総研レポート・分析

人的資本とは?2023年のホットワードを先取り「人的資本」「リスキリング」AIが大予測!

~登場数昨対比7倍の急上昇ワードから今後の企業戦略トレンドを占う~

 

ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、日々企業の開示資料から注目のホットワードの分析を行っている。
本日はその中から、昨対比で急激に登場数が伸びている人材系ワードを紹介する。

 

CCReB GATEWAYワードクラウドにおけるホットワードTOP100

※2022年有価証券報告書(事業方針)におけるホットワードTOP100(9月15日時点)

世の中のビジネストレンドを発信する~CCReB GATEWAY~では、日々企業の開示資料を解析し、ワードクラウド形式にてホットワードを可視化している。ホットワードの仕組みは、文字が大きいほど数多くの開示資料に当該ワードが出現していることを意味しているが、その中で昨年比において急激に伸びているワードがある。

それが、

「人的資本」「リスキリング」

である。以下、この2つのワードをさらにブレークダウンしていく。

 

人的資本などの非財務情報の充実が今後ますます重要に

2022年8月30日、内閣官房の非財務情報可視化研究所より上場企業向け人的資本に関する開示ガイドラインとなる「人的資本可視化指針(以下「指針」)」が発表された。また、8月31日には金融庁から「2022事務年度金融行政方針(以下「方針」)」が発表され、有価証券報告書において人的資本情報開示を義務付ける方針が示された。

指針の公表前からオピニオンを募っていた背景もあり、2022年に入って「人的資本」ワードの登場数、企業数ともに大幅な増加傾向が見られる(図1)。

≪図1≫「人的資本」ワードの登場数
■中期経営計画書

※CCReB GATEWAYホットワード分析機能を活用し、ククレブ総研にて作成(以下同様)。
※登場数とは当該書類における単純な登場数の合計であり、企業数とは当該ワードを述べた企業の数である。例えば1社が当該ワードを書類内で2回述べた場合には、登場数は2、企業数は1とカウントしている(以下同様)。
※出典なき無断転載を禁じます。

■有価証券報告書(事業方針)

 

そもそも、人的資本とは、指針によれば、「人材が、教育や研修、日々の業務等を通じて自己の能力や経験、意欲を向上・蓄積することで付加価値創造に資する存在であり、事業環境の変化、経営戦略の転換にともない内外から登用・確保するものであることなど、価値を創造する源泉である「資本」としての性質を有することに着目した表現」である。

簡単に言えば、人材を「資本」をとして捉えることを指すが、これまでの日本企業は「人材」=「コスト」という考えのもと、人件費の削減に主眼を置き、人材の育成や、人材交流など人材に関する施策を経営戦略として捉えることが少なかったと言える。
実際に、先般の当社の調査でも、ここ5年間における企業の中期経営計画における人材に関する企業の方針については、大きなトレンドの変化はなく、人材の育成に課題を持ちながらも、大きな変化を促すようなムーブメントは見られなかったのが実際のようである。

中期経営計画における人事戦略の変遷分析

このような状況下、コロナ感染症の流行による働き方や価値観の変化、ウクライナ問題の長期化によるサプライチェーンの混乱、資源高に起因する物価高、足元の急激な円安など、企業を取り巻く環境はこれまでに経験したことのないスピードで変化をしている。今回内閣官房から公表された指針や、金融庁による方針は、上場企業に対し、開示面を含む経営戦略の変化のきっかけとなることは確実であり、その意味で今後有価証券報告書では、「人材育成方針」「社内環境整備方針」において企業の「人的資本政策」がより求められ、有価証券と整合的かつ補完的な形で任意開示(総合報告書や長期ビジョン、中期経営計画、サステナビリティレポート等)での開示も増加することが予測される。

なお、こうした動きがある前から、人材を資本と捉え、経営方針として打ち出していた企業は、日本ハム株式会社(食料品)、株式会社不動テトラ(建設業)、株式会社アドバンテスト(電気機器)などであった。

 

リスキリングが中計、有報に登場したのは2021年から

人的資本経営を実践する中で、最も重要なのが「リスキリング」である。リスキリングとは、今後の業務において必要となるスキルや技術を「学び直す」ことを言うが、これは全世界的な動きであり、2020年に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)において、人材を育成するための「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」が発表され、「2030年までに10億人のリスキル」を行うことが提唱された。

これを受けて、日本企業における開示資料においても、2021年から「リスキリング」を経営方針に掲げる企業が現れた(図2)。

≪図2≫「リスキリング」ワードの登場数
■中期経営計画書

■有価証券報告書

 

企業においては、社員研修は当然のことながら継続して行っているものと思料するが、単に社員が学び直すことを「リスキリング」と言うのではなく、「リスキリング」とは、DX(デジタルトランスフォーメーション)など、ここ数年で大きく変化を遂げているデジタル化の流れにおいて、これまでの知識のままでは全く太刀打ちができない社会となっている中で、その知識を本当学び、活用できる人材を育成することを指していることから、今後各企業において、「リスキリング」への対応が人的資本経営において確実に求められることが予測される。

なお、2021年においていち早く中期経営計画において「リスキリング」を経営方針に取り入れたのは、テクノプロ・ホールディングス株式会社(サービス業)、東急建設株式会社(建設業)、ケイティケイ株式会社(卸売業)、株式会社東光高岳(電気機器)の4社であった。

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以上、ククレブ総研では、日々の開示資料の分析から、これからさらに「ホットワード」になるであろう、急激な増加率を示した人材系ワードを紹介した。これらのワードは確実に来年以降のトレンドワードとして、CCReB GATEWAYのホットワードTOP100の上位にランキングされていくものと予測する。

なお、今回の分析に用いた「ホットワード分析」機能はCCReB GATEWAYに会員登録(無料)頂く事で個別企業、業種、上場区分ごとにホットワードを抽出、可視化することが可能になります。操作方法が不明な場合はご利用ガイドに動画を掲載しておりますのでご確認ください。

≪参考資料≫

人的資本可視化指針 非財務情報可視化研究会

https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf

2022事務年度金融行政方針について 金融庁

https://www.fsa.go.jp/news/r4/20220831/20220831.html

 

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