガンに、中長期的な社会課題解決に向けた企業市民活動も推進しています。

具体的には、2010年より取り組んでいる国連WFP学校給食プログラムへの支援が挙げられます。

これは、賞味期限が残り半年となった災害用備蓄米を、社内食堂・売店で提供・販売し、その売上の一部で飢餓と貧困の撲滅を使命に活動する国連WFPの「学校給食プログラム」を支援するという、社員参加型企業市民活動です。

こうした「備蓄米を寄付金にかえて社会貢献につなげる」という新しい寄付の形で多くの支援金を集めたことが評価され、2011年および2016年に国連WFPより感謝状が授与されています。

(参照:NEC企業サイト

事例3:株式会社島津製作所

島津製作所は、SDGsが採択される前から「科学技術で社会に貢献する」をモットーに企業活動を行ってきた企業です。そのため、持続可能な社会づくりへの取り組み実績は多岐に渡ります。

例えば、「目標3 すべての人に健康と福祉を」に紐づくターゲット3.2「全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する」に対して、新生児の先天性異常及び疾患の早期診断への貢献をしています。

具体的には、血液から病気の因子を測定し新生児における疾患の発症や重症化を予防するための新生児マススクリーニングにおいて「タンデムマス法」を確立しました。

これにより、偽陽性例の数は著しく減少し、また、希少疾患が簡単に診断できるようになったため、小児科救急医療の現場にも大きな変化をもたらしているそうです。

また、「目標6 安全な水とトイレを世界中に」に紐づくターゲット6.3「2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する」への貢献として、水、大気、土壌中の環境汚染物質や環境ホルモンの測定、モニタリングを行なったり、適切な廃棄物処理とリサイクルを推進していたりします。

日本の最重要課題のひとつである環境への配慮にも積極的に取り組んでいる企業のひとつです。

島津製作所のホームページでは、ご紹介したように、SDGsの目標達成に対する取り組み実績がターゲットレベルでまとめられており、SDGsに対する本気度が伺えます。ぜひ参考になさってみてください。

(参照:島津製作所企業サイト

事例4:アートコーポレーション株式会社

「アート引越センター」で知られるアートコーポレーション株式会社は、引越業界でいち早くSDGsの考えに賛同し、取り組みを進めている企業の一つです。

事業内容と関係の深い地球温暖化、資源枯渇、廃棄物などの問題の改善・解決に特化しており、「ごみゼロ」「事故ゼロ」を掲げています。

具体的にはごみゼロの引越しを目指しているそうで、引越に使う梱包資材を減らせるよう、梱包の際に紙資源を使わずに梱包できる「エコ楽ボックス」をオリジナルで開発しています。

限りある資源を節約するために、使用済みのダンボールは回収し、再利用しています。

また、グループ各社で従業員にエコバッグを配布しているそうです。

勤務中の食事などの買い物時はもちろん、普段からエコバッグを携帯、利用することを啓蒙することにより、社員一人ひとりが意識を持って行動し、積極的に地球環境に配慮した活動に取り組むことを目指しています。

また、従来は対面訪問が当たり前だった引越し業界において、次世代オンライン見積「ミライ」をスタート。

オンラインで見積りが完結するため、営業担当が車で移動することがなく、温室効果ガス排出の削減につながっています。

また、提案資料も全てデータ化されているため、紙資源の節約にも貢献しています。

同社では温室効果ガスなどの排出量を減少させる環境性能に優れたクリーンディーゼル車の導入も進めており、エコドライブを全てのドライバーが徹底するなど、環境問題に配慮された取り組みを積極的に行っている企業です。

(参照:アートコーポレーション株式会社

事例5:ヤクルトグループ

ヤクルトの創始者である代田 稔氏は、感染症で命を落とす子どもたちが数多くいた当時の日本において、病気にかからないようにするための「予防医学」を志し、微生物の研究を重ねた結果、「乳酸菌 シロタ株」を生み出しました医学者です。

この乳酸菌を一人でも多くの人に摂取してもらうため、安価でおいしい乳酸菌飲料として製品化したのが現在の「ヤクルト」であり、それ以来「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」という企業理念のもと事業活動を行っている企業です。

