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気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とは?評価報告書から考える企業が環境問題に取り組む重要性

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とは、世界各国から気候変動に関する専門家が集まり、気候変動に関する現状やリスクを評価する専門機関のことです。

気候変動に関する政府間パネルは、気候変動に関する現状を科学的・技術的に評価し世界の人々に伝えることで、気候変動に関する科学的な基礎を与えることを目的としています。

近年、気候変動に関する取り組みは、各国の政府のみならず企業においても重要になっています。

本記事では、気候変動に関する政府間パネルの役割や企業が気候変動の課題に取り組む重要性を解説します。

また、企業が気候変動の課題に取り組むメリットについても解説しているので、自社で改善活動を行う際の参考にしてください。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とは

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とは

気候変動に関する政府間パネルとは、各国の気候変動に関する専門家が集まり、地球温暖化などの気候変動についての研究や情報の収集、想定されるリスクの整理を行う政府間機構のことです。

近年、地球温暖化などの地球規模の気候変動が問題視されています。

気候変動に関する政府間パネルは、気候変動に関する問題を改善するために国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって設立されました。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の活動目的

気候変動に関する政府間パネルの活動目的は、各国の政府や企業に対して気候変動の現状や対応方策について科学的な知見を提供することです。

また、気候変動に関する政府間パネルでは、5〜6年ごとにその間の気候変動に関する評価報告書がまとめられています。

報告書の中には、気候変動の現状だけでなく、各国の政府や企業がこれから取り組むべき施策の方向性についてもまとめられています。

気候変動に関する政府間パネルは、気候変動に関する報告書を公表することで、各国の政府や企業が行うべき取り組みを提示して気候変動の改善を目指しています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の3つの作業部会と1つのタスクフォース

気候変動に関する政府間パネルは3つの作業部会と1つのタスクフォースに役割が分れています。

  • 第1作業部会(WG1)
  • 第2作業部会(WG2)
  • 第3作業部会(WG3)
  • 国別温室効果ガス目録タスクフォース(TFI)

以下でそれぞれの作業部会とタスクフォースの役割を確認します。

第1作業部会(WG1)

第1作業部会(WG1)では、気候変動に関する自然科学の物理的な現象についての評価を行います。

例えば、これまで通り気候変動が続くことでどの程度気温や海面が上昇するのかを分析しています。

気候変動の現状をもとに、データを分析して将来的な影響を予測する役割を担うのが第1作業部会です。

第2作業部会(WG2)

第2作業部会(WG2)では、地球温暖化などの気候変動が人間社会にもたらす影響を評価します。

例えば、気候変動による農作物の収穫量の変化や経済的な損失を分析しています。

また、第2作業部会では、気候変動による経済的損失に対する対策を各国の政府や企業に促す役割も担います。

第3作業部会(WG3)

第3作業部会(WG3)では、気候変動を改善するための対策を考えて、その対策が気候変動の改善にもたらす効果を評価します。

各国の政府や企業は、第3作業部会の報告を参考にして気候変動を改善するための対策を考えます。

第1作業部会から第3作業部会それぞれの作業部会の評価、分析を通して気候変動の問題改善を目指します。

国別温室効果ガス目録タスクフォース(TFI)

気候変動に関する政府間パネルができた当初は、第1作業部会から第3作業部会までの3つの作業部会のみで構成されていました。

気候変動に関する政府間パネルが設立して10年後に作られたのが、温室効果ガスの排出量の目標を提示する国別温室効果ガス目録タスクフォース(TFI)です。

国別温室効果ガス目録タスクフォースが提示する温暖化ガスの排出量をもとに、各国が自国の具体的な削減目標を決めています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書

2022年12月現在、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、気候変動の調査報告として第6次評価報告書が公表されています。

第6次評価報告書では各作業部会から以下の報告が公表されました。

作業部会 報告内容 報告時期
第1作業部会(WG1) 気候変動についての自然科学的根拠 2021年8月
第2作業部会(WG2) 気候変動が人間社会にもたらす影響 2022年2月
第3作業部会(WG3) 気候変動の緩和策 2022年4月

本章では、気候変動に関する政府間パネルの第6次評価報告書から読み取れる気候変動の現状を確認します。

地球規模の気候変動の現状

気候変動に関する政府間パネルの第3作業部会により、地球温暖化は現在も進行し続けていることが報告されています。

また、第3作業部会の第6次評価報告書では、現状の気候変動に対する取り組みだけでは温暖化の進行を止めることができないと述べられています。

地球環境の気候変動を改善するためには、これまで以上に各国の政府や企業がさらなる対策を進めていくことが求められています。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「温暖化は今どうなっている?目標は達成できそう?「IPCC」の最新報告書

