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【SDGs達成度ランキング2023】21位にランクダウンした日本の現状と今後の課題は?

2015年に採択されたSDGs。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指し、地球上の誰一人取り残さないことを誓っています。

期限である2030年まで残り10年を切りましたが、現在の目標達成度はどのようになっているのでしょうか。

今回はSDGs達成度ランキングの最新版である2023年度版を参照しながら、日本の現状と今後の課題、それを受けた日本の取り組みをまとめました。

2023年度SDGs達成度ランキング、日本は21位に後退

国連と連携する国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」は毎年、各国のSDGs達成状況を示す「SDGs(持続可能な開発目標)達成度ランキング」を発表しています。

最新版である2023年度版によると、日本の達成度ランキングは166カ国中21位(達成スコア79.41)という結果になりました。

昨年は19位(79.58)でしたので、スコア・ランキングともに後退したことになります。

達成度ランキングの公表がスタートした2016年で、この年は18位(スコア75)でした。

その後の推移としては2017年が11位(スコア80.2)、2018年は15位(スコア78.5)、2019年は15位(スコア78.9)、2020年は17位(スコア79.1)、2021年は18位(スコア79.8)。

そして先ほどお伝えしたように2022年は19位(スコア79.6)、2023年は21位(スコア79.41)と推移していますので、残念ながら2023年が過去最低、世界トップ20からも外れてしまったことになります。

ちなみに、トップはフィンランド(スコア86.76)。昨年に引き続き1位となりました。

2位はスウェーデン、3位はデンマークと、ジェンダー平等や福祉の充実に対する取り組みの高い北欧諸国がトップ3を占めています。

【17の目標別の達成状況】最高ランクである「達成済み」は2項目のみ

次に、「17の目標別の達成状況」を見てみましょう。

「17の目標」とは、2030アジェンダの中で示されているSDGsの17の目標のことです。

1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤を作ろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任、つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
(出典:国連公式サイト

持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)は、この17の目標の達成度を「達成済み」「課題が残る」「重要な課題がある」「深刻な課題がある」の4段階に分けて評価しています。

日本が最高ランクである「達成済み」と評価を受けたのは「4.質の高い教育をみんなに」、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の2項目のみ。

目標4は初等教育の就学率の高さや、高等教育を受けた人の割合の高さが評価され、目標9はインフラが整っていることが評価されました。

ちなみに、昨年は3項目が「達成済み」でしたが、「16.平和と公正をすべての人に」の項目が2023年は「課題が残る」に一段階評価を落としました。

原因としては、「報道の自由」の指数が下がったことなどが起因となっています。

「深刻な課題がある」と評価された5項目

最低ランクにあたる「深刻な課題がある」と判断されたのは、「5.ジェンダー平等を実現しよう」「12.つくる責任つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」の5項目になります。

それぞれの課題を詳しく見ていきましょう。

5.ジェンダー平等を実現しよう

まずは、ジェンダー平等について。

世界経済フォーラム(WEF)が発表している「Global Gender Gap Report(世界男女格差報告書)2023」では、日本は146カ国中125位と前年の116位から順位を落としています。

日本は政治(138位)と経済(123位)の分野で最低ランクの評価を受けており、国会議員や管理職における女性比率の少なさが言及されています。

このようにジェンダーギャップ指数の低さは例年指摘されていますが、SDSNによる評価においても、国会議員の女性比率や、男女の賃金格差に改善が見られないことで大きく評価を下げました。

内閣府男女共同参画局によると、現在国会議員に占める女性割合は、衆議院は11.3パーセント、参議院は17.4パーセント(平成22年5月時点)と報告されています。

また、経済協力開発機構(OECD)によると、日本の男女の賃金格差は22.1ポイント開いており、OECD平均(11.9ポイント差)の約2倍となっています。

12.つくる責任つかう責任

次は、「生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう」という意味の目標である「12.つくる責任つかう責任」。

日本人のプラスチックごみ廃棄量はなんと世界第2位。

私たちの暮らしには欠かせないプラスチックですが、海洋汚染問題や地球温暖化問題など、環境問題の大きな要因ともなっています。

また、排出量の多さだけではなく、輸出量の多さも低評価に繋がりました。

汚れが付着していたり、異物が混入していたりするプラスチックに関しては、リサイクルをするために洗浄などの前処理が必要になります。

国内で処理をしようとすると人件費がかさむため、現在日本では海外に「資源ごみ」として輸出して処理してもらっているのですが、この量も多いのです。

加えて、電化製品や電子機器などの電子ごみの多さも、日本が抱える課題のひとつとして指摘されています。

13.気候変動に具体的な対策を

SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」では、気候変動問題の原因であるとされている温室効果ガス排出の抑制が求められています。

日本では、温室効果ガスの排出量を2030年までに46.パーセント削減するという目標案が決定され、国連の気候変動枠組み条約事務局に提出しています。

これに加えて、地球温暖化対策計画も策定され、先述の中期目標と併せた長期目標として、2050年までに「温室効果ガスゼロ」を目指すことにしています。

ところが現状は化石燃料に大きく依存しており、多くの原発の稼働が止まった東日本大震災以降、ますます依存度が高くなっています。

そのため化石燃料の燃焼で排出される温室効果ガスが未だに多く、再生可能エネルギーを軸としたエネルギー自給率向上への取り組みが停滞していると評価を受けました。

14.海の豊かさを守ろう

現在、「海洋ごみによる汚染」、「化学物質の流出」、「海の酸性化」、「魚の減少」など、海にまつわる問題は多岐に渡ります。

特に日本では、乱獲、輸入魚、トロール漁などの問題と、海の品質、汚染度合いなどが問題視されているようです。

魚の乱獲に関しては2021年度からの改正漁業法で今後緩和されていくことが期待できるかもしれませんが、海の汚染度合いに関しては、海の健全度を総合的に評価して数値化した「海洋健全度指数(Ocean Health Index)」でも低い評価を受けています。

