アジアにおける不動産テックの動向について(香港)

 ククレブ・アドバイザーズ株式会社(以下「当社」)では、Sustainabilityを重視する経営方針の中で、Diversity経営を推進し、社内に多様なバックグラウンド、国籍をもつ従業員が日々業務を遂行している。

 今回は、ククレブ総合研究所レポートにおいて、その経験やネットワークを活用し、グローバルでの不動産テックの「今」を現地からお伝えしたい。まず第一弾として香港における不動産テックの動向について、現地特派員よりお伝えする。

1.はじめに

 昨今、日本でも多くの不動産テック(プロップテックとも呼ばれる)が勃興しており、この分野をテーマとしたセミナーや出版物も多くみられる。かくいう当社も不動産テック企業の一役を担い、当該セクターの発展に寄与したいと思っているが、多くの最新テクノロジー分野の例にもれず、不動産テックについても欧米、特に米国の後塵を拝しているとの評が多いように思われる。

 そこで今回は、日本に地理的にも経済的にも近いアジア各国における不動産テックの動向を探る試みをしてみたい。アジア地域というと中国やASEAN各国、はたまたインドや豪州まで含む場合もあり非常に広範なエリアを含むこともあるが、まずはエリアを絞り、今月は香港、来月以降で韓国における動向を見てみたい。

2.香港の特徴

2022年5月撮影

 香港は人口約750万人と日本の1/17に対し面積は1,100㎡と日本の1/340と非常に人口密度の高い都市である。
 国土が限られていることから、不動産マーケットが非常に活発であり、産業としての重要性も非常に高い。またそのようなエリアであるがゆえに、昨今の地政学的な問題も生じているものの引き続き十分な取引(賃貸、売買)水準を維持できており既存の不動産ビジネスでも一定の利潤を享受できているが、一般的には不動産テックについては欧米と比較しても遅れているとされている。

 一方、昨今はマーケットの過熱に伴い新たな切り口での不動産エクスポージャーを志向する投資家も増加しており不動産テックが注目され始めているようである。

 また、昨今の社会不安や厳格なコロナ規制により、特に若年層を中心に香港外の不動産を探す動きもでてきており、より効率的なツール(言語、検索精度)への志向も高まってきており、新たなテクノロジーを活用した不動産探索の高度化の動きも加速してきている。

3.ESGアングル

2022年5月撮影

 グローバルなESGの推進も不動産テックを後押ししている。既に述べた通り、香港の産業界における不動産セクターの占める割合は元来高いため、ESGの観点でも非常に大きな役割を期待されている。

 香港における炭素排出量の2/3が発電からである一方、電力消費の90%がビルからというデータもあり、いかに不動産セクターにおける貢献が期待されているかが分かる。

4.香港における不動産テックの動向 

 では、現在の香港における不動産テックの状況を探ってみたい。不動産テック企業自体の定義が難しいため具体的に何社存在しているかということを把握するのは極めて難しいものの、優に数十社を超えるスタートアップが存在しているようだ。

 不動産テックを支え推進する業界団体も複数存在しており(Hong Kong Prop Tech Association(HKPTA)、Hong Kong Prop Tech Alliance、Prop Tech Institute)、大手企業からの協賛を得たり、スタートアップ同士もしくは大手とのパートナーシップ等の架け橋となっているようである。業態としては、Campfire Collaborative SpacesやWeave Co-Living、WorkTech等の各国に見られるコワーキングスペースはもちろんのこと、香港らしいところでいうと、狭小住宅問題や湿度の高い気候を踏まえた倉庫アプリであるParkt、Boxful、限られた駐車スペースを探索するためのドライバー向けアプリであるParkingBnB、家政婦文化が根付いていることから家政婦アプリのButlerがある。また昨今の情勢を受けて現地の言語で世界の不動産を検索できるJuweiという企業も。

5.最新テクノロジーの活用

 上記はどちらかといえば“アイデア勝負”的な切り口の企業であるが、最新のテクノロジー(AI、IoT)を活用した不動産テック企業も一部紹介したい。

 Raspect社はAIやドローンを使って商業ビルを検査、点検する事業を展開している。世界一高層ビルの多い都市だけにドローンを活用してモニタリングした上で、その検査データをAIを活用して分析する。

 Carnot Inovations社はAIを活用してビッグデータを解析し主に建物のエネルギー効率改善を提案し、MyProperyはベンダーコスト削減を提案している。またテック企業として忘れてはならないのはプラットフォーマーであるが、こちらについてはDenzityとAgentDriveが挙げられる。

 Denzity社は AIを活用して不動産に特化した検索プラットフォームで世界中の仲介業者にオンライン上での広告、マーケティング機会を提供している。

 AgentDrive社はブログを通したマーケティングの場を提供しており不動産に関する様々なニュースを世界中から集めて発信している。

終わりに

 以上、香港における不動産テックの概況を簡単にレポートさせて頂いた。

 自国の特性(国土の面積や、不動産取引の慣行等)が、不動産テック技術に大きな影響を与えることから、日本の不動産テックとはまた違う切り口で成長を続けている点が非常に興味深い。

 引き続き当社では海外、特にアジアの不動産テックにも目を向けながら、世界の同志達に刺激を受けながら事業を発展させていきたいと思っている。

寄稿 ククレブ・アドバイザーズ株式会社顧問 香港特派員 東金 太一