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フェムテックとは?市場規模や女性の活躍を助ける商品・サービス、企業の取り組み事例を紹介!

フェムテックとは、テクノロジーによって女性のライフステージにおける生理や妊娠といった健康課題を解決する商品・サービスのことです。

テクノロジーの発達に伴い女性が抱える健康課題を解決する商品やサービスは年々増加傾向にあり、フェムテックの市場規模は拡大しています。

本記事では、フェムテックが注目を集める背景や女性が抱える健康課題を解決するための商品・サービスを開発する企業を紹介します。

また、福利厚生にフェムテックの概念を導入する企業の事例についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

フェムテックとは?

フェムテックとは?

フェムテックとは、女性(Female)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、女性が抱える健康課題を解決する商品やサービスのことを指します。

近年、テクノロジーの発達に伴い女性の健康課題を解決するための様々な商品やサービスが作られています。

多くの企業がフェムテックを用いることで、女性の健康課題の改善や働き方の見直しを進めており、女性の社会進出のサポートに取り組んでいます。

フェムテックについてより詳しく理解するために、女性がライフステージで抱える健康課題やフェムテックの役割、注目を集める背景を確認しましょう。

女性のライフステージにおける6つの健康課題とフェムテックの役割

フェムテックについての理解を深めるためには、女性のライフステージにおける健康課題を知ることが重要です。

経済産業省の「働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に与える効果と課題に関する調査報告書」の中では、女性の健康課題の分野を以下の6つに整理しています。

  • 月経
  • 妊娠・不妊
  • 産後ケア
  • 更年期
  • 婦人科系疾患
  • セクシャルウェルネス

女性は、月経や更年期による体調不良やホルモンバランスの崩れから起こるメンタル不調など様々な健康課題を抱える場合もあります。

このような健康課題は女性が社会で活躍する機会を阻害する可能性があり、フェムテックは女性が抱える健康課題を解決し社会での活躍をサポートすることが役割です。

出典:経済産業省「働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に 与える効果と課題に関する調査 報告書

フェムテックが注目を集める背景

日本では2016年に女性活躍推進法が施行され、労働者数が301人以上の事業所には、女性が企業で活躍できるように行動計画を策定・公表することが義務付けられました。

また、2022年4月には女性活躍推進法が改定され労働者数101〜300人の事業所も同様の義務が付け加えられました。

このように、法律面においても女性の働き方が見直されている昨今、以下の2つの背景からも女性の働き方が再検討されています。

  • 女性の健康課題による経済損失
  • テクノロジーの進歩

それぞれ確認します。

女性の健康課題による経済損失

日本では、女性が抱える健康課題に対応できなければ大きな経済損失につながるという考えがあります。

経済産業省が発表した「健康経営における女性の健康の取り組みについて」の中では、女性特有の月経随伴症状(PMS)による経済損失は年間約5000億円に及ぶと試算されています。

健康経営を通じて女性が抱える健康課題に対応した働きやすい社会環境の整備を進めることで、女性の活躍による企業の生産性向上が期待できます。

女性が抱える健康課題を解決して企業や日本社会の経済損失を防ぐためにも、フェムテックは重要な役割を果たします。

出典:経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて

テクノロジーの進歩

フェムテックが注目を集める背景には、テクノロジーの進歩も影響しています。

昨今のIT技術の発達に伴い、女性の健康課題に関するデータが広く収集できるようになりました。

また、インターネットを介したオンライン診療のような遠隔サービスの発展により、病気や体調不良に対する対策も充実しています。

このようなテクノロジーの進歩が、女性の社会進出を促進させる一つの要素となっています。

フェムテックの市場規模

出典:矢野経済研究所「フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査を実施(2023年)

女性の活躍をサポートする法律や企業制度が整えられるなか、フェムテックの市場規模は年々拡大傾向にあります。

矢野経済研究所が行ったフェムテックの市場調査によると、フェムテックの市場規模は直近の2019年から年々拡大傾向にあり、今後もテクノロジーの発達に伴う市場拡大が予想されます。

女性の活躍を助けるフェムテックを開発する企業一覧

女性の活躍を助けるフェムテックを開発する企業一覧

日本では多くの企業がフェムテック市場に参入して、商品やサービスの開発を進めています。

日本でフェムテックに関連する事業を行う、代表的な企業を5社紹介します。

  • 株式会社エムティーアイ
  • 帝人株式会社
  • fermata株式会社
  • 株式会社エバーセンス
  • dely株式会社

それぞれの企業の特徴を確認します。

株式会社エムティーアイ

株式会社エムティーアイは、1996年に創業されたヘルスケア事業を幅広く手掛ける企業です。

株式会社エムティーアイは、日本のフェムテック分野の先駆けとして、2000年代初頭より女性が抱える健康課題に対するサービス開発を行ってきました。

株式会社エムティーアイでは、産婦人科向けのオンライン診療システムを開発することで、病院へ行かなくても気軽に健康相談ができるサービスを展開しています。

仕事でなかなか病院に通院することができない女性でも、隙間時間を利用して気軽に相談できるため利用が増えています。

帝人株式会社

帝人株式会社は1918年に創業されたヘルスケアやIT事業を展開する企業です。

帝人株式会社は、2021年に女性向けの善玉サプリメントの新ブランド「ミライト」を立ち上げ、女性の健康問題の改善にアプローチしています。

帝人株式会社は、女性のセルフケアに着目したフェムテック市場の開拓において、重要な役割を担っています。

fermata株式会社

fermata株式会社は、女性が抱える健康課題の解決につながるフェムテック製品の輸入販売、関連コンサルティング事業などを展開しています。

fermata株式会社のサービスである、「fermatastore(フェルマータストア)」は、世界初のフェムテック専門オンラインストアです。

「fermatastore」では、女性特有の健康課題を解決するための様々な商品が販売されています。

「fermatastore」を利用することで、日頃忙しく働く女性でも気軽にフェムテック商品を手にすることができます。

株式会社エバーセンス

株式会社エバーセンスは、妊娠中の女性を手助けするサービスを開発しています。

株式会社エバーセンスでは、女性が妊娠してから出産までのおよそ10ヶ月間に、妊婦へ適した情報を送り届ける「ninaru(ニナル)」と呼ばれるアプリを提供しています。

