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【速報】2024年最新中期経営計画におけるホットワードは? ー 中計開示企業の1/3が新中期経営計画を公表!激動のビジネス環境における話題のホットワードは? ー

ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、多くの3月決算企業が決算発表と同時に新中期経営計画(中計)の公表を行うタイミングで、毎年恒例の“CCReB GATEWAY”のホットワード分析機能を利用し2024年度の経営トレンドについて考察を行った。

※2024年1月1日から本レポート執筆時点(6月1日)までの全上場企業における中計の公表件数は約700件程度であり、毎年ほぼこの時点でその年の中計の大半がアップデートされることから、速報性の観点からこの時点で分析を行った。なお、本レポートにおける中計の抽出条件は、当該ホットワードの言及企業数の昨年対比の比較(企業数増減率)にて行った。

2024年の中計ホットワード(TOP100)

昨年の同時期のホットワードとしては「物価高騰」「資産入替」などのワードが昨対比で急上昇してきたが、すでに物価高騰は完全にトレンド化し上昇率としては頭打ちとなったことから、ホットワードTOP100から姿を消し、2024年の速報ホットワードとして、「人材の活躍推進」「工場拡張」「ROE水準」「自己株式の取得」などのワードが昨対比で急上昇トレンドとして確認できた。以下詳しく見ていくものとする。

昨年のトレンドを見たい方はこちら

2023年最新中期経営計画ホットワードからみる企業経営トレンドの考察

 

人材の活躍推進がトレンドワードに急上昇

「人材の活躍推進」が企業数増加率でトップに。

これまでも人材系のワードは各種ホットワードとなっていたが、多様性向上(鉄鋼・株式会社神戸製鋼所)や、挑戦する組織風土の醸成(食料品・日本ハム株式会社)などの文脈の中で、「人材の活躍推進」が多く謳われており、社会の価値観や働き方が大きく変革する中で多様な社員が活躍できる場を各社強化していくことが2024年のトレンドとなっている模様である。

人事戦略のトレンドを確認したい方はこちら

中期経営計画における人事戦略の変遷分析

 

工場拡張・工場投資は国内・海外ともに

「工場拡張」「工場投資」がホットワードとして急上昇した。

円安トレンドが定着しつつある昨今、製造業の国内機能強化の動きも徐々に本格化しており、岩手県の工場拡張(電気機器・TDK株式会社)、先端医療機器の成長に向けた工場拡張(機械・住友重機械工業株式会社)など、国内の製造拠点の拡張を経営戦略として掲げる企業がある一方、グローバルビジネスの収益性向上として海外拠点の工場拡張(機械・株式会社ダイフク、電気機器・株式会社小糸製作所、化学・サカタインクス株式会社)など、円安基調の中でも、そもそもグローバル展開による収益性の向上を目指す企業での積極的な工場拡張戦略が確認できた。

工場拡張はCRE戦略においてもトレンドに

2023年度上場企業による企業不動産(CRE)売買動向に関する分析

 

資本効率向上・企業価値向上が本格的トレンドへ

「ROE水準」「自己株式の取得」「企業価値の創出」などの資本効率を意識した経営における経営戦略ワードが昨対比で急上昇した。

このトレンドに関しては、2023年3月の東京証券取引所(東証)の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」における各上場企業への要請が強く影響を与えており、財務戦略として「資本効率のさらなる向上」を掲げる企業が数多く出現した。具体的には、ROE水準を目標設定数値として掲げる企業がほとんどであり、水準としては、業界によりまちまちではあるが、ROE10%以上の維持(卸売業・稲畑産業株式会社)など、具体的な数字を目標として意識した経営戦略が目立っている。また、資本効率の向上のためには、ROEの向上に加え、「自己株式の取得」による株主還元の強化も必要であり、ROEの目標設定と同様に急上昇のホットワードとして確認できた。

2023年の東証の要請が徐々に浸透し2024年前半でトレンドワードとして急上昇するという分かり易い形ではあるが、激変する経営環境を象徴するホットワードと言える。

資本効率に関する東証要請後の企業の動きについてはこちら

【資本効率向上】東京証券取引所の要請後における上場企業の経営戦略について

 

その他注目のホットワード

その他注目のホットワードとして「ネイチャーポジティブ」が急上昇した。

ネイチャーポジティブとは日本語訳で「自然再興」といい、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことを指します(環境省HPより)。

このホットワードの背景には、2023年2月28日の第一回J-GBF総会における「J-GBFネイチャーポジティブ宣言」の発表の影響があるものと思料され、これをいち早く経営方針に取り込んだ企業としては、生物多様性の保全(化学・富士フィルムホールディングス株式会社)、ネイチャーポジティブの実現・深化(建設業・大成建設株式会社)などメーカやゼネコンのみならず、経営理念のミッションとしてネイチャーポジティブ宣言(銀行業・株式会社東邦銀行)など、金融機関も経営戦略に取り組むなど、今後注目のホットワードである。

J-GBFネイチャーポジティブ宣言

ネイチャーポジティブに関して詳しく知りたい方はこちら

ネイチャーポジティブとは?推進の背景や経済効果、企業に求められることや取り組むメリットを詳しく解説

なお、今回の企業数増減率ではTOP100にはラインクインしなかったものの、ククレブ総合研究所として注目のホットワードとして、「空飛ぶクルマ」なども新規に出現してきており、今後さらに増加率が上昇するのか、トレンドに注目していきたい。

 

最後に

以上、ククレブ総合研究所では本年もこの時期に2024年のホットワードを速報としてお伝えした。世の中の流れがわかるB2Bポータルサイト”CCReB GATEWAY“もリリースから2年以上が経過し、会員登録数も2000人を超えている。

日々企業が開示する、中計や有価証券報告書(有報)の自動解析からホットワードを可視化しているが、ストックしている中計や有報は2018年から継続して解析を行っていることから、実際に会員登録(無料)し、利用頂くとトレンドの推移とその変化の早さが実感できるため、実際に利用頂き、本レポートに記載のホットワードの言及企業の中計などを効率的に確認頂くことで、ビジネスパーソンの皆様の一助になれば幸いです。

CCReB GATEWAYを実際に体験したい方はこちら
ホットワード分析 | CCReB GATEWAY(ククレブ・ゲートウェイ) (ccreb-gateway.jp)

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免責事項

※当レポートに掲載した図表は企業の開示資料において固定資産の売却/譲渡に関するリリース文書をもとに、ククレブ総合研究所にて集計しております。

※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではございません。また、本内容は現時点での判断を示したに過ぎず、データ及び表現などの欠落、誤謬などにつきましては責任を負いかねますのでご了承ください。当レポートのいかなる部分もその権利はククレブ・アドバイザーズ株式会社及びククレブ・マーケティング株式会社に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、無断で複製または転送などを行わないようお願いします。

 

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
不動産鑑定士
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超え、CRE戦略の立案から実行までを得意としている。
2019年9月に不動産テックを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。