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量子コンピュータとは?仕組みや種類、日本企業での実用化、企業が活用するメリットを分かりやすく解説!

量子コンピュータとは量子力学の原理を応用して、情報処理を行うコンピュータのことです。

量子コンピュータは従来のコンピュータと違い、複雑な処理を高速で行うことができます。具体的には、量子コンピュータの並列計算を活用することで、従来のコンピュータの1億倍の処理を可能にします。

そのため、量子コンピュータを活用することで従来のコンピュータでは出来なかったデータ解析や商品・サービスの開発が可能となります。

本記事では、量子コンピュータと従来のコンピュータの違いや量子コンピュータを実用化することで起こる社会の変化について紹介します。

また、企業が量子コンピュータを活用することのメリットについても紹介するので、将来的に量子コンピュータを活用する際の参考にしてください。

量子コンピュータとは?

量子コンピュータとは?

量子コンピュータとは、物質を構成する量子の持つ特性を活かして情報処理を行うコンピュータのことです。

量子コンピュータは、従来のコンピュータと比べて高性能であり、これまでできなかった複雑な情報処理が行えます。

量子コンピュータの実用化に向けた取り組みは現在も進められており、近い将来量子コンピュータが社会へ浸透していくことが期待されています。

量子コンピュータが注目される背景

量子コンピュータは、従来のコンピュータができなかった複雑な情報処理を行うことができます。

具体的には、従来のコンピュータでは開発することのできなかった薬剤や機械類の開発が可能です。

量子コンピュータが実用化されることは社会に大きな変化をもたらすため、多くの企業から注目を集めています。

量子コンピュータの実用化へ向けた課題

量子コンピュータの実用化には、依然として多くの課題が残されています。

例えば、量子コンピュータを使いこなすことができる「量子人材」の不足があります。

量子コンピュータの実用化のためには、それらを開発する優れた技術・知識を持った人材が必要です。多くの量子人材を育成することが、今後の量子コンピュータの実用化に向けた課題のひとつです。

量子コンピュータと従来のコンピュータの違い

量子コンピュータと従来のコンピュータの違い

量子コンピュータと従来のコンピュータは、情報処理の仕組みが大きく異なります。

仕組みが異なることで、それぞれのコンピュータによって得意不得意が分かれ、活用する場面も異なります。

量子コンピュータが従来のコンピュータとどのように違うのかを理解することで、量子コンピュータができること、できないことを判断し、適切な場面で活用することが可能です。

以下で、量子コンピュータと従来のコンピュータの仕組みの違いを確認するので、量子コンピュータの活用に役立ててください。

従来のコンピュータの仕組み

従来のコンピュータは情報処理を行う際に「0か1」という2通りの状態で表す「ビット」を最小単位として扱っています。

従来のコンピュータの情報処理では、0または1のどちらかの状態を示すことができる反面、2つ以上の状態を同時に表すことができませんでした。

そのため、複雑な情報処理を行う際に多くの時間が必要になることや、2つ以上の状態を表現できないといった課題がありました。

量子コンピュータの仕組み

量子コンピュータは情報処理を行う際に、「0と1の両方を重ね合わせた状態」をとる「量子ビット」を使って計算します。

量子コンピュータは「0か1のいずれか」などの重ね合わせた状態を表現できるため2つ以上の複雑な数字を表現することが可能です。そのため、膨大な数の組み合わせを同時に計算することができます。

