国内上場企業におけるエリア別の従業員数の動向(2021年)~市区町村編①(東京都)~
東京都の従業員数は都心部ほど増加が顕著、神奈川・千葉・埼玉は業種毎に特徴が
ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、2018年から2021年の間に提出された全上場企業の有価証券報告書に記載されている事業所毎の従業員等について集計を行い、その動向について分析を行った。(※有価証券報告書の記載例については本レポート末尾参照。)
前回レポートでは、都道府県別に従業員数の動向を観察したところ、コロナ禍においても2021年時点では東京都や大阪府等の都市部の従業員数が増加し、地方都市においてはコロナ禍に限らない業界大手企業の移転・撤退による従業員数の減少が観察された。(ただし、小売業においては東京都の従業員数は大幅減少した。)
今回は、分析対象を都道府県のメッシュから市区町村のメッシュにドリルダウンし、関東エリアについて観察を行ったところ、都道府県ごとに特徴のある動きがみられた。例えば東京都は、総じて港区・千代田区・渋谷区等のより都心エリアでの従業員数の増加が見られたが、神奈川・埼玉・千葉になると、必ずしも都心エリアにとらわれない動向が観察された。市区町村編第一回目の本レポートでは東京都の市区町村別の動向について取り上げる。
東京都 – 都心部ほど従業員数の増加が顕著に
東京都は対象期間において最も従業員数が増加した都市であるが、市区町村別により詳細に分析を行ったところ、その中でも港区・千代田区・渋谷区等の都心エリアで特に増加の傾向が顕著に見られた。以下、特に従業員数の増加が目立つ業種に絞って考察する。
<卸売業>
卸売業では港区での従業員数の増加が最も多く、次いで千代田区・文京区等が増加している。本業種においては、多くの従業員数を抱える総合商社及びそのグループ会社の移転・再編による影響が大きく表れており、三菱商事グループである三菱食品の文京区区への集約移転や住友商事の千代田区への移転等、よりグループ本社の至近かつビジネスの中心地へとグループ企業を集結させる動きが見られた。総合商社以外の各企業でも同様により東京都心部への従業員の集中の動きが散見され、アパレル企業のワールドは、依然として本社は兵庫県神戸市に置いているものの港区へと従業員の比重を移している動きが観察された。
<情報・通信業>
情報・通信業では港区での従業員数の増加が最も多く、次いで品川区・墨田区、中央区・千代田区・新宿区・渋谷区も多い。個別の市区町村の増減については、ソフトバンク(港区)や富士ソフト(墨田区)等の大手企業の人員配置の変化による影響も大きいものの、本業種は他業種と比較して東京都ほぼ全域で従業員数が増加しており、コロナ禍以前からのIT人材の需要の高まりが窺い知れる結果となった。
<空運業>
空運業は大田区・品川区といった羽田空港に近いエリアで従業員数の増加がみられた。同業種は特にコロナ禍の影響を受けた業種の一つになるが、今回の観察期間においては各企業における従業員数の総数は大きく変化していない一方で、人員の再配置の中で羽田エリアの従業員数が増加していた。特に日本航空がその動向が顕著であった。
2022年3月期決算企業による決算発表に注目、神奈川・埼玉・千葉エリアレポートは近日公開予定
本レポートでは、前回の都道府県別レポートから引き続き、市区町村別の従業員数の動向について分析を行ったが、分析のメッシュをより細かくすることで空運業のようにコロナ禍が影響しているであろうエリア及び業種も見て取ることができた。一方で、本社機能やグループ企業を都心部へ集中させる動きはコロナ禍以前からの世の中の流れであったことが考えられることから、これらの動きが今後も継続・加速するのか、または新たな動きが起こるのか、今後、6月にかけて多くの企業で決算発表を迎えることから引き続きその動向に注視していきたい。市区町村編レポート②(神奈川県・埼玉県・千葉県)についても、近日中に公開予定である。
※有価証券報告書の記載例
有価証券報告書の「設備の状況-主要な設備の状況」の項目には、事業所名とその所在地、事業所の使用用途、土地面積、土地・建物等の金額とその場所に勤務する従業員数が記載(下図)されている。ククレブ・アドバイザーズ株式会社では、2016年以降、各年の上場企業の主要な設備の状況について、Excelリストとして一覧データを提供するサービスを提供している。詳細はサービス紹介ページをご参照のこと。
固定資産情報取得ツール”CCReB PROP”
「CCReB AI」のAIエンジンを活用して、約3,800社(2022年2月1日現在)の上場企業が開示する有価証券報告書に掲載されいてる固定資産情報を抽出しリスト化するサービス