総研レポート・分析

ハイブリッドワークとは?導入のメリットや注意点、成功させるためのポイントや企業事例を詳しく解説

オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方、「ハイブリッドワーク」が注目を集めています。

ハイブリッドワークは業務効率・生産性の向上や従業員エンゲージメントの向上に繋がると言われています。

今回は、ハイブリッドワークについて詳しく知りたい方や導入を検討している方向けに、ハイブリッドワークの概要や導入のメリット、成功させるためのポイントや注意点を解説します。

最後にハイブリッドワークを推進している企業事例もご紹介していますので、検討中の方はぜひ参考になさってください。

ハイブリッドワークとは

ハイブリッドワーク

ハイブリッドワークとは、オフィスワークと、自宅やシェアオフィス、コワーキングスペースなどのオフィスではない場所で働くテレワークを組み合わせた働き方のことです。

ハイブリッドワークを取り入れることにより、業務効率や生産性の向上、従業員エンゲージメントの向上といったメリットがあることから、注目を集めています。

また、これからは労働人口の減少により人材不足がより一層深刻化すると言われていますが、ハイブリッドワークの導入により柔軟な働き方を実現することで、優秀な人材の獲得にも繋がります。

ハイブリッドワークが必要とされるようになった背景

ハイブリッドワーク

政府が推進している働き方改革や新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、テレワークを導入する企業がここ数年で一気に増えました。

東京商工リサーチの調査*によると、2020年の1度目の緊急事態宣言時には、テレワークを実施している企業が17.6%から56.4%へと上昇しています。

急速に広まったテレワークですが、課題もまた多いことに悩まされた企業も少なくないのではないでしょうか。

たとえば、コミュニケーション不足。オフィスワークをしていれば比較的いつでも気軽に声をかけることができましたが、テレワークのみになると、業務内容や進捗の確認、チームビルディングなどが難しくなります。

テレワークは従業員の多様な働き方を可能にするワークスタイルの一つですが、仕事を円滑に進めるためにはオフィスワークも有効活用するほうが上手くいくケースもあるのです。

このような背景があり、オフィスワークのメリットと、テレワークのメリットをバランスよく組み合わせるハイブリッドワークに注目が集まるようになりました。

*(参考)東京商工リサーチ|第5回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査

ハイブリッドワークの6つのメリット

ハイブリッドワーク

ハイブリッドワークには、大きく6つのメリットがあります。
① コミュニケーション活性化
② 業務効率や生産性の向上
③ 従業員エンゲージメントの向上
④ 離職率の低下・定着率の向上
⑤ 優秀な人材の確保
⑥ 事業継続計画(BCP)

それぞれ詳しく説明します。

ハイブリッドワークのメリット①コミュニケーション円滑化

先ほど「ハイブリッドワークが必要とされるようになった背景」でも少し触れましたが、テレワークだけではコミュニケーション不足が発生することがあります。

コミュニケーション不足が発生すると、プロジェクトの進捗確認がリアルタイムでしづらかったり、トラブルなどが発生した際にスピーディーに確認や対応がしにくかったりと、仕事を進める上で不都合が生じます。

ハイブリッドワークを導入すれば、遠隔で対応できる日々の業務はテレワークで行いつつ、対面でコミュニケーションをとれる機会も設けられるので、コミュニケーションの円滑化に繋がります。

ハイブリッドワークのメリット②業務効率や生産性の向上

自宅などで黙々と取り組んだ方が効率的な業務もあれば、オフィスでメンバーと直接話し合いながら進めたほうが進めやすいプロジェクトもあります。

そのため、ハイブリッドワークを導入すると、従業員は自分の業務内容に応じて最適な働く場所を選択できるので、業務効率や生産性の向上に繋がります。

ハイブリッドワークのメリット③従業員エンゲージメントの向上

オフィスワークもテレワークも、それぞれメリットとデメリットが存在します。

たとえばオフィスワークであれば、直接コミュニケーショが取れたり、トラブル時にスピーディーにサポートができる・得られるといったメリットがある一方で、通勤時間のストレスやコスト、ワークライフバランスの課題といったデメリットも存在します。

また、テレワークであれば、時間や場所に捉われない働き方ができるのでワークライフバランスを実現しやすい一方で、孤独を感じやすい、自己管理能力などの有無による向き・不向きといったデメリットもあります。

