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【SDGs達成度ランキング2025】19位に後退した日本の現状と今後の課題は?

2015年に採択されたSDGs。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指し、地球上の誰一人取り残さないことを誓っています。

期限である2030年まで残り5年を切りましたが、現在の目標達成度はどのようになっているのでしょうか。

本記事では、SDGs達成度ランキングの最新版である2025年度版を参照しながら、順位が後退した日本の現状と今後の課題、それを受けた日本の取り組みを解説します。

2025年度SDGs達成度ランキング、日本は後退し19位に

国連と連携する国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」は毎年、各国のSDGs達成状況を示す「Sustainable Development Report 2025(SDGs達成度ランキング)」を発表しています。

最新版である2025年度版によると、日本の達成度ランキングは167カ国中19位(達成スコア80.7)。前年の167カ国中18位(達成スコア79.9)から1ランク下がる結果となりました。17の目標のうち、前年から一つ増えた6つの項目が「最低評価」を受けています。

SDGs達成度
出典:Sustainable Development Report 2025|SDSN

ちなみに、トップは前年に続きフィンランド(スコア87.0)。5年連続の快挙となります。

2位はスウェーデン(スコア85.7)、3位はデンマーク(スコア85.3)と、ジェンダー平等や福祉の充実に対する取り組みの高い北欧諸国がトップ3を占めています。4位以降はドイツ、フランス、オーストリア、ノルウェー、クロアチアと続き、8位までは前年と順位が変わっていません。

SDGs達成度ランキングのトップ20は以下の通りです。

2025年 SDGs達成度ランキング トップ20(かっこ内の数値は達成スコア)
1 フィンランド(87.0)
2 スウェーデン(85.7)
3 デンマーク(85.3)
4 ドイツ(83.7)
5 フランス(83.1)
6 オーストリア(83.0)
7 ノルウェー(82.7)
8 クロアチア(82.4)
9 ポーランド(82.1)
10 チェコ(81.9)
11 イギリス(81.9)
12 スロベニア(81.2)
13 ラトビア(81.2)
14 スペイン(81.0)
15 アイスランド(80.8)
16 スロバキア(80.8)
17 エストニア(80.8)
18 ベルギー(80.7)
19 日本(80.7)
20 ポルトガル(80.6)

【17の目標別の達成状況】最高ランクである「達成済み」は1項目のみ

次に、「17の目標別の達成状況」を見てみましょう。

「17の目標」とは、2030アジェンダの中で示されているSDGsの17の目標のことです。

1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤を作ろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任、つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
(出典:国連公式サイト

持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)は、この17の目標の達成度を「達成済み」「課題が残る」「重要な課題がある」「深刻な課題がある」の4段階に分けて評価しています。

日本が最高ランクである「達成済み」と評価を受けたのは、ウェルビーイングスコアの改善が貢献した「3.すべての人に健康と福祉を」の1項目のみ。

SDGs達成度
出典:Sustainable Development Report 2025|SDSN

前年までは「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」も最高ランクの「達成済み」と評価を受けていましたが、2025年度は2段階評価を落としています。

原因は、今回から評価の対象データとして加わった、高等教育機関のSTEM(科学、技術、工学、数学)分野の卒業生の男女比率です。女性の割合が低かったことから、「重要な課題がある」と判断されました。

「深刻な課題がある」と評価された6項目

最低ランクにあたる「深刻な課題がある」と判断されたのは、前年から一つ増えた「2.飢餓をゼロに」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「12.つくる責任つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」の6項目になります。

前年までも最低評価を受けていた5項目に加えて、「2.飢餓をゼロに」が加わった形になります。

それぞれの課題を詳しく見ていきましょう。

2.飢餓をゼロに

「2.飢餓をゼロに」の項目に「重要な課題がある」と判断された大きな要因は、窒素管理指数の低さと動物性食品の消費量の高さが影響しています。

まず窒素管理指数についてですが、これは窒素の利用効率や環境負荷を評価するものです。この指数が低いほど、環境中への窒素漏出が多い=非効率で環境負荷が大きいことを示します。日本はこの窒素管理指数が低く、大気・地下水などの水質汚染の進行が指摘されています。

また、動物性食品の消費量の高さも指摘されています。畜産は、膨大な資源を要します。そのため資源効率が悪く、環境負荷が高いと言われているのです。

5.ジェンダー平等を実現しよう

次に、ジェンダー平等についてです。

世界経済フォーラム(WEF)が発表している「Global Gender Gap Report(グローバル・ジェンダーギャップ・レポート、世界男女格差報告書)2025」では、日本は148カ国中118位。前年と同順位で、依然低迷が続いています。

