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金融引き締めとは?概要や方法、景気や物価に及ぼす影響や、金融政策の実施状況を知る方法をわかりやすく解説

金融政策は、企業が経済活動を行う上で大きな影響を及ぼします。

今回は、金融政策の一つである「金融引き締め」について、概要や方法、景気や物価に及ぼす影響や、金融政策の実施状況を知る方法などを分かりやすく解説します。

「今さら金融引き締めについて聞けない……」といった方も、ぜひご参考になさってください。

金融引き締めとは

金融引き締めとは、景気の加熱やインフレ(インフレーション)を抑えるために中央銀行が実施する金融政策のことを指します。

短期金融市場での通貨供給量を減らし、消費や投資などの経済活動を抑制します。消費や投資などの経済活動を抑制することにより、金利を上昇させれば企業や個人の借り入れは減るので、景気の過熱を抑えることに繋がります。

短期金融市場での通貨供給量を減らす具体的な方法については次の見出しで説明します。

「金融引き締め」の対義語は「金融緩和」

短期金融市場での通貨供給量を減らす政策「金融引き締め」に対して、短期金融市場での通貨供給量を増やす政策を「金融緩和」と言います。

「金融緩和」は主に経済を活発化させるために実施されます。

短期金融市場での通貨供給量が増えるため景気浮揚を促すための手段として用いられますが、必ずしも暮らしが豊かになるとは限りません。

金融緩和によって物価が上昇しても、労働者の賃金が上がらなければ、生活の負担は増してしまうからです。

また、金融緩和は低金利に繋がるため、一般的に銀行の金利収入は少なくなるという側面もあります。

金融引き締めの具体的な方法

金融引き締め

では、金融引き締めを実施する具体的な方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

今回は、次の3つをご紹介します。

・政策金利の引き上げ
・預金準備率の引き上げ
・資金吸収オペレーション

政策金利の引き上げ

政策金利を引き上げて、公開市場操作により目標水準に誘導します。

預金準備率の引き上げ

中央銀行にある民間金融機関の当座預金の預金比率を引き上げます。

資金吸収オペレーション

国債など、中央銀行が保有する金融資産を民間金融機関へ売却したり、再投資停止したりすることで資産を圧縮します。

金融引き締めが景気や物価に及ぼす影響

金融引き締め

金融政策は、株式や為替相場などさまざまな分野に影響を及ぼします。ここからは、金融引き締めと、景気や物価との関係性について詳しく解説します。

まず金利が上昇すると、民間の金融機関は以前よりも高い金利で資金調達をしなければならなくなります。そのため、金融機関は企業や個人への貸出の際、金利を引き上げるようになります。

そうすると、企業や個人は資金を借りにくくなるため、経済活動が活発ではなくなります。これにより、金融引き締めの主な目的である景気やインフレ(インフレーション)が過熱するのを抑制する効果が出るのです。

企業は設備投資などを、個人はローンを組むなどの消費活動を控えるようになるため、物価に対して押し下げ圧力が働きます。

ちなみにアメリカでは、2022年3月から物価が上がり続けるインフレを抑制するために、政策金利の引き上げに踏み切っています。これも金融引き締めの代表的な例です。

金融引き締めの実施を知る方法

金融引き締めの実施を確認するには、主に以下の方法があります。

・日銀金融政策決定会合を確認
・日本銀行総裁の会見やニュースを確認

それぞれ詳しく解説します。

日銀金融政策決定会合を確認

金融政策決定会合とは、金融政策の運営に関することを審議・決定する会合のことです。金融引き締めは、基本的にこの会合内で決定されます。

開催は年に8回で、各会合2日間開催されます。

詳しい開催日程は、日本銀行のウェブサイト内にある「金融政策決定会合の運営」のページから確認することができます。原則として、年央頃を目途に、その翌年の予定が公表されるようです。

金融政策決定会合の開催日程だけではなく、金融市場調節方針に関する公表文や議事要旨、経済・物価情勢の展望などを見ることができます。

日本銀行総裁の会見やニュースをチェック

日本銀行総裁は、金融政策決定会合終了後に定例記者会見を行います。また、総裁、副総裁および審議委員は、国内各地での金融経済懇談会に出席した際に、記者会見を行うことがあります。

これらの会見や、それに関するニュースをチェックすることで、金融政策に関する動向を知ることができます。

一般的に、日本銀行総裁の会見内容は、メディアのライブ配信で視聴することが可能です。また、リアルタイムで視聴できなかったとしても、日本銀行のウェブサイト内に内容が掲載されるので、確認することができます。

金融引き締めとは景気の過熱やインフレを抑えるための金融政策

金融引き締め

今回は、金融政策の一つである「金融引き締め」について、概要や方法、景気や物価に及ぼす影響や、金融政策の実施状況を知る方法などを解説しました。

金融政策は株式や為替相場にも大きく影響します。経済ニュースや世の中の動向をしっかりと見て、経済の動きに注目していきたいものです。

(参考)
日本経済の現在の短期的な動向を表す「日銀短観」については以下レポートをご参照ください。

日銀短観とは|最新の発表日はいつ?公表予定日や業況判断DIの見方、調査項目をプロが解説【2022年最新版】

 

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監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。