【速報】2026年 最新中期経営計画から見る注目の「経営ホットワード」は?
昨年の「株主還元」「海外M&A」などのトレンドに続き、2026年は「フィジカルAI」「中東情勢」「経営への転換」「競争優位」といったワードがトレンドとして確認できた。
※「2025年最新中期経営計画におけるホットワード」はこちらを参照ください。
- 2026年の最新中期経営計画で上昇した「経営ホットワード」
- フィジカルAI・中東情勢・経営への転換・競争優位—注目4ワードで読む取り巻く環境
- 自社の中期経営計画を策定・見直す際のヒントとなる視点
ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、多くの3月決算企業が新たな中期経営計画を公表するこの時期に、毎年恒例の当サイトコンテンツ「ホットワード分析」を用いて2026年度の経営トレンドの考察を行った。
2026年1月1日から本レポート執筆時点(7月13日)までに新中計を公表した上場企業は約670社。中計を公表する企業の顔ぶれは年ごとに異なるが、各社の中計に現れる言及ワードを昨年対比(企業数増減率)で抽出し、上位100ワードを類語ごとにカテゴリー化したところ、いま経営者の関心が集中する4つのテーマが浮かび上がった。
以下、詳しくみていくものとする。

出所:CCReB GATEWAY ホットワード分析(2026年/中期経営計画/企業数増減率)
2026年の中計ホットワード(TOP100)
個々のワードは分散しているが、意味の近い語を束ねると経営テーマの「塊」が見えてくる。
(例)フィジカルAI・AI戦略・AI普及・AI人材・データセンター関連は「AI経営戦略の推進」として統合。
この方針で全100ワードを13カテゴリーに整理した。(単一テーマに括りきれない27ワードは「その他」に集約)
カテゴリー別 総言及数ランキング

総言及数(登場数)が多い上位4テーマについて、各社の調査データや実際の中計事例をもとに言及数が増加した背景を探る。
AI経営戦略の推進

生成AIが日々進化を遂げる中で、生成AIの活用方針を定める日本企業は42.7%(2023年度)→49.7%(2024年度)に上昇し※1、日本企業のDX・生成AI活用は「内向き・部分最適」から「外向き・全体最適」へと転換しつつある※2。
AI投資の重心が「モデル性能・GPU」から、現実世界で動く「フィジカルAI」(データ取得・運用設計・システム統合)へとシフトしている。
フィジカルAIとは、身体を持ち、実世界の中で行動する人工知能(AI)のことである。ロボットやヒューマノイドだけでなく、自動運転車や工場内で稼働する産業機械もその一例にあたる※3。
本ワードは、2025年後半から株式市場でも主役級テーマに浮上した。政府もAIを国家戦略の中核に位置づけ、2026年7月には「人工知能基本計画(第2期)」を閣議決定するなど社会実装を後押ししており※4、経営計画でも流行語から「戦略の柱」へと格上げされつつある。
結果として、フィジカルAI単独で117件/27社、AI関連8ワード合計で242件と全カテゴリーにおいて突出しており、AIの課題に対する各社の意識の「深さ」がうかがえる。
※1 総務省「令和7年版 情報通信白書-企業におけるAI利用の現状-」
※2 IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)「DX動向2025」
※3 産業技術総合研究所(産総研)「フィジカルAIとは?」(2026年5月)
※4 内閣府「AI戦略」/人工知能基本計画(第2期、2026年7月閣議決定)
地政学・マクロ不確実性への対応

中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の高騰・供給不安が「経営にマイナス影響」と回答した企業は9割超。燃料・原油由来の原材料コスト増が影響の上位を占めた。
そもそも日本は、原油輸入に占める中東地域の割合(中東依存度)が95.2%(2022年度)と極めて高く、米国(11.8%)や欧州OECD(16.5%)を大きく上回る。中東情勢の緊迫が、他国以上に国内企業の経営を直撃しやすい構造的な背景がある。
「中東情勢」単独で83件/49社と地政学ワードの中核となっている。インフレ・金融危機・グローバルリスク等とあわせて139件という結果となった。
注目すべきは言及企業数が95社と主要カテゴリー中で最多である点である。AIが「深さ」なら、地政学リスクは「広さ」と捉えられる。ほぼ全業種において警戒感を映し出している。
参照:中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート|株式会社 帝国データバンク[TDB]
参照:資源エネルギー庁「エネルギー白書2024」
事業ポートフォリオ変革・経営の組み換え

