『グローバルリスク報告書2022年』から読み解く今後起こりうる深刻なリスクと企業に求められる取り組み
近年、異常気象や感染症の拡大など世界的問題が深刻化しています。深刻化に伴い、世界規模の危機に対する取り組みを進める企業も増加傾向にあります。
本記事では、『グローバルリスク報告書2022』をもとに今後10年でより深刻化する可能性が高いグローバルリスクを紹介します。
また、企業が取り組むべきリスクマネジメントや取り組みのメリットも併せて解説するので、参考にしてください。
グローバルリスクとは
近年、世界的な産業の発展に伴い温室効果ガスの排出量が増加し、環境破壊が進んでいます。
グローバルリスクとは、前述の環境破壊の要因のように「今後各国の産業や発展に悪影響をもたらすであろう不確実な事象」のことを示しています。
企業がグローバルリスクを考える重要性
政府だけではなく、今後は企業もグローバルリスクに備えた取り組みを行うことが重要です。
現在予測されているグローバルリスクには、企業活動が影響しているケースも多くあります。
また、気候変動や感染症が拡大した場合、経済に大きな影響を及ぼし会社の業績低下にもつながりかねません。
そのため、今後の経営を考えた際に、企業もグローバルリスクを考えた経営戦略を立てることが重要となります。
コロナ禍が経済に与えた影響
近年の世界的危機といえば、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が挙げられます。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、世界各国の経済に大きな影響を及ぼしました。
人々の外出率の低下により、飲食・旅行・宿泊業界など多くの産業が甚大な被害を受けています。
また、外出率の低下に伴い企業の業績も悪化し、会社の倒産や人件費削減のためのリストラなどの事態も発生しています。
もしものリスクに備えることで、最悪の事態を防ぐことが可能です。
さまざまなリスクに備えるためにも、企業はグローバルリスクを考慮した取り組みを行うことが必要になります。
世界経済フォーラムによる「グローバルリスク報告書2022」の公表
発生する可能性の高いグローバルリスクを事前に理解しておくことによって、リスクに備えることが可能となります。
世界経済フォーラム(WEF)によって、今後10年の間に起こる可能性の高いリスクがまとめられた『グローバルリスク報告書2022』が公表されているので、参考にしましょう。
世界経済フォーラム(WEF)とは
世界経済フォーラム(WEF)とは、1971年にスイスの経済学者クラウス・シュワブによって設立された国際機関です。
世界経済フォーラムの設立目的は「世界情勢の改善を目指すこと」であり、世界の政治・経済のリーダーが連携して課題に取り組んでいます。
『グローバルリスク報告書2022』には、有識者が意見を出し合い、今後世界で発生する可能性の高いリスクが短期的・中期的・長期的な視点でそれぞれまとめられています。
短期的なグローバルリスク
2022年から0〜2年後の近い未来に予想されている代表的なグローバルリスクとして、以下の10個が挙げられています。
- 異常気象
- 生活破綻
- 気候変動への対応
- 感染症の広がり
- メンタルヘルスの悪化
- サイバーセキュリティ対策の失敗
- 債務危機
- デジタル格差
- 投資バブルの崩壊
中期的なグローバルリスク(2年〜5年)
今後2〜5年の間で起こるとされている中期的なグローバルリスクは、以下の10個です。
- 気候変動への対応
- 異常気象
- 社会的結束の侵食
- 生活破綻
- 債務危機
- 人為的な環境災害
- 地政学的対立
- サイバーセキュリティ対策の失敗
- 生物多様性の喪失
- 資産バブルの崩壊
長期的なグローバルリスク(5年〜10年)
今後5〜10年後に起こりうる長期的なグローバルリスクには、環境に関する項目が多く含まれています。
- 気候変動への適応
- 異常気象
- 生物多様性の喪失
- 天然資源危機
- 人為的な環境災害
- 社会的結束の侵食
- 非自発的移住
- テクノロジー進歩による悪影響
- 地政学的対立
- 地政学的資源戦争
短期的なリスクには、メンタルヘルスや感染症の広がり、生活破綻など新型コロナウイルス感染症の感染拡大が関係するグローバルリスクが多く含まれています。
また、10年スパンで短期的・中期的・長期的なグローバルリスクを考えた場合、異常気象や気候変動など環境に関するリスクが多くみられます。
今後各企業には、今まで以上に環境面に関するグローバルリスクに対応するための取り組みが求められるでしょう。
深刻度の高いグローバルリスクトップ10
世界経済フォーラムが公表する最新の『グローバルリスク報告書2022』には、今後起こる可能性の高いグローバルリスクの中でも深刻度の高いリスクがランキング形式で紹介されています。
今後のリスク予想に役立つため、グローバルリスクへの対応を検討している企業はぜひ参考にしてください。
今後10年の間で、深刻度の高いグローバルリスクは以下の10個です。
第1位:気候変動への適応(あるいは対応)の失敗
気候変動により、今後ますます地球の気温は上昇することが予想されます。
気温の上昇に伴い北極の氷が溶けることによって、海面上昇が起こります。
海面上昇が起こった場合、海抜が低い地域は浸水するリスクなどが高まるでしょう。
第2位:異常気象
地球温暖化に伴い地球環境が変化することによって、異常気象が発生するリスクも高まります。
2022年の現代でも、インドでは気温が50度を超える日があるなど、さまざまな異常気象が発生しています。
パキスタンでは、2022年6月の大洪水によって国土の3分の1が浸水する事態も発生しています。
