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【速報】東証適時開示資料から読み解く2024年上半期のM&A最新動向

ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、上場企業が適時開示を行ったM&Aに関するリリースについて、当サイト「CCReB GATEWAY」の『IRストレージ』機能を活用し半年に一度調査を行っており、今回は2024年上半期(1月~6月)のトレンド調査を行った。

※CCReB GATEWAY_IRストレージ機能において「M&A」に分類されるリリースは、「株式取得(子会社化を含む)のお知らせ」「事業譲渡・譲受のお知らせ」その他「組織再編のお知らせなど」様々なリリースを含むが、これらのリリースを個別に仕訳することなく、単純に年間にリリースされた件数を追うことによって大まかな業種毎の動き・トレンドを分析していることをお含み置きください。

>>2023年上半期の調査レポートはこちら

【速報】M&Aの最新動向は?東証適時開示資料から読み解く最前線(2023年上半期速報)

 

TOP10の大きな順位変動はなし

東証適時開示資料におけるM&A関連リリースの業種TOP10

※CCReB GATEWAY「IRストレージ機能」よりククレブ総合研究所作成(以下同様)

上図は、東京証券取引所(以降、「東証」)の適時開示情報閲覧サービス「TDnet」に適時開示された2020年1月から2024年6月までの6年間に渡るM&A関連のプレスリリースを纏めたもののうち、上位10件を表している。

年間開示件数をみると、2019年から2022年までの過去4年は2,100件前後で推移したが、2023年は2,336件と件数が増加し2024年も上半期時点で1,399件とM&A関連の動きが活発化してきている状況がうかがえる。

上位10業種については毎年多少の順位変動はあるものの、同一業種が連なる状況は例年通りの結果となった。

なお2024年上半期は上位10業種が過去5年平均件数を上回るスピードでM&A関連のリリース件数を積上げており、その中でも「情報・通信業」「卸売業」「電気機器」「化学」「その他製品」は6月末時点で過去年間平均件数の7割強まで達している。昨年2023年に上場企業が開示した中期経営計画において、「資産入替」「ポートフォリオ見直し」がホットワードとして浮上した通り、国内企業は事業ポートフォリオの見直しの1つの手段として事業売却を活用し、その結果M&A件数が増加傾向にあるものと思われる。

2023年 中期経営計画ホットワード

 

>>2023年度の中期経営計画に関するトレンドワード調査レポートはこちら

2023年最新中期経営計画ホットワードからみる企業経営トレンドの考察

 

2024年問題を発端とした各業種でのM&Aに注目

東証適時開示資料におけるM&A関連リリースの業種TOP11以下

※内国法人・組合、外国法人・組合は有価証券報告書等の提出義務者ではないが適時開示を行っているためカウント

続いて、TOP10以下を見てみると毎年一定程度の変動があり、順位の入れ替わりがそのときの時勢をよく表現している。昨年は2024年問題を目前に「倉庫・運輸関連」が順位を例年平均28位から17位と大きく動きをみせたが、2024年上半期においては「陸運業」の伸長がめざましく、2019年以降、毎年件数を増加させているが2024年上半期の時点において過去5年の平均件数に対しすでに115%まで達しており、下半期の件数積上げに注目される。「陸運業」も「倉庫・運輸関連」同様に2024年問題による影響が大きい業種であり、人手不足や競争激化による厳しい事業環境下のもと、人手不足への対処として連結子会社の吸収合併を行った北海道中央バス株式会社(9085)や、厳しい事業環境を背景とした日本通運株式会社(NXホールディングス株式会社(9147))と名鉄運輸株式会社の特別積合せ貨物運送事業の統合など、各社生き残りをかけた動きが今後も活発に行われると思われ、2024年問題にかかわる業種の動向は注目である。

※2024年問題・・・2024年4月1日以降、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が制限されることにより発生する諸問題を言う。一人のドライバーが運転できる距離や時間も制限されることから、より細かなネットワークの構築が必要となるため、諸コストの上昇から中小の物流企業に大きな影響を与えることが予想されている。

 

今回の調査に活用した「CCReB GATEWAY」の『IRストレージ』機能はTDnetとAPI連携し日々開示されるリリースを収集しており、2018年以降のデータを格納しております。会員登録(無料)を頂くことで詳細検索・データ取得が可能となりますので、統計調査や最新リリースの把握等にご活用ください。

また、ククレブ総合研究所では上場企業の経営動向調査として、M&A調査の他、中期経営計画で取り上げられるワードの増減率に着目したホットワードトレンド調査を行っています。2024年の最新中期経営計画では資本効率向上・企業価値向上が本格的トレンドとなってきた状況がみてとれますので当該レポートも是非ご注目ください。

【速報】2024年最新中期経営計画におけるホットワードは? ー 中計開示企業の1/3が新中期経営計画を公表!激動のビジネス環境における話題のホットワードは? ー

 

免責事項

※当レポートに掲載した図表は企業の開示資料において固定資産の売却/譲渡に関するリリース文書をもとに、ククレブ総合研究所にて集計しております。

※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではございません。また、本内容は現時点での判断を示したに過ぎず、データ及び表現などの欠落、誤謬などにつきましては責任を負いかねますのでご了承ください。当レポートのいかなる部分もその権利はククレブ・アドバイザーズ株式会社及びククレブ・マーケティング株式会社に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、無断で複製または転送などを行わないようお願いします。

 

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
不動産鑑定士
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超え、CRE戦略の立案から実行までを得意としている。
2019年9月に不動産テックを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。