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M&Aの最新動向は?東証適時開示資料から読み解くM&A最新動向(2022年速報)

事業環境の激化、日本国内の人口減少に呼応したM&A

ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、上場企業が適時開示を行ったM&Aに関するリリースについて、当該サイト「CCReB GATEWAY」の『IRストレージ』機能を活用し、2018年以降2022年(1月1日~12月31日)までのリリース状況を集計し、動向調査を行った。

【おさらい】2022年上期時点の調査レポートはこちら

(注)CCReB GATEWAY_IRストレージ機能において「M&A」に分類されるリリースは、「株式取得(子会社化を含む)のお知らせ」「事業譲渡・譲受のお知らせ」その他「組織再編のお知らせなど」様々なリリースを含むが、これらのリリースを個別に仕訳することなく、単純に年間にリリースされた件数を追うことによって大まかな業種毎の動き・トレンドを分析していることをお含み置きください。

地方銀行を中心とする「銀行業」の経営統合の動向に注目

上図は、東証に適時開示された2018年1月から2022年12月までのM&A関連のプレスリリースを纏めたもののうち、上位10件をあらわしている。

年間開示件数は毎年2,100件前後を推移しており、上位9件においては毎年多少の順位の変動があるものの同一業種が連なっている。

2022年の注目としては10位にランクインした「銀行業」であり過去4年の平均件数に対し157%の増加率を見せている。リリースの内容は子会社の設立や株式取得等様々あるが、注目すべきは福岡中央銀行とふくおかフィナンシャルグループ、長野銀行と八十二銀行などの地方銀行による相次ぐ経営統合の発表である。背景には人口減少等を背景に厳しい経営環境が続く地域金融機関について、一定の要件の下でシェアが高くても地域銀行の合併等を認めることとする独占禁止法の特例法の整備(同法の施行に伴い金融庁は2020年11月「地銀経営統合・再編等サポートデスク」の設置を行った)等、国として地銀再編を推進する施策を講じた結果といえよう。尚、同法の適用は2020年11月から10年間に切られており、残期間における地銀の動きについては2023年以降も注目していきたい業種である。

事業の変化を求められM&Aは大型・小型を問わず増加する見込み

続いて、TOP10以下を見てみると毎年一定程度の変動があることが分かる。特に注目すべき業種として取り上げたいのはまず、過去4年の平均件数に対し142%の増加率を見せた「陸運業」が挙げられる。当該業種では株式会社日立物流の米投資ファンドKKRによるTOB(4,442億円)や近鉄グループホールディングス株式会社の株式会社近鉄エクスプレスTOBによる子会社化(1,680億円)と大型M&Aが相次いだ。また、「ゴム製品」も過去4年の平均件数に対し166%の増加率となっており、株式会社ブリヂストンや横浜ゴム株式会社、TOYO TIRE株式会社等による子会社の吸収合併、会社分割(吸収分割)が活発に行われている。

GATEWAY「ホットワード分析」において見られるように、2022年に開示された中期経営計画における日本企業の注目ワードに「サプライチェーンの混乱」「価格高騰」「グローバルリスク」「ポートフォリオの確立」等が挙げられており、世界的に厳しい事業環境の中で経営の効率化や意思決定の迅速化等を図るため、経営資源集中による企業体力の強化を目的としたM&Aが2023年以降も増加すると思われ、今後のM&A動向に注目である。

今回の調査に活用した「CCReB GATEWAY」の『IRストレージ』機能はTDnetとAPI連携し日々開示されるリリースを収集しており、2018年以降のデータを格納しております。会員登録(無料)を頂くことで詳細検索・データ取得が可能となりますので、統計調査や最新リリースの把握等にご活用ください。


 

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監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。