総研レポート・分析

2023年の事業環境展望に関する業種別傾向 ~ククレブ業界天気図~

ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、B2Bポータルサイト「CCReB GATEWAY(ククレブ ゲートウェイ)」の「ホットワード分析」機能を用い、2023年1月~8月までに開示された有価証券報告書のうち、「第2.事業の状況_経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の内容について、33業種各社の事業展望状況を天気図という形で整理した。

統計にあたっては経営方針の文面中に出てくるワードを「事業リスク」「ESG関連」「事業投資、DX推進」「その他」の4カテゴリに分類し、その割合で各業界が見据える2023年度の事業環境を以下に見ていく。

注目の業界天気

<雨→薄日>

・機械
昨年は地政学リスクの高まりによる原材料価格や物流費の高騰を懸念するワードの出現率が高く、事業展望としては明るくない基調であったが、今年においては引き続き物価高騰を懸念するものの、各業界での自動化推進による製造設備の受注を期待する内容に切り替わっており、33業種の中でもっとも事業方針に登場するワードの変化が大きかった業種である。

 

<雨→曇り>

・電気機器
昨年は原材料価格の高騰が目下の経営課題として取り上げられていたが、今年は昨年の価格転嫁の反動で景気減速による成長鈍化を危惧するワードが頻出。一方、次世代製品の開発に関する意欲的な方針を打ち出す企業も現れてきており事業の成長への意欲的姿勢も垣間見える。

 

<小雨→薄日>

・小売業
昨年の事業リスクに集中した状況から一変、今年は日本においてもwithコロナが浸透し、訪日外国人もコロナ禍前に迫る勢いで増加する環境下において、人件費の上昇労働力確保を課題におきつつも、商品競争力の強化や出店の拡大等、攻めの姿勢もうかがえる。

 

<曇り→晴れ>

・非鉄金属
昨年から続くコスト増に対しコストダウン価格適正化を図るワードが出現する一方で、中長期的な市場拡大を見据えた生産能力増強増産体制に向けた設備投資の関連ワードを掲げる企業が多く出現している。

 

<晴れ→曇り>

・銀行業
33業種中、昨年比較で唯一、2ランク落とした業種である。
昨年はESG関連を中心としたワードの出現率が高く事業リスク関連ワードは一部に限られていたが、今年は世界的な金融引締めによる海外景気の下振れ、物価・エネルギー価格高騰による景気後退など経営環境を危惧するワードの登場率が大きく伸びている点に注目だ。

 

 

2022年の段階では長期化するコロナ、ロシア・ウクライナ戦争を発端とするサプライチェーンの混乱・価格高騰による不透明な足元が不安をよび、製造業、商業、サービス業を中心に、まさに「地政学リスク」「サプライチェーンの混乱」「原材料価格の高騰」といった関連ワードが経営方針の中に頻出し、特に機械、電気機器においては過半を占める割合で事業リスク関連ワードが出現するなど、全体的に事業リスクに注視する傾向にあった。

(2022年の調査結果はこちら)

2022年の事業環境展望に関する業種別傾向~ククレブ業界天気図~

 

今回、昨年と同時期において2023年の33業種各社の事業展望状況を調査したところ、経営方針に占める事業リスク関連ワードの出現状況は全体を通して落ち着いており、withコロナへの転換による経済活動再開により景気の持ち直し状況が経営方針に現れているようである。

一方で、2022年の「地政学リスク」「サプライチェーンの混乱」「原材料価格の高騰」を経て、2023年においては33業種全体を通して「物価高騰」、「景気後退」「為替相場」「金融引締め」「金利上昇」「インフレ抑制」といったワードが頻出しており、2022年から2023年にかけての価格転嫁の動きの結果、経営リスクが景気悪化へと移ってきたことが明確に見て取れる結果となった。

また、2023年3月期決算から、情報開示が義務づけられた「人的資本の情報開示」関連ワードにおいても経営方針の中における出現が高まっている状況が確認された一方で、経営方針の中におけるESG関連ワードの出現が2022年に比べ低下傾向にある点は、日本企業の現状と課題を表している様に思われ、興味深い結果である。

 

今回の統計分析に用いた「ホットワード分析」機能はCCReB GATEWAYに会員登録(無料)頂く事で個別企業、業種、上場区分ごとにホットワードを抽出することが可能になります。操作方法が不明な場合はご利用ガイドに動画を掲載しておりますのでご確認ください。

また、今回は33業種の統計を目的に有価証券報告書に注目して分析を行いましたが、その他、中期経営計画を用いたホットワード分析も可能となっております。効果的・効率的な企業、業界分析にCCReB GATEWAYを是非ご活用ください。

 


 

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当レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではございません。また、本内容は現時点での判断を示したに過ぎず、データ及び表現などの欠落、誤謬などにつきましては責任を負いかねますのでご了承ください。当レポートのいかなる部分もその権利はククレブ・アドバイザーズ株式会社及びククレブ・マーケティング株式会社に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、無断で複製または転送などを行わないようお願いします。

 

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
不動産鑑定士
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超え、CRE戦略の立案から実行までを得意としている。
2019年9月に不動産テックを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。