PPA(電力購入契約)手法を活用した不動産有効利用の考察

不動産業界でのオンサイトPPAへの取り組み

 世界的なSDGsの流れの中で、不動産業界においても事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とするRE100を目指す企業が増えており、目標達成に向けたCO2排出量の削減は社会的要請となっている。こうしたなかで、太陽光発電に関しては、PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約の略)モデルを利用した、自家消費型の太陽光発電導入が進んでいる。

 図表1-1は不動産事業会社等が建物屋上や敷地内にPPA事業者が発電設備を設置し、テナントが電力を利用する「オンサイトPPA」の事例、図表1-2はPPA事業を自社内の事業部やグループ企業が担い、PPAに取り組んでいる事例である。

図表1-1 

図表1-2

PPA事業の不動産事業収支へのインパクト

 PPA事業の仕組を図表2のテナントビルのケースで見ると、PPA事業者は①太陽光発電設備を不動産の屋根や敷地に設置し、契約期間中は②運用・保守を行う。需要家である不動産所有者は、③太陽光発電設備の設置場所をPPA事業者に提供し、④契約期間中はPPA事業者に電気利用料を支払う。不動産所有者は、テナントからは⑤水道光熱費として利用量に応じた電気利用料を徴収する。 

 PPA事業者に支払う電気利用料は、基本的には長期契約で定額制となり、再生可能エネルギー由来の電力を直接調達しているため、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)が免除され、市場の影響を受けない。但し、テナントビルの電気料金は通常はパススルー方式となり、不動産所有者のNOIには反映されない。

 PPA事業においては、太陽光発電設備の設置料をPPA事業者から徴収するケースもあるが収入面でのインパクトは小さい。このように収支面へのインパクトは限定的であるが、初期投資不要で太陽光発電による再生可能エネルギーを利用でき、対外的にPRすることでESG投資を呼び込む効果を期待できる点はメリットといえる。

図表2 テナントビルにおけるPPAモデルイメージ

PPA事業の留意点

 一方で、PPAモデルにおいては余剰電力量に関するインバランス(発電計画と実績との差)に留意する必要がある。

 オンサイト型PPAは自然由来の太陽光発電であり、テナント電力需要に常に応えられるわけではない。PPA事業者の投資採算性からみると、テナントの電力需要に応じてPPAの発電施設を設置する必要がある。そのため、電力不足となった場合には大手電力会社あるいは新電力から電力供給を受けなくてはならず、電気料金の市場価格の影響を受ける。逆にテナントの電力需要に対してPPAによる電力供給が多くなり電力に余剰が発生する場合がある。前掲の事例では余剰電力を蓄電し、災害等による電力不測のリスクに備えたり、グループ内で利活用したりすることで、電力の無駄を無くす工夫がなされている。

電気料金上昇へのリスクヘッジとしてのPPA

 近時の電気料金は、新型コロナウイルスの終息による経済活動の活性化やロシアによるウクライナ侵攻による原油高の影響により上昇傾向にある。

 大手電力会社の電気料金は4項目で構成され、基本料金、電力従量料金、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)、燃料費調整額である。このうち再エネ賦課金はFITによる買取価格と連動し経済産業省調達価格では10.34円/kwhと減少する。再エネ賦課金の減少を上回る形で、燃料費調整額は原油、石炭、円安等により上昇するので電気料金の値上げとなる見込みである。一方、発電施設を持たない新電力は電気の卸売市場(JPEX)から電力を購入し、JPEXによると調達コストは3月時点で26円/kwhと急上昇している。このような状況から、大手電力会社、新電力の電力料金はいずれも値上げとなる見込みだ。

 こうした急激な環境変化を背景に、2022年以降はPPA導入増加が予想され、不動産有効利用の一つとして広く注目されるだろう。

図表3 太陽光価格と火力電力価格の推移

 

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