2025年経営ホットワードを占う!~2024年の新登場ワードから2025年を予想~
B2Bポータルサイト“CCReB GATEWAY”では、企業から発信される中期経営計画・有価証券報告書を解析、ワードクラウド形式で表示をしております。
ククレブ総研レポート2025年の第1号として、昨年のホットワードの分析とは切り口を変え、2024年に公表された中期経営計画書と有価証券報告書(当サイトでは、有価証券報告書の「事業方針(経営方針、経営環境及び対処すべき課題)」「事業リスク(事業等のリスク)」「研究開発(研究開発活動)」のページを個別に解析)から、“新登場ワード(※)”のみを検索し、2025年注目のホットワードを予想します。
※ここで言う新登場ワードとは、前年(2023年)において全く出現してないワード又は出現していたとしても上位100番以内にランクインされていないワードを指します。
>>2024年の経営ホットワード予測はこちら
中期経営計画書(中計)~投資系ワードが経営戦略のトレンドに~
2024年はおよそ1100社が中期経営計画を公表しましたが、これまでの投資政策が助長し、「投資加速」「成長力強化」「設備管理」といった投資系ワードが出現数でトップとなりました。
出現業種としては、「情報・通信業」を中心に、「食品」「機械」「化学」「卸売業」などで、
・成熟市場での経営効率化と成長領域への投資加速(キユーピー株式会社・食品)
・成長力強化のためのオンプレミスの更なるクラウドシフト推進(ピー・エー・シー株式会社・情報通信業)
・収益規模の拡大、フル操業を可能とする調達・設備管理体制の構築(日本紙パルプ商事株式会社・卸売業)
・グローバルでの設備管理標準化(帝人グループ・繊維製品)
など、アフター・コロナで日本経済は景気が回復基調に向かう中で、事業ポートフォリオの変革や新たなシステム・機械の導入など、持続的成長を見据えた積極的な未来投資を意欲的に行っている企業が増えていることが窺えます。
続いて、出現企業数トップとなったワードは「中東情勢」でした。
長期化するロシア・ウクライナ情勢にイスラエルとハマスの戦闘による中東情勢の緊迫化も相まって、エネルギー・原材料価格の高騰が継続した経営課題として取上げられています。
2025年においては昨年11月5日の米国大統領選挙におけるトランプ氏の勝利により2024年以上に世界に大きな変化が生じると予想されます。
こういった事業環境の変化を受け先行きが不透明な状況の中で、どう対処すべきか、各企業の打開策に投資家からの注目が集まりそうです。
また、「新規事業の育成」「政策の見直し」というワードも上位に立ちました。
経営の方向性が難しい世の中になってきた今、経営戦略の再考と新規ビジネスの創出により、株価を意識した戦略的な資本政策や持続的な企業価値の向上を掲げる企業が増えている事がみて取れます。
・新規事業の育成-第一次中計のテーマ「新規事業の創出」の次ステップとして収益化と出店加速、海外事業展開への本格着手-(株式会社アイスコ・卸売業)
・事業ポートフォリオと資本政策の見直しの基本方針(サワイグループホールディングス株式会社・医薬品)
2024年と比較し「新規事業」に関連するワードを言及している企業が約1.5倍に増加していることから、2025年は新規事業への着手および育成に注力する企業が依然として多くなるものと予想されます。
有価証券報告書(事業方針)~世界的な地政学リスクに注目~
有価証券報告書の「事業方針」のページでも中計同様、「AI関連投資」「研究投資」などの投資系ワードが出現数では上位にありつつも、出現企業数でみると中計にもあった中東情勢に付随して「世界的な地政学リスク」「国際情勢等の影響」のワードが浮上し、「パナマ」がトップとなりました。
「パナマ」はパナマ運河が2023年の記録的な干ばつで水不足となり、通船隻数の減少・航路変更を余儀なくされ、世界の海運が大きく変化しました。水量は回復したものの、未だ以前の通船隻数には戻っていません。
出現業種としては、やはりダイレクトに影響を受ける「海運業」「倉庫・運輸関連」を中心に、「食料品」「卸売業」などで、世界貿易に影響を与えていることから今後も深刻な状況が続くと予想され、「世界的な地政学リスク」は注目ワードとなりそうです。
