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MECE(ミーシー)とは?仕事で成果を出すための論理的思考法やフレームワーク一覧を分かりやすく解説!

仕事で成果を上げるためには、物事を論理的に考えることが重要です。

ビジネス場面で論理的に問題を整理・解決するためによく使われる手法に、MECE(ミーシー)というものがあります。

MECEとは、ロジカルシンキングの基本的な考え方であり、物事を論理的に整理するうえで最適な手法です。

本記事では、MECEの意味や思考方法、ビジネスで活用するためのフレームワークを紹介します。

MECEを取り入れて仕事の成果を上げるための参考にしてください。

MECEの意味

MECEの意味

MECEとは、「Mutually Exclusive Collectively Exhaustive」の略で、日本語でミーシーと呼びます。

MECEはそれぞれの頭文字の意味を理解することで、言葉の意味が分かります。

  • Mutually(お互いに)
  • Exclusive(重複せず)
  • Collectively(全体に)
  • Exhaustive(漏れがない)

つまり、「漏れなく、ダブりがない」状態がMECEです。

MECEはロジカルシンキングの基本

MECEの考え方は、ロジカルシンキングの基本です。

ロジカルシンキングとは「論理的思考」とも呼ばれ、物事に対して矛盾や飛躍がなく筋が通るように考えることを指します。

ロジカルシンキングによって課題や問題を整理するためには、「漏れなく、ダブりがない」MECEな状態を作る必要があります。

MECEの考えを理解することができれば、ロジカルシンキングの基本的な考え方を知ることができるのです。

ビジネスでMECEが求められる背景と重要性

ビジネスでは様々な課題や問題を解決しながら、より良い企業経営につなげていく必要があります。

例えば、商品の企画や市場調査、商品開発などを行う際に、検討漏れやアイデアに偏りがあれば、適切な課題解決や質の良い商品を創り出すことはできません。

MECEは、戦略立案やマーケティングで高い成果を上げるために重要な役割を果たします。

MECEを理解するための具体例

MECEを理解するための具体例

これからMECEの導入を考える企業にとって、いきなり「漏れなく、ダブりがない」検討を行うのは難しいです。

そもそも、「漏れなく、ダブりがない」状態とはどのような状態なのでしょうか。

MECEを理解するためには、様々な具体例を用いて考えることが重要です。

実際に飲み物の分類を具体例として、「漏れなく、ダブりがない」状態について考えていきましょう。

具体例①:漏れなく、ダブりもない状態

飲料のパッケージの分類をしたとします。

この場合、まずはアルコール類か否かで大きく2つの分類が可能です。

その後、それぞれをビン・カン・ペットボトルといったパッケージに分類することで漏れがなくなり、ダブりもなくなります。

アルコール類 ビン
カン
ペットボトル
アルコール以外 ビン
カン
ペットボトル

このような状態をMECEと呼びます。

具体例②:漏れがあり、ダブりがない状態

お店の売上を伸ばすための施策を検討する際に、「売上」の要素を分解したとします。

仮に売上の計算式を「顧客1人あたりの単価」×「顧客数」に設定した場合、「顧客が来る頻度」が整理から漏れてしまいます。

「顧客が来る頻度」についての検討漏れが発生し、それに対する原因分析や施策の検討ができていない状態です。

MECEに考えられなかった結果、このお店はリピート客が増えずに、解決策を考えることもできなくなるのです。

具体例③:漏れがなく、ダブりがある状態

商品のターゲットを検討する際に、以下のように分類したとしましょう。

  • 若者向け
  • 中年向け
  • 老人向け
  • 大人向け
  • 子ども向け
  • 男性向け
  • 女性向け

上記のようにターゲットを分類することで、顧客のターゲットを網羅的に考えることができ、漏れを防ぐことができます。

しかし、「40代男性」を想定した場合、「中年向け」「大人向け」「男性向け」の全てに当てはまりダブりが生じてしまいます。

この場合を「漏れがなく、ダブりがある」状態といえます。

具体例④:漏れがあり、ダブりがある状態

未成年を商品販売のターゲットに絞る際に、以下のようにカテゴリーを分けたとします。

  • 予備校生
  • 受験生
  • 未就学児
  • 小学生
  • 中学生
  • 高校生
  • 予備校生
  • 受験生

この場合、予備校生には高校生や中学生が含まれる可能性もあるため、ダブりが生じています。

一方で、高校生や予備校生には18歳を迎えて成人となる方もいるためターゲットに漏れが生じています。

