企業がエネルギーコストを削減する方法とは?効果的なエネルギーマネジメントの仕方や昨今のエネルギーコストの推移を分かりやすく解説!
エネルギーコストとは、企業内で使用する電気代をはじめとするインフラコストを意味します。
インフラにおけるコスト削減となると「何らかの大きな見直しが必要」だと感じる方も多いです。しかし実際は日ごろから意識を持つことで、コスト削減に繋げることができます。
この記事では、企業経営のなかで発生するエネルギーコストの種類と削減方法、さらに大企業の取り組みまで解説します。
本記事を読んで、エネルギーコストの削減に役立ててください。
エネルギーコストの削減は企業の業績に直結する重要な課題
エネルギーコストを削減することで、経営状態の改善を図ることができます。
企業活動はインフラによって存続が支えられているため、エネルギーコストは企業活動において必要不可欠です。
日々の企業活動のなかで発生するエネルギーコストの削減は、長期的な支出改善につながるため企業の経営において大きな効果をもたらします。
また、近年では環境の変化からよりエネルギーコストに注目が集まっています。
昨今のエネルギーコストの推移と現状
経済産業省によると、東日本大震災以降電気料金は毎年上昇傾向にあります。
その要因は、原油の高騰と再生エネルギーにかかるコストです。
世界的に見ても日本の電気料金水準は、家庭用や産業用の区別に関係なく高いものになっています。
出典:経済産業省資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」」
企業のエネルギーコスト削減が求められる背景
一般的に身近にあるガスや電気は、石油や石炭、天然ガスから目的に応じて加工され、利用できる状態になっています。
石油や天然ガスといった原料となる資源は、限りがある資源です。
我々は「いつか底をつく可能性がある資源」を使用しているため、利用機会が多い企業に対してエネルギーコストの削減が求められているのです。
例えば石油であればあと50年、石炭であればあと110年程度で底をつくといわれています。
出典:関西電力「大人も学べる!教えて!かんでん」
企業の経費は3つに分類できる
企業の経費は、オフィスコスト、エネルギーコスト、オペレーションコストの3つに分類できます。
このなかで、もっとも削減しやすく経営改善に直結するのがエネルギーコストです。
本章では、3つのコストの内容とエネルギーコストが削減しやすい理由について解説します。自社のコストを見直す際にぜひ参考にしてください。
オフィスコスト
オフィスコストとは、オフィスを使用する際に必要なコストで、代表的なものに次の5つが挙げられます。
- 家賃
- 備品消耗品
- ソフトウェア
- 通信費
- 印刷代
この中で近年削減の取り組みが行われているものがコピー用紙です。
コロナ禍の影響もあり、ペーパーレス化が急速に進みました。コピー用紙による書類のやり取りからデジタルによる書類管理に以降した企業が増え、多くの企業でコピー用紙代の削減につながりました。
ほかにも、通信費の削減も比較的簡単に行うことができます。
契約している会社を切り替えることで、コストカットの工夫ができます。
オフィスコストを削減する場合は、常に「どこで仕入れれば安く済むか」「どこを利用すれば経費が抑えられるのか」といったアンテナを張ることがポイントです。
エネルギーコスト
企業にとって、代表的なエネルギーコストは「水道光熱費」です。
エネルギーコストは日々の業務において必要不可欠であるため、オフィスコストと同様に見直しを行うことで大幅なコストカットにつながります。
エネルギーコスト削減の取り組みは「使用していない部屋の電気は消す」といった個人単位のものもあれば、会社単位で契約企業を変更するといった工夫もあります。
また「コスト見直しによってどれくらいの成果が上がるのか」といった予測を数字で検討できるのも特徴です。
オペレーションコスト
オペレーションコストとは、物流費や人件費があてはまります。
オペレーションコストは、他のコストと異なり削減するのが難しい経費です。
物流の整備には複数の関係者を巻き込んだ検討が必要になり、人件費を下げる場合も従業員のモチベーションの低下につながる可能性があるため、容易に下げることができません。
オペレーションコストの削減はインパクトが大きい分、見直すのに時間がかかってしまうため比較的難しい打ち手のひとつです。
エネルギーコストを削減するための3ステップ
エネルギーコストを削減するためには、取り組む順番があります。
以下の3つのステップを行うことで、エネルギーコストの削減に取り組んでください。
1. コスト削減の目的と目標を明確にする
2. 使用状況の見える化を図る
3. 使用方法を分析する
各ステップについて、以下で詳細に解説していきます。
ステップ1:コスト削減の目的と目標を明確にする
エネルギーコストの削減に取り組むにあたって、まずは目的と目標の設定が必要です。
企業内で目的と目標が明確でない状態でコスト削減に取り組んだとしても従業員への浸透は期待できません。