有価証券報告書(事業リスク)~物流全般を意識した経営に注目~
有価証券報告書の「事業リスク」のページでは事業方針同様、パナマが出現企業数でトップとなりました。
出現業種としては「食料品」「化学」「電気機器」などで、食料品においては、海外調達している穀物などの原料や油脂の相場は世界の需給バランスの変化や海上運賃(フレート)の影響により大きく変化を受け依然として高い水準にあります。
加えて、パナマ運河の通航制限の事情も相まって調達コストの増加や安定調達にも懸念が生じ、
・相場変動に伴うコストアップ分や価格が高い時点で調達した原料在庫を販売価格に反映できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に大きく影響を及ぼす可能性(J-オイルミルズ・食料品)
・LNG、石油、石炭、電力等のエネルギーコスト急上昇、さらには水不足によるパナマ運河通航量低下、商業船攻撃対応によるスエズ運河回避などにより、多くの原料で入手困難、価格高騰、及び、納期遅延等のリスクが顕在化(artience株式会社・化学)
など、パナマ運河の水量不足による通航制限が、引き続き価格高騰に影響を及ぼす要因の一つになると予想されます。
また、「物流キャパシティ」というワードも上位に立ちました。
出現業種としては「小売業」「食料品」「化学」などで、今や日本の産業界を大きく揺るがす危機的な状況として「物流の2024年問題」に警鐘が鳴らされており、トラックドライバーの拘束時間の厳格化・ドライバー不足による輸送リソースの減少に伴い、「モノが運べない」可能性が懸念されています。
そうした中で、
・物流2024年問題により十分な物流キャパシティを確保できなくなった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性(株式会社アダストリア・小売業)
・人手不足やコンプライアンスの厳格化を背景とした物流コストの大幅な上昇や、物流キャパシティの逼迫による供給リスクが高まっている(ダイドーグループホールディングス株式会社・食料品)
・運送業の労働環境改善に伴う物流キャパシティ減少、世界情勢の悪化に伴うエネルギー供給の不確実性など大きなリスクが生じており、重大なリスク要因として認識(カーリットホールディングス株式会社・化学)
など、必要な物流キャパシティの確保にあたり、外部配送企業との提携や、輸送生産性の向上・物流効率化を目指す「ホワイト物流」推進運動に準拠した取り組みを行っている企業もあることから、「物流キャパシティ」は注目ワードになると予想されます。
続いて、出現数では「DXツール」を筆頭に、「物流DX」「金融DX」「インフラDX」といったDXを含めたワードが多数浮上し、各業界で業務効率や生産性の向上のためDX推進に取り組む企業が年々増加していることが窺えます。
一方で、
・進化するデジタル技術を効果的に活用することができず、新たな市場機会を失うだけでなく、市場ニーズを適切に反映できずに売上収益を失うことにつながり、将来における当社グループの業績に大きな影響を与える可能性(三菱ケミカルグループ株式会社・化学)
・情報の漏えい・不正利用、システムダウンによる事業停止、法令違反といった重大事故が発生する可能性(ローム株式会社・電気機器)
など、DXツール導入により想定される事業リスク及び影響の大きさに危機感を覚え、教育体系やガイドラインの整備、高度な情報管理能力の必要性を感じている企業もあることから、リスクマネジメントへの強い関心を示す企業も比例して増加すると予想されます。
有価証券報告書(研究開発)~新システムの研究開発が進む~
有価証券報告書の「研究開発」のページでは、「ナビゲーションシステム」がトップとなりました。
出現業種としては、「建設業」を中心に、「輸送機器」「電気機器」などで多く出現しており、
・清水建設株式会社、戸田建設株式会社、前田建設株式会社、エフティ―エス株式会社と共同で山岳トンネルの「吹付ナビゲーションシステム(ヘラクレス-Navigator)」を開発(西松建設株式会社・建設業)
