軽井沢の不動産市場 ~地価公示上昇率からみる軽井沢の不動産需給~
国土交通省が2026年3月17日に公表した令和8年地価公示によれば、長野県住宅地の最高価格地は「軽井沢-3(北佐久郡軽井沢町大字軽井沢町字上御原308番11外)」の195,000円/㎡(変動率+14.7%)であった。また、軽井沢町の標準地のうち住宅地の変動率は+12.1%[1]となっている。本稿では地価公示データの上昇が示唆する軽井沢の不動産需給の背景を整理する。
軽井沢の立地特性
軽井沢町は、浅間山の南東斜面の標高900~1,000mに広がる高原の町で、明治時代中期から避暑地として発展してきた経緯をもつ。温暖化が進んだ近年でも、夏季の平均気温は東京と比較して6度程度低い[2] 。また、北陸新幹線で「東京」駅から「軽井沢」駅まで最短で約1時間程度と首都圏からのアクセスが良好な点で、他のリゾート地と比べて優位にある。
【図表1】「軽井沢」駅を中心とした時間距離圏と主要エリアの位置関係

1 2026年1月1日時点の軽井沢町の公示地価標準地6地点の前年からの変動率を単純平均
2 気象庁「過去の気象データ」より、2015~2024年の月別平均気温データの平均値の6~8月を比較
「軽井沢」駅の北口側には旧軽井沢エリアと称される別荘地と商店街が広がり、南口周辺には複合型リゾート「プリンスグランドリゾート軽井沢」が立地している。
また、軽井沢町役場や病院などの都市機能は、しなの鉄道「中軽井沢」駅を中心とする中軽井沢エリアに集積している。軽井沢町の主要な別荘地、商業地や、都市機能は「軽井沢」駅から自動車15分圏と比較的コンパクトな範囲に集積し、一体的な生活圏を形成している(図表1)。
軽井沢町の人口は、町外からの転入者が町外への転出を上回る転入超過が続いている。また、図表 2-bで軽井沢町の2024年の社会移動を5歳階級別 にみると、15~19歳、25~29歳、70~74歳を除く全ての年代で転入超過となっている。特に0~4歳、5~9歳の転入超過数が多く、ファミリー層の転入が比較的多いことがうかがえ、転入者数の属性は公表されていないが、移住者が一定数含まれていると考えられる。軽井沢町の移住需要の背景としては、生活しやすい環境も寄与しているものと考えられる。
【図表2-a】軽井沢町の人口動態(社会移動) 【図表2-b】5歳階級別移動者数

出典:軽井沢町「毎月人口異動調査」
分譲マンションの供給状況
軽井沢町の別荘数は長野県の市町村の中では突出して多く、2024年には16,730戸となり、10年間で5.7%増加した(図表3)。加えて、分譲マンションの供給も続いている。首都圏近郊の主なリゾート地を対象に分譲マンション[3]の着工を整理したところ、2019年以降で着工が確認できたのは軽井沢町、箱根町、熱海市と少なく、毎年着工が確認できたのは軽井沢町のみであった(図表4)。
【図表3】軽井沢町の別荘数

出典:令和7年度軽井沢町の統計
【図表4】主要リゾート地の分譲マンション着工数
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出典:国土交通省「住宅着工統計」
3 国土交通省「住宅着工統計」よりRC造・SRC造の分譲住宅且つ共同住宅の戸数を抽出。
【図表5】軽井沢町の分譲マンション一覧(2026年以降)
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出典:各社公表資料に基づき弊社作成
2026年以降に入居予定の分譲マンションは4件が確認された(図表5)。個別にみると、①RESORTIA軽井沢は、販売中の4戸の価格が1億4,980万円~3億9,980万円、②ロイヤルインシグニア旧軽井沢は専有面積129~196㎡の住戸プランで、最終販売(概要未定)である。③オストガーデン軽井沢は専有面積A棟224.26~381.59㎡、B棟90.02~113.79㎡、販売概要は非公表。④テラス軽井沢フォレストは、専有面積74.65~241.09㎡で、販売は終了している。住戸規模や価格帯等から、4件ともに富裕層のセカンドハウス需要をターゲットとした商品設計となっており、富裕層需要を中心とした市場が形成されている。
軽井沢町には、分譲マンション以外にも、オーナーが利用していない間は外部に貸し出して収益を得られる「ホテルコンドミニアム」や、複数人で別荘を区分所有する「シェア別荘」等、多様な商品形態の開発もみられる。
主な開発予定
2026年3月17日には、「軽井沢」駅北口に接続する旧信越本線の線路跡地に新たな商業施設「軽井沢T-SITE」がオープンした。約13,000㎡の敷地に、鉄骨造の平家建及び2階(一部3階)建の6棟の建物を配置した分棟型の施設で、温浴施設、ホテル(9室)、飲食・物販店舗が17店[4]出店しており「軽井沢」駅周辺に商業機能の集積が一段と進んでいる。
また、今後の大型の開発としては、西武グループが「軽井沢」駅の北西方約5km(直線距離)の千ヶ滝地区に所有する約22haの敷地で大規模複合開発を予定している。プロジェクトには野村不動産㈱が参画し、価値向上に向け内容は検討中とのことであり、2020年代中の竣工が予定されている。
4 ホテルは2026年4月25日オープン予定
規制強化の影響
このように、共同住宅をはじめとする様々な開発がみられる軽井沢町では、開発による自然環境や住環境の悪化を防ぐ目的で、マンションやホテル建設についての規制強化を図っている。自然保護対策要綱の改正では、用途地域に応じた建築物の階数制限に地階を含めること(2026年10月1日施行)、集合住宅の戸当たりの敷地面積の数値の制限の見直し(2027年4月1日施行)等が決定しており、従来よりも厳しい建築制限となっている。さらに、旧軽井沢エリアでは都市計画法の特別用途地区の指定が検討されており、指定区域では共同住宅及びホテル、旅館の建築は立地規制対象となる。2027年度を目途に条例が制定される見通しである。
まとめ
規制強化により、今後、軽井沢町では共同住宅やホテルの開発は制約を受けることになるが、別荘地の良好な環境は守られ、国内屈指のリゾート地としての価値の保持にも繋がるものと考えられる。軽井沢は恵まれた立地環境にあるため、観光需要に加え、別荘利用や二拠点居住、移住といった多様な需要が重層的に存在しており、こうした需要の厚みが地価の上昇を下支えしているものと考えられる。
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