このような状態は「漏れがあり、ダブりがある」状態と言えます。

MECEがビジネスにもたらすメリット

MECEがビジネスにもたらすメリット

MECEの考えは複雑ではありますが、MECEの考え方を身に付けることで企業にとって2つのメリットがあります。

  • 考慮の漏れをあらかじめ防ぐことができる
  • 効率のよい思考ができる

1つずつ確認していきましょう。

考慮の漏れをあらかじめ防ぐことができる

企業のマーケティング課題や施策を考える際に、考慮すべき内容が見落とされていては、より良い策は生まれません。

検討に漏れがあれば、たとえ時間をかけて検討したとしても仕事の成果にはつながりにくいです。

MECEの考えを身に付けることで課題の特定や施策を考える際に、あらかじめ「考慮の漏れ」を防ぐことができます。

その結果、網羅的な検討を行うことができ、筋の良い解決策を導き出すことができます。

効率のよい思考ができる

MECEによって大枠を整理した後に検討することで、効率の良い課題分析を行うことができます。

大枠を整理することなく課題の検討に入ってしまうと、下記のように検討の漏れやダブりを見つけることはできません。

  • お客の増加したことが原因である
  • 業務が複雑化したことが原因である
  • 退職者が多く社員不足が原因である

一方で、MECEの考えを取り入れ、大枠を整理した後に課題検討を行うことで、検討の漏れやダブりをなくし、網羅的に原因を特定することができます。

  • 会社を部門ごとに区切って残業時間を考える
  • 残業時間が特に多い部署をピックアップする
  • その部署で残業時間が増加している原因を追求する

このように、大部分から順を追って枠組みを考えることで根本的な課題や解決策を検討することができます。

MECEを考える際の2つのアプローチ

MECEを考える際の2つのアプローチ

MECEをビジネス場面で活用する方法には「トップダウンアプローチ」と「ボトムアップアプローチ」の2つがあります。

MECEを考える場合は、それぞれのアプローチ方法を補完し合いながら活用することで、より網羅的な検討が可能です。

それぞれのアプローチ方法を確認しましょう。

トップダウンアプローチ

課題が既に明らかになっており、要素分類の仕方が想定しやすい場合は、トップダウンによるアプローチがおすすめです。

全体像から要素複数に分類することで、効率的に「漏れなく、ダブりがない」状態を作ることができます。

トップダウンアプローチのメリットは、構造的に分解することができるため、MECE初心者の方でも使いやすいことです。

既に課題が明らかになっている・全体像が見えている課題に対しては、トップダウンアプローチが有効だと言えます。

【トップダウンアプローチの分析手順】

  • 全体像を捉えて、効果的に分類できるか検討する
  • 課題や問題を大きなカテゴリーで分類する
  • 分類の中で必要な要素を洗い出す
  • 必要であれば、要素をさらに細分化する

ボトムアップアプローチ

課題の全体像が不明瞭な場合や、カテゴリーの分類が難しい場合は、ボトムアップアプローチが有効です。

ボトムアップアプローチはトップダウンアプローチに比べて、未知の分野や新しい課題に対する整理がしやすいというメリットがあります。

【ボトムアップアプローチの手法】

  • 考える出せる限りのアイディアを書き出す
  • アイディアをグループ分けする
  • グループ分けをして気づいた課題を追加して漏れを補う

より「漏れなく、ダブりがない」状態をつくるにあたって、特に網羅的に整理したい場合はトップダウンアプローチがおすすめです。

しかし、全体像やカテゴリー分けが難しい未経験の領域で、より良いアイディアを出したい場合はボトムアップアプローチを取り入れるとよいでしょう。

MECEを活用するための4つのポイント

MECEを活用するための4つのポイント

初めてMECEの考え方を取り入れるにあたって、MECEの整理方法がわからない方も多いです。

本章では、MECEで要素分解を行うにあたって有用な観点を4つ紹介します。

  • 要素分解
  • 時系列・ステップ分け
  • 対称概念
  • 因数分解

それぞれのポイントを確認していきましょう。

基本①:要素分解

要素分解とは、課題や問題点となっている事柄を全体像で捉えて、それを構成している要素やカテゴリーに分類していく方法です。

例えば、ゴミ出しを想定した場合、ゴミ出しを構成する要素やカテゴリーに分けて考えます。

ゴミ出しの場合では「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」「資源ごみ」「ビン・カン」「ペットボトル」などに分類できるでしょう。

