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中期経営計画とは?中計の目的や策定方法とポイント、企業事例をプロが分かりやすく解説

中期経営計画とは、企業が3~5年間の中期に、目指すあり方を達成するための経営計画を策定することです。

本記事では、中期経営計画の目的やメリット、策定のステップやポイント、企業事例について、数多くの中期経営計画を分析してきた当社ならではの視点で解説します。

中期経営計画とは?

中期経営計画

中期経営計画とは、中期(3〜5年)の企業の経営方針や経営数字の目標を定め、企業のステークホルダー(株主、従業員、取引先等)に示すための経営計画書です。

中期経営計画の期間は?

2023年に公表された中期経営計画の策定期間を見てみると、計画期間は、概ね3年という企業が全体の約80%と多く、続いて5年が約10%(いずれもククレブ総合研究所調べ)と、ほぼ大多数の企業が3~5年を中期経営計画の期間としています。

中には10年や30年と言った長期経営計画を持つ企業もあります。

近年の経営環境は変化が激しいため、超長期の経営計画を立てること自体がそもそも難しく、短期的な視点で3年とする企業が多いようです。

上場企業の中期経営計画策定傾向(2022年版)

中期経営計画の必要性

中期経営計画の目的や必要性

中期経営計画は、日本企業特有のものになります。欧米の企業では「こうした計画は意味をなさず、環境の変化に応じてスピーディーに経営戦略を投資家に対し公表すべき」という考えもあるからです。

しかし日本においては、中期経営計画は企業の経営方針開示の透明性確保の一手段として多くの企業で作成されています。

非上場企業でも中期経営計画を策定・公表している企業はあり、新規公開(IPO)準備前の非上場企業でも策定が必須となります。

なにより、企業が経営目標を達成するためには、株主や従業員、取引先といったステークホルダーの協力が必要不可欠です。

企業がこれから目指す姿を、中期経営計画を通してステーホルダーに分かりやすく具体的に説明をすることは、企業が目標達成をしていくためにも欠かせないといえるでしょう。

中期経営計画はどのくらいの企業が作成・公表しているのか?

中期経営計画は、上場企業が決算説明会の際に経営方針として公表することが多いため、「中期経営計画は上場企業が作成するもの」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

実際に、上場企業において中期経営計画を策定・公表している企業は、上場企業約3,900社のうち、約60%程度(ククレブ総合研究所調べ)となります。

中期経営計画を作成する目的とメリット

中期経営計画

中期経営計画を作成する目的ですが、次の3つのメリットが挙げられます。

・従業員の意識を明確にする
・投資家に対して、企業の経営方針と数字に対するコミットメントを示す
・他社との比較によって自社のポジショニングを知ってもらう

それぞれ詳しく解説します。

従業員の意識を明確にする

多くの企業において、対外的に公表する・しないに関わらず、「経営計画」はあるはずです。

中期経営計画を達成するためには、その企業に勤める「従業員」が企業の経営方針を理解していなければなりません。

自身が勤めている会社がどんな経営方針を持っているかを知らずに日々の業務を行うことは少ないと思いますが、大企業になればなるほど経営トップのメッセージは全社員に対して伝わりにくくなるものです。

そういった意味でも、中期経営計画を策定することは、全社員に自社の経営方針を伝える上で大変有効です。

投資家に対して、企業の経営方針と数字に対するコミットメントを示す

経営の透明性を担保するという意味でも、中期経営計画を公表し、株式市場においてその進捗を報告していく必要があります。

海外ではあまり重視されない傾向のある中期経営計画ですが、日本の投資家にとっては重要な投資判断基準の一つとなっています。

ただし、中期経営計画を策定・公表することが重要なのではありません。そこで掲げた各指標等の目標を確実に達成しているか、そのトラックレコードが重要となります。

他社との比較によって自社のポジショニングを知ってもらう

先述の「投資家に対して、企業の経営方針と数字に対するコミットメントを示す」と関連する部分もありますが、同業比較において自社のポジショニングを知ってもらうためにも中期経営計画の作成は有効です。

自社のポジショニングをしっかりと把握・明示することにより、得意分野や課題が浮き彫りになることから、中期経営計画の作成が自社のポジショニングを客観的に把握するための第一歩となります。

中期経営計画を策定する6つのステップ

中期経営計画を策定する6つのステップ

ここでは、中期経営計画の策定プロセスを解説します。あくまで一例にはなりますが、中期経営計画の策定手順は次の通りです。

ステップ1 自社が置かれている現状を知る
ステップ2 目指すべき「あり方」を考える
ステップ3 「現状」と「あり方」にギャップがあることを知る
ステップ4 そのギャップを埋めるためにどのようなことをすべきかを考える
ステップ5 ステップ1~4で考えたことを計画書としてまとめる
ステップ6 作成後は計画と実際のギャップが埋まってきているか、計画的に進捗しているかをチェックする

