総研レポート・分析

2024年経営ホットワードを占う!~2023年の新登場ワードから2024年を予想~

B2Bポータルサイト“CCReB GATEWAY”では、企業から発信される中期経営計画・有価証券報告書を解析、ワードクラウド形式で表示をしております。

ククレブ総研レポート2024年の第1号として、昨年のホットワードの分析とは切り口を変え、2023年に公表された中期経営計画書と有価証券報告書(当サイトでは、有価証券報告書の「事業方針(経営方針、経営環境及び対処すべき課題)」「事業リスク(事業等のリスク)」「研究開発(研究開発活動)」のページを個別に解析)から、“新登場ワード(※)”のみを検索し、2024年注目のホットワードを予想します。

※ここで言う新登場ワードとは、前年(2022年)において全く出現してないワード又は出現していたとしても上位100番以内にランクインされていないワードを指します。

2023年のホットワードは?CCReB GATEWAYホットワードから今年のトレンドをいち早く読み解く!(ククレブ総合研究所)

 

中期経営計画書(中計)~今年も生成AIの活用が経営戦略のトレンドに~


※CCReB GATEWAYホットワード分析より(企業数ベース)。以下同様。

 

やはり「生成AI」系ワードを語らずして2024年のホットワードは始まらないようです。

2023年はおよそ700社が中期経営計画を公表しましたが、2022年の中計にはほぼ出現していなかったワードである「生成AI」・「ChatGPT」といった生成AI系ワードが出現数トップとなりました。

出現業種としては、「情報・通信業」を中心に、「サービス業」「電気機器」「化学」「不動産業」などで、

・生成AIの利活用の検討とガイドラインの作成(クミアイ化学工業株式会社・化学)
・生成AIなどの先端テクノロジー活用による競争力強化(株式会社博報堂DYホールディングス・サービス業)など

生成AIを活用した新たなビジネスの創造を経営課題とした企業が目立ちます。

 

続いて、「欧州市場」がランクインしました。欧州市場はここ数年来インフレ抑制のための金利政策などによりEU経済圏全体で不況など低迷が見られましたが、

・欧州の市場回復が継続(花王株式会社・化学)
・欧米市場開拓のための海外販売・サービス拠点の強化(旭精機工業株式会社・機械)
・欧州市場の更なる拡大(山一電機株式会社・電気機器)など

欧州市場の回復を狙った市場の開拓・拡大といったグローバル戦略の強化を経営課題とした企業が目立ちます。中国経済の先行きが依然不透明な中、グローバル企業は欧州に改めて経営資源を振り向けることが予想されます。

 

また「内部管理体制」というワードも出現企業数で上位に立ちました。昨今の相次ぐ企業の不祥事を受け、経営基盤の強化としてコーポレートガバナンスの適切な構築・運営を掲げる企業が多い中、本当の意味での実効性が問われていくことからも2024年は「内部管理体制」が改めて注目のワードとなりそうです。

 

有価証券報告書(事業方針)~金利の動向に注目~

有価証券報告書の「事業方針」のページでも中計同様、生成AI系ワードが企業出現数でトップとなりました。一方で、中計ではあまり出現していない金融情勢に関するワードが上位を占めています。

出現業種としては、やはり金利の動向に一番敏感な「銀行業」を中心に、「保険業」「不動産業」「情報・通信業」などで多く出現していますが、日銀のゼロ金利政策の出口戦略が意識されてきている中、2024年は金利の動向が注目ワードとなりそうです。

 

有価証券報告書(有報・事業リスク)~サステナビリティ全般を意識した経営に注目~

有価証券報告書の「事業リスク」のページでも中計同様、生成AI系ワードが企業出現数でトップとなりました。
出現業種としては、「情報・通信業」を中心に、「サービス業」「卸売業」「電気機器」などで多く出現していますが、生成AIの利活用を経営戦略として掲げる一方で、その利用のリスクについて認識している企業が多く

・生成AIが普及することにより調査業務や分析業務をお客様ご自身で行えるようになると、当社の事業機会や競争力が喪失する可能性(株式会社三菱総合研究所・情報・通信業)
・「ChatGPT」に代表される生成AIの分野は急速な勢いで発展しており、既存のビジネスモデルに大きな影響を与える事も想定(ソフトバンク株式会社・情報・通信業)
・生成AIについては、情報漏洩や著作権侵害等につながるリスクがあると判断し、現時点では社内の利用を制限(株式会社明電舎・電気機器)など

利用のメリットを感じながらも、利用のリスクやビジネスモデルを一変するリスクなどを感じている企業もあり、今後ガイドラインの作成などルールの明確化がより一層求められることが予想されます。