このような仕組みの違いから、量子コンピュータは従来のコンピュータと比べて高速で複雑な計算が可能となるのです。

量子コンピュータの方式

量子コンピュータの方式

量子コンピュータには、2つの方式が存在します。

各方式の特徴を知ることで、より量子コンピュータの理解が深まります。

量子コンピュータの方式は以下の2つです。

  • 量子ゲート方式
  • 量子アニーリング方式

量子ゲート方式と量子アニーリング方式、それぞれの方式の違いについて解説します。

方式①:量子ゲート方式

量子ゲート方式とは、量子状態の素子の動きや組み合わせから計算回路を作成し問題解決にあたる方式のことを指します。

量子ゲート方式を用いることで、素因数分解やデータベース検索といった多様な情報処理をこれまでにないほど高速に解くことが可能です。

量子ゲート方式は1990年代頃から研究開発が進められており、現在主流の開発方式です。

昨今ではIBMやGoogleも量子ゲート方式の研究に多額の費用を投じていますが、2022年12月時点では開発・実験段階にあります。

方式②:量子アニーリング方式

量子アニーリング方式とは、組み合わせを最適化して問題解決にあたる方式を指します。

量子アニーリング方式を用いることで、乗換案内のような出発地と目的地とを結ぶ「最適」な経路の探索が可能となります。

量子アニーリング方式は、1998年に東京工業大学の西森教授らによって提案された開発方式です。

量子ゲート方式と同様に、多くの企業が開発を行っています。

量子コンピュータの実用化で起こる社会の変化

量子コンピュータの実用化で起こる社会の変化

量子コンピュータが実用化されることで、社会に大きな変化をもたらします。

量子コンピュータが社会にもたらす変化として、代表的なものは以下の3つです。

  • 自動運転
  • 新薬の開発
  • 暗号読解

それぞれ確認します。

自動運転

量子コンピュータが実用化されることで、自動運転が可能になると言われています。

玉川大学量子情報科学研究所の研究グループは、自動運転に応用可能な量子レーダーカメラの設計法を確立したことを発表しています。

量子レーダーカメラを自動運転に活用することで、悪天候下でも車両の周囲や進行方向の遠方を明確に把握することが可能です。

量子コンピュータが実用化されることで、より安全性の高い自動運転が可能となります。

現在では、デンソーなどの大手自動車メーカーも自動運転のための量子コンピュータの開発に力を入れています。

出典:玉川大学[研究所]「【量子情報科学研究所】自動運転に応用可能な量子レーダーカメラの設計法を確立

新薬の開発

量子コンピュータが実用化されることで、新薬の開発が可能になると言われています。

新薬の開発には、複雑で膨大な量の計算が必要です。

量子コンピュータが実用化されることで、従来のコンピュータではできなかった複雑で膨大な量の計算を高速で行うことができます。

標的の疾患に対して多くのテストを行えるため、疾患に適した新薬の開発が可能です。

暗号読解

量子コンピュータの実用化には、メリットだけでなくリスクも伴います。

量子コンピュータを活用することで、暗号の読解が容易になる可能性があります。

そのため、量子コンピュータの実用化に対抗して、金融機関はこれまでの暗号やセキュリティ対策に代わる新たな対策の開発が求められます。

量子コンピュータの実用化は、暗号読解のように社会に対してデメリットをもたらす恐れがあることも事実です。

企業が量子コンピュータを活用するメリット

企業が量子コンピュータを活用するメリット

量子コンピュータを活用することで、これまでにない速度の情報処理が可能となります。

従来のコンピュータと比べて性能の高い量子コンピュータを活用することで、企業としても様々なメリットを得ることができます。

企業が量子コンピュータを活用するメリットは、主に以下の3つです。

  • データの解析技術を向上させることができる
  • 新たな商品・サービスの開発につながる
  • 消費電力を抑えられる

企業が量子コンピュータを活用するメリットを、それぞれ確認します。

メリット①:データの解析技術を向上させることができる

企業が量子コンピュータを活用することで、社内で扱う様々なデータの解析技術を向上させることができます。

データの解析技術を向上させることで、市場の調査やマーケティングに役立てることができます。

量子コンピュータを活用することによりこれまで以上に優れたデータ解析が行えるため、より良い経営戦略の立案が可能となります。