ハイブリッドワークは、どちらかの働き方を義務付けるのではなく、従業員自身で最適な労働環境を選択することができます。それぞれの働き方のメリットを享受できるため、従業員エンゲージメントの向上に繋がります。

ハイブリッドワークのメリット④離職率の低下・定着率の向上

ハイブリッドワークの導入は、③で触れた通り、多様な働き方の実現に大きく寄与します。

近年、ダイバーシティ経営の重要性が叫ばれていますが、これからの企業に求められるのは、多様な人材が活躍できる環境です。

子育てや介護、心身の健康面で不調を抱えている人など、それぞれの生活と仕事を両立させることは大変ですが、ハイブリッドワークの導入により、その負担を軽減することができます。結果として、離職率の低下や定着率の向上に繋げることができるのです。

ハイブリッドワークのメリット⑤優秀な人材の確保

最後は、「優秀な人材の確保」です。

日本は現在少子高齢化という社会問題を抱えています。労働人口の減少により、企業は今後より一層深刻な人材不足に悩まされると言われています。

そのような状況下においても優秀な人材を確保するためには、従業員が働きやすく、かつ働き続けられる労働環境づくりが大切です。

そのような環境づくりをするためにも、多様な働き方の実現につながるハイブリッドワークの導入は効果的だといえるでしょう。

ハイブリッドワークのメリット⑥事業継続計画(BCP)

ハイブリッドワークは、自然災害などの災害発生時において事業の継続や復旧ができるようにする事業継続計画(BCP)としても有効です。

BCPの内容もハイブリッドワークの方策に盛り込んでおくと、いざという時にスムーズに対応でき、リスクや被害を抑えることができます。

ハイブリッドワークを成功させるための3つのポイント

ハイブリッドワーク

ここからは、ハイブリッドワークを成功させるためのポイントを解説します。ポイントは次の3つです。


① 導入時に条件設定・ルールづくりをしておく
② ICT環境の整備
③ オフィス環境の整備

それぞれ詳しく解説します。

ハイブリッドワークを成功させるためのポイント①導入時に条件設定・ルールづくりをしておく

ハイブリッドワークを導入すると、従業員がそれぞれ別の場所で業務に取り組むことになります。そのような状況下においても円滑に業務を進めるためにも、あらかじめルールを設定しておくことが重要です。

たとえば、
・事前にしっかりとハイブリッドワークのガイダンスを行う
・出社ルール(対象者・勤務場所・時間など)の明示
・報告・連絡・相談などに関するルールづくり
などです。

また、ルールは状況の変化に応じて適宜見直すようにしましょう。

ハイブリッドワークを成功させるためのポイント②ICT環境の整備

ICTとは、「Information and Communication Technology」を略したもので、日本語でいう「情報通信技術」のことです。ICTにはWeb会議システムやクラウドサービスも含まれるので、すでに活用している企業が多いかと思います。

テレワークを含むハイブリッドワークを成功させるためには、このICT環境が整備されていることが重要です。

自宅などからでもオフィスの自身のパソコンにアクセスできるリモートアクセスツールや、業務報告をタブレットで送れる業務報告システムなど、ICT関連ソリューションは色々なものがありますので、状況に応じて有効活用しましょう。

ハイブリッドワークを成功させるためのポイント③オフィス環境の整備

ハイブリッドワークを導入するのであれば、オフィス環境は社内コミュニケーションが活性化するような工夫が必要になります。

具体例としては、以下のようなものがあります。
・従来の固定席を廃止し、フリーアドレス制に変更する
・カフェスペースの設置
・Web会議のために遮音性の高いブースの設置
・テレワークの従業員が増えて空いたスペースに打ち合わせ用のブースを設置

どこにいても働けるような環境整備をするからこそ、「オフィスに出社する意義は何か?」と考え、必要な環境を整備することが大切です。

ハイブリッドワークを導入する際の3つの注意点

ハイブリッドワーク

ハイブリッドワークの導入時、課題となるのは次の3つです。

① コミュニケーション方法について見直しが必要
② 勤怠管理が難しい
③ セキュリティ面のリスク

それぞれ詳しく説明します。

ハイブリッドワークを導入する際の注意点①コミュニケーション方法について見直しが必要

ハイブリッドワークを導入すると、テレワークをする人とオフィスワークをする人とが混在することになるので、従業員同士が顔を合わせる機会が減ってしまう可能性があります。

