ペインポイントとは?ゲインポイントとの違いや意味、見つけ方、ビジネスへ活用した企業例を詳しく解説
ビジネスを加速させる上で、欠かせない顧客分析。顧客分析をする上で、重要なポイントの一つとなるのが「ペインポイント」です。
ペインポイントとは、一言で言うと「顧客がお金を払ってでも解決したい悩みや課題」のことです。
このペインポイントは、新規事業創出やマーケティング、営業、既存事業の改善など、あらゆる場面で多くの企業が活用しています。
今回は、ペインポイントの意味や、ゲインポイントとの違い、見つけ方、注意点や、ビジネスへ活用した企業事例を詳しく解説します。
ペインポイントとは
ペインポイントとは、顧客がお金をかけてでも解決したいと思っている悩みや課題のことを指します。
「ペイン(pain)」とは「痛み」を意味する言葉です。「あったらいいな」程度ではなく、「この痛みを取り除けるのであれば、お金だって払う」と思えるほどの悩みであることがポイントです。
企業は、この顧客のペインポイントを知ることで、顧客が本当に求める製品やサービスの開発・提供に繋げることができます。
ペインポイントとゲインポイント
ペインポイントの対義語として、「ゲインポイント」という言葉があります。
「ゲイン(gain)」とは「得る」などを意味する言葉です。ゲインポイントは、顧客にとっての付加価値を表します。
ペインポイントは「お金を払ってでも取り除きたい悩みや課題」であり、マイナスからゼロにしたいニーズを指す言葉なのに対し、ゲインポイントは「現状をより良くしたい」という、ゼロからプラスにしたいニーズを指す言葉です。
ペインポイントの類似用語
ペインポイントと混同されやすいマーケティング用語として、次のような類似用語があります。
・ニーズ
・シーズ
・ウォンツ
・インサイト
ここからは、それぞれの用語の意味を詳しく解説します。
ニーズ
「ニーズ(needs)」は、直訳すると「要求」「需要」などを意味します。マーケティング用語としては、「顧客が持つ欲求」を意味する言葉です。
「顧客が持つ欲求」ですので、ペインポイントもニーズに含まれます。
つまり、ニーズのうち「顧客がコストをかけてでも解決したい悩みや課題」を、ペインポイントと呼ぶのです。
また、ニーズは「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」の大きく2種類に分類することができます。
顕在ニーズとは、言葉通り顕在化しているニーズ、つまり顧客が自覚している欲求のことです。対して、潜在ニーズとはこちらも言葉通り潜在化しているニーズ、つまり顧客自身が気付いていない欲求のことを指します。
シーズ
「シーズ(seeds)」は直訳すると「種」を意味します。マーケティング用語としては、「企業が持つ技術やノウハウなど、製品・サービスを開発するための素となるもの」を指す言葉です。
ペインポイントは顧客側が持つ悩みや課題を指す言葉ですが、シーズは企業側が持つ技術やノウハウを指す言葉です。意味としては全く異なる用語となります。
ウォンツ
「ウォンツ(wants)」は、直訳すると「欲求」を意味します。しかしマーケティング用途としては「手段」の意味で用いられることがほとんどです。
例えば、喉が乾いた顧客がいたとします。この場合、「喉の渇きを潤したい」がニーズ、「水を飲みたい」がウォンツになります。
つまり、「ウォンツはニーズを満たすための手段」と解釈すると分かりやすいでしょう。
ウォンツは、具体的に次の3つに分類されます。
① 基本ウォンツ:ニーズを満たすための具体的な手段(求める商品やサービス)
② 条件ウォンツ:よりニーズに合う条件(理想により近づけるために生まれる欲求)
③ 期待ウォンツ:製品やサービスに期待する内容(満たされることが前提となっている内容)
これを先ほどの喉が乾いた顧客の事例に当てはめて考えてみると、それぞれ以下のようになります(あくまで一例です)。
・基本ウォンツ「水が飲みたい」
・条件ウォンツ「冷たい水が飲みたい」
・期待ウォンツ「濁りのない冷たい水が飲みたい」
ウォンツはニーズと密接な関係がありますが、顧客の課題や悩みを示すペインポイントとは明確に異なるものです。