要素分解を用いることで、課題や問題点をそれぞれの要素やカテゴリーに分類して分析したり、解決策を検討したりすることができます。

基本②:時系列・ステップ分け

時系列や各段階に応じて課題や問題点を分類する方法を「時系列・ステップ分け」といいます。

例えば、商品の開発から販売までを考える際は、商品開発に必要な部品の仕入れ先から加工方法、出荷までの流れをステップ分けしていきます。

また、プロジェクトの課題を分解していくためには「準備→実行→評価→改善」といったステップ分けを行うことで課題解決の糸口を検討することが可能です。

このように、時系列やステップ分けを行なうことで、より網羅的に分析することができます。

基本③:対照概念

対照概念とは、検討している事柄の対照的な概念を考えて分析する手法です。

例えば、「質と量」「メリットとデメリット」「固定と変動」「悲観と楽観」など対照的な事柄を可能な限り考えていきます。

そして、対照的な事柄の関係性や概念を活用することで分析を行います。

基本④:因数分解

因数分解とは、分析したい事柄を計算式で表し、関係する因数分解を行う手法です。

例えば売上の因数分解の場合、「顧客の単価×顧客数×リピート率」などの計算式が因数にあたります。

また、掛け算のみならず因数分解によるMECEのフレームワークは足し算・引き算・割り算でも作ることが可能です。

MECE(ミーシー)を活用するフレームワーク4選

MECE(ミーシー)を活用するフレームワーク4選

効率的に業務を進めるためにはフレームワークの活用が有効です。

フレームワークを活用することで、MECEの考えである「漏れなく、ダブりがない」状態を作る事ができます。

MECEを活用する際におすすめのフレームワークは以下の4つです。

  • SWOT分析
  • ロジックツリー
  • 4P分析
  • 3C分析

各フレームワークの特徴について1つずつ確認しましょう。

フレームワーク①:SWOT分析

SWOT(スウォット)とは以下の頭文字をとった言葉です。

  • Strengths(強み)
  • Weaknesses(弱み)
  • Opportunities(機会)
  • Threats(脅威)

それぞれの言葉が意味する通り、SWOT分析を用いる事で、自社の強みや弱み、脅威など内部要因・外部要因を明確に捉える事ができます。

SWOT分析によって、戦略策定やマーケティングの意思決定、経営資源の最適化を行うことができます。

フレームワーク②:ロジックツリー

MECEで分解した要因をツリー状に並べて分析するフレームワークをロジックツリーといいます。

ロジックツリーを使用することで、分析した結果を論理構造で整理することができます。

ロジックツリーでは、縦軸はロジックの結び付きを、横軸は同レベルの要素が並ぶように配置されています。

例えば、「筋トレ」に関するロジックツリーがあった場合、「筋肉が付かない→その原因→それぞれの要因」のように課題を論理構造で可視化することが可能です。

フレームワーク③:4P分析

4P分析とは、以下の4つの頭文字をとった分析手法です。

  • Place(流通)
  • Price(価格)
  • Product(製品)
  • Promotion(販売促進)

4P分析とは、商品の販売方法やマーケティング戦略を考える際に用いられるフレームワークです。

一般的なマーケティングのプロセスである、「市場環境の分析→マーケティング戦略立案→マーケティング施策立案」のそれぞれを捉えて分析する手法です。

フレームワーク④:3C分析

3C分析とは、以下の3つの頭文字をとったものです。

  • Customer(顧客)
  • Competitor(競合社会)
  • Company(自社)

3C分析とは、自社に関わる外部環境の分析を行う際に有効なフレームワークです。

顧客や競合他社の主力製品や戦略を分析することで、自社の成功要因や狙うべきマーケットを見つけ出すことが可能です。

MECEを考える際の注意点

MECEを考える際の注意点

MECEは、ロジカルに物事を考える際に有効な手段ではありますが、以下の3つに注意して使う必要があります。

  • 目的を忘れないようにする
  • 要素の優先順位を意識する
  • 全ての要素を分類できるわけではない

正しくMECEを取り入れられるように、1つずつ確認しましょう。

注意点①:目的を忘れないようにする

MECEにこだわるあまり、MECEで整理することが目的となってしまうと本末転倒です。

MECEによる整理は、課題を分類する目的をハッキリさせた後に行うことで、有効な整理を行うことができます。

目的が明確でない状態でMECEによる整理を行ってしまった場合、整理後の課題特定や施策検討につながらない可能性が高いため、注意が必要です。

注意点②:要素の優先順位を意識する

課題や問題点をMECEの考えをもとに分類すると、様々な要素に分解することができます。

MECEによって分解した要素には、重要性にムラがあるため、要素の優先順位を意識することが大切です。

MECEで分解した要素のなかには考慮しても意味のない要素も多いため、重要性に応じて取捨選択することが求められます。

自身の主観や思い込みに左右されないためにも、重視すべき要点を決めて切り口を絞ることが重要です。

注意点③:全ての要素を分類できるわけではない

MECEは全ての要素を分類できるわけではありません。

「漏れがなく、ダブりがない」状態を意識しても、なかには例外的な要素やそのタイミングでは思いつかなかった要素が抜け漏れてしまうこともあります。

そのため、全ての課題の漏れやダブりを完全に無くすことはできません。

課題解決のためには、MECEのみならず様々な観点から解決策を考えることが大切です。

1つの課題に対しても、本記事で紹介した複数のフレームワークを用いて検討してください。

MECEを取り入れてビジネス場面で効率的に成果を上げよう

MECEは、ビジネス場面で論理的な思考を行うための基礎的な考え方です。

MECEの基本的な考え方としては、「漏れがなく、ダブりがない」状態です。

MECEでは課題の特定だけでなく、マーケティングや経営戦略を考える際の戦略立案にも役立ちます。

これまでMECEを取り入れてこなかった企業は、効率的に成果を上げるために本記事を参考にしてください。

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。

 

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