総研レポート・分析

上場企業の適時開示資料から読み解く2024年のM&A最新動向

ククレブ・アドバイザーズ株式会社のシンクタンク部門であるククレブ総合研究所では、上場企業が適時開示を行ったM&Aに関するリリースについて、当サイト「CCReB GATEWAY」の『IRストレージ』機能を活用し、2018年から2024年のトレンド調査を行った。

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【速報】東証適時開示資料から読み解く2024年上半期のM&A最新動向

(注)CCReB GATEWAY_IRストレージ機能において「M&A」に分類されるリリースは、「株式取得(子会社化を含む)のお知らせ」「事業譲渡・譲受のお知らせ」その他「組織再編のお知らせなど」様々なリリースを含むが、これらのリリースを個別に仕訳することなく、単純に年間にリリースされた件数を追うことによって大まかな業種毎の動き・トレンドを分析していることをお含み置きください。

上位10業種の顔ぶれの変動はみられないものの、開示件数は年々増加傾向に

<東証適時開示資料におけるM&A関連リリースの業種TOP10>


※CCReB GATEWAY「IRストレージ機能」よりククレブ総合研究所作成(以下同様)

上図は、東京証券取引所(以降、「東証」)の適時開示情報閲覧サービス「TDnet」に適時開示された2019年1月から2024年12月までの6年間に渡るM&A関連のプレスリリースを纏めたもののうち、上位10件をあらわしている。

2024年においても上位10にランクインする業種は例年と同じ顔ぶれとなる結果となった。特に1,2位に独占する「情報・通信業」「サービス業」は時代の移り変わりにより人々の生活が多様化していくなかで新たなビジネス分野が多く誕生していく業種であることから、今後も企業数の増加と、M&Aによる成長戦略に進んでいくものと思われ、今後もこのポジションは変わらないものと思われる。

また、当該2業種を筆頭に、上位10業種における年間開示件数は2019年から2022年のコロナ禍中はM&A取引が停滞し大きな動きを見せなかったが、2023年、2024年と毎年約250件の増加件数を示し、世界経済の回復にあわせた成長戦略の一手としてM&Aを実行する企業が増加していることが窺える結果となった。

加速する「陸運業」「金属製品」のM&A

<東証適時開示資料におけるM&A関連リリースの業種TOP11以下>


  ※内国法人・組合、外国法人・組合は有価証券報告書等の提出義務者ではないが適時開示を行っているためカウント

続いて、TOP11以下に目を向けてみると2019年以降の動きとして「陸運業」と「金属製品」は業種に属する毎年の企業数の変動に大きな動きはないものの、2024年において過去平均の約2倍に達するM&A関連リリース件数となり、特徴的な動きを見せている。

「陸運業」における2024年の代表的な事例としてはロジスティード株式会社による株式会社アルプス物流(9055)のTOB(株式公開買付け)が挙げられる。KKR傘下となった後、同社は「アセット・ライト事業モデルへの転換」として国内33の物流センターを売却し、売却により得たキャッシュをアルプス物流の買収資金に充て、事業成長を図るという戦略的なM&Aを実行している。

「金属製品」においては瀧上工業株式会社(5918)や日創プロニティ株式会社(3440)が中期経営計画で掲げる事業の成長戦略の一環としてM&Aを行った事例や、株式会社アドバネクス(5998)による子会社化企業の経営継続性を担保する目的としたものなど、事業規模の拡大や企業再生・企業存続を狙ったM&A関連リリースが多く見受けられた。

 

以上、今回は「CCReB GATEWAY」の『IRストレージ』機能を活用して統計調査を行った。

『IRストレージ』はTDnetとAPI連携し日々開示されるリリースを収集しており、2018年以降のデータを格納しております。会員登録(無料)を頂くことで詳細検索・データ取得が可能となりますので、統計調査や最新リリースの把握等にご活用ください。

また、ククレブ総合研究所では上場企業の経営動向調査として、M&A調査の他、中期経営計画で取り上げられるワードの増減率に着目したホットワードトレンド調査を行っています。最新レポートでは2024年に公表された中期経営計画・有価証券報告書をもとにした2025年注目の経営ホットワードをレポートしておりますので、是非ご注目ください。

2025年経営ホットワードを占う!~2024年の新登場ワードから2025年を予想~

 

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当レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではございません。また、本内容は現時点での判断を示したに過ぎず、データ及び表現などの欠落、誤謬などにつきましては責任を負いかねますのでご了承ください。当レポートのいかなる部分もその権利はククレブ・アドバイザーズ株式会社及びククレブ・マーケティング株式会社に帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、無断で複製または転送などを行わないようお願いします。

 

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。