インサイト
「インサイト(insight)」とは、直訳すると「洞察力」を意味しますが、マーケティング用語としては、消費者の行動や思惑、それらの背景にある意識構造を見ぬいたことによって得られる「購買意欲の核心やツボ」のことを指します。
言い換えるのであれば消費活動や購買意欲を促す潜在的な欲求のスイッチであり、「お金をかけてでも解決したい」と意識的に考えている課題や悩みであるインサイトとは大きく異なります。
ペインポイントの見つけ方とは?活用できるフレームワーク
ペインポイントの発見には、次のようなフレームワークを活用する方法があります。
・カスタマージャーニーマップ
・共感マップ
・ペインストーミング
それぞれ詳しく解説します。
カスタマージャーニーマップ
まずは、顧客体験をカスタマージャーニーマップ化する方法です。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを知ってから、購入し、商品を使用・サービスを利用した後までの一連の流れを指します。
カスタマージャーニーマップは、その流れを図表化したものです。
カスタマージャーニーマップの中で、顧客の感情曲線が下がっている箇所が顧客にとっての課題となります。このポイントを、「なぜこの課題が起こっているのか?(なぜ悩んでいるのか?)」と深掘りすることで、ペインポイントが見えてきます。
また、顧客の検討段階やサービスの利用期間によってペインポイントが異なる場合もあります。顧客の利用状況に応じて様々なペインポイントを見つけましょう。
共感マップ
共感マップとは、ある特定の顧客(=ペルソナ)視点で感情や行動を整理することで、ニーズを深く理解するフレームワークです。
ペルソナが普段見ていることや考えていること、行動や願望などを、具体的に書き出し、一つの図にまとめて整理することで、ニーズやペインポイントを発見することができます。
共感マップの具体的な要素としては、次の6つが一般的です。
・顧客が見ているもの
・顧客が聞いていること
・顧客が考えていること・感じていること
・顧客が言っていること・行動
・顧客の痛みやストレス
・顧客が欲しいもの
5つ目の「顧客の痛みやストレス」がペインポイントに当たります。
ペインストーミング
最後は、ペインストーミングを活用して顧客のペインポイントを見つける方法です。
ペインストーミングとは、顧客の悩みや課題を洗い出すためのフレームワークです。ペインの頭文字でもある次の4項目を分析していきます。
Person:誰の課題を解決するのか
Activities:顧客が毎日行っていることと、その結果
Insights:目的達成のために工夫していることは何か。顧客が仕方なく行っている行動やプロセス、仕方なく使っているツール
Needs:顧客の問題やニーズの根源となっている、最も大きなペインポイントは何か。顧客の悩みの原因となっているストレスや気がかり、不満
たくさんのペインポイントを発見することを目標に、問題と特定したものはさらに掘り下げていきましょう。
ペインポイントを探すときの注意点
ペインポイントを見つけるときに、注意したいポイントは次の2つです。
・「ターゲット層」ではなく「ペルソナ像」を描く
・顧客の声を調査する
それぞれ詳しく解説します。
「ターゲット層」ではなく「ペルソナ像」を描く
ビジネスに活かせるようなペインポイントを見つけるためには、より詳細な顧客像を描く必要があります。
「30代・男性・会社員」といったざっくりとしたターゲット層だけでは、具体的なペインポイントを見つけることはできません。
・年齢
・性別
・住んでいる場所
・仕事内容、役職
・最終学歴
・恋人・配偶者の有無や家族構成
・インターネット利用状況(利用時間や所持しているデバイスなど)
・収入
など、具体的なペルソナを作り込んだ上で、より実態に近いペインポイントを見つけましょう。
顧客の声を調査する
いくら顧客目線に立って分析をしたとしても、企業側が把握できていないニーズはあるものです。
実態に近いペインポイントを客観的に分析するためにも、顧客の声を調査することがオススメです。
