総研レポート・分析

競合分析とは?メリットや使用するフレームワーク、具体的な手順や注意点を分かりやすく解説

企業が持続的に成長していくためには、ターゲットである顧客にとって、競合他社よりも価値ある商品やサービスを提供する必要があります。そのためには、競合である他社を正しく理解することが重要です。

競合分析は、競合他社を理解するだけではなく、市場の動向や、自社の立ち位置を正しく把握することができます。

この記事では、競合分析の概要や目的を説明した上で、競合分析の実践方法を7つのステップで解説します。

競合分析をする際の注意点や、使用するフレームワークの紹介もしていますので、競合分析を実施して自社の戦略に活かしていきたい方はご参考になさってください。

競合分析とは

競合分析

競合分析とは、自社と同様の商品やサービスを展開する企業を調査することで、強みや弱み、自社との違いを分析することを指します。

自社と同じ顧客層に向けて商品やサービスを展開している企業や、展開している商品やサービスは似ているけれど、異なる顧客層に展開している企業など、複数の競合他社を特定することで、市場全体の構図を把握することができます。

市場のなかでの自社の立ち位置を正しく認識し、差別化戦略を考えることで、自社の事業拡大や、さらなる顧客獲得を目指すことができます。

競合分析の目的・メリット

競合分析とは、単にライバル企業の情報収集をすることではありません。次のような目的やメリットがあります。

・自社の競争力を客観的に把握できる
・市場を理解できる
・潜在的なチャンスおよびリスク発見の機会になる
・戦略の策定と改善に繋がる

それぞれ詳しく解説します。

自社の競争力を客観的に把握できる

競合他社の製品やサービス、価格設定、マーケティング戦略などを分析することによって、自社の競争力を客観的に把握することができます。

自社の強みや弱みが明確になるので、効果的な施策の立案に繋がります。

市場の理解

直接的な競合他社や、間接的な競合他社など、市場を共有する他社を複数分析することで、市場全体の変化やニーズなど、市場全体の理解に繋がります。

市場の中の自社の立ち位置を把握することで、今後のより効果的な戦略作りに繋げていくことができます。

潜在的なチャンスおよびリスクの発見

競合分析は、競合他社がまだ開拓していない市場や、参入の余地がありそうな領域を発見する機会にもなり得ます。

また、競合他社の分析を通して他社のポテンシャルを知ることで、自社に対する将来的な脅威、つまりリスクを予測できるようになります。

戦略の策定と改善

競合分析を通して、自社の強みや弱み、市場のニーズや変化を客観的に理解することで、より効果的な戦略の策定や改善につなげていくことができます。

競合分析に使用する主なフレームワーク

競合分析

競合分析には、いくつかのフレームワークを使用します。目的や業界によってさまざまですが、今回は代表的な以下の3つをご紹介します。

・3C分析
・SWOT分析
・4P分析

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3C分析

3C分析とは、顧客(Customer)、自社(Corporation)、競合(Competitor)の3つの単語の頭文字を組み合わせたフレームワークです。

Customer:市場・顧客の分析
Corporation:自社の分析
Competitor:競合の分析

上記の3つのCから多角的に事業や商品・サービスを分析します。競合他社との差別化のポイントの発見や、顧客のニーズを満たす商品・サービス作り、マーケティング戦略の策定や改善に役立ちます。

元々は、マッキンゼーの大前研一氏が「戦略的三角関係」として提唱したものだそうです。現在では、ビジネスフレームワークの一つとして定着しています。

SWOT分析

SWOT分析とは、Strengths(自社の強み)、Weakness(自社の弱み)、Opportunities(市場や社会の変化などで生まれるチャンス)、Threat(自社の脅威となる競合や市場の変化)の頭文字を組み合わせたフレームワークです。

Strengths:自社の強み
Weakness:自社の弱み
Opportunities:市場や社会の変化などで生まれるチャンス
Threat:自社の脅威となる競合や市場の変化

上記の4つの観点から分析することで、自社の強みと弱みだけではなく、市場の動きを加味した上で戦略を考えることができます。

4P分析

4P分析とは、商品やサービスに注目して分析するフレームワークです。

Product(製品):商品の性能やデザイン・品質
Price(価格):販売価格
Place(流通):商品の販売エリアや流通方法
Promotion(販促):商品のプロモーション方法

上記の4つのPについて、どこで、どの商品やサービスを、どのくらいの価格帯で、どのような方法で販売するのかについて分析します。

商品やサービスを展開する際の問題点を発見しやすいフレームワークです。

競合分析を行う手順

競合分析

ここからは、競合分析を行う具体的な手順を解説していきます。以下の7つのステップに沿って取り組んでいきましょう。


① 競合他社の特定とリストアップ
② 市場の分析
③ 商品・サービスの分析
④ マーケティングの分析
⑤ SWOT分析
⑥ 自社と競合他社のマッピング
⑦ 分析結果をもとに、自社の戦略策定・改善