つまり、事業活動そのものがSDGsの目標3にあたる「すべての人に健康と福祉を」と密接に関わっています。

実際に、2018年にヤクルトグループは、第2回「ジャパンSDGsアワード」にて特別賞「SDGsパートナーシップ賞」を受賞しています。

「目標3 すべての人に健康と福祉を」だけでなく、「目標13 気候変動に具体的な対策を」に対する取り組みも素晴らしく、本社工場やボトリング会社ではクリーンで再生可能なエネルギーである太陽光発電を取り入れています。

特に国内13工場においては、すでに電力を実質的に再生可能なエネルギー電力に切り替えが完了しているとのことです。

販売会社のヤクルトレディが使う車両も、温室効果ガス排出量削減を目的とした電気自動車を導入しています。

(参照:ヤクルトグループ企業サイト

事例6:トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社も、SDGsに対して様々な取り組みを行っている企業のひとつです。

例えば、車づくりを通した脱炭素に対する取り組み。

EV車においても、地域のエネルギー事情や時代により、脱炭素への最適解は変わるため、トヨタではBEV、HEV、PHEV、FCEVと電動車のフルラインナップを用意。

各地域のいかなる状況にも対応できる多様な選択肢を提供することで、誰ひとり取り残さないカーボンニュートラルを目指しています。

また、「カーボンニュートラルへ向けて、減らすべきはCO2であり、内燃機関(エンジン)ではない」という考えの元、いくら燃やしてもCO2を出さないという水素を燃料とした「水素エンジン」の開発を進めています。

2021年5月には、世界で初めて水素エンジン搭載車両でレースに参戦したそうです。

また、作る過程におけるCO2排出量削減にも取り組んでおり、トヨタでは2035年までに「生産現場におけるカーボンニュートラル達成」を目指しています。

具体的には、再生可能エネルギーの活用、IoTやAIを活用した先進技術、日常的な改善と、様々な側面から取り組んでいるそうです。

(参照:トヨタ自動車株式会社企業サイト

事例7:株式会社虎屋本舗

2020年に創業400年を迎えた老舗和菓子屋、株式会社虎屋本舗もSDGsに対する取り組みを積極的に行っている企業の一つです。

具体的には、職⼈が瀬⼾内の離島を巡り、⼦ども達と共に和菓⼦づくりを通じた郷⼟⽂化の継承と新たな地域ブランドの発掘に挑戦する「せとうち和菓子キャラバン」という取り組みが行われています。

現在では、和菓⼦教室の受講者は年間2000⼈を超えているそうです。

また、⾼齢者活躍ダイバーシティとして、働きやすい業務環境や制度設計を行っています。

それだけではなく、ベテラン職⼈、販売員の多彩な“経験と知恵”を活かした様々な地域活動も実施しているとのこと。

60代以上の従業員数は約50パーセントを占めるそうで、ベテランの職人が活躍する老舗和菓子屋の特性を活かした取り組みだと言えるでしょう。

また、「せとうちパートナーシップ」と称した取り組みもあります。国内外に渡る様々なパートナーシップによる課題解決と新たな伝統の創造に挑戦しており、JICAや国連ユニタールとの協同⽂化体験セッションの開催や、希少性の⾼い地域資源を活かした新しい和菓⼦への挑戦などを行っているそうです。

このような取り組みが評価され、虎屋は「第2回ジャパンSDGsアワード」にて「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」を受賞しています。

(参照:株式会社虎屋本舗企業サイト

事例8:花王株式会社

花王株式会社はESGビジョンとして「Kirei Lifestyle Plan」を掲げており、SDGsの目標である2030年までにコミットメントすることと、それに対するアクションを定めています。

具体的には、DE&I推進、ごみゼロを目指したプラスチック容器完全リサイクル化のための取り組み、ユニバーサルプロダクトデザイン、サステナブルな原材料を活かした製品製作などです。

例えば、ユニバーサルプロダクトデザイン。具体的な取り組みの一例は、シャンプー容器です。

シャンプー容器にギザギザ状のきざみがついているのは、目の不自由な人はもちろんのこと、目をつぶって髪を洗うときにも、触っただけでシャンプーとリンスを区別できるようにつけられたものだそうです。