顧客の声を集める方法として代表的なのは、アンケート調査です。なかでも、インターネット調査がオススメです。回答のしやすさは回答率に直結しますし、Webであれば集計も簡単です。メリットの多いインターネット調査を活用して、顧客の声をペインポイントの発見に繋げていきましょう。
ペインポイントをビジネスで活用した企業事例
ペインポイントは、営業やマーケティング、新規事業創出や、新商品・新サービスの開発、既存事業の改善など、ビジネスのあらゆる場面において活用されています。
ここからは、ペインポイントを実際にビジネスで活用した企業事例を2社ご紹介します。
味の素株式会社
ペインポイントは、新商品や新サービスの開発や、新規事業創出だけではなく、既存事業の改善にも活かすことができます。
その事例として象徴的なのが、味の素株式会社の、自宅で本格的な中華料理を作ることができる合わせ調味料「Cook Do®」シリーズです。
「Cook Do®」シリーズは、発売40周年目前で業績の横ばいに苦悩していました。そこで、市場調査を行います。
すると、「忙しく働いていて日々の食事作りをなんとかやりこなしているという状況のため、食事にかかる時間を短くしたい」というデータがある一方、「家族が喜ぶ食卓作りを心がけている」というスコアもずっと高いことが判明しました。
「食事の支度は簡単に済ませたいけれど、本当はもっと家族が喜ぶものを作ってあげたい」という顧客のペインポイントを見つけたのです。
さらには、「子どもに野菜を食べさせたい」というペインポイントも発見。
「肉類・魚類などのたんぱく質と野菜を組み合わせたメニューを手軽に手作りできる「Cook Do®」シリーズなら、この顧客のペインポイントを解決することができる」と自社製品の現代における価値を再定義したといいます。
このペインポイントの分析結果を活かしてプロモーションを一新した結果、過去最高の120%の売り上げを記録(2018年4〜6月)。見事V字回復を遂げました。
自社内での分析だけではなく、市場調査やヘビーユーザーからの声を聞くことで、顧客の具体的なペインポイントや、自社商品の価値に気づくことができた事例だといえるでしょう。
参考:“中華が家族を熱く”した「Cook Do®」 発売40年周年ストーリー|味の素株式会社
損害保険ジャパン日本興亜株式会社
損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、顧客のペインポイントを明確に可視化することでCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験価値)の向上に活かしている企業の一つです。
同社では、「お問い合わせ=お客さまの困りごと(ペインポイント)である」という認識のもと、実際のコールセンターへの問い合わせに基づいてカスタマージャーニーマップを作成しました。
本記事でご紹介した「ペルソナを詳細に設定する」とは違うアプローチではありますが、ペルソナの設定が保険という商品だと相性が良くないと分かり、このような取り組みに至ったとのこと。
2018年秋時点で20件以上のカスタマージャーニーマップを作成したといい、ペインポイントを明確に可視化することに成功しています。
自社事業や商品・サービスに合った方法でCX向上に繋げた素晴らしい事例だといえるでしょう。
参考:コールセンターこそCX向上の鍵を握る!損害保険ジャパン日本興亜の奮闘とカスタマージャーニーマップ活用
ペインポイントはビジネスを進める上で大きなヒントになる
今回は、ペインポイントの意味や、ゲインポイントとの違い、見つけ方、注意点や、ビジネスへ活用した企業事例を詳しく解説しました。
ペインポイントは、新規事業創出やマーケティング、営業、既存事業の改善などあらゆる場面でビジネスを加速させるための大きなヒントとなります。
本記事を参考に、顧客のペインポイントを見つけて自社のビジネスに活用してみてはいかがでしょうか。
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監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。