コスト削減は継続的に行うことで成果に現れるため、組織内で目的や目標を共有しておくことが重要です。
ステップ2:使用状況の見える化を図る
目標が達成できているのかどうかを知るためにも、エネルギーコストの使用状況を見える化する必要があります。
使用状況を見える化することで、データ化が可能になるため目標に対してどの程度達成できているのかが分析しやすくなります。
また使用状況を見える化することで、現状把握についても役立つため、目標の振り返りにも活用できます。
ステップ3:使用方法を分析する
エネルギーコストの見える化ができれば、現状どのような状況にあるのか、どの程度目標が達成できているのかを把握できます。
それらを把握した後、エネルギーコストを使う上でコスト配分の見直しや、供給会社の再検討を行うことでエネルギーコストの削減を図ります。
また現状のコストの分析を行う際は、問題点の把握だけでなく、それまでの取り組みでどの程度の効果があったのかを知ることも重要です。
思うように効果が出ていなかった場合は「何が原因なのか」、効果が出ていた場合は「最も効果があった方法はどれか」などを分析し、今後に活かしましょう。
コスト削減のための取り組み
コスト削減のための3ステップを一連の流れと捉え、継続していくことが大切です。
エネルギーマネジメントは、コストカットだけでなく環境に配慮した取り組みにもつながります。
また、次のような取り組みも些細なことに見えますが、従業員全員で取り組むことで大きな効果が期待できます。
- 新電力の採用
- こまめな電源オフ
- ガス自由化を利用したガス代の削減
- 節水対策
エネルギーコスト削減の取り組みは、具体的な取り組み内容から分析に至る一連の流れを継続することで効果を感じることができます。
手軽に始められる企業のエネルギーマネジメント
エネルギーマネジメントとは、使用エネルギーを見える化し効率的に使用するための活動を指します。
本章では今すぐに取り入れられる、手軽なエネルギーマネジメント方法を4つ紹介します。
本章で取り上げる方法は、個人の日常生活の延長線上で誰でも気軽に取り入れることができます。
ここでは、すぐに始められる4つのポイントについて解説しているので参考にしてください。
ポイント①:深夜時間帯の電気機器の電源を切る
会社でよく見られるケースに、「退社後の誰もいない部屋で空調機が動き続けている」といった状況があります。
建物によっては、空調を一括管理している企業もありますが、部屋ごとに設置している空気清浄機や加湿器、スポットライトなどが退社後にも作動しているケースはよく見られます。
全員が退社するタイミングで必要のない設備の電源を切ることで節電ができます。
ポイント②:長持ちするLEDを使用する
LED電気は半永久的に光るといわれている、発光ダイオードがもとになっている電気です。
白熱電球の寿命は1,000〜2,000時間程度、蛍光灯の寿命は1万3,000時間程度といわれています。
一方、LED電球であれば約4万時間持つため、他の電球に比べて非常に長持ちです。
4万時間交換の必要がないLED電球であれば電球購入コストが下がり、消費電力も20%ほど低く抑えられるので、電気代の節約にもつながります。
ポイント③:エネルギー効率の高いオフィス機器を導入する
オフィス機器を購入するときは「省エネラベル」の記載がある機器の購入がおすすめです。
省エネラベルは2006年から開始された制度で、省エネ性能が優れた製品に付けられます。
省エネラベルには、年間で消費する電気量と1年間使用し続けた場合の電気代の目安が記載されているため、エネルギーコストを気にしている企業におすすめです。
出典:経済産業省資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
ポイント④:事業の推進に再生可能エネルギーを活用する
事業の推進にあたって再生可能エネルギーを活用することで、エネルギーコストを削減することができます。
例えば企業内で活用する電気を太陽光発電による蓄電でまかなうことで日頃のエネルギーコストの節約にもつながり、災害時の電力としても使用可能です。
また、環境に配慮した再生可能エネルギーを活用することで、企業イメージの向上が図れます。
出典:環境省「再エネスタート」
エネルギーコスト削減を成功させた具体的な事例・方法
業種により、効果的なエネルギーコストの削減方法は異なります。
初めてエネルギーコストの削減を意識する企業では、何から手を付ければよいかわからない場合が多いです。
本章では、エネルギーコストがかかりやすい製造業・小売業・飲食業で実施できるコストカットの導入事例や、具体的な方法についてご紹介します。
これらの業種に当てはまる企業の方はぜひ参考にしてください。
事例①:製造業
製造業において、太陽光ソーラーパネルと風力発電により、工場で使用する電力を削減している事例があります。
太陽発電は日照時間により工場で使用する電力の全てをカバーできないため、風力発電を併用することで、100%自家発電で運営しています。