これにより社内コミュニケーションが不足すると、情報共有がうまくいかないことによるミスの発生にも繋がりかねません。また、トラブル発生時にスムーズな状況確認やサポートができなかった場合、顧客からの信頼喪失や人間関係の悪化も懸念されます。また、コミュニケーション不足により帰属意識が薄れてしまう可能性もあります。

このような事態を避けるためにも、離れて働いていてもコミュニケーションが不足しないような取り組みや仕組みづくりが必要になります。

具体的には、定期的なミーティングの実施やコミュニケーションツールの活用などが挙げられます。

ハイブリッドワークを導入する際の注意点②勤怠管理が難しい

「テレワークは従業員の勤怠管理が難しい」とよく言われますが、ハイブリッドワークは、テレワークとオフィスワークを組み合わせるワークスタイルのため、さらに管理が煩雑になります。

ハイブリッドワークを導入する際は、勤怠管理ツールを活用したり、社内SNSを導入したりするなど、あらかじめ勤怠管理が煩雑にならないような仕組みづくりをしておくことが大切です。

ハイブリッドワークを導入する際の注意点③セキュリティ面のリスク

これまで基本的に出社を命じていた企業は、ハイブリッドワークの導入にあたりセキュリティ対策の見直しも必要になります。

特に、情報漏洩には気をつけましょう。これまで社内でしか取り扱っていなかった情報を外でも扱うことになるため、書類やデータなどの紛失リスクに加え、コワーキングスペースといった公共スペースにおける「のぞき被害」などのリスクもあります。

経済産業省からは、テレワークの普及が広がった新型コロナウイルスの感染拡大時に、電子メールを媒介として感染させるマルウェア被害が増加したという報告もあります。

ハイブリッドワークの導入時は、セキュリティ対策についても慎重に見直しましょう。

ハイブリッドワークを推進している企業事例

ハイブリッドワーク

サイボウズ株式会社

100人100通りの働き方を自ら申告する「働き方宣言制度」など、多様な働き方を実現する人事施策に取り組んできたサイボウズ株式会社。

同社は、10年以上前からテレワークを導入しており、現在はオフィスとテレワークを自由に選択できるハイブリッドワークを積極的に推進している企業です。

会計システムなど必要な環境に自宅から安全にアクセスできるような環境を整えており、「テレワークはできない」とされていた経理などの業務でも自由に働き方を選べる環境を整えることにいち早く成功した企業でもあります。

また、ハイブリッドワークの懸念点である「コミュニケーション不足」への対策も非常に参考になります。

同社では、「みんなが何をしているのか分かりにくくなった」、「話さない人が増えた」といった課題を払拭するべく、オフィスでの気軽な雑談をオンライン上で再現する「分報」を取り入れています。

「分報」は社内版X(旧:Twitter)のようなイメージだといい、たとえ自宅にいてもメンバーの様子や心理状態が把握できるようになったといいます。ハイブリッドワークは、従業員の心身の健康管理も煩雑になりますから、マネジメントの視点においてもこの取り組みは有効だと言えそうです。

他にもオンライン上の会議や打ち合わせの双方向コミュニケーションを生む「実況スレ」や、情報格差を解消するための取り組みなど、同社はハイブリッドワークを効果的に推進するための施策がたくさんあります。導入を検討されている方はぜひ参考にされてみてはいかがでしょうか。

参考:離職率28%、採用難、売上低迷。ボロボロから挑んだサイボウズのハイブリッドワーク10年史|サイボウズ株式会社

ハイブリッドワークを有効活用しよう

ハイブリッドワーク

今回は、ハイブリッドワークの概要や導入のメリット、成功させるためのポイントや注意点を解説しました。

ハイブリッドワークとは、オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方のことです。

業務効率や生産性の向上、従業員エンゲージメントの向上、離職率の低下・定着率の向上、優秀な人材の確保、事業継続計画(BCP)など多くのメリットがあります。

ただし、効果的に実施するためには、事前に条件設定やルール作りをしておくことや、コミュニケーション不足といった懸念点を回避するための仕組みづくりがとても重要です。

本記事でご紹介したような推進企業の成功事例なども参考にしながら、御社でもハイブリッドワークを有効活用してみてはいかがでしょうか。

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監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。