AI・デジタル化推進調査~AIに仕事を奪われる日は来るのか?~

 ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、日頃から企業の経営・CRE戦略の動向について分析・レポート発信を行っている。

 今回は、近年誰もが耳にしたことがあるであろう「AIに仕事を奪われる」というキーワードに着目し、実際に中期経営計画(以下「中計」)の経営戦略の中でAI活用・デジタル化により業務を効率化する旨の言及をしている企業(以下「効率化言及企業」)を抽出し、当該企業従業員数の動向からAI・デジタル化による業務効率化の現状について分析および考察を行った。なお、本分析は企業ボリュームの多い3月決算の企業を対象に分析を行った。

【まとめ】

  • 2021年3月期時点では効率化言及企業の従業員数動向は全体の統計とほぼ変わらず
  • 一方で2022年3月期の従業員数減少企業の割合は前年比で大幅に増加
  • 世の中のトレンド的に今後も加速度的に業務効率化による従業員数縮小の動きが進んでいく可能性

■2021年3月期については全体統計の割合と変わらず

≪図1≫全体統計_3月期決算企業の従業員増減推移

※出典:株式会社東京商工リサーチ調査
※本調査は、2021年3月期決算の全証券取引所の上場企業を対象に、有価証券報告書の従業員数(正社員)を抽出、分析した。2017年3月期決算から連続で比較可能な企業を対象(変則決算企業は除く)に、持株会社(事業会社への移行含む)と、送配電事業の分社化などを行い従業員数の変動が大きい企業の多い『電気』は除いた。(以下同様)

 ≪図1≫は、株式会社東京商工リサーチより開示された3月期決算の上場企業1,898社の従業員増減の推移を示した表である。これによると、2020年3月期から2021年3月期にかけて従業員数が減少した企業の割合が増加(34.04%→36.72%)していることがわかる。

 これに対し、当社ではその中から中計にてAI活用やDX推進などの「業務効率化」系のワードを発信している効率化言及企業を抽出し、当該企業群の実際の従業員の増減について調査を行った。≪図2≫

≪図2≫当社調査_効率化言及企業における従業員増減の推移

※上場企業開示情報よりCCReB総合研究所作成

 これによると、抽出された全160社の2021年3月期における従業員数については、効率化言及企業においても、従業員が減少している企業の割合は35.63%と全体統計の36.72%と大きく変わらず、2021年3月期においては、従業員減少の割合の差異を明確に確認することはできなかった

 

■2022年3月期は従業員数減少企業の割合が大幅に増加

 さらに≪図2≫について、2022年3月期における従業員増減数を見ていくと、2022年3月期決算における従業員減少企業の割合は、2021年3月期に比べて大幅に増加(35.63%→45.00%)していることがわかる。

 この点については今後の動向をより注視する必要があるが、効率化言及企業において2020年あたりから推進してきたAI活用、DX推進などの施策に関し、実際に企業の社内整備が進んできた結果が現れ始め、本格的なDX推進、省人化のフェーズに入ったきたのか、非常に興味深い結果となった。

 

■業務効率化言及企業数の推移

 ここで、改めて中計における効率化言及企業の推移を纏めた≪図3≫。
 2020年からの効率化言及企業数の推移を分析すると2021年に業務効率化について新たに言及している企業の数は2020年の約2.65倍にまで増加している。2022年の企業数についても調査時の8月末時点で既に400社に迫っており、今後の各企業の中期経営計画の開示に伴って更に増加していくことが予想される。

≪図3≫当社調査_新規効率化言及企業数の推移(2020年度以降)

※企業開示情報よりCCReB総合研究所作成
3月期決算以外の企業を含む

 2020年~2022年調査時(8月末)現在、効率化言及企業の累計数は1,274社まで増加している。年々新たに効率化について言及する企業の数が増加しており、前述の通り中計での提言から社内体制を整えるまでのタイムラグがあることを鑑みて、今後についても業務効率化に伴い従業員を縮小する動きは増加していくものと予想する。

 

■AI活用・DX推進の具体例

 では実際に効率化言及企業が実際にどのように社内のデジタル化を進めているかというと主に社内決済のシステム化、工場のスマート化、仕分け作業等の単純作業のAIシステム化等が挙げられている。
 例えば、日本郵政グループが開示している「中期経営計画(2021~2025)の基本的考え方」ではDXの推進について下記のような事項を推進していく旨の言及をしている。

・各種手続き・相談のオンライン化
・タブレットやATMを用いたお客様によるセルフ処理への移行
・スマホ対応業務の拡充
・不要な押印の廃止(電子サインへの移行)
・荷物量に応じた配達エリアの設定、配達ルートの自動作成
・窓口や営業社員へのタブレットの導入拡大

と上記のように様々な業務についてDXの推進をしている。こうした業務効率化を目的としたDXの推進が業務のスピードと効率性を高め、結果的に省人化につながっていくものと思料する。

 以上、本レポートでは上場企業の開示する中計・有価証券報告書を基に分析を行った。先進国の企業の中でもDXへの取り組みが遅れていると言われていた日本企業も、コロナ禍によってデジタル化への対応が急務となってきておりその兆候が中計の中に顕著に表れており、2022年現在、それが実際に数字として反映されはじめている。

 

 今回の分析は中計を出している企業単体(子会社等を含まない)の正社員数の増減動向を分析したものであり連結の従業員数・非常勤の従業員数については触れていない。一方で分析作業を進めるうえで正社員数は増加・横ばいなものの、子会社の従業員数・非常勤従業員数は縮小しており、グループ全体の従業員数は減少しているという企業も散見された。

 「AIに仕事を奪われる」という言葉を耳にするようになって久しいが、一方で、少子化・労働力不足という社会問題にも直面しているのは事実である。日本企業がDXを推進しながら、こうした社会問題にどう対応していくのか、今後も当社では、数字をベースにどのような傾向が表れるのか今後も注視し、アップデートを行っていくものとする。


 

 ククレブグループで提供しているTechシステムのサービスの一つである『CCReB Clip』では、上場企業が開示する中期経営計画の中から特定のワードの言及をしている企業の抽出をすることができます。今回の分析を行うにあたっても使用しており、作業時間をほとんどとらずに営業先リストの作成や上場企業の経営方針把握ができます。
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