 

続いて、「サステナビリティ全般」というワードがランクインしました。サステナビリティ全般をリスクとして認識するケースとしては、

・自社、製造委託先、原材料の供給元、物流会社、販売会社等を含むサプライチェーンにおいて、人権、労働、環境、腐敗防止、その他サステナビリティ全般に関する不適切な事態が発生した場合には、事業遂行体制の見直しを迫られるとともに、当社グループのブランド価値や信用が失墜し、業績及び財務状態に重大な影響を及ぼす可能性(大塚ホールディングス株式会社・医薬品)など

昨今の企業による不祥事がサプライチェーンやグループ各社・地域経済に大きな影響を与える事を考えると、前述の「内部管理体制」というワードも含む、サステナビリティ全般に関しての企業のガバナンスがより注目されるものと予想します。

 

また「DXの取組み」というワードも出現企業数で上位に立ちました。DXの推進については、昨年来のホットワードではあるものの、実際には各社DXの推進に関して対応が進んでいる企業とそうでない企業でDXに対する認識は異なるようで、実際にDXの推進を進めている企業でも、

・DX人材の確保・育成が進まないリスク(株式会社新日本科学・サービス業)など

DXの推進を掲げながらも実際に想定よりもDX化が進まないケースや、内部の人材不足などの問題もあり、引き続き「DXの取組み」に関しては経営課題として注目のワードとなりそうです。

 

有価証券報告書(研究開発)~カーボンニュートラル実現に向けた具体的な研究開発が進む~

有価証券報告書の「研究開発」のページでも中計同様、生成AI系ワードが企業出現数でトップとなりました。
出現業種としては、「情報・通信業」を中心に、「サービス業」「電気機器」などで多く出現しており、

・生成AIの活用を含むAIに関するニーズの引き合いを主として、一気通貫のオーダーメイドAI開発、ラボ型サービスの提供(株式会社トリプルアイズ・情報・通信業)
・生成AIをはじめとする最新のデジタルトレンドを牽引するスタートアップ企業への戦略的な投資を行う(株式会社日立製作所・電気機器)など

生成AIを活用したシステムを実際に提供する企業や、そうした企業へのイノベーション投資などを行う企業での出現が多く、今年もこの分野の開発がより一層進むものと予想されます。

 

続いて、「炭素排出量削減」というワードがランクインしました。「カーボンニュートラル」は2021年のホットワードでしたが、その後各社の中計、有報に数多く出現するようになったことから昨年対比でのホットワードという意味ではCCReB GATEWAYのワードクラウド上からは姿を消しつつありましたが、実際にそのカーボンニュートラルを実現するための具体的な研究開発に関して各社の戦略が具体的に記載されてきた模様です。

 

以上、2024年のビジネストレンドを予想するために、2023年の新登場ワードの分析を行いましたが、中計、有報のどの分野でも「生成AI」系ワードが圧倒的な上位を占め、出現業種としては、「情報・通信業」「電気機器」「サービス業」「化学」などで特に出現率が高いということが判明しました。生成AIの活用は今後さらにこれらの業種以外への広がりも予想されるため、ククレブ総研では継続的にウォッチを行うこととします。

2022年にはほぼ登場していないワードがこの1年で一気にビジネストレンドとして、実際のビジネスにまで組み込まれるという変化の早い時代において、今後も本サイトでビジネスのトレンドを定期的に発信して参ります。

B2Bポータルサイト“CCReB GATEWAY”は、企業の経営分析に必要な開示資料などを登録無料で取得することができるため、2024年の新年度に向け様々な分析を行いたいビジネスパーソンの皆様にぜひご活用頂ければ幸いです。

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ククレブグループでは、企業価値の創造に寄与するテックシステム・サイト運営を通じて本年も多くのビジネスパーソンの業務効率向上に貢献するべく、精進して参ります。

 

免責事項

※当レポートに掲載した図表は企業の開示資料において固定資産の売却/譲渡に関するリリース文書をもとに、ククレブ総合研究所にて集計しております。

※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではございません。また、本内容は現時点での判断を示したに過ぎず、データ及び表現などの欠落、誤謬などにつきましては責任を負いかねますのでご了承ください。当レポートのいかなる部分もその権利はククレブ・アドバイザーズ株式会社及びククレブ・マーケティング株式会社に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、無断で複製または転送などを行わないようお願いします。

 

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
不動産鑑定士
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超え、CRE戦略の立案から実行までを得意としている。
2019年9月に不動産テックを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。