コロナ禍における上場企業の不動産保有傾向に関する考察

~帳簿価格の変動状況にみる上場企業のCRE戦略方針~

 ククレブ・アドバイザーズが提供する固定資産情報取得ツール「CCReB PROP」により取得可能な直近6年分(2016年~2021年)の固定資産情報をもとに企業用不動産の動向を分析した。

■長期化するコロナ禍を背景に上場企業のCRE戦略が活発化

 上場企業 約3,800社(2021年11月1日時点)のうち、2,351社(※1)における2016年~2021年の不動産保有状況(※2)の推移を帳簿価格に着眼して調査したところ、コロナによる経営への影響が通期で反映された2021年度(2021年1月~3月決算企業分)は土地・建物ともに過去5年の中で最低の増加率の状況であり、土地においては直近5年の中で唯一となるマイナスの増加率(=土地の売却・譲渡等)が確認された。

「CCReB PROP」抽出データより作成

 また、業種別(※3)での帳簿価格の増加率状況を調査したところ、2021年度は土地においては約7割、建物においては約4割の業種において2020年対比でマイナスとなっており、調査対象期間平均(土地:約4割、建物:約3割)と比較しても2021年度はコロナによる事業活動への影響に対し保有不動産を活用したセールアンドリースバックや物件売買等を通して資金調達を行う上場企業のCRE(Corporate Real Estate)戦略の活性化状況が窺える結果となった。

※1.調査対象期間(2016年~2021年)を通して共通して存在する前年対比分析が可能な上場企業を選定。
※2.「固定資産情報ダウンロード機能」に格納されているデータは、有価証券報告書に掲載されている第一部_第3「設備の状況」_2「主要な設備の状況」に掲載されている情報を基としており、企業が保有する全ての固定資産情報を網羅しているものではない。
※3.東証33業種のうち、「電気・ガス業」においては2020年4月の電気事業法改正に伴い電力会社各社が送電事業子会社を吸収合併したことにより、子会社の主要な設備が2021年度有価証券報告書より計上されていることから比較調査対象外とし、32業種における調査を実施している。

■製造業は既存不動産の活用、物流業界は新規不動産の取得

 前述の通り2021年は約7割の業種で前年対比の帳簿価格増加率がマイナスとなっているところ、コロナ禍にあっても堅調に土地・建物帳簿価格を積み上げている業種が見受けられた。2021年に増加率が伸長した業種は「電気機器」、「パルプ・紙」、「倉庫・運輸関連」の3業種が挙げられ、この3業種の帳簿価格の内訳をみると製造業種にあたる「電気機器」、「パルプ・紙」においては、既存土地・建物上での増改築等に起因すると思われる建物帳簿価格の増加が見受けられ、事業拡張や既存建物の老朽化、機能集約のために伴う投資活動がコロナ禍中も保有不動産上を中心に行われていることが推測される。

「CCReB PROP」抽出データより作成

 一方、「倉庫・運輸関連」においてはEコマース需要の更なる拡大見込み等を追い風に、コロナ禍においても新たに物流倉庫を自社保有することによる土地帳簿価格の積み上げが伸長している。物流業界においてはこの10年ほどで賃貸マーケットが形成され、所有ではなく賃借という概念が浸透した一方で、依然として倉庫の自社保有に対する一定の根強いニーズがあることが窺い知れる結果となった。

「CCReB PROP」抽出データより作成

 


 

固定資産情報取得ツール”CCReB PROP”
「CCReB AI」のAIエンジンを活用して、約3,800社(2022年2月1日現在)の上場企業が開示する有価証券報告書に掲載されいてる固定資産情報を抽出しリスト化するサービス