東証のPBR改善要請とROIC経営の広がりを背景に、事業ポートフォリオ・マネジメントと資本政策の見直しが中計の定番論点となりつつある。
東京証券取引所の調査データによると、経営資源の配分に関する課題認識について企業と投資家の間にギャップが存在すると言及している。
「事業ポートフォリオ・経営資源配分の見直し」の項目において、「企業の実施事項」28%に対し、「投資家から見た課題認識」73%と45ポイントの差がある。投資家が重要課題と認識しているのに対し、企業の実施が追いついていないことを示している。
この要請は2023年3月の開始から4年目を迎え、プライム市場で約9割、スタンダード市場で約5割の企業が対応(開示)を進めている。2026年4月28日のアップデートでは、事業ポートフォリオを含む経営資源の適切な配分と、資本配分方針の開示が一段と重視された。
単に所有するのではなく、より高度な経営が求められ経営への転換をせざるを得ない状況となっていることが読み解ける。
参照:日本取引所グループ(JPX)「資本コストや株価を意識した経営」に関する要請のアップデート(2026年4月28日)
競争優位・価値創出

2026年の中期経営計画において「競争優位」や「価値創出」を旗印に掲げる企業が増加していることが分かる。
こうした潮流の土台には、経済産業省が推進する「人的資本経営」(人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営)がある。後述の日本ハムの中計も「人的資本経営」を掲げており、「人への投資」を差別化・価値創出の源泉と位置づける動きが広がっている。
以下に例を挙げる。
・エスイー(3423):新中期経営計画の策定に関するお知らせ(2026年6月1日公表)
~新規事業③道路レジリエンス統合プラットフォーム事業(概要)~
ゼネコン・コンサルに属さない独立系の立場を活かし、中立的ポジションを競争優位の源泉とする
・児玉化学工業(4222):新中期経営計画策定に関するお知らせ(2026年5月14日公表)
当社は、「樹脂技術と金属技術の融合による唯一無二の競争優位を確立して成長を加速させることを目指す」という新たな経営方針
・ぐるなび(2440):中期経営計画の策定に関するお知らせ(2026年5月13日公表)
持続的な成長を支える『強固な顧客基盤』、新たな価値創出の源泉となる『オリジナルな情報資産』を拡充
・日本ハム(2282):2026-28年度 中期経営計画(2026年5月13日公表)
社員の挑戦を事業成長へつなげ、統合シナジーの最大化と新たな価値創出を実現する人的資本経営を推進
結果として、7ワードで97件/69社となった。
これまでの企業価値向上の系譜が、今年は「独自の強み・差別化=競争優位の源泉」という文脈へと具体化しているとうかがえる。
参照:経済産業省「人的資本経営」/「人材版伊藤レポート2.0」
まとめ
2026年の中計ホットワードは、「AI(フィジカルAI)」という攻めの成長テーマと、「地政学・マクロ不確実性」という守りのリスクテーマが同時に台頭する兆候が見えたのが特徴である。
その土台には、事業ポートフォリオの組み換えと競争優位・価値創出という、企業価値向上の系譜が引き続き顕在する。
攻めと守りが交錯する、激動の経営環境を映すラインナップと言えるだろう。
※本レポートはCCReB GATEWAYのホットワード分析機能を用いた独自集計・分析に基づき作成しています。掲載内容は企業の開示動向やトレンドを把握することを目的としており、その正確性・完全性を保証するものではありません。

監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立し、2024年11月に創業から5年で東証グロース市場に上場。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。

