半導体不足とは?2022年半導体不足が日本経済市場に与えている影響について
ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、日頃から企業の経営・CRE戦略の動向について分析・レポート発信を行っている。本レポートでは近年誰もが一度は耳にしたことがあるであろう「半導体不足」が日本の経済市場にどのような影響を与えているか、中期経営計画の言及ワードから分析をしていく。
半導体とは
半導体とは、導体(電気を通す物質)と絶縁体(電気を通さない物質)の中間の性質を持つ物質で、電流を制御することが主な機能。半導体を構成している材料として代表的なものはシリコンで、多数の半導体メーカーが集まっていたアメリカの「シリコンバレー」の名前の由来にもなっている。スマートフォン・PC・家電と私たちの身の回りにある電子機器にはすべて半導体の技術が活用されており、現代人の生活には欠かせないものとなっている。
半導体不足に陥っている要因
半導体が不足している要因はいくつもあるが、大きな要因としてはコロナ禍・IT技術の進歩による需要の拡大が挙げられている。IT技術の進歩による5Gや電気自動車・スマート家電の普及やコロナ禍での日本企業のテレワーク推進によるPC需要の増加、巣ごもり需要によるゲーム機や家電の供給増加が半導体の需要増加を底上げしている。
それに加えて各国のロックダウンによるサプライチェーンの混乱、災害による生産停止などの供給力低下も状況を悪化させてきた要因であろう。
2022年に入り、「半導体不足」言及企業が急増
中期経営計画にて「半導体不足」について言及した企業(以下「言及企業」という)は2020年は0社であったものが2021年には20社、2022年(調査時点2022年12月15日)には69社と年を追うごとに経営課題として露出してきている。業種も2021年は「電気機器」、「機械」、「輸送用機器」関連の事業を行う業種を中心に8業種が言及をしているが、2022年には言及業種に「サービス業」、「建設業」、「非鉄金属」等も加わり18業種と言及企業数・業種ともに増加している。このことから2021年から2022年にかけて半導体不足による影響が日本の市況に広がっていったことが窺える。
2021年~2022年業種別「半導体不足」言及企業数1位は「電気機器」
図1_中計「半導体不足」言及企業 業種別企業数
※調査対象期間2021年1月~2022年12月
※当社情報支援ツール「CCReB Clip」を用いて作成
図1は2021年1月~2022年12月に開示された上場企業の中計において「半導体不足」の言及がある企業を業種別内訳として示したものである。
言及企業89社中18社ともっとも言及企業数が多かった業種は「電気機器」である。通信機器・IoT関連機器などの半導体が必須の製品を扱っている企業がほとんどであり、半導体不足の影響を直接的に受けている業種といえる。
続いて2番目の「化学」については、「電子機器」より若干少なく15社という結果であった。塗装関連・樹脂製品・プラスチックなど自動車メーカーに製品を提供している企業が多く、半導体不足による自動車の生産台数減少のあおりを受けている業種である。
3番の「情報・通信業」では製造業のDX化サポート、Wi-Fi等の通信機器の生産を行っている企業が言及のあった9社のほとんどの割合を占めていた。通信機器の部品に必要不可欠である半導体が不足しているという直接的な影響は勿論だが、顧客の製造業企業が半導体不足による業績不調に陥っている等の間接的影響も受けている業種と言えよう。
最後に
現代人の生活になくてはならないものとなっている半導体だが、需要と供給のバランスが崩れて経済市場に混乱をもたらしている。数年以内にこの半導体不足の状況は落ち着くだろうといった意見もあるが、先行きは不透明であり需給のひっ迫は今後数年にわたり企業経営に影響を及ぼすものと予想される。こうした不案材料がある中、日本企業がどう対応していくのか、今後も当社では、中計をベースにどのような傾向が表れるのか注視し、アップデートを行っていくものとする。
ククレブグループで提供しているTechシステムのサービスの一つである「CCReB Clip」では、上場企業が開示する中期経営計画の中から特定のワードの言及をしている企業の抽出をすることができる。今回の分析を行うにあたっても使用したシステムで、作業時間をほとんどとらずに営業先リストの作成や上場企業の経営方針把握ができる。
営業・調査・分析を行うためにかけていた時間を大幅に削減できる当該サービスを是非、活用頂きたい。
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監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。