15.陸の豊かさも守ろう

日本では国土の66パーセントを森林が占めています。しかし、これらの多くが放置されていることが問題となっています。

なぜ放置が問題になるのかというと、森林には土砂災害を防止したり、土壌を保全したりする機能があり、この機能を発揮するためには森林が健全に保たれるように管理する必要があるからです。

特に、人工林や適切に管理しないと荒廃や倒木の原因にもなります。

しかし海外からの格安木材の増加などが影響し、林業が衰退してしまっています。

そのため、林業の活性化は日本が抱える大きな課題のひとつとして位置付けられています。

日本のSDGsに対する取り組み

このような現状を受けて、日本は現在どのような取り組みをしているのでしょうか。

日本は2016年5月より、SDGs推進本部を設置しています。総理大臣を本部長、官房長官と外務大臣を副本部長としています。

このSDGs推進本部では、行政・民間セクター・NGO・NPOなどのさまざまなステークホルダーによって構成される会議「SDGs推進円卓会議」を実施しています。

SDGs実施指針と、具体的施策を取りまとめたSDGsアクションプランを定めた上で、SDGs推進円卓会議において、それぞれに関する意見交換がなされています。

SDGs実施指針(改訂版)

SDGs実施指針は、以下の8つです。

・あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
・健康・長寿の達成
・成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
・持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
・省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
・生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
・平和と安全・安心社会の実現
・SDGs実施推進の体制と手段

これらを解決するために政府が策定したのが、次にご紹介する「SDGsアクションプラン」になります。

SDGsアクションプラン2023

SDGsアクションプランはこれまでに何度か改訂されており、現在の最新版は「SDGsアクションプラン2023」となっています。

「SDGsアクションプラン2023」の重点事項は、以下の通りです。

People 人間:多様性ある包摂社会の実現とウィズ・コロナの下での取組
• 「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022」等に基づき、あらゆる分野での女性の活躍を推進。
• 子供の貧困対策や持続可能な開発のための教育(ESD)を推進し、次世代の更なる取組を喚起するなど、人への投資を行う。
• 「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」等に基づき、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備を一層推進。
• グローバルヘルス戦略に基づき、パンデミックを含む公衆衛生危機に対するPPR(予防・備え・対応)を強化。
• より強靭、より公平、より持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組推進。

Prosperity 繁栄:成長と分配の好循環
• 「デジタル田園都市国家構想」の実現を通じ、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会の実現に取り組む。
• 国内外の社会課題解決やイノベーションを促すため、日本企業と海外スタートアップ等とのオープンイノベーションを推進。
• これまで進めてきた「SDGs未来都市」に加え、新たに複数の地方公共団体が連携して実施する脱炭素化やデジタル化に関する取組に対しても支援を行うことで、地方におけるSDGs達成に向けた取組を加速する。
• 「熊本水イニシアティブ」に基づき、気候変動適応策・緩和策を両立するハイブリッド技術を活用した「質の高いインフラ」整備の取組推進。

Planet 地球:人類の未来への貢献
• 経済・社会・産業の大変革である、GX推進のためのロードマップの検討を加速化。成長志向型カーボンプライシング、規制制度一体型の大胆な資金支援、トランジション・ファイナンス、アジア・ゼロエミッション共同体構想などの政策イニシアティブを具体化。
• 地域脱炭素の推進のための交付金等を通じ、2050年を待つことなく前倒しでカーボンニュートラル達成を実現する脱炭素先行地域を2030年度までに少なくとも100か所創出する。
• 食品ロス量を2030年までに489万トンまで低減することを目標に、持続可能な生産・消費を促進

Peace 平和:普遍的価値の遵守
• TICADプロセスを通じ、アフリカにおけるSDGs各ゴールに関連する取組のモニタリングやフォローアップを実施。• 子どもに対する暴力を撤廃するため、地方公共団体におけるいじめ問題等への対応を支援するとともに、グローバルな取組にも参画。
• 総合法律支援の充実や日本法令の外国語訳等により、国際取引の円滑化や外国人を含む全ての人の司法アクセスの確保を図る。

Partnership パートナーシップ:官民連携・国際連携の強化
• 2023年の「SDGs実施指針」改定のプロセスも含め、SDGs推進円卓会議を中心に、国内外のあらゆる関係者との連携を促進・強化。また、SDGグローバル指標に関する情報を発信。
• ODAの一層の戦略的活用を図る観点から、2023年前半を目処に開発協力大綱を改定。
• SDGサミットや持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)、日メコンSDGsフォーラム等の議論に積極的に貢献。
(引用:首相官邸ホームページ

【まとめ】日本がSDGs達成していくための今後の課題

日本のSDGs達成度は、現在ジェンダー平等や環境問題における取り組みなど、まだまだ大きな課題を抱えていることが分かりました。

SDGs目標達成に向けて、より一層改善に取り組んでいくことが求められます。

一見目標の規模が壮大で、政府主導で改善に取り組まなければならないように見えるSDGsですが、企業や個人にも具体的に取り組めるアクションはたくさんあります。

企業や個人が取り組める具体的な事例は以下の記事でもご紹介していますので、気になる方はぜひご参考になさってください。

SDGsで私たちにできることとは?個人・企業の身近な取り組み事例19選

 

 

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
不動産鑑定士
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超え、CRE戦略の立案から実行までを得意としている。
2019年9月に不動産テックを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。