総研レポート・分析

これからの商業施設開発と投資~安定性重視と成長余地への期待~

コロナ禍で、不動産アセットの中ではホテルと並んで大きな影響を受けた商業施設であるが、約3年の間に、商業施設を取り巻く環境はどう変わったのか。本稿では、商業施設をテーマに、商業施設の開発動向やJ-REITの商業施設取引を俯瞰し、今後の商業施設投資について考察した。

大店立地法届出にみる、商業施設開発傾向

コロナ初年度の2020年の大規模小売店舗立地法(以下、大店立地法)の新設届出は435件、店舗面積合計は127.5万㎡であった。件数、店舗面積合計ともに、2005年以降で最少だった2019年をさらに下回ったが、2021年は増加に転じ、625件、172.7万㎡の届出があった(図表1-1)。2022年は経済産業省の11月集計時点で496件、149.1万㎡の届出があるため、年間の届出件数は500件は超えるとみられる。

届出件数を面積規模別にみると、2022年の届出は店舗面積10,000㎡以上の大型開発が15件となり(図表1-2)、デベロッパーの偏りはみられなかった(図表1-3)。このなかで最大規模は、三井不動産の「(仮称)門真松生町計画」(60,767㎡)で、同社初のららぽーとと三井アウトレットパークの複合型の大型商業施設の開発である。これに次ぐ規模となるのがイオンモールの「(仮称)イオンモール豊川」(50,597㎡)で、愛知県豊川市のスズキ自動車工場跡地の開発で、新設予定日より約半年遅れの2023年春に開業予定となっている。

また、虎ノ門・麻布台地区市街地再開発組合が届け出た「(仮称)虎ノ門・麻布台地区計画」(19,000㎡)が2023年7月新設予定、日本郵便㈱の「梅田3丁目計画(仮称)」(18,000㎡)が2024年3月竣工予定など、都心部の好立地で大型開発が進んでいることがわかる。

2,000㎡未満の小型の開発は303件で、うち195件は建物設置者または出店者がドラッグストアであり、ドラッグストア各社の出店攻勢が続いている。

また2019年届出の羽田空港第3ターミナル直結の複合開発「羽田エアポートガーデン」の商業ゾーン「住友不動産ショッピングシティ 羽田エアポートガーデン」の2023年1月の開業が決定した。2020年4月から開業が延期されていたプロジェクトであり、今後の需要回復を見込んだ開業決定である。

 

J-REITの商業施設取引

図表2-1は、J-REITの商業施設の取引金額を時系列でまとめたグラフである。

2002年から2021年までは取得(一部取得含む)金額が売却(一部売却含む)金額を上回り、ピーク時の2013年には、1年間で5,088億円増加した。しかし、2018~2019年頃から商業施設の売却が増加し、コロナ禍でさらにその傾向が強まり、2022年は10月までの集計値で初めて売却金額が取得金額を上回り34億円の純減となっている。

2022年の商業施設取引の内訳は図表2-2の通りであり、新規取得に大型案件は少なく、複数物件を取得しているのは1投資法人のみで、様子見の傾向がうかがえる。一方で売却物件は増えており、ポートフォリオの更新等を目的とした取引のほかに、配当金確保のための売却もみられるようである。

まとめ

2022年はコロナ収束には至らないが、行動制限はなく、感染防止対策が一般化して人出が回復する中で、商業施設の先行きに対する警戒感は和らいできたように見受けられる。商業施設開発については、停滞期は脱し、大手デベロッパーによる大型の開発や、需要の回復を見込んだ動きがみられる。小型の商業施設の出店もドラッグストアを中心に旺盛である。

J-REITの取引を見ると、商業施設投資に対する慎重姿勢がうかがえる。コロナ前からの我が国の少子高齢化や消費行動の変化などを踏まえた商業施設の選別、ポートフォリオの再構築は必須と考えられる。

これらの外部環境から、今後の商業施設投資については、安定性重視か成長余地への期待か、投資方針の舵取りは難しい局面にあるが、需要回復を見込んだ開発物件の増加を背景に、商業施設投資の活発化が期待される。


 

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