再生可能エネルギーのみで稼働できる工場なのでSDGsへの取り組みとしてもアピールできる事例です。
出典:経済産業省 ミラサポplus「事例から学ぶ!「コスト削減」」
事例②:小売業
2つ目の事例は、小売業で空調設備の取り扱い方に工夫を凝らし、コスト削減につながった事例です。
次の4つを意識することで、コスト削減につながります。
- 予冷・予熱時には建物内に外気を入れない
- 冷暖房の設定温度を冷房は28度、暖房は30度に設定する
- 冷暖房の運転時間を短縮する
- ダクト内の清掃はマメに行い、点検を怠らない
また、最近の電気設備は節電を意識した商品が多いので、節電を意識した設備に買い替えるなど工夫を行うことでコスト削減を図ります。
出典:環境省「環境省レポート」
事例③:飲食業
来客数の分析によってコスト削減を行った飲食店の事例があります。
飲食店は来客するお客様のことを考えて経営しているため、エアコンや照明器具の使用時間を簡単に減らすことはできません。
そのような中、来客が多い時間帯を分析し、コアタイムに合わせてエアコンの温度や照明器具の明るさなどを調節することでコストの削減を図ります。
来客数が少ない時間帯とコアタイムでメリハリをつけることにより、光熱費のコストカットにつなげています。
出典:農林水産省「一般飲食店における省エネルギー実施要領」
エネルギーコスト削減に関するよくある質問
ここまでエネルギーコストの種類や削減方法について解説してきました。
本章では、エネルギーコストに関するよくある質問についてQ&A形式で回答しています。
特に日本政府が行っている取り組みやエネルギーコストに関して日本が抱える課題について回答しているので、ぜひ参考にしてください。
エネルギーコスト削減のために日本政府が行っている取り組みは?
日本政府は「第6次エネルギー基本計画」として、2050年を目標に「カーボンニュートラル」と呼ばれる脱炭素を目指しています。
世界では、発電で発生する炭素をゼロにすることで、地球温暖化の改善を図るとともに、環境にやさしい世界の実現を目指しています。
また、現在発電の燃料としている資源はいずれ底をつくと言われており、今の燃料に代わるものが必要です。
資源調達と地球環境への配慮の両面から最も効果があるカーボンニュートラルは、日本政府が積極的に取り組む内容になっています。
出典:経済産業省資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルを目指す 日本の新たな「エネルギー基本計画」」
エネルギーコスト削減に関して日本が抱える課題は?
国単位で環境に配慮した取り組みが進められている昨今、日本においてもエネルギーコストの削減が注目されています。
しかし、日本では世界と比べてエネルギーコストの削減による取り組みが遅れています。普及が進まない理由として日本特有の問題点が3つあります。
- 再生可能エネルギーは日本の自然環境が影響している
- 余剰電力を有効活用できない
- 再生可能エネルギーの製造コストが高くなかなか浸透しない
太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを活用する場合、その効果は自然環境に大きく依存します。
例えば太陽光発電であれば日照時間により発電量が左右され、風力発電であれば風況に左右されます。
他国と比べて再生可能エネルギーの生成に適した環境を持たない点が、日本の取り組みが遅れている原因の1つです。
また、現在の日本では余剰電力の有効活用ができないこともエネルギーコストの削減による取り組みが遅れている原因です。
さらにエネルギーコストの削減において世界から後れを取っている最も大きな原因は、再生可能エネルギーによる発電コストが高いことにあります。
コストが高いことで、一般的な企業による再生可能エネルギーの活用が現実的でないため、多くの企業がエネルギーコストの削減に取り組めていないのが現状です。
出典:経済産業省資源エネルギー庁「資源エネルギー庁がお答えします!~再エネについてよくある3つの質問」
エネルギーコストを削減してより良い企業経営を目指そう
企業が今すぐできるエネルギーコストの削減は、マメに電気を切ることに代表されるように小さな1歩を踏み出すことです。
また、企業単位でエネルギーコストの削減に取り組むことが、日本全体のエネルギーコストの削減と再生可能エネルギーの普及に役立ちます。
エネルギーコストの削減を行う際は、取り入れたコストカットの方法をデータ化して分析・検証することで経営改善につなげることが可能です。
継続的なエネルギーコスト削減に関する取り組みは、企業経営にとってプラスに働くので、本記事を参考に取り組みを進めてください。
監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。
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