メリット②:新たな商品・サービスの開発につながる

量子コンピュータを活用することで、従来のコンピュータでは開発できなかった新たな商品・サービスの開発が可能となります。

量子コンピュータによってこれまで実装できなかった複雑な処理を可能にした商品・サービスを開発することができれば、他社との差別化につながります。

メリット③:消費電力を抑えられる

量子コンピュータは、消費電力が少ないという特徴があります。

企業においても、従来のコンピュータと比べて消費電力の少ない量子コンピュータを活用することで、経営にかかるコストの削減を図ることができます。

また、消費電力を抑えることで環境に対する負担を減らすことができるため、企業の社会的責任を果たすことも可能です。

量子コンピュータに関するおすすめの本

量子コンピュータに関するおすすめの本

量子コンピュータに関する理解を深めるためには、本を活用した学習が有効です。

量子コンピュータの仕組みや社会へ与える影響を知りたい方には以下の3冊がおすすめです。

  • 量子コンピュータが本当にわかる
  • 図解入門 よくわかる最新量子コンピュータの基本と仕組み
  • 量子コンピュータが変える未来

それぞれ、本の内容を紹介します。

量子コンピュータが本当にわかる

『量子コンピュータが本当にわかる』は、量子コンピュータを開発する研究者が執筆した書籍です。

本書は、量子コンピュータの情報処理機能の仕組みや種類や長所・短所、将来の展望などが分かりやすく記載されています。

これから量子コンピュータの仕組みや機能について学びたい初心者の方におすすめの一冊です。

図解入門 よくわかる最新量子コンピュータの基本と仕組み

量子コンピュータの仕組みは複雑であり、初心者の方が理解するためには多くの時間がかかります。

『図解入門 よくわかる最新量子コンピュータの基本と仕組み』は、量子コンピュータの基本的な知識を図解で説明しています。

初めて量子コンピュータについて学ぶ方でも、図解による説明があるため理解がしやすいでしょう。

量子コンピュータが変える未来

量子コンピュータが実用化されると、産業や我々の生活など社会が大きく変化することが予想されています。

『量子コンピュータが変える未来』には、量子コンピュータの実用化による社会の変化が示されています。

量子コンピュータの実用化に伴う社会の変化を理解し、今後のビジネスに活かしていきたいと考えるビジネスパーソンや経営者におすすめの一冊です。

量子コンピュータに関するQ&A

ここまで量子コンピュータが実用化された場合の社会の変化や企業が活用することのメリットについて紹介しました。

最後に、量子コンピュータに関してよくいただく質問をまとめています。

Q&A形式で紹介するので、ぜひ参考にしてください。

量子コンピュータは万能ではない?

量子コンピュータはどのような計算でも高速に解けるわけではありません。

従来のコンピュータと比べて、計算の高速化が期待できるものは限定的です。

例えば、量子コンピュータを活用してもエクセルの表計算の高速化は不可能と言われています。

量子コンピュータを活用すべき処理とそうでない処理があるため、量子コンピュータの仕組みを理解し、適切なタイミングで活用してください。

量子コンピュータの開発はいつ頃始まった?

量子コンピュータの概念が初めて考えられたのは1981年です。

従来のコンピュータの性能に限界を感じた、ノーベル物理学賞受賞者のリチャード・ファインマン教授によりアイデアが発案されました。

その後、1995年に量子コンピュータの理論が考え出され、初のハードウェアが登場したのは1999年です。

現在でも量子コンピュータの開発に向けて、各国や企業による研究が進められています。

量子コンピュータが実用化することでより良い社会が実現する

量子コンピュータの実用化は急速なスピードで進められています。

量子コンピュータが一般的に活用されることで、産業や社会に大きな影響をもたらすことが予測されます。

量子コンピュータの実用化に伴い、企業の経営戦略や我々の生活様式も大きく変化するため、今のうちから量子コンピュータの仕組みや活用方法について理解しておくことが重要です。

量子コンピュータを正しく理解するために本記事を参考にしてください。

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。

 

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