【2026年版】製造業の課題とは?現状と解決策、先進企業の取り組み事例を解説
日本の製造業は、深刻な人材不足や生産性向上、DXの推進といった課題を抱えており、大きな転換期を迎えています。本記事では、製造業の現状を整理した上で、上場企業の中期経営計画を分析し課題と2026年の重要テーマを解説。今後の競争力強化に向けたヒントを探ります。記事後半では、先進企業の取り組み事例もご紹介します。
・製造業の課題と重要キーワード
・製造業が競争力を強化するための3つのポイント
・先進企業の取り組み事例
※本記事は、製造業に特化して解説しています。全業界の動向はこちらの記事をご参照ください。
※物流業界についてはこちらの記事をご参照ください。
製造業の現状
製造業はGDPの約2割を占める、日本経済を支える中心的な産業です。

図表1:業種別GDP構成比
(出所)経済産業省「日本ものづくり白書2025」をもとに筆者作成
本章では、製造業の現状を主要指標から読み解いていきます。
大企業製造業・中小企業製造業の景況感
まずは、大企業製造業・中小企業製造業の景況感を見ていきます。
日本銀行の「日銀短観(2025年12月調査)」によると、業況判断DI(景況感を示す指標)は大企業製造業で前回から1ポイント改善し、15ポイントとなりました。3四半期連続の改善です。
先行きについては、15ポイントと横ばいが見込まれています。地政学リスクの高まりなど懸念はあるものの、関税政策による影響が一定程度見通せるようになったことや、円安が下支え要因となっているようです。
| 2025年9月調査 | 2025年12月調査 | ||||
| 最近 | 先行き | 最近 | 先行き | ||
| 製造業 | (製造業全体) | 14 | 12 | 15 | 15 |
| 繊維 | 4 | 11 | 4 | 23 | |
| 紙・パルプ | 26 | 26 | 34 | 23 | |
| 化学 | 15 | 13 | 22 | 22 | |
| 石油・石炭 | 0 | 25 | 33 | 25 | |
| 土石 | 30 | 28 | 20 | 20 | |
| 鉄鋼 | -14 | -14 | -11 | -11 | |
| 非鉄金属 | 16 | 13 | 4 | 7 | |
| 食料品 | 6 | 9 | 9 | 7 | |
| 金属製品 | 0 | 3 | 8 | 9 | |
| はん用機械 | 27 | 25 | 27 | 29 | |
| 生産用機械 | 17 | 14 | 17 | 18 | |
| 業務用機械 | 22 | 22 | 13 | 16 | |
| 電気機械 | 16 | 9 | 17 | 11 | |
| 自動車 | 10 | 8 | 9 | 10 | |
(%ポイント)
図表2:大企業の状況判断DI
(出所)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より筆者作成
中小企業の製造業においては、前回から5ポイント改善の6ポイントとなりました。人手不足、コスト高など課題は多いものの、関税政策の影響後退や景気の持ち直しが中小企業にも浸透しつつあるようです。
先行きは4ポイント悪化の2ポイントと、海外景気やコスト動向への懸念から慎重な見通しとなっています。
| 2025年9月調査 | 2025年12月調査 | |||
| 最近 | 先行き | 最近 | 先行き | |
| 製造業 | 1 | -1 | 6 | 2 |
(%ポイント)
図表3:中小企業の状況判断DI
(出所)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より筆者作成
製造業における営業利益の推移
次に、製造業の営業利益の推移について見てみましょう。

図表4:製造業の営業利益の推移
(出所)経済産業省「日本ものづくり白書2025」をもとに筆者作成
日本の製造業の営業利益は、2021年以降回復・増加傾向にあります。2024年は前年の約17.9兆円から21.1兆円へと増加しました。価格転嫁の進展や為替の影響もあり、コスト上昇圧力が続く中でも一定の収益水準を確保しています。
以上の指標から、製造業の現状は景況感・収益面では底堅さを維持していることが分かります。
製造業の課題 – 6つの重要テーマ

製造業を取り巻く外部環境とそこからくる課題には、どのようなものがあるのでしょうか。
本章では、当サイトのコンテンツ「ホットワード分析」機能を用いて、製造業16業種*各社が発行する中期経営計画で言及率が増えているキーワードを分析。各社が共通して取り組んでいる、6つの重要テーマを解説します。
*:食料品、繊維製品、パルプ・紙、化学、医薬品、石油・石炭製品、ゴム製品、ガラス・土石製品、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器、その他製品