それぞれ詳しく解説します。

ステップ1 自社が置かれている現状を知る

まずは自社が置かれている現状を把握するために、自社の強み・弱みを分析します。

こうした自社分析では、SWOT分析が有名です(S:Strength(強み)W:Weakness(弱み)O:Opportunity(機会)T:Threat(脅威))。

この他にも様々な分析方法がありますが、いずれにしても自社の強みと弱点を徹底的に洗い出すことが重要です。

本サイトにおいても、自社分析に活用できるフレームワークをいくつかご紹介していますので参考にしてみてください。

クロスSWOT分析とは?フレームワークやテンプレート、分析方法や注意点を分かりやすく解説!

PPM分析とは?具体的なやり方やメリット・デメリットを分かりやすく解説!

2.目指すべき「あり方」を考える

次に、目指すべき「あるべき姿」を考えます。

「あるべき姿」とは、実現可能なレベルの「あるべき姿」から、少し背伸びした「あるべき姿」まで、企業によって考え方はそれぞれです。

いずれにしても達成できない目標は立てるべきではなく、「ステップ1 自社が置かれている現状を知る」で分析した結果をもとに、設定した期間内において実現可能な「あり方」を考える必要があります。

ステップ3 「現状」と「あり方」のギャップを把握する

次に、ステップ1で把握した自社の現状と、ステップ2で決めた自社の目指すべきあり方との間に、どのくらいの差(ギャップ)があるのかを洗い出します。

このギャップが大きいほど、達成までの期間を要することになります。

逆に、現状と目指すべきあり方との間にあまりギャップが無い(差がない)場合には、ステップ2で設定した考え方が適切なのか再考してみてもいいかもしれません。

もちろん、ギャップが小さいことが悪いということではありません。各社における中期経営計画に対する考え方にもよると思いますので、そこも加味した上で最終的に判断していきます。

ステップ4 そのギャップを埋めるためにどのようなことをすべきかを考える

次は、ステップ3で把握したギャップを埋めて、自社が目指す姿を達成するためには、何をいつまでに、どのような手段で達成していく必要があるのかを考えていきます。

売上であれば、どのような手段で売上を獲得できるのか。利益であれば、どのように利益率を上げていくのか。経営指標であれば、どのようなバランスシートを意識しているのか……など、具体的にその達成手段の根拠を検討する必要があります。

最近では、ROE(総資本利益率)だけではなく、ROIC(投下資本利益率)などの指標も投資家から重視される傾向があります。

こうした指標を目標にする際には、より具体的にその達成手段を記載していきましょう。経営指標に興味がある方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

ROICとは?メリットやROE・ROA・WACCとの違い、ROIC経営のポイントも解説

ステップ5 ステップ1~4で考えたことを計画書としてまとめる

次は、ここまで整理してきたことを計画書としてまとめていきます。

中期経営計画の作成には、数多くの部署の協力が必要ですが、最後はこの多くの情報をいかに簡潔にまとめるか、経営企画系部署の腕の見せ所とも言えます。

中期経営計画を作成する部署は、多くの場合「経営企画」系の部署、会社により呼び名は変わりますが、会社の中でも経営を俯瞰的に管轄する部署が多いようです。

<作成部署の一例>

  • 経営企画部
  • 経営戦略部
  • 社長室
  • 経営管理部  など

経営企画部の役割とは?社員の役割から部長の役割、中小企業の経営企画部の役割まで徹底解説!

ステップ6 作成後は計画と実際のギャップが埋まってきているか、計画的に進捗しているかをチェックする

「中期経営計画を公表したら終わり」ではありません。どんなに立派な中期経営計画を策定したとしても、それを計画通りに実行することができなければ絵に描いた餅になってしまいます。

中期経営計画公表後は、定期的に計画通り実施できているか都度見直しましょう。

刻々と変化する経済情勢の中、経営方針もそれに合わせて見直しが必要です。場合によっては、中期経営計画のローリングも必要となってきます。

ローリングとは、中期経営計画の策定方法の一つで、環境の変化に応じて毎年計画の見直しを行うことを指します。

運用してこそ、中期経営計画を策定することに意義があります。「作りっぱなしになってしまった」ということのないようにしましょう。

中期経営計画の優良企業事例

中期経営計画

中期経営計画の策定にあたり、他社の中期経営計画書を参考にする方も多いのではないでしょうか。

ここからは、中期経営計画が分かりやすくまとめられている企業の事例を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