完成当初は「きざみ入り容器」の実用新案を出願していたそうですが、「消費者の混乱を招く」という考えのもと、実用新案の申請を取り下げ、シャンプーのきざみが業界統一のものとなるよう働きかけたといいます。

現在、ほとんどのシャンプーに「きざみ」が付いていますが、誰が使ってもリンスとシャンプーの区別がつくプロダクトデザインは、花王の働きかけで誕生したのです。

(参照:花王株式会社企業サイト

企業がSDGsに取り組むための方法を示す「SDGコンパス」

企業がSDGsに取り組むための方法

上記でご紹介した企業のようにSDGsに取り組むためには、どのような手順で進めるのがいいのでしょうか。

企業がSDGsに対する取り組みを検討している際に参考になるのが、「SDGコンパス」という行動指針です。

GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)、UNGC(国連グローバル・コンパクト)、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)の3団体により作成されたもので、SDGsに取り組む世界中の企業に活用されているツールです。

SDGコンパスでは、以下の5つのステップが示されています。

①SDGsを理解する
②優先課題を決定する
③目標を設定する
④経営へ統合する
⑤報告とコミュニケーションを行う

各ステップについてそれぞれ詳しく見ていきましょう。

ステップ1:SDGsを理解する

まずは企業内でSDGsに対して理解を深めることが大切です。

本記事の冒頭でもご紹介している17の目標と、169のターゲットについて読み解き、理解することからスタートしましょう。

他社の企業事例も参考にした上で、自社で取り組む場合にはどの分野から始めるのが良さそうか考えたり、世界全体や日本の全体的な動向を把握したりするものいいでしょう。

ステップ2:優先課題を決定する

自社事業がSDGsに及ぼしている、または今後及ぼす可能性のある分野を把握し、自社が優先的に取り組んでいくべき課題を絞り込みます。

その中から、自社が取り組みやすく、また貢献度が高くなりそうな課題を選びましょう。

ステップ3:目標を設定する

ステップ2で絞り込んだ優先的に取り組んでいくべき課題に対して、具体的な目標を設定します。

SDGコンパスにおいては、「トリプルライン」と呼ばれる経済・環境・社会の3分野をすべて含む目標が望ましいとされています。

目標をコーポレートサイトなどで公表している企業も多く見受けられますが、全社一丸となって取り組んでいくためにも、ここで目標を公表することは効果的です。

目標を掲げるだけで終わらないよう、達成状況を把握するためのKPIも設定しましょう。

ステップ4:経営へ統合する

SDGs目標達成のためには、経営陣や担当者だけではなく、従業員一人ひとりが意識的に取り組む必要があります。

経営陣は、自社がSDGsに取り組む理由と価値を明確に伝え、従業員一人ひとりが自発的にアクションを起こせるような働きかけをすることが重要です。

また、先ほど株式会社虎屋本舗の企業事例でご紹介したような、目標達成のためのパートナーシップもSDGsでは推奨されています。

社内だけではなく、他企業や行政などとのパートナーシップによって達成できそうな目標がないか検討するのも良いでしょう。

ステップ5:報告とコミュニケーションを行う

SDGコンパスでは、以下の情報の報告が求められています。

・優先課題が設定された理由と経緯
・優先されたSDGsの課題に対する目標と進捗
・目標達成のための戦略と実践状況

SDGsに対する取り組みの定期的な報告は、ステークホルダーとの関係性構築など企業にとってもメリットがあります。SDGsレポートを発行している企業も増えています。ぜひ積極的に発信していきましょう。

