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ESGリース促進事業とは?概要やメリット、企業事例も紹介

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を組み合わせた言葉です。

今、世界は環境問題や社会問題など、様々な課題を抱えています。そのため、企業が持続的に成長するためには、経営において環境、社会、ガバナンスの3つの観点が必要だという考え方が世界中で広まっています。

ESGリース促進事業は、持続可能な企業活動を支えるために国(環境省)が実施している制度のひとつです。

今回の記事では、ESGリース促進事業の概要やメリット、取り組む企業事例をご紹介します。

ESGリース促進事業とは

ESGリース促進事業とは?概要やメリット、企業事例も紹介

ESGリース促進事業とは、脱炭素社会の構築に向けて、脱炭素機器をリースにより提供する事業者に対して補助金を交付する事業のことを指します。

環境省が定める基準を満たす脱炭素機器を、リースにより導入すると、総リース料(消費税及び再リース料を除く)の1〜4パーセントの補助金が指定リース事業者に対して交付されます。

補助金制度を通じてリース料を低減させることで、脱炭素機器の普及を促進することが目的です。

リース会社によるESG要素を考慮した取り組みを促進し、リース業界におけるESGの取り組み拡大に繋げることによって、サプライチェーン全体で脱炭素社会に貢献する中小企業の設備投資をサポートする国(環境省)の補助金制度です。

「優良取組認定事業者」制度とは

ESGリース促進事業とは?概要やメリット、企業事例も紹介

さらに、令和5年度より、リース業界全体のESGの取り組みを推進することを目的として、指定リース事業者のうち優良な取り組みや実績を環境大臣が評価する「優良取組認定事業者」の制度がはじまりました。

リース事業者やユーザーのESGにかかわる特に優良な取り組みには1パーセント上乗せ、極めて先進的な取り組みには2パーセント上乗せされます。

「優良取組認定事業者」は現在、指定リース事業118社のうち11事業者が認定されています。

企業がESGリース促進事業に取り組むメリット

ESGリース促進事業とは?概要やメリット、企業事例も紹介

企業がESGリース促進事業に取り組むメリットは、以下の3つです。

・企業が環境、社会、ガバナンスに配慮した活動を展開するための財務的な支援を得られる
・持続可能なビジネスモデルの構築や環境への配慮が可能になる
・企業のESGに対する取り組みを推進することで、投資家や社会の期待に応えることができる

また、企業がESGリース促進事業の補助金制度を利用するメリットは、以下の3つです。

・初期投資の必要がない
・リースという手法により、金利が固定化できる
・補助金によるリース料低減で通常より低コストで脱炭素機器の調達が可能

ESGリース事業取り組み企業事例9選

令和5年度のESGリース促進事業 優良取組認定事業者の中から、取り組み事例を9社ご紹介します。

ESGリース促進事業に取り組みたいと検討されている際は、参考にしてみてください。

(参照:一般社団法人環境金融支援機構

池田泉州リース株式会社

池田泉州リース株式会社は、親会社である株式会社池田泉州銀行とのリーストレーニー制度により、グループ全体で脱炭素社会の実現へ向けたESG リースのスキルアップ教育及びリテラシー向上を実施しています。

加えて、個別の脱炭素機器に対する営業戦略を立案し、重点アプローチを決定することにより組織的な促進体制を構築しているそうです。

NTT・TCリース株式会社

NTT・TCリース株式会社は、ドラッグストアA社新規出店時において、高効率冷凍冷蔵ショーケースを導入しています。

店舗拡大を図っているドラッグストアA社の新規出店計画に対して、NTT・TCリースは金融サービスの提供を通じた、豊かな社会の発展及び気候変動などの環境問題解決に貢献する取り組み実践の一環としてESGリースの利用を提案しているそうです。

今後出店する店舗に関しても、高効率な省エネ・省CO2機器の選定を促進しているそうで、省エネ・省CO2設備設置を利用した温室効果ガスの面的な削減に貢献しています。

ぐんぎんリース株式会社

ぐんぎんリース株式会社は、親会社への職員出向を通じた高密度連携による推進体制の構築を行っています。

親会社である群馬銀行へ営業担当者を出向させることで、取引先の設備需要に対して専門知識を有した職員が、リース導入のアプローチをよりシームレスに実施出来る体制を構築しているそうです。