それぞれ詳しく解説していきます。

ステップ1:競合他社の特定とリストアップ

まずは、競合他社の特定とリストアップです。自社と比較する企業を5〜10社程度リストアップしましょう。

競合他社を特定する方法ですが、自社と同様の機能や価値を有する商品・サービスを同じ市場に向けて展開している企業(「直接競合」と言います)だけではなく、

自社と同様の機能や価値を有する商品・サービスを異なる市場に向けて展開している企業(「間接競合」と言います)も選ぶ必要があります。

業歴もスタートアップから大手企業まで幅広く特定することで、分析の幅を広めることができます。

ステップ2:市場を分析する

競合他社を特定したら、次は市場を分析します。

商品やサービスの市場規模や、ニーズ全体における実際購入率、顧客の属性やニーズの詳細、市場の成長率などを調べていきましょう。

二次情報だけではなく、商品やサービスの認知度、顧客の満足度、購入理由、顧客が当該商品を使うようになった経緯など、アンケート調査やインタビュー調査などを行い一次情報も集めることが重要です。

ステップ3:商品・サービスを分析する

次は、商品・サービスの分析です。

実際に商品やサービスを購入・利用してみたり、ホームページを見たりして商品やサービスの分析をしていきましょう。

業界や目的によって項目はさまざまですが、主な項目は以下になります。

・価格
・デザイン(パッケージ、外観ともに)
・サイズや重さ
・スペックや機能の数
・発売時期
・他のサービスや商品との連携の有無
・使いやすさ
・品質
・保証サービスやカスタマーサポートの種類
・その他特筆すべき特徴

ステップ4:マーケティングを分析する

次は、広告や売り場、SNSなどのマーケティング活動を分析します。

・Webサイトのビジュアルと文章
・プロモーション(有料広告)を展開しているメディア、ビジュアル、文章
・売り場の場所
・キャンペーンやプロモーション活動の内容
・プレスリリースの内容
・SNSアカウント

競合他社の上記をよく調査し、「どんな誰人に向けて、どのようなイメージやストーリーを伝えることで、商品・サービスのどこに魅力を感じてもらおうとしているのか」、各社それぞれのマーケティング戦略を深く分析していきましょう。

ステップ5:SWOT分析をする

ステップ4までで調査した内容をもとに、SWOT分析を行います。

SWOT分析については、本記事の「競合分析に使用する主なフレームワーク」の部分で解説した通りです。

SWOT分析を行うことで、自社の強化するべきポイントや改善するべき課題も見えてきます。

ステップ6:自社と競合他社をマッピングする

最後に、ステップ5までの内容を踏まえて、市場内における自社や競合社社の立ち位置をそれぞれマッピングしていきます。

SWOT分析をすることで、市場の中における自社の立ち位置を客観的に把握したり、自社にとって脅威となる競合他社を特定したり、まだ競合他社が参入できていないチャンスのある領域を発見したりすることができます。

ステップ7:分析結果をもとに、自社の戦略策定・改善

「競合分析をして終わり」では、競合分析をした意味がありません。

大切なのは、競合分析をした結果得られたデータをもとに、自社が取り組むべき課題をしっかりと認識し、事業戦略の策定・見直し・改善に取り組んでいくことです。

具体的には、あらためて自社の目指すべきポジショニングの決定や、価格設定の見直し、商品・サービスの改善、マーケティング方法の見直しなどを検討すると効果的でしょう。

競合分析を行ったあとは、アクションプランの策定・実行までやりきり、さらなる事業拡大や顧客の獲得に繋げていきましょう。

競合分析を実施する際の注意点

競合分析

競合分析を実施する際には、いくつか注意点もあります。

・アクションプランの策定・実行まで行う
・分析結果を定期的に更新する

それぞれ解説します。

アクションプランの策定・実行まで行う

ステップ7でもお伝えしましたが、分析だけで終わらせてしまっては意味がありません。

よりよい戦略の立案・改善をしていくためにも、必ず分析結果をもとにアクションプランを策定し、実行していくことが大切です。

市場や競合社社の動向を把握だけをしていても、それに対応する行動を起こさなければ、さらなる事業拡大や顧客の獲得には繋がりません。

分析結果を定期的に更新する

市場のニーズやトレンドは常に変化し続けています。一度実施した分析結果をいつまでも参照していては、ある日突然苦境に立たされてしまうこともあるかもしれません。

常に市場や競合他社の正確な状況把握に努め、「新規参入」や「代替品」といった脅威への対応が遅れないようにしていきましょう。

Webマーケティング戦略を策定する時は分析ツールも有効

競合分析

一般的な競合分析であれば、分析ツールを使用しなくても、ここまでご紹介した手順で行うことができます。

ですが、自社のWebマーケティング戦略を策定するために競合分析をする場合は、分析ツールを活用することもできます。

競合サイトのアクセス数や検索順位、SEO対策の状況、利用している広告配信プラットフォーム、サイトの品質やサーバーパフォーマンス、SNSの活用状況など、目的に応じてさまざまな分析ツールが用意されています。

有料のものが多いですが無料で利用できる分析ツールも一部ありますので、自社に合ったものを見つけてみてはいかがでしょうか。

競合分析で自社の戦略を強化しよう

今回は、競合分析の目的やメリット、使用するフレームワークの紹介や、具体的な手順、実施する際の注意点などについて解説しました。

競合分析を実施するだけでは成果に繋げることはできません。競合分析で得られたデータを正しく活用して行動に繋げ、さらなる事業拡大や顧客の獲得に繋げていきましょう。

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。