総研レポート・分析

上場企業におけるPPP(官民連携)の参入状況について

ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、日頃から企業の経営・CRE戦略の動向について分析・レポート発信を行っている。本レポートでは近年の課題として挙げられている「地域経済の活性化」の手段として全国の自治体にて検討・実施されているPPP(官民連携事業)について、中期経営計画(以降、「中計」)の言及ワードから分析をしていく。

 

PPPとは

PPP(Public Private partnership)とは、公共施設等の建設、維持管理・運営等を行政と民間企業が連携して行うことにより、民間企業の技術・アイデア等を活用し、行政の効率化を図るものである。PPPには、指定管理者制度や包括的民間委託、PFI(Plivate Finance Initiative)など、様々な手法がある。あくまで地方公共団体が発注者となり、公共事業として行うものなのでJRやNTTのような「民営化」とは別物。

 

2021年に入りPPP関連ワードの言及企業が急増

CCReB Clipに収納されている2020年1月以降に発行された中計に着目すると、2021年以降、PPP(官民連携)系のワードについて言及している企業は増加の一途を辿っている(図1)。

内閣府の発表によると「PPP/PFI推進アクションプラン(令和4年改定版)」において、「平成25年度から令和4年度までの事業規模目標21兆円を3年前倒しで達成したことから、新たに令和4年から10年間の事業規模目標を30兆円と設定」とあるように民間企業にとってこのPPPの特大マーケットは魅力的な市場であり、新規事業開拓の手段として今後も積極的な民間参入が進むことが推測される。

図1_中計「PPP」関連ワード言及企業数

 

業種別PPP関連ワード言及企業数1位は「建設業」

図2_中計「PPP」関連ワード言及企業 業種別割合

※調査対象期間2020年1月~2022年11月
※当社情報支援ツール「CCReB Clip」を用いて作成

図2は2020年1月~2022年11月に開示された上場企業の中計においてPPP(官民連携)系のワードの言及がある企業を業種別業種内訳として示したものである。

PPPに取り組んでいるまたは検討している企業のすべてが必ずしも中計にて該当するワードを用いているわけではないが、その中でもPPPに取り組んでいる業種の傾向が見てとれる。

全体の22%と1番大きな割合を占めているのは「建設業」であり、主な言及内容としては公民館、体育館等の公共施設の建替えなどが挙げられる。多くの企業は中計の中で、PPP事業において建替えの需要は今後も伸び続けるとの見解を示している。

続いて2番目に21%の「サービス業」については、給食の業務受託、文化施設の運営・プロデュース、地方公共団体の発行する広報誌の受託などその内容は多岐にわたっており、今後も三者三様に各社独自のサービスで新規事業開拓の一環としてPPP事業への参画が進行すると思われる。

3番目に9%の割合をしめる「陸運業」では電鉄系企業が路線沿線を中心とした地域整備におけるPFI事業の参画を謳っている。当該業種は地域経済の発展において行政との連携は切っても切り離せない関係性にあり、今後益々、官民連携した取り組みが継続的に進行する業種と言えよう。

 

最後に

多くの地方公共団体にとって、厳しい財政状況や人口減少による人手不足、公共施設の老朽化は問題になっている。まだ読者の記憶にも新しいであろう山口県阿武町の4,630万円誤送金事件も原因は役所の人手不足だという。PPP事業については、以前から推し進められている事業ではあるが、2021年から中計にて言及をする企業が急増している。

「AI・デジタル化推進調査~AIに仕事を奪われる日は来るのか?~」 | CCReB GATEWAY(ククレブ・ゲートウェイ) (ccreb-gateway.jp)でも述べている通り、民間企業はDX化が進んできており、公的事業に民間企業が参入することによるデジタル化推進の意義は年々大きくなってきているといえる。内閣府発表の「PPP/PFI推進アクションプラン」は 令和4年改定版よりPPP活用によるデジタル化の推進要件が盛り込まれ、行政も積極的な民間参入による課題解決への期待値は高まっていると思われ、今後の企業の参入動向について継続的に注目していきたい。

 

ククレブグループで提供しているTechシステムのサービスの一つである『CCReB Clip』では、上場企業が開示する中期経営計画の中から特定のワードの言及をしている企業の抽出をすることができる。今回の分析を行うにあたっても使用したシステムで、作業時間をかけずに営業先リストの作成や上場企業の経営方針把握ができる。

営業・調査・分析を行うためにかけていた時間を大幅に削減できる当該サービスを是非、活用頂きたい。

 

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。

 

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