企業が気候変動へ取り組む重要性

企業が気候変動へ取り組む重要性

気候変動を改善するうえで、企業による工夫や対策が重要になります。

企業による経営活動は、地球温暖化のような気候変動に対して大きな影響を及ぼします。

例えば、紙を製造するための森林伐採や工場で商品を製造する際の温室効果ガスの排出などによる気候変動への影響は計り知れません。

そのため、地球規模の気候変動を改善するためには、企業による生産プロセスの改善や資源の適正化などによる取り組みが重要です。

また、企業が気候変動に対する取り組みを行うことは、気候変動の改善のみならず企業にとっても多くのメリットがあります。

企業が気候変動に対する対策を行うメリット

企業が気候変動に対する対策を行うメリット

企業が気候変動に対する取り組みを行うことで得られる代表的なメリットは以下の3つです。

  • 企業イメージが向上する
  • ESG投資家から経営資金を調達しやすくなる
  • 持続的な資源の確保につながる

企業が気候変動に対する取り組みを行うことで、企業としてもより良い企業経営を目指すことができます。以下でそれぞれのメリットについて確認します。

企業イメージが向上する

気候変動の改善に取り組む企業は、顧客から良いイメージを持たれ、投資家や取引先などのステークホルダーからも選ばれやすくなります。

近年、SDGsへの取り組みなど環境に配慮した経営が求められるようになりました。企業は経済的な評価だけでなく、社会・環境問題に対する取り組みなどの側面からも評価を受けます。

気候変動に対する取り組みなどによって良いイメージを持たれている企業は、それだけ顧客から自社商品を選ばれる可能性が高まります。

また、各ステークホルダーからの評価も上がるため、投資家からの出資を受けやすく、スムーズに資金調達を行うことが可能です。

企業が気候変動を改善するための取り組みを行うことで、結果的に企業としても多くの利益が得られます。

ESG投資家から経営資金を調達しやすくなる

地球環境への取り組みを行う企業は、ESG投資家から多くの投資を受けられます。

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取って作られた言葉で、ESG投資家は社会的・環境的な取り組みを行う企業に対して積極的に投資を行う投資家のことです。

社会的・環境的な取り組みを行う企業は、ESG投資家から評価を受けやすく、スムーズに経営資金の調達が行えます。

企業が気候変動に対する取り組みを行うことには、経済的なメリットが多くあります。

持続的な資源の確保につながる

地球温暖化の進行により、気候変動が進むと将来的に事業に必要な資源の調達ができなくなるリスクがあります。

企業が気候変動改善のために環境へ配慮した取り組みを行うことで地球環境への悪影響を防ぐことができ、結果として持続的な資源の確保につながります。

また、企業が現在使用している資源を再生可能エネルギーに転換することで半永久的な資源の確保にもつながります。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に関するQ&A

ここまで気候変動に関する政府間パネルの目的や報告書、企業が気候変動を改善する取り組みを行うことの重要性について網羅的に解説しました。

最後に、気候変動に関する政府間パネルに関してよくいただく質問をまとめています。

Q&A形式で紹介するので、ぜひ参考にしてください。

気候変動に関する日本政府の取り組みは?

日本政府は、気候変動の現状を改善するために2021年10月に地球温暖化対策計画を閣議議決しました。

地球温暖化対策計画の中では、2030年度における温室効果ガスの削減目標が掲げられています。

地球温暖化対策計画では、一般の住宅や建築物の省エネ基準への適合義務を付けるなど具体的な施策が記載されており、毎年様々な取り組みが進められています。

出典:環境省「地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はいつから活動が始まった?参加国数は?

気候変動に関する政府間パネルは、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された政府間組織です。

気候変動に関する政府間パネルによる報告書は1990年に第1次評価報告書が公表され、2022年12月現在では第6次評価報告書が公表されています。

2022年12月時点における、気候変動に関する政府間パネルは195の国と地域のデータを元に構成されています。

企業の取り組みが気候変動を改善する

世界規模の気候変動を改善するためには、企業の環境に対する取り組みが重要です。

企業活動による森林伐採や温室効果ガスの排出は、地球環境を破壊し気候変動に大きな悪影響を及ぼします。

そのため、各国の企業が気候変動改善の取り組みを行うことで、気候変動を抑えることが可能です。

また、企業が気候変動の改善に取り組むことは、企業のイメージ向上にもつながり、顧客やESG投資家からも選ばれやすくなるなど、様々なメリットがあります。

企業は気候変動に関する政府間パネルの報告書を参考にして、気候変動を改善するための取り組みを進めましょう。

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。

 

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