日本は特に政治(125位)と経済(112位)の分野で最低ランクの評価を受けており、国会議員(衆院議員)の男女比(115位)や閣僚の男女比(124位)における女性比率の少なさが言及されています。

ジェンダーギャップ指数の低さは例年指摘されていますが、SDSNによる評価においても、国会議員(衆院議員)の女性比率が少なく、男女の賃金格差が大きいことが指摘されています。

加えて、今回から評価の対象データとして加わったSTEM分野の女性大学卒業者比率が低く、女性活躍指数が急落しました。医師における女性割合はG7中最下位級で、21.1%となっています。

参考:Global Gender Gap Report 2025|WEF
参考:Sustainable Development Report 2025|SDSN

12.つくる責任つかう責任

次は、「生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう」という意味の目標である「12.つくる責任つかう責任」。

前年に引き続き、電子廃棄物の回収率が低く、プラスチック廃棄物の輸出量が多いことが指摘されています。

日本人のプラスチックごみ廃棄量はなんと世界第2位。私たちの暮らしには欠かせないプラスチックですが、海洋汚染問題や地球温暖化問題など、環境問題の大きな要因ともなっています。

また、排出量の多さだけではなく、輸出量の多さも低評価に繋がりました。汚れが付着していたり、異物が混入していたりするプラスチックに関しては、リサイクルをするために洗浄などの前処理が必要になります。国内で処理をしようとすると人件費がかさむため、現在日本では海外に「資源ごみ」として輸出して処理してもらっているのですが、この量も多いのです。

加えて、電化製品や電子機器などの電子ごみの多さも、日本が抱える課題のひとつとして指摘されています。

参考:Sustainable Development Report 2025|SDSN

13.気候変動に具体的な対策を

SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」では、気候変動問題の原因であるとされている温室効果ガス排出の抑制が求められています。

日本では、温室効果ガスの排出量を2030年までに46パーセント削減するという目標案が決定され、国連の気候変動枠組み条約事務局に提出しています。

これに加えて、地球温暖化対策計画も策定され、先述の中期目標と併せた長期目標として、2050年までに「温室効果ガスゼロ」を目指すことにしています。

ところが現状は化石燃料への依存が依然高く、CO₂排出量が多い状況が続いています。一人当たりの温室効果ガス排出量は世界平均の約2倍です。

石炭火力発電は30%以上を占めており、再生可能エネルギーを軸としたエネルギー自給率向上への取り組みが停滞していると評価を受けました。

参考:Sustainable Development Report 2025|SDSN

14.海の豊かさを守ろう

現在、「海洋ごみによる汚染」、「化学物質の流出」、「海の酸性化」、「魚の減少」など、海にまつわる問題は多岐に渡ります。

特に日本では、過大漁獲や水産資源の乱獲が続き、乱獲または枯渇した魚種の割合が高いことが問題視されているようです。

参考:Sustainable Development Report 2025|SDSN

15.陸の豊かさも守ろう

「陸の豊かさも守ろう」では、生物多様性の保全努力が不十分と評価されました。

例えば、絶滅危惧種の多さです。環境省のレッドリストでは、絶滅危惧種の割合は増加傾向にあります。日本の野生生物約9万種のうち、約20%が絶滅の危機にあるとされており、特に淡水魚・両生類・昆虫類・植物で減少が深刻な状況です。

参考:環境省レッドリスト2020|環境省
参考:Sustainable Development Report 2025|SDSN

日本のSDGsに対する取り組み

このような現状を受けて、日本は現在どのような取り組みをしているのでしょうか。

日本は2016年5月より、SDGs推進本部を設置しています。総理大臣を本部長、官房長官と外務大臣を副本部長としています。

このSDGs推進本部では、行政・民間セクター・NGO・NPOなどのさまざまなステークホルダーによって構成される会議「SDGs推進円卓会議」を実施しています。

SDGs実施指針と、具体的施策を取りまとめたSDGsアクションプランを定めた上で、SDGs推進円卓会議において、それぞれに関する意見交換がなされています。

持続可能な開発目標(SDGs)実施指針(改訂版)