グループとしてリース手法による地域の持続可能性の向上を重要戦略として位置づけ、親会社取引先に対するESGリース促進事業の提案力を強化しています。

また、出向社員による親会社営業担当者向けに脱炭素経営や、ESGリース促進事業の勉強会を実施することで、環境課題解決の意識の浸透を図っているそうです。

JA三井リース株式会社

JA三井リース株式会社は、複数のメーカーや商社等と連携し、脱炭素に資する勉強会を定期的に開催しています。

中小企業等へESGの要素や脱炭素経営に関する意識の定着を図り、事業者のサプライチェーンへの面的な脱炭素機器の導入促進を図った取り組みを行っています。

清水リース&カード株式会社

清水リース&カード株式会社は、アンケートを活用したグループ企業との連携によESGリース促進活動を行っています。

具体的には、営業担当者と親会社行員の協働による取引先企業等へのアンケートやヒアリングを切り口に、経営課題や脱炭素ニーズの喚起を実施し、専担者の配置や診断表作成、業績評価によりESGに資する社内体制を構築しソリューション対応しているそうです。

さらに、親会社に対しては「ESGリース取組紹介案件」の項目設置を主体的に導入することによって、グループ全体として中小企業等の脱炭素機器の普及、促進体制を確立し、脱炭素経営に向けて動き出そうとしている取引先の企業活動を支援しています。

商工中金リース株式会社

商工中金リース株式会社は、商工中金グループの全国ネットワークを活用した面的支援を実行しています。

具体的には、親会社である株式会社商工組合中央金庫の全営業店の営業担当者に対して、ESGリースの概要を説明した研修資料を配布しています。

全国に拠点を有するネットワークを活用し、各営業担当者にESGの要素を含んだ視点や脱炭素経営の必要性を広く周知するとともに、対象機器に該当する設備ニーズを具体的に有する中小企業等については、弊社が組織的に構築した体制によりサプライチェーン全体での脱炭素化促進を支援しているそうです。

芙蓉総合リース株式会社

芙蓉総合リース株式会社は、「芙蓉 ゼロカーボンシティ・サポートプログラム」を活用した ESGリースの促進を行っています。

同社は、環境省が推進する「ゼロカーボンシティ」の取り組みを後押しすることを目的とした、寄付型のファイナンスプログラムを2020年10月に開始しています。

ゼロカーボンシティ宣言をした自治体のエリア内の事業者に対して、専用商品の提供を実施しています。

ESGリースとの併用を通じた脱炭素機器の普及拡大を図ることにより、自治体が目指す地域づくりを促進しています。

北銀リース株式会社

北銀リース株式会社は、親会社金融商品との融合による連携体制を構築した取り組みを行っています。

具体的には、親会社が実施する環境融資商品の金利優遇項目として、ESGリースの活用を採用しています。

取引先である中小企業等のグリーンな事業活動をファイナンスとリース手法を合わせて促進することにより、産業セクターを起点とした地域の脱炭素化に向けた取り組みをグループ全体として支援しています。

三井住友ファイナンス&リース株式会社

三井住友ファイナンス&リース株式会社は、医療分野における脱炭素機器の面的な導入促進を行っています。

2022年より対象機器として追加された医療画像機器等に対して、ESG関連の取引推進部署である環境エネルギー推進部、医療機関を主に担当するヘルスケア第一部、医療機器メーカー・サプライヤーを主に担当するヘルスケア第二部が協働しています。

医療機器分野のサプライチェーンに対して面的にESGリース取引の啓蒙・普及促進を図っており、グループ目標とする温室効果ガスの2050年カーボンニュートラルに達成に向けて貢献しています。

【まとめ】ESGリース促進事業は、ESG経営をする上で財務的な支援を得られる補助金制度

ESGリース促進事業とは?概要やメリット、企業事例も紹介

今回は、ESGリース促進事業の概要やメリット、企業の取り組み事例をご紹介しました。

ESGとは、企業が持続的に成長するためには、経営において環境、社会、ガバナンスの3つの観点が必要だという考えのことであり、ESGリース促進事業とは、持続可能な企業活動を支えるために国(環境省)が実施している制度のひとつです。

ESGリース促進事業に取り組むことにより、企業は環境、社会、ガバナンスに配慮した活動を展開するための財務的な支援を得られたり、持続可能なビジネスモデルの構築や環境への配慮が可能になったり、企業のESGに対する取り組みを推進することで、投資家や社会の期待に応えることができたりといったメリットがあります。

ESGリース促進事業は、持続可能な未来を実現していくための重要な要素となり得ます。企業事例なども参考にしながら、うまく活用していきましょう。

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。