企業がSDGsの取り組みを行う際のポイントと注意点

企業がSDGsの取り組みを行う際のポイント

企業がSDGsに対する取り組みを行う際、いくつか注意したいポイントがあります。

無理のない範囲で取り組みを行う

社内でSDGsの取り組みを行う際は、無理のない範囲で行うことが重要です。

SDGsへの活動が中心となってしまい自社事業が疎かになってしまうと、継続的な活動が困難になります。

自社の現状・ビジネスモデルを踏まえた上で、無理のない範囲で取り組みを進めることが重要です。

自社事業の特徴を活かした取り組みを行う

SDGsの取り組みを行う際は、自社の強みを活かした取り組みを行うことが重要です。

自動車関連の企業であれば、自動車の設計や生産工程を見直すことで、生産過程で発生する二酸化炭素の排出量の削減といった環境対策を行うことができます。

一方で自動車関連の企業が、自動車とは関連が薄い教育の質向上や飢餓問題への取り組みをイチから行うことは比較的難しいでしょう。

自社が行う事業との関連性を考慮した取り組みを行うことで、効果的な活動につなげることができます。

SDGsウォッシュ

SDGsウォッシュとは、SDGsに取り組んでいるように見せかけているだけで、実態が伴っていないことを表す言葉です。

SDGsへの取り組みが積極的な企業は、今後より一層注目を集めていくでしょう。だからこそ、取り組みよりも誇張した表現や、実態が伴っていない広報活動等には気を付けなければなりません。

SDGsへの取り組みに関するQ&A

ここまでSDGsに取り組む企業の事例やSDGsの活動を通して企業が得られるメリットなどを網羅的に解説しました。

最後に、SDGsに関してよくいただく質問をまとめています。

Q&A形式で紹介するので、ぜひ参考にしてください。

日本政府はSDGsに対してどのような取り組みをしている?

2015年にSDGsが採択され、日本では翌年の2016年に「SDGs推進本部」が設置されました。

SDGs推進本部が中心となって有識者などのステークホルダーと共に協議を重ねることで、日本における「SDGs実施指針」を決定しています。

SDGs実施指針の中では、企業や自治体などでSDGsに取り組む場合の8つの優先課題と3つの方向性を示しています。

他にもSDGs推進本部が主催となって、ジャパンSDGsアワードを設立しています。

ジャパンSDGsアワードでは、SDGsへの優れた取り組みを行う企業や団体を表彰することで、日本国内でのSDGsへの取り組みの普及を行っています。

SDGsへの取り組みは私たち個人でも出来る?

SDGsに関する取り組みは個人でも行うことができます。

例えば、自宅で節電を行うことでエネルギー問題に対するアプローチが可能です。

他にも人権問題に対する募金もSDGsの取り組みといえるでしょう。

私たち1人ひとりの取り組みが、地球規模の様々な問題の改善につながります。

個人がSDGsに取り組める具体的なアクションについては、こちらの記事でも詳しくご紹介していますのでぜひご覧ください。

SDGsで私たちにできることとは?個人・企業の身近な取り組み事例19選

日本のSDGs達成度と世界からの評価

2023年時点、SDGsの達成度を表す国際ランキングでは、日本は166カ国中21位(達成スコア79.41)です。

2021年度の国際ランキングと比較すると、2022年は19位(79.58)でしたので、スコア・ランキングともに後退したことになります。

日本が最高ランクである「達成済み」と評価を受けたのは、次の2項目のみ。

  • 目標4:質の高い教育をみんなに
  • 目標9:産業と技術革新の基盤を作ろう

2022年は3項目が「達成済み」でしたが、「目標16:平和と公正をすべての人に」の項目が2023年は「課題が残る」に一段階評価を落としました。

一方、次の5つの項目においては、最低ランクにあたる「深刻な課題がある」と評価を受けています。

  • 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
  • 目標12:つくる責任、つかう責任
  • 目標13:気候変動に具体的な対策を
  • 目標14:海の豊かさを守ろう
  • 目標15:陸の豊かさを守ろう

日本のSDGs達成度は、現在ジェンダー平等や環境問題における取り組みなど、まだまだ大きな課題を抱えているといえます。

SDGs目標達成に向けて、より一層改善に取り組んでいくことが求められます。

SDGsの達成度については、こちらの記事でも詳しく解説していますので合わせてご覧ください。

【SDGs達成度ランキング2023】21位にランクダウンした日本の現状と今後の課題は?

SDGsの取り組みを通して企業イメージの向上を図ろう

SDGsは世界中から注目されており、企業がSDGsに関する取り組みを行うことには、企業イメージの向上による売上増加やESG投資家による資金調達の確保など、様々なメリットがあります。

地球規模の環境問題や人権問題を改善するためには、各国の政府や企業が連携しながら取り組みを進めることが重要です。

SDGsに対する取り組みを行っている企業事例を参考にしながら、自社の特徴を踏まえつつ、自社に合った取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。