・カーナビゲーションシステムで培った位置情報活用・分析技術、プラットフォーム技術、ソフトウェア開発力を活用し、物流支援、道路維持管理、地域移動支援など移動に関するソリューションをソフトウェアやサービスとして提供(株式会社アイシン・輸送用機器)
・大画面9V型の高精細HDパネルを搭載し、ハイレゾ音源再生に対応するAVナビゲーションシステムを開発、商品化(株式会社JCVケンウッド・電気機器)
など、労働人口の減少や働き方改革が叫ばれる中、デジタル技術の導入により生産性を高めこれらの課題解決を図るため、建設業界を中心に積極的なシステム開発が行われている模様です。また、多様化するシステム市場の中で競争優位性のある技術開発がより一層求められると予想されます。
続いて、「生産計画」というワードが上位にランクインしました。
出現業種は「電気機器」「鉄鋼」などで、
・印刷データ入稿から甲峰・出荷まで工程全体進捗をリアルタイムでみえる化することで、効率的な生産計画の作成や修正を可能(コニカミノルタ株式会社・電気機器)
・日鉄ソリューションズ㈱と共同で、数理最適化技術を応用し、製鋼工程における生産計画を高速立案する出鋼スケジューリングシステムを開発(日本製鉄株式会社・鉄鋼)
など、更なる生産性の向上のため潜在ニーズに応えるべくハイグレードな機器の研究開発を追求する企業が益々増えてくることが予想されます。
以上、2025年のビジネストレンドの予想として2024年の新登場ワードの分析を行いましたが、中計では「投資加速」や「新規事業の育成」など、株価を意識した戦略的な資本政策を意識した経営戦略に纏わるワードが上位を占め、有報では中東情勢やパナマなどの「世界的な地政学リスク」「物流問題」といった経営を取り巻く環境や「DX」関連のワードが上位を占める結果となりました。
コロナ禍中の数年にわたる投資抑制、また、マーケットでの生き残りをかけた企業価値向上を背景とした積極的な成長投資が今後どのような影響をもたらすか、重要な局面に差し掛かってくると言えます。
また、世界情勢の悪化による物流問題に大きな焦点があてられました。マーケット価格の高止まりや急激な為替変動、調達コスト・安定供給への懸念など、環境が目まぐるしく変化する中で多角的な視点からリスク回避における企業の迅速な対応力が求められると考えられます。
ククレブ総研では今後も継続的に企業の経営動向を調査し、本サイトで経営トレンドを定期的に発信して参ります。
B2Bポータルサイト“CCReB GATEWAY”は、企業の経営分析に必要な開示資料などを登録無料で取得することができるため、2025年の新年度に向け様々な分析を行いたいビジネスパーソンの皆様にぜひご活用頂ければ幸いです。
ククレブグループでは、企業価値の創造に寄与するテックシステム・サイト運営を通じて本年も多くのビジネスパーソンの業務効率向上に貢献するべく、精進して参ります。
免責事項
※当レポートに掲載した図表は企業の開示資料において固定資産の売却/譲渡に関するリリース文書をもとに、ククレブ総合研究所にて集計しております。
※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではございません。また、本内容は現時点での判断を示したに過ぎず、データ及び表現などの欠落、誤謬などにつきましては責任を負いかねますのでご了承ください。当レポートのいかなる部分もその権利はククレブ・アドバイザーズ株式会社及びククレブ・マーケティング株式会社に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、無断で複製または転送などを行わないようお願いします。
監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超え、CRE戦略の立案から実行までを得意としている。
2019年9月に不動産テックを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。