株式会社島津製作所

株式会社島津製作所は、2023年度-2025年度の中期経営計画として「世界のパートナーと共に社会課題を解決するイノベーティブカンパニーへ 〜技術開発力社会実装力の両輪強化により持続的成長を果たす〜」をコンセプトに掲げています。

具体的な目標数値としては、2025年度の業績目標を、売上高5,500億円、営業利益800億円、営業利益率14.5パーセント、ROIC11.0パーセント以上、ROE12.5パーセント以上を掲げています。

この目標を達成するために、島津製作所は次の5つの事業戦略と、7つの経営基盤強化を掲げています。

<5つの事業戦略>
・重点事業強化
・メドテック事業の強化
・海外事業の拡大
・リカーリングビジネスの強化・拡大
・新事業・将来事業の創出

<7つの経営基盤強化>
・開発スピード強化
・国際標準化・規制対応力の強化
・グローバル製造の拡大
・DX推進
・人財戦略:島津人の育成
・財務戦略:攻めの財務へ

同社はESG(環境・社会・ガバナンス)の側面からサステナビリティ経営を推進するべく、非財務指標も掲げています。

たとえば、ESGのSocial(社会)にあたる女性活躍推進においては、女性管理職比率(連結)を2025年度までに12パーセント、2030年度までには15パーセントまで上昇させることを目指しています。

同社の経営理念に基づいた目指す姿から、それを実現するための具体的な目標数値、そしてその目標を達成するためのKPI指標がとても分かりやすくまとめられています。

参照:株式会社島津製作所 中期経営計画

旭化成グループ

旭化成グループの中期経営計画『中期経営計画 2024 ~Be a Trailblazer~』では、“「持続可能な社会」への貢献” と “持続的な企業価値向上” の2つの「サステナビリティ」の好循環の実現に向けて、長期的に目指す姿に到達するための方向性と戦略が示されています。

具体的には、5つの価値提供分野(ヘルスケア、ライフイノベーション、環境ソリューション、住宅、モビリティ&インダストリアル)にフォーカスし、同グループが持つ「コア技術」、「変革のDNA」、「多様な人財」を強みに事業展開を進めていくことが示されています。

「持続的な企業価値向上」達成へ向けた2030年度の具体的な業績目標としては、営業利益4,000億円、ROE15パーセント以上、ROIC10パーセント以上の達成を掲げています。

また、「持続可能な社会への貢献」達成へ向けた2030年度の具体的な数値目標として、2013年度比30パーセント以上の温室効果ガス排出量削減の達成を掲げています。

同グループは、半導体不足の長期化や、中国ロックダウンによる需要減退や原燃料高騰等の影響を受けて、2024年度の計画を再設定しています。

再設定後の数値目標は、営業利益2,000億円以上、ROE9パーセント以上、ROIC6パーセント以上となっています。

このように、常に変化するビジネス環境の変化に合わせて、都度経営計画を見直し、再設定していくことは大変重要です。

また、この中期経営計画は2022年4月に策定されたものですが、1年ごとに進捗状況も公表されています。掲げた経営目標を、ステークホルダーとともに達成していくのだという本気度が伺えます。

参照:旭化成グループ 中期経営計画 2024 ~Be a Trailblazer~ の策定
参照:旭化成グループ 中期経営計画 2024 ~Be a Trailblazer~ の進捗状況

中期経営計画の作成に必要な情報はどう集める?

実際に中期経営計画を作成する担当者となった場合、同業他社の中期経営計画を一つ一つ探し、自社の参考にするために分析するのは、大変な労力がかかります。

そこで、中期経営計画作成の際に便利なのが、「ククレブ・ゲートウェイ(CCReB GATEWAY)」です。

CCReB GATEWAYは、会員登録(無料)をすれば、業界における中期経営計画のトレンドがワードクラウドで表示されるので、短時間で視覚的に効率よく動向を把握することができます。

それだけではなく、当該ワードに言及している企業の中期経営計画書もダウンロードすることができるので、中期経営計画作成にあたって自社の方針やトレンドの取り込みなどを簡単・効率的に行うことができます。

「中期経営計画の作成担当になったけれど、どこから手をつけていいか分からない……」そんな方は、ぜひCCReB GATEWAYを活用してみてください。

<CCReB GATEWAYを実際に見てみる>

CCReBホットワード分析

<ご利用ガイド>

CCReBホットワード分析 ご利用ガイド

 

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。