中期経営計画におけるESG、SDGs目標の採用トレンド
開示資料作成人材が不足する中、いかに質の高い資料を効率的に作成するか?
ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、2020年1月1日~2022年5月31日の間に提出された中期経営計画(以下「中計」)について、CCReB Clipを利用して、ESG目標の採用トレンドについて分析を行った。
年別にみるESG目標の採用トレンド
2020年1月1日~2022年5月31日までに確認された1,459社の中計について、ESGに関する目標の採用実態の調査を行ったところ、2020年の中計開示企業においては59%に留まっていたESG目標の記載が2022年(5月末)には90%の企業にて中計上に開示が行われている(図1)。
一昔前まではESG,SDGsは経営目標の指標という位置づけではなく行動指針といった意味合いが強かったように思われ、決算説明書等の参考資料の1ページに方針と取り組み実績を掲載するに過ぎなかったが、この数年で急激に見直され始め、企業各社は「ESG経営」という新たな観点で中計上での経営目標として掲げる傾向が見て取れる。
東証新市場区分にみるESG対応状況
次に東証新市場区分別にESG目標の採用状況について調査を行った。図2にあるように、プライムからスタンダード、グロースに移るにつれESG目標を中期経営計画に反映している企業割合が減少している。
グロース市場に分類される企業はいわゆるベンチャー、スタートアップと呼ばれるような成長過程の企業が多く占めており、年を追って急激かつ高度な要求を求められるESG,SDGs対応に対し、開示対象となる投資家層の違いのみならず、専門的な知識が求められるこれらの対応について限られた人員・予算の中で十分な人材を充当・確保出来ていないという現状・課題も数値から窺える。
今後は、投資家からの情報発信要請は強まる一方であると想定され、グロース市場に属する企業の対応が注目される。
ESG指数を意識した企業経営
昨今、国内外において機関投資家によるESG投資促進に向けた動きが進んでいる。日本においても年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「MSCIジャパンESG セレクト・リーダーズ指数」を採用するなど、今後、ESG指数による運用の加速による株式市場に対する影響が大きくなってくるため、上場企業各社はESG指数をこれまで以上に意識せざるを得ない状況になると思われる。
なお、今回の調査期間における「MSCIジャパンESG セレクト・リーダーズ指数」組入れ企業の中計調査を行ったところ98%の企業において、中計上でESG関連目標を掲げている。ESG指数の組入れには、各種ESG、SDGs施策はもとより、その施策を効果的にどう伝えるのか、開示資料の質がポイントとなってくる。
実際、プライム市場の企業を中心に、“サステナビリティレポート”と呼ばれる専用の開示資料の発行が盛んに行われているが、専門的・戦略的な開示資料の作りこみが求められるため、なかなか手が出せてない企業が多い。これらの企業においては、限られたリソースで如何に効率的に対応を行うか、ここでも“効率化”が求められている。
以上、CCReB Clipを活用した、中計におけるESG、SGDsの中計における出現動向分析を行った。今後、ESG、SDGs関連においては投資家からますます開示資料の充実が求められることが想定され、既存の限られたリソースでは対応に限界がくるものと思われる。
CCReB GATEWAYでは、ホットワード分析機能を用い、各社の開示情報の分析が可能となり、現在世の中で求められている、また、他社が着目しているキーワードを瞬時に把握頂けます。
また、IRストレージでは「ESG」カテゴリで検索をかけて頂く事で最新の他社の開示資料をタイムリーに確認頂く事が可能となり、2018年以降、各社が開示する“サステナビリティレポート”も格納されているため、自社の開示資料作成にあたっての参考資料を瞬時にお手元にご用意することが可能です。是非、各種機能をご活用頂き、最新のESG,SDGs動向の調査にお役立て下さい。
情報支援ツール”CCReB Clip”
「CCReB AI」のAIエンジンを活用して、格納する約1,500社(2020年9月1日現在)の中期経営計画から、ユーザーが抽出したい特定ワードを受付け、そのワードを含む企業のリストをスポット的に作成するサービス