時代の変化とテクノロジーの進歩により進化するスマートシティ

~上場企業の取り組みからスマートシティの変遷を追う~

 ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、以前からESG・SDGsの文脈で語られることの多い「スマートシティ」について、2018年から2021年の間に提出された有価証券報告書(以下「有報」)を“CCReB GATEWAY”のホットワード分析機能を利用して分析を行った。本レポートではスマートシティへの取り組みに関する大まかなトレンドについて分析を行った上で、特徴的な取り組みについて個別企業名を上げて考察を行う。

 

■外部環境の変化とともに取り組み主体も変化

<有報における「スマートシティ」の言及企業数の推移>

 

 上図は2018年から2021年に開示された上場企業の有価証券報告書内において、「スマートシティ」というワードを用いた企業数の推移を示している。スマートシティに取り組んでいるまたは検討している企業全てが必ずしも有報にて当該ワードを用いている訳ではないが、その企業数の推移は年々増加し、2018年はわずか5社であったものが、2021年には29社まで増加している。また、特筆すべきは業種の内訳に関する推移であり、2018年、2019年は都市開発を本業として行う「不動産業」や「総合商社(卸売業)」、スマートシティにおける電力制御等のインフラとなる機器の製造を行う「電気機器業」による取り組みが中心であったのに対し、2020年以降、「情報・通信業」による取り組みが著しく伸長している。これは、具体的な内容については後述するが、元々は省エネ等のエネルギー分野を中心に進められてきたスマートシティへの取り組みが、エネルギー分野に限らず「交通」「通信」「教育」「医療・健康」等の幅広い分野に対してIoTやAI、ビッグデータといった新たな技術を活用することで全体最適化が図られた持続可能な都市・地域を目指す取り組みへと変遷してきていることを端的に示すものであると考える。

 

■スマートシティにも新たな技術を活用したDX推進の流れが

<有報における「スマートシティ」言及企業の一覧>

 

 上図は、有価証券報告書内において「スマートシティ」について言及をした具体的な企業名の一覧である。これらの企業は、その取り組みの切り口からおおまかに4つに分類され、それぞれの特徴について以下の通り考察を行う。

①街づくり
 民間企業のスマートシティに対する取り組みは、街づくりを本業とする不動産デベロッパーや総合商社がいち早く名乗りを上げ、現在においてもその中心的役割を担っている。例えば三井不動産が手掛ける「柏の葉スマートシティ」は、住居・商業・オフィスに加え大学キャンパスも含めた大規模な都市開発となっており、公・民・学が連携した代表的なスマートシティである。日本における当初のスマートシティにおいては省エネルギーの観点が強かったが、柏の葉スマートシティは日本初のスマートグリッドを実用化した事例でもある。不動産業に次いで、本業の鉄道業と都市開発のシナジーから沿線開発に力を入れる鉄道企業も、街づくりの観点からスマートシティを推進する代表的な主体である。企業一覧に記載のある近鉄グループや南海電気鉄道においては、省エネや環境に配慮したスマートハウスの分譲や、ニュータウンに対してスマートシティの実装を試みる「SMART SENBOKU PROJECT」と呼ばれる取り組みを行っている。

②電気機器等の提供
 次いで早くから積極的な取り組みを行ってきたのが、スマートシティのインフラとなる電気機器の製造を行う企業群である。電気機器業の大手である日本電気や日立製作所は、スマートシティに用いられる大規模なエネルギーマネジメントシステム等を手掛けており、実際に日立製作所は前述の「柏の葉スマートシティ」においても中心的な役割としてプロジェクト発足時より参画している。

③AIなどの新たな技術の活用
 近年、スマートシティ事業への進出が著しいのが情報通信業である。これは官民データ活用推進基本法の施行(2016年)、基本計画の策定(2017年)により国や地方公共団体が所有するデータの公開に取り組むことが義務図けられたことに加え、コロナ禍により官民ともにDX推進の機運が高まったことでビジネスチャンスが増加したことが一因であると考えられる。行政サービスのデジタル化(いわゆるデジタルガバメント)に向けたアプリケーションやプラットフォームを提供する株式会社スマートバリューや、自治体のデジタルリスクの検知・セキュリティ保護システムを提供する株式会社エルテスはまさにこの文脈における事業を展開している。また、進歩が目覚ましいAIなどのデジタルテクノロジーのスマートシティへの活用事例として、ニューラルポケット株式会社は独自開発のAIアルゴリズムによる画像・動画解析技術を活用し、人や物の動き・行動の分析結果(混雑度分析、交通渋滞分析、防犯・セキュリティ対応)や人の属性分析結果(性別・年齢・服装等の分析による広告等への商業利用)のスマートシティへの実装に取り組んでいる。これらの企業は近年上場した企業が多く、ベンチャー企業が躍進していることも特徴的である。

④その他
 その他の企業群としては、不動産業に限らない大手企業が本業とのシナジーのために街づくりに取り組んだり、スマートシティ事業に参画する例が挙げられる。特に知名度が高い取り組みとしてはトヨタ自動車による「Woven city(ウーブンシティ)」であろう。自社の工場跡地に自動運転技術をはじめとする実験都市を開発するというプロジェクトである。同プロジェクトには、トヨタ自動車以外にもENEOSやNTT、日清食品等、様々な企業が参画する模様である。その他の事例として、コスモエネルギーホールディングスは会津若松市が取り組む「スマートシティ会津若松」に参画し、風力発電事業として「会津若松ウィンドファーム」を運営している。脱炭素の流れを受けて、石油・石炭業をはじめとするエネルギー関連企業は再生可能エネルギー事業への転換を図っており、大規模な製油所跡地において再生可能エネルギー施設や、水素製造・貯蔵施設を開発するケースもスマートシティとの連携が期待される取り組みである。

 

 以上、CCReB GATEWAYを活用して、上場企業のスマートシティに関する取り組みの動向について分析を行った。スマートシティという概念自体は相当程度以前から存在するものであるが、時代の変化やテクノロジーの進化も経て、概念や構想であったものが具体化・事業化してきており、取り組む主体や業種も広がってきている変遷を追うことができた。

 今回は「スマートシティ」に関する分析を行ったが、CCReB GATEWAYの“ホットワード分析機能”を活用することにより、様々な事業や経営上のキーワードに関するトレンドを把握することが可能です。CCReB GATEWAYは会員登録(無料)頂くことにより様々な分析を行うことが可能となりますので、本ページ右上の新規会員登録・ログインよりご登録の上、ぜひご利用ください。

 

(ご参考)ホットワード分析機能のご活用方法はこちらをご参照ください。

 

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