妊娠に関して様々な情報が掲載されているインターネットにおいて、どの情報が正しいかを判断するのは困難です。

「ninaru」を活用することで、自身で情報を選別しなくとも妊婦に役立つ有益な情報を簡単に入手できます。

dely株式会社

dely株式会社は、2014年に創業されたWebメディア運営を手がける企業です。

dely株式会社は女性の生活全般をサポートするために、女性向けメディア「TRILL(トリル)」を運営しています。

「TRILL」は月間利用者数が2500万を超えるメディアであり、「TRILL」を利用することでファッション・恋愛・結婚・お金・ライフスタイルなど、女性のライフスタイルに関するバラエティ豊かな情報を入手することができます。

福利厚生にフェムテックを導入する企業の事例

福利厚生にフェムテックを導入する企業の事例

本章では、社内の福利厚生にフェムテックを導入している企業の事例を紹介します。

他社の取り組み事例を確認することで、自社の女性社員が働きやすい環境を整備するための参考にしてください。

福利厚生にフェムテックを導入している代表的な企業は以下の3社です。

  • 小田急電鉄株式会社
  • 花王株式会社
  • 丸紅株式会社

それぞれ確認します。

事例①:小田急電鉄株式会社

小田急電鉄株式会社は、自社で働く女性社員の生活と仕事をサポートする取り組みを進めています。

鉄道業界は、男性社員の比率が高いため、女性ならではの悩みを相談しにくい環境であることが懸念されていました。

そのため、2018年9月に不妊治療・流産相談窓口である「ファミワン」、2018年12月には産婦人科のオンライン医療相談窓口「産婦人科オンライン」などを社内の福利厚生として導入しています。

小田急電鉄株式会社は、女性社員が気軽に相談しやすい環境を整備することで女性社員の働きやすい環境づくりに取り組んでいます。

事例②:花王株式会社

花王株式会社は、福利厚生として女性の働きやすさを追求した様々なサービスの導入に取り組んでいます。

その取り組みの一つとして、自社の女性社員が健康に関する悩みを気軽に相談できるように「女性の健康相談窓口」を導入しています。

「女性の健康相談窓口」はメールで相談することができるため、自身のプライバシーを守りながら健康や体調に関する悩みを相談することが可能です。

また、社内で女性のライフステージに応じた健康課題を積極的に発信することで、女性の健康課題に関する理解を深める取り組みを進めています。

事例③:丸紅株式会社

丸紅株式会社は、自社の女性社員が抱える健康課題を解消するために株式会社カラダメディカが提供するオンライン診療システムを活用しています。

オンライン診療は仕事の隙間時間や休日に利用できるため、女性特有の健康課題に関して気軽に相談することが可能です。

オンライン診療で必要な費用は丸紅株式会社が負担しているため、女性は診療に必要な負担を減らすことができます。

企業がフェムテックに関する取り組みを行うメリット

企業がフェムテックに関する取り組みを行うメリット

企業がフェムテックに関する取り組みを行うことには、多くのメリットがあります。主なメリットは以下の2つです。

  • 企業の人手不足を解消できる
  • 新規事業を創出できる

それぞれ確認します。

メリット①:企業の人手不足を解消できる

フェムテックにより女性の健康課題を解決することで、長く働ける女性社員が増え、企業の人手不足が改善します。

女性はライフサイクルやその時々の健康課題に応じて働き方を見直すことが多いです。

企業が女性のライフサイクルに合わせた働き方の提案、健康課題に対するアプローチを行うことで、社内の貴重な人材が離れないよう取り組みが必要です。

特に地方の中小企業では人手不足が問題となっており、少しでも長く女性社員が働けるよう環境整備が重要です。

人手不足の解消について詳しく知りたい方は「企業が人手不足を解消するための10個の方法!成功事例とともに解決策を詳しく解説」を参考にしてください。

メリット②:新規事業を創出できる

フェムテックの市場規模はテクノロジーの発達に伴い年々拡大傾向にあります。

市場の拡大に合わせて、社内でもフェムテックに関する新規事業を立ち上げることで、新たな売上の創出につながります。

まだ市場が伸び切っていないフェムテック業界には参入の余地があるため、早くからフェムテックに関心を持つことが重要です。

フェムテックに対する経済産業省の取り組み

フェムテックに対する経済産業省の取り組み

経済産業省では女性の活躍をサポートするため、2021年に「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」を立ち上げています。

「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」は、女性が抱える健康課題の解決を目指す企業の価値向上を目的としています。

この補助金制度では、2021年度に20社が採択され、女性特有の健康課題の解決に向けたセミナー開催や啓発コンテンツ提供、各種アプリ・システムの開発などの取り組みが進められています。

出典:経済産業省「フェムテック等サポートサービス実証事業者補助金の紹介

出典:経済産業省「フェムテックを活用した働く女性の就業継続支援

女性の健康課題を解決して、社会で活躍しやすい環境を作ろう

今後、フェムテックの市場規模はさらに拡大していくことが予想されます。

フェムテックにより女性の健康課題を解決することは、企業の利益面でも日本の経済損失を防ぐという面においても有効です。

社内で女性が活躍しやすい環境を整えられるように、本記事を参考にしてください。

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。

 

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