持続可能な開発目標(SDGs)実施指針で定められている重点事項は、以下の5つです。

①持続的な経済・社会システムの構築
②「誰一人取り残さない」包摂社会の実現
③地球規模課題への取組強化
④国際社会との連携・協働
⑤平和の持続と持続可能な開発の一体的推進

出典:持続可能な開発目標(SDGs)実施指針(改訂版)|外務省

これらを実現するために政府が策定したのが、次にご紹介する「SDGsアクションプラン」になります。

SDGsアクションプラン2023

SDGsアクションプランはこれまでに何度か改訂されており、現在の最新版は「SDGsアクションプラン2023」となっています。

「SDGsアクションプラン2023」の重点事項は、以下の通りです。

People 人間:多様性ある包摂社会の実現とウィズ・コロナの下での取組
• 「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022」等に基づき、あらゆる分野での女性の活躍を推進。
• 子供の貧困対策や持続可能な開発のための教育(ESD)を推進し、次世代の更なる取組を喚起するなど、人への投資を行う。
• 「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」等に基づき、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備を一層推進。
• グローバルヘルス戦略に基づき、パンデミックを含む公衆衛生危機に対するPPR(予防・備え・対応)を強化。
• より強靭、より公平、より持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組推進。

Prosperity 繁栄:成長と分配の好循環
• 「デジタル田園都市国家構想」の実現を通じ、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会の実現に取り組む。
• 国内外の社会課題解決やイノベーションを促すため、日本企業と海外スタートアップ等とのオープンイノベーションを推進。
• これまで進めてきた「SDGs未来都市」に加え、新たに複数の地方公共団体が連携して実施する脱炭素化やデジタル化に関する取組に対しても支援を行うことで、地方におけるSDGs達成に向けた取組を加速する。
• 「熊本水イニシアティブ」に基づき、気候変動適応策・緩和策を両立するハイブリッド技術を活用した「質の高いインフラ」整備の取組推進。

Planet 地球:人類の未来への貢献
• 経済・社会・産業の大変革である、GX推進のためのロードマップの検討を加速化。成長志向型カーボンプライシング、規制制度一体型の大胆な資金支援、トランジション・ファイナンス、アジア・ゼロエミッション共同体構想などの政策イニシアティブを具体化。
• 地域脱炭素の推進のための交付金等を通じ、2050年を待つことなく前倒しでカーボンニュートラル達成を実現する脱炭素先行地域を2030年度までに少なくとも100か所創出する。
• 食品ロス量を2030年までに489万トンまで低減することを目標に、持続可能な生産・消費を促進

Peace 平和:普遍的価値の遵守
• TICADプロセスを通じ、アフリカにおけるSDGs各ゴールに関連する取組のモニタリングやフォローアップを実施。• 子どもに対する暴力を撤廃するため、地方公共団体におけるいじめ問題等への対応を支援するとともに、グローバルな取組にも参画。
• 総合法律支援の充実や日本法令の外国語訳等により、国際取引の円滑化や外国人を含む全ての人の司法アクセスの確保を図る。

Partnership パートナーシップ:官民連携・国際連携の強化
• 2023年の「SDGs実施指針」改定のプロセスも含め、SDGs推進円卓会議を中心に、国内外のあらゆる関係者との連携を促進・強化。また、SDGグローバル指標に関する情報を発信。
• ODAの一層の戦略的活用を図る観点から、2023年前半を目処に開発協力大綱を改定。
• SDGサミットや持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)、日メコンSDGsフォーラム等の議論に積極的に貢献。
(引用:首相官邸ホームページ

SDGsターゲットのうち、2030年までに達成できそうなものは一つもない

日本のSDGs達成度は、現在ジェンダー平等や環境問題における取り組みなど、まだまだ大きな課題を抱えています。

報告書では、世界全体のSDGsの進捗について「SDGsのターゲットのうち、2030年までに達成できそうなものは一つもない」と述べられています。

SDGs達成度
出典:Sustainable Development Report 2025|SDSN

SDGs目標達成に向けて、より一層改善に取り組んでいくことが求められます。

一見目標の規模が壮大で、政府主導で改善に取り組まなければならないように見えるSDGsですが、企業や個人にも具体的に取り組めるアクションはたくさんあります。

企業や個人が取り組める具体的な事例は以下の記事でもご紹介していますので、気になる方はぜひご覧ください.

SDGsで私たちにできることとは?個人・企業の身近な取り組み事例19選

 

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監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立し、2024年11月に創業から5年で東証グロース市場に上場。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。