総研レポート・分析

「高輪ゲートウェイ」駅周辺の開発動向

 JR山手線の田町駅~品川駅間に2020年3月14日に開業した「高輪ゲートウェイ」駅の1日平均乗車人員は、2020年度実績で6,785人となっている。JR東日本の駅としては「山形」駅(6,934人/日)や「熱海」駅(6,747人/日)程度の乗車人員に留まった。駅の出口から西側の国道15号(第一京浜)に出るには迂回する必要があり、山手線等の軌道の東側の港南方面へは駅からアクセスができないなど、新駅の利便性が発揮できない状況によるものと考えられる。
 
 しかしながら、2021年10月以降、高輪ゲートウェイ駅西側の品川車両基地跡地の大規模開発が順次着工している。事業主体のJR東日本から最新の計画が公表され、開発の内容が明らかになったため、本稿では当該計画の詳細及びインフラ整備も含めた周辺開発について整理し、紹介する。

都内有数の大規模開発

 JR東日本が高輪ゲートウェイ駅西側の品川車両基地跡地で開発を進める品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)・(仮称)高輪ゲートウェイシティは、2025年3月末までに、敷地に5棟の建物が建設される。総延床面積は約25.6万坪で、都内の開発計画の中では、「虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業(延床面積約26万坪)」や、完成はまだ先であるが4棟・延床面積約33.3万坪の規模で計画されている「内幸町一丁目街区」などに並ぶ規模の開発となっている。

 複合棟Ⅰ(North/South)は、高輪ゲートウェイ駅直結の街区で、国際的な大企業の本社機能の入居を想定したハイグレードオフィスや、国際会議の誘致も想定した大規模コンベンション・カンファレンス機能を備え、低層階にはルミネが運営する商業施設、South棟23~30階には「JW マリオット」が約200室で進出する。複合棟Ⅱは泉岳寺駅に隣接する街区に、オフィス機能をメインにフィットネス、クリニック等の機能を備える。文化創造棟は約1,500㎡の展示室や約1,200席のライブホールを備えたシンボリックな建物を予定。住宅棟は高級賃貸住宅を予定し、低層階にインターナショナルスクールを誘致して、入居者需要に対応する。ソフト面ではエリアマネジメント推進のための一般社団法人を設立し、駅周辺エリアのコミュニティ醸成や環境共生などの取り組みを行う。大規模開発として、立地のポテンシャルを活かした内容となっている。

 2025年3月に、複合棟Ⅰと高輪ゲートウェイ駅周辺の広場や歩行者デッキ等が整備完了し、高輪ゲートウェイ駅が全面開業となり、その他の3棟の開業予定は2025年度中となっている。

 複合棟Ⅰの南側の品川駅に近い区域には将来整備予定区域が残っているため、将来的にもエリアの成長性が見込まれる。

周辺の開発動向

 高輪ゲートウェイ駅北西側の国道15号沿いでは、京浜急行電鉄が「⑤泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業」に参画している。同社は品川駅周辺に約60,000㎡の土地を保有し、品川駅周辺の開発事業を重点施策としており、2028年3月竣工予定である。品川駅西側のシナガワグース跡地では共同事業者にトヨタ自動車を迎え、「⑥(仮称)品川駅西口地区A地区新築計画」を進めている。総事業費は1,000億円半ばと公表されており、2028年度に供用開始予定である。

 JR田町駅東口周辺では、2020年7月に「ムスブ田町ステーションタワー」2棟とホテル棟からなる再開発が完了したが、隣接地で東京工業大学田町キャンパス「⑨東京工業大学田町キャンパス土地活用事業」が計画されている。大学施設用途以外では、事務所、ホテル、商業施設、保育所、産学連携施設が予定されている。高輪ゲートウェイ駅の周辺地域でも、今後さらに街の機能更新が進んでいく見通しである。

 

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