「ホットワード分析」機能を用いて、製造関連企業の2025年中期経営計画書を対象に前年比企業数増減率にてキーワードを抽出。画像は金属製品関連企業を対象としたもの。
①DX・データ活用による生産性向上
人手不足や業務の複雑化により、従来の属人的な業務運営では生産性の維持が困難になっています。加えて、需要変動の拡大や原材料・エネルギー・物流コストの上昇により、限られたリソースで付加価値を最大化することが求められています。自動化・省人化による生産性向上と業務効率化は喫緊の経営課題です。
AI・IoT技術などを活用し、製造プロセスの自動化・最適化・効率化を実現する次世代型の工場、スマートファクトリーなども注目されています。
デジタル化、DX戦略、投資DX、RPA、AI活用、AI技術、生成AI、生産性向上、生産性改善、生産効率、効率の向上、自動化、省人化、機械学習、データ活用、データ分析、データベース、システム開発、業務効率 など
②サプライチェーン再構築によるレジリエンス強化
地政学リスクの高まりや、物流費・原材料価格の高騰により、代替調達や生産切り替えができない従来型のサプライチェーンの脆弱性が課題となっています。近年は、コスト効率だけでなく、調達先・生産拠点の分散、在庫の適正確保、供給状況の可視化を重視した持続可能なサプライチェーンの再構築が求められています。
例えば食品業界では、新技術やビッグデータを利活用したフードサプライチェーン全体の可視化・効率化が進んでいます。各社で生産性・品質向上、需給予測の精度改善の効果が見られているとのことです。
サプライチェーン最適化についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
サプライチェーン全体、サプライチェーンの構築、持続可能なサプライチェーン、安定供給、供給体制の構築、物流センター、地政学リスク、不確実性、BCP、事業環境変化 など
③共同研究・技術提携による研究開発強化
世界的な競争激化、GXなど技術転換のスピードの速さから、自社単独での技術開発が困難になりつつあります。そのため、今後は産学官連携や共同研究・技術提携が競争力の源泉となります。
研究開発、研究開発投資、研究開発費、開発推進、新技術、技術の高度化、開発力、開発プロセス、コア技術、独自技術、技術獲得、共同研究、技術提携
④新製品・新事業創出による高付加価値化
原材料高騰や人材不足といった厳しい環境下でも競争優位を確保するには、独自技術やサービスで価格競争からの脱却と利益率を向上させることが求められます。付加価値の高い製品・サービスや新事業の創出が、持続可能な経営基盤の構築へとつながります。
新製品、新技術、新素材、新領域、新事業、事業創出、高付加価値化、付加価値製品、差別化製品、事業の柱、成長エンジン、価値創造 など
⑤脱炭素・カーボンニュートラルの実現などの環境対応
脱炭素や環境規制の強化により、環境対応は競争力の源泉となりつつあります。例えば国内鉄鋼メーカーでは、カーボンニュートラルの達成に向けて、鉄鉱石を直接還元する直接還元鉄や石炭の代わりに水素で鉄鉱石を還元する高炉水素製鉄など、脱炭素技術の開発を進めています。
脱炭素、GX、低炭素、CO2削減、CO2排出量、カーボンニュートラル、2050年カーボンニュートラル、環境負荷低減、省エネルギー、省エネ設備、サーキュラーエコノミー、生物多様性、一部製品GX、自然環境 など
⑥技術継承問題と人的資本経営による組織基盤強化
人材不足の深刻化や技術者の高齢化が進む中、人的資本経営の重要性が一段と高まっています。各社は、熟練技術者の知見を引き継ぐための技術継承やナレッジ活用に注力しています。また、ウェルビーイングや健康経営の推進、ダイバーシティの尊重、女性活躍推進など、持続的な成長を支える人事戦略が求められています。
人的資本、人財投資、人財育成、育成強化、ウェルビーイング、働きがいのある職場、健康経営、多様性、ダイバーシティ、女性管理職比率、技術継承、ナレッジ活用、女性活躍推進 など
製造業が競争力を強化するための3つのポイント

