【速報】M&Aの最新動向は?東証適時開示資料から読み解く最前線(2023年上半期速報)
東証33業種全てでM&Aが発生、件数は引き続き高水準で推移
ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、上場企業が適時開示を行ったM&Aに関するリリースについて、当該サイト「CCReB GATEWAY」の『IRストレージ』機能を活用し、2023年の上半期のトレンド分析を行った。
【おさらい】2022年までの調査レポートはこちら
(注)CCReB GATEWAY_IRストレージ機能において「M&A」に分類されるリリースは、「株式取得(子会社化を含む)のお知らせ」「事業譲渡・譲受のお知らせ」その他「組織再編のお知らせなど」様々なリリースを含むが、これらのリリースを個別に仕訳することなく、単純に年間にリリースされた件数を追うことによって大まかな業種毎の動き・トレンドを分析していることをお含み置きください。
TOP10の顔ぶれはほぼ変わらず
上図は、東証に適時開示された2019年1月から2023年6月までのM&A関連のプレスリリースを纏めたもののうち、上位10件をあらわしている。
年間開示件数は毎年2,100件前後を推移しており、上位9件においては毎年多少の順位の変動があるものの同一業種が連なっている。
2023年の上半期のトレンドとしては、「情報・通信業」「不動産業」「機械」が過去5年の平均件数を超える水準で推移している。リリースの内容としては、「情報・通信業」では、株式会社TBSホールディングスによる株式会社やる気スイッチグループホールディングスの株式取得など事業の多角化を企図したM&Aや、「機械」では、複数の企業で海外子会社の設立や合弁会社設立など、収益の多角化や海外でのビジネス展開などを企図したM&Aが行われている。
事業の変化を求められM&Aは大型・小型を問わず増加する見込み
続いて、TOP11以下を見てみると毎年一定程度の変動があることが分かる。
特に注目すべき業種として取り上げたいのはまず、過去5年の平均件数に対し176%の増加率を見せた「倉庫・運輸関連」が挙げられる。当該業種では2024年問題(※)を控え、中小の企業において廃業や事業承継を希望する企業なども出ており、当該企業に対し大手物流企業が物流ネットワーク網の構築などを企図してM&Aなどを仕掛ける動きが発生しており注目である。
なお、2023年においては、上半期時点で東証33業種の全ての業種でM&Aが発生しており、各業界が置かれている課題に呼応する形でM&A取引が行われている。
※2024年問題とは?・・・2024年4月1日以降、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が制限されることにより発生する諸問題をいう。一人のドライバーが運転できる距離や時間も制限されることから、より細かなネットワークの構築が必要となるため、諸コストの上昇から中小の物流企業に大きな影響を与えることが予想されている。
GATEWAY「ホットワード分析」において見られるように、2023年に開示された中期経営計画における日本企業の注目ワードに「物価高騰」「資産入替」「ポートフォリオ見直し」」等が挙げられており、世界的に厳しい事業環境の中で投資家から資本効率の向上を求められている上場企業においては、経営資源集中による企業体力の強化を目的としたM&Aが2023年以降も増加すると思われ、今後のM&A動向に注目である。
ククレブ総合研究所では、引き続きタイムリーな報告を本サイトにて行っていく。
今回の調査に活用した「CCReB GATEWAY」の『IRストレージ』機能はTDnetとAPI連携し日々開示されるリリースを収集しており、2018年以降のデータを格納しております。会員登録(無料)を頂くことで詳細検索・データ取得が可能となりますので、統計調査や最新リリースの把握等にご活用ください。
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監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超え、CRE戦略の立案から実行までを得意としている。
2019年9月に不動産テックを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。