今後、ますます異常気象が発生することが予想されているため、異常気象のリスクへの備えが必要です。
第3位:生物多様性の喪失
地球上にはさまざまな生物が生息しています。しかし、森林の伐採や生物の密売などによって生態系が崩れつつあります。
今後、各国の経済活動や環境破壊によって、ますます生物多様性が喪失するリスクがあります。
第4位:社会的結束の侵食
社会的結束の侵食とは、国と国の対立やコミュニティ同士の対立のことを示します。
2022年2月に起こったロシア・ウクライナ戦争のように、今後考え方や宗教の信仰の違いから社会的結束の侵食がますます進むことが予想されています。
第5位:生活破綻(生活苦)
今後、世界の経済格差はますます広まると予想されています。
経済格差の拡大により、生活に苦しみ破綻する人が増加するリスクも高まっています。
第6位:感染症の広がり
グローバル化が進む中で、今後ますます人の行き来が加速することが考えられます。新型コロナウイルス感染症も、人の移動により瞬く間に世界中に広まりました。
今後も新たな感染症が発生した際には、被害が拡大するリスクが懸念されます。
第7位:人為的な環境災害
人々の産業活動に伴い、人為的な環境災害はますます深刻化することが予想されています。
人為的な環境災害の代表的な例として、地球温暖化が挙げられます。
産業活動に伴う温室効果ガスの排出によって、熱波や干ばつなどのリスクが考えられます。
第8位:天然資源危機
天然資源危機とは、石油や石炭など機械を動かすエネルギーの枯渇問題のことを示します。
今後、ますます経済活動が活発化することによって、エネルギーの枯渇が早まると予測されます。
第9位:債務危機
債務危機とは、各国の政府が他の国から借りた債務の返済ができなくなる状況です。
特に発展途上国などの債務危機は深刻化するリスクが高いと予想されています。
第10位:地政学的対立
地政学的対立とは、国の地理的な位置関係によって起こる対立のことを示します。
例えば、石油やレアメタルなどの資源が豊富な地域が両国の間にある場合、国の利益を求めて地域のとり合いにつながる恐れがあります。
今後も、資源や国の利益を巡って地政学的対立が発生するリスクは高まると予想されています。
グローバルリスクに対して企業ができる取り組み
現代の世界は急速な発展を遂げる一方でさまざまなリスクが懸念されており、考えうるリスクに対応する必要があります。
グローバルリスクに備えた企業の取り組みの例には、以下の取り組みが挙げられます。
リスクマネジメント例①:デジタル化
グローバルリスクにはさまざまなものがありますが、コロナ禍のような感染症の拡大は今後も発生するリスクがあります。
このようなグローバルリスクを考慮したリスクマネジメントとして、デジタル化の促進が挙げられます。
デジタル化を進めてリモートワークができる体制を整えることによって、感染症が拡大し出社できない場合でも、会社への大きな被害を防ぐことが可能です。
リスクマネジメント②:温室効果ガスの削減
今後10年で深刻化する可能性のあるグローバルリスクには、環境に関するものが多いです。
温室効果ガスの削減や省エネ化など環境に配慮した取り組みを行うことによって、環境の保護につながります。
また、環境保護への取り組みを通して現在の環境問題を適切に把握できるようになるため、今後の環境変化に備えた経営戦略を立てることも可能になります。
グローバルリスクへの取り組みが企業にもたらすメリット
グローバルリスクへの取り組みは、企業へさまざまなメリットをもたらします。
グローバルリスクへの取り組みによるメリットは、以下の3つです。
- 企業イメージの向上
- 事業機会の創出
- 生存戦略
初期投資が必要な場合でも長期的に考えるとプラスになる可能性があるため、以下のメリットを確認し、グローバルリスクへの取り組みを検討しましょう。
メリット①:企業イメージの向上
グローバルリスクに関する取り組みは、自社のイメージ向上に役立つ場合があります。
例えば、環境へ配慮した事業運営や省エネ化は、顧客や消費者から良いイメージが持たれやすいです。
企業のイメージアップは、顧客からのさらなる仕事の発注や商品の売り上げ向上につながることもあります。
そのため、結果として自社の利益を向上させることが可能になります。
メリット②:事業機会の創出
グローバルリスクを考慮して事業を進めることは、新たな事業機会の創出にもつながります。
リスクに対応するためには、さまざまな調査が必要です。
調査によって得た多くの情報を活用することによって、新たな利益拡大の戦略立案が可能となります。その結果、事業を拡大するための可能性が広がることもあります。
メリット③:生存戦略
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、倒産の危機に迫られた企業も複数存在します。
グローバルリスクへの取り組みを行うことで、さまざまなリスクを考慮した経営戦略を立てることが可能となります。
もしもの場合の生存戦略を考えられる点も、グローバルリスクへの取り組みのメリットといえます。
グローバルリスクに備えた企業経営を
グローバルリスクは、今後ますます深刻化することが予想されます。
直近では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって多くの企業が経済的な影響を受けました。
今後は自社の生存戦略を考えるうえでも、グローバルリスクに備えた取り組みが求められます。
グローバルリスクに関する情報を集め、さまざまな事態に対応できるよう備えることが今後重要になるでしょう。
監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。
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