製造業を取り巻く課題に対して、2026年以降企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。
経済産業省「2025年版 ものづくり白書」によると、製造業が競争力強化において考慮すべき要素として次の3つを挙げています。
- 産業競争力の向上
- 脱炭素(カーボンニュートラルの実現)
- 経済安全保障(国際的な供給網の強靱化など)
それぞれ詳しく解説していきます。
①産業競争力の向上
産業競争力向上のカギとなるのは、DXです。
経済産業省によると、企業単位のデジタル化は一定の成果が出ている一方で、ビジネスモデルの変革等、高度かつ広範な領域での成果創出は限定的と指摘されています。成果創出には、経営層のより一層のコミットメントが求められます。
また、産業横断での協力・連携により事業効率を向上し、製品・サービスの付加価値を高める取り組みも求められます。労働力不足が深刻化する中、ロボット・AIの開発・活用の推進による生産性や競争力向上も重要です。
②脱炭素(カーボンニュートラルの実現)
日本の製造業は、国内部門別CO2排出量の36%を占めています。うち7割は排出削減が困難なHtA産業です。製造業が競争力を強化するためには、エネルギーの安定供給と経済成長、脱炭素の同時実現を目指す必要があります。
これを受けて、経済産業省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定し、構造転換を推進。技術開発(グリーンイノベーション基金)や省エネ設備投資、税制優遇、GXリーグを通じた排出量取引など、製造業の脱炭素化を包括的に支援しています。
③経済安全保障(国際的な供給網の強靱化など)
製造業は、グローバルサプライチェーンを構築し、国内外の市場で原材料・部品・製品が流通するそのビジネスモデルから、経済安全保障的視点が重要な分野です。
現在、グローバルサプライチェーンにおける地政学リスクは高い状況にあります。加えて、生成AIの急速な進展や新興企業の台頭を始め、技術革新や市場競争が多様な分野で進んでいます。
このような状況を受けて、経済産業省でも民間ベストプラクティス集などを公表しており、当該資料では好事例が①経済安全保障上の課題に対応するための組織体制の構築、②技術流出の対策、③サプライチェーンリスクへの対策の3つに分類されています。
参照:経済安全保障上の課題への対応 (民間ベストプラクティス集) ―第2.0版―|経済産業省
参照:2025年版 ものづくり白書|経済産業省
参照:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略|経済産業省
【2026年最新版】製造業の重要テーマに取り組んでいる先進企業事例
オイル・ガス業界:ENEOS、出光興産、コスモエネルギーHD
オイル・ガス業界の大手企業では、脱炭素化のニーズに応えるべく、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の国内供給量増加に向けた取り組みを進めています。
ENEOS、出光興産、コスモエネルギーHDは、GX経済移行債を活用した補助金を取得しており、コスモエネルギーは2025年5月にSAFをJAL旅客便に初供給しています。今後も供給計画の達成に向けて、商業化を加速させていく見通しです。
2026年1月28日に行われた持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会では、更なるSAF 導入促進策検討タスクフォース(政府による追加のSAF導入支援策)中間取りまとめが行われており、産官学による連携が進展していくことが想定されます。
参照:持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会|経済産業省
参照:2025年の回顧と2026年の展望|三井住友銀行
化学業界:三菱ケミカルグループ、住友化学、出光興産、三井化学
大手総合化学メーカーは、事業ポートフォリオの見直しによる得意領域への注力に取り組んでいます。環境配慮型製品や半導体関連材料、ヘルスケア等の得意領域に経営資源を集中させ、企業競争力の確保を目指しています。
例えば、三菱ケミカルグループは2025年2月に、製薬子会社である田辺三菱製薬を米ファンドのベインキャピタルに譲渡する契約を締結しています。また、住友化学は同年5月に先端半導体に対応するため韓国にクリーンルームの新設・検証ラインの拡充を発表しました。
同年9月には、三井化学と出光興産の合弁会社であるプライムポリマーのポリオレフィン事業と、住友化学のポリプロピレン事業等を統合することについて基本合意がなされています。
このような事業ポートフォリオの見直しに向けた取り組みは、2026年も継続すると見込まれています。
製造業の今後は生産性向上×脱炭素×経済安全保障が成長のカギに
今回は、本記事では、製造業の現状と課題、2026年の重要テーマ、製造業が競争力を強化するためのポイントや、先進企業の取り組み事例を解説しました。
厳しい環境下においても製造業が競争力を高めるためには、情勢変化へ柔軟に対応しながらも、脱炭素や経済安全保障を複合的に考慮した中長期的な成長投資を行うことが重要となりそうです。
※本記事では、製造業に特化して最新動向を解説しました。全業界の動向や、他業界の動向は以下の記事をご参照ください。

監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立し、2024年11月に創業から5年で東証グロース市場に上場。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。


