有形固定資産とは?無形固定資産との違いや減価償却、回転率などを分かりやすく解説
企業が所有する資産には、様々なものがあります。これらの資産は大きく「流動資産」、「固定資産」、「繰延資産」の3つに分類されます。
固定資産のうち、建物のように形として残る資産を「有形固定資産」と言いますが、本記事ではこの「有形固定資産」について解説します。
有形固定資産とは何か、有形固定資産と無形固定資産の違いや、有形固定資産の減価償却方法や仕訳、回転率などについて詳しく説明するのでぜひ参考にしてください。
有形固定資産とは
有形固定資産とは、企業が販売目的ではなく、営業活動用に長期(1年以上)で使い続けることを目的に所有する資産のうち、目に見えて形のある資産のことです。
具体的には、土地や建物、リース資産、建設仮勘定などが含まれます。その他の有形固定資産として、自動車・コンピュータ・備品など、土地、建物、リース資産、建設仮勘定に計上されないものも含まれます。
簿記でいうと、貸借対照表の借方の部に計上されます。
有形固定資産に対し、商標権や特許権といった形のない資産を無形固定資産といいます。有形固定資産と無形固定資産の違いについては、後ほど詳しく解説します。
有形固定資産の種類
有形固定資産の種類は、主に以下の10種類です。
・建物および付属設備
・構築物
・機械および装置
・船舶および水上運搬具
・車両および陸上運搬具
・工具器具備品
・土地
・リース資産
・建設仮勘定
・その他
それぞれ詳しく解説します。
建物および付属設備
建物に含まれるのは、事務所用、店舗用などの建物本体などです。付属設備には、電気設備、冷暖房設備、ガス設備などが含まれます。
構築物
構築物に含まれるのは、トンネル、塀、ドック、橋、岸壁、焼却炉、用水池、堤防、防波堤、上下水道などが含まれます。
機械および装置
機械および装置に含まれるのは、工場等に設置される様々な製造機械設備が対象となります。また、機械式駐車場設備も機械装置に含まれます。
船舶および水上運搬具
船舶および水上運搬具に含まれるのは、漁船やモーターボート、タンカーなどが含まれます。
車両および陸上運搬具
車両および陸上運搬具には、一般的な自動車のほか、鉄道車両や航空機が含まれます。
工具器具備品
工具器具備品には、工具には金型や検査工具等が含まれ、器具および備品には社内で使用する机、いす、パソコン等のほか、看板などが含まれます。
土地
土地には、工場及び事務所の事業用敷地のほか、社宅敷地、運動場等の事業に付属する土地も含まれます。
リース資産
リース資産には、ファイナンス・リース取引により借りているリース物件が該当します。
建設仮勘定
建設仮勘定には、設備の建設のために支出した手付金や前渡金、建設のために取得した機械や資材などが含まれます。
その他
その他は、有形資産で流動資産、または投資たる資産に属しないものが該当します。
有形固定資産と無形固定資産の違い
建物のように形として残る「有形固定資産」に対し、商標権や特許権といった形のない資産を「無形固定資産」といいます。
ここからは、有形固定資産と無形固定資産の違いについて解説していきます。
「無形固定資産」とは、先述の通り物質としての形態を持たない資産のことです。見たり手に取ったりすることができない資産は無形固定資産と考えていいでしょう。
具体的には、特許権や商標権、実用新案権や借地権、ソフトウェアやのれん、電話加入権などが挙げられます。
有形固定資産の減価償却
ここからは、有形固定資産の減価償却方法について解説していきます。
有形固定資産は、一般的に定額法や定率法を使って減価償却します。定額法は毎年同額の減価償却費を計上するもので、定率法は年が経過するにつれて減価償却費が減額するものです。
それぞれ詳しく説明します。
定額法
定額法は、毎年同額の減価償却費を計上します。
具体的な計算式は、以下の通りです。
定額法の減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率
また、減価償却の仕訳方法は「直接法」と「間接法」に分けられます。
直接法とは、減価償却費を固定資産から「直接差し引いていく」仕訳の方法です。一方間接法は、固定資産から直接減価償却費を引くわけではなく、「減価償却累計額」という勘定科目が用いられます。
定率法
定率法は、購入した年に減価償却費を大きな金額で計上し、その後は「償却率」をかけながら、毎年少しずつ減価償却費を減少させていく方法です。
具体的な計算式は、以下の通りです。
定率法の減価償却費 = 取得価額(未償却残高)× 定率法の償却率
なお、土地は年数が経過しても価値は減少しないため、減価償却することができません。
また、定率法は減価償却が終わるまでに長い年月を要することになるので、減価償却費が一定の金額を下回ってから先は、「改正償却率」を使って計算することになります。
有形固定資産の仕訳・処理
有形固定資産を購入する時は、付随費用がかかります。たとえば、不動産の仲介手数料や登記料、備品などを受け取る際の運送料、設備の据付費などです。
このとき、有形固定資産自体の価格を「購入代価」といい、上記のような付随費用を含めた価格を「取得原価」といいます。
有形固定資産を購入した時の仕訳では、この取得原価を用います。
有形固定資産を購入した場合の仕訳を、現金で購入した場合と小切手で購入した場合、それぞれ例を用いて解説します。
有形固定資産税を現金で購入した場合の仕訳
例えば、10万円のパソコンを購入し、運送料3,000円とともに現金で支払った場合、資産の増加と現金の減少を反映する必要があります。
そのため、仕訳は以下のようになります。
借方 備品:103,000円 / 貸方 現金:103,000円
有形固定資産税を小切手で購入した場合の仕訳
次に、100万円の建物を小切手で購入し、仲介手数料10万円と登記費用5万円を現金で支払った場合、仕訳は以下のようになります。
借方 建物:1,150,000円 / 貸方 当座預金:1,000,000円 現金:150,000円
有形固定資産の回転率
企業が有形固定資産を有効活用できているのかどうか判断する指標として、「有形固定資産回転率」というものがあります。
この「有形固定資産回転率」が高ければ高いほど、その企業は有形固定資産を有効活用できているということになります。
ただ、有形固定資産回転率は業種や会社規模、方針によっても大きく異なりますので、単に「高い」、「低い」と捉えるのでは無く、自社の営業方針や過去の数値、同業他社の数値と比較するといいでしょう。
有形固定資産回転率の計算式は、以下の通りです。
有形固定資産回転率=売上高/(有形固定資産)×(期首・期末平均)
有形固定資産とは、営業活動で長期的に使用する目的で所有する固定資産のこと
今回は、有形固定資産とは何か、有形固定資産と無形固定資産の違いや、有形固定資産の減価償却方法や仕訳、回転率などについて詳しく解説しました。
「有形固定資産」とは、物理的な形態を持ち、長期に渡り利用される事業用資産のことであり、原則として販売目的ではなく、営業活動用に使用するものに限られます。
対して物理的な形態を持たず長期に渡利用される資産を「無形固定資産」といい、形があるか・ないかが「有形固定資産」との違いとして挙げられます。
「有形固定資産」には、具体的に土地や建物、リース資産、建設仮勘定などが含まれ、一般的には定額法や定率法を使って減価償却します。
また、企業が有形固定資産を有効活用できているのかどうか判断する指標として、「有形固定資産回転率」というものがあります。
この「有形固定資産回転率」が高ければ高いほど、その企業は有形固定資産を有効活用できているということになりますので、自社の過去の数字や同業他社の数字と比較しながらチェックしてみてください。
(参考)「有形固定資産回転率」を高める施策の1つである企業不動産(CRE)の活用に関する記事はこちら。
監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。