PTSとは?株の夜間取引ができるメリットやデメリット、規制緩和が行われる背景について分かりやすく解説
PTS(Proprietary Trading System)とは、証券取引所を経由せずに、証券会社内で株式や債券の売買をすることができる私設取引システムのことです。
近年、金融庁は国内証券市場の活性化を目指したPTSの規制緩和を行ってきました。2025年5月までには、さらなる規制緩和が行われると見られています。
そこで本記事では、今後ますます活性化していくとみられるPTSについてわかりやすく解説します。PTSの概要やメリット・デメリット、近年のPTSにおける国内動向(規制緩和が行われている背景など)について知りたい方はぜひご一読ください。
PTSとは
PTS(Proprietary Trading System)とは、証券取引所を経由せずに、証券会社内で株式や債券の売買をすることができる私設取引システムのことです。
各証券会社が独自に開設している市場システムになりますので、証券取引所の取引時間外でも取引をすることができる点が最大の特徴です。
PTSのメリット
PTS(私設取引システム)の主なメリットは、大きく3つあります。
①夜間取引が可能
②有利な株価で取引をすることが可能
③取引手数料が安い
それぞれ以下で詳しく解説していきます。
PTSのメリット①夜間取引が可能
PTS の1つ目のメリットは、冒頭でも触れた通り証券取引所の取引時間外でも取引を行える点です。
証券取引所での売買立会は、前場と後場に分けられ、その売買立会時は、前場は9時から11時30分まで、後場は12時30分から15時までとなっています。一方PTSは、15時以降も取引を行うことができます。
そのため、証券取引所がクローズしたあとに海外市場で大きな動きがあった際にも、リアルタイムで対応することができます。
PTSのメリット②有利な株価で取引をすることが可能
PTS の2つ目のメリットは、有利な株価で取引をすることが可能になる点です。
売買の注文をする際の値段の刻みを呼値の単位といいます。呼値の単位は、売買の対象となる銘柄及びその値段の水準に応じて設定されていますが、特に株価の高い銘柄の呼値の単位は証券取引所では5円や10円となっています。
一方、PTSでの呼値は取引所取引の10分の1以下となっています。1円単位で取引を行うことができるので、取引所取引よりも安く買ったり高く売ったりすることが可能です。
PTSのメリット③取引手数料が安い
PTS の3つ目のメリットは、取引手数料が安い点です。
現在国内でPTSを運営している企業は3社ありますが、取引所取引よりも手数料を安くしている証券会社もあります。例えばSBI証券では、昼間取引は手数料が取引所取引より約5%安く、また夜間取引は0円に設定しています。
PTSのデメリット
夜間取引が可能だったり、手数料が取引所取引よりも安く設定されていたりと、メリットの多いPTS。しかしながら、デメリットも存在します。PTSの主なデメリットは、次の3つです。
①PTS対応の証券会社が少ない
②売買が成立しにくい
③銘柄が限られている
それぞれ以下で詳しく解説します。
PTSのデメリット①PTS対応の証券会社が少ない
PTSのデメリットの1つ目は、PTS対応の証券会社が少ない点です。現在、国内でPTSを運営している企業は4社のみになります。
しかしながら、2023年7に日本証券業協会が制定した新たな規則「私設取引システムにおける非上場有価証券の取引等に関する規則」により、PTSで未上場株を取り扱うことが可能になりました。
これにより、スマートラウンドやNstockといった国内スタートアップが2025年中に参入するとしています。
2025年5月までにはさらなる規制緩和が検討されており、新興勢の参入がさらに進むかもしれません。
PTSのデメリット②売買が成立しにくい
PTSのデメリット2つ目は、売買が成立しにくい点です。
日本のセカンダリーマーケットはまだまだ小さく、少額投資の個人投資家の利用が中心となっており、PTSで取引している投資家の数は、証券取引所と比べると少ない傾向にあります。そのため、売買が成立しにくいという特徴があります。
出来高が少ないため、思ったような価格で売買が成立しにくい点がPTSの課題です。
PTSのデメリット③銘柄が限られている
PTSのデメリットの3つ目は、銘柄が限られている点です。
PTSでは上場している全ての銘柄が取り扱えるわけではなく、各証券会社が指定する銘柄しか取り扱うことができません。
しかしながら、デメリット①でも述べたように規制緩和が進んでいるため、今後は取引可能な銘柄が未上場株を含め増えていくかもしれません。
PTSの規制緩和が進められている背景【日本の株式市場の現状と課題】
日本の上場株式の取引は現在、東証など主要取引所経由が売買代金ベースで8割を占めています。
これに対し、海外ではニューヨークやロンドンなど主要な取引所だけでなく、新興の取引所やPTSにあたる取引所外取引システム(ATS)など代替の取引機関があり、活発な市場間競争があります。例えば、米国の株売買では相対取引とATSのシェアが全体の3~4割。英国やフランス、ドイツなど欧州でも取引所以外での売買が3~5割にのぼります。
このように東証に一極集中している現状は、市場間競争が促されないだけでなく、市場全体のリスクにもなっています。
例えば、2020年の東証のシステム障害の際は、PTSなど代わりとなる取引手段が確立していなかったために、投資家が丸1日売買することができませんでした。
そのため金融庁は、東証に一極集中している現状を打破し、市場間競争の活性化と市場全体のレジリエンス向上を目指すべく、2024年にPTSの規制緩和を行いました。
これまで、PTSは全取引所の売買高の1%以下と制限されていましたが、10%以下までとなりました。また、銘柄ごとに課されていた売買上限も、現行の10%から20%へと緩和されています。
日本においても未上場株の取引が可能に
また、未上場株のセカンダリーマーケットの拡大に向けても施策が進められています。
2023年7月、日本証券業協会が新たな規則「私設取引システムにおける非上場有価証券の取引等に関する規則」を制定しました。これにより、PTSで未上場株を取り扱うことが可能となりました。
さらに、2024年5月には改正金商法が成立し、PTSの認可が不要となりました。2025年5月までには仲介業務の要件を緩めるとされています。これまで認可には3億円以上の資本金やバックアップ用のシステムの整備が必要で、規模の小さい企業の参入障壁となっていましたが、資本金要件は5000万円以上から1000万円以上となるとされています。
これにより、スマートラウンドやNstockといった国内スタートアップが2025年中に売買仲介サービスに新規参入すると発表しています。
現在国内でPTSを運営する企業
現在国内でPTSを運営している企業は以下の4社です(2025年2月時点)。これまでは3社でしたが、2024年にJapan Alternative Market株式会社が新規開業したことにより4社へと増えました。
・ジャパンネクスト証券株式会社
・Cboeジャパン株式会社(元チャイエックス・ジャパン)
・大阪デジタルエクスチェンジ株式会社(ODX)
・Japan Alternative Market株式会社
ジャパンネクスト証券の筆頭株主はSBIホールディングスで、米Cboeも資本参加しています。また、Cboeジャパン株式会社は米Cboeグローバル・マーケッツの傘下です。そして、大阪デジタルエクスチェンジ株式会社(ODX)にはSBIや三井住友フィナンシャルグループが出資しています。
Japan Alternative Market株式会社は、楽天証券ホールディングスなどが出資して設立された企業で、2024年12月27日よりPTSの運営を開始しています。
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今回は、PTSの概要やメリット・デメリット、近年のPTSにおける国内動向(規制緩和が行われている背景など)について解説しました。
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監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。