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SDGsで私たちにできることとは?個人・企業の身近な取り組み事例19選

2030年までに持続可能でよりよい世界を目指し、地球上の誰一人取り残さないことを誓っているSDGs。しかし現在の達成度では、2030年までに目標達成することは難しいと警鐘が鳴らされています。

より取り組みを加速度的に行なっていくためには、私たち一人ひとりが当事者意識を持って行動に繋げていくことが必要不可欠です。

そこで今回は、SDGsの概要と、世界と日本の現在の達成度、そしてSDGsの目標達成に向けて私たちにできることを、個人、企業、それぞれの視点からご紹介します。

SDGsとは?17のゴールと169のターゲット

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。

SDGsは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている国際目標で、2015年9月に国連サミットで採択されました。

2030年までに持続可能でよりよい世界を目指し、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。

具体的には、17のゴール(持続可能な開発目標)と、それぞれの目標を達成するための具体的な指標である169のターゲットが設定されています。17のゴールは以下の通りです。

1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤を作ろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任、つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
(出典:国連公式サイト

この「17のゴール」は、アイコンが作られています。印象的な色使いと、字が読めない人でも理解できるよう分かりやすいデザインとなっているのが特徴です。

SDGsの目標達成状況

SDGs私たちにできること

これらの目標は2030年までに達成することを目指していますが、現在の達成状況はどのようになっているのでしょうか。

世界の達成度

国連と連携する国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」は毎年、各国のSDGs達成状況などをまとめた報告書「持続可能な開発リポート」を発表しています。

2023年版の報告書では、世界全体でSDGsの目標達成に向けた進捗が3年連続で後退していると警鐘が鳴らされました。国連は「今のペースでは2030年までに達成できない恐れがある」と警告しています。

報告書では、「残り7年間で進歩を加速させるために、すべての国連加盟国は世界規模で長期的な政策を採用すべきだ」と提言しています。

日本の達成度

次に、日本における達成度を見てみましょう。

2023年、日本は達成スコア79.41で、ランキングは166カ国中21位でした。

過去最高だったのは2017年(11位)でしたが、そこから毎年スコアは減少しており、2022年の19位から今年はさらに後退しています。

特に「5.ジェンダー平等」、「12.つくる責任、つかう責任」、「13.気候変動対策」、「14.海の環境保全」、「15.陸の環境保全」の5つは、「深刻な課題がある」と評価され、2022年に続き最低評価となっています。

ちなみに達成できている目標は、「4.質の高い教育をみんなに」、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の2つのみ。自国が抱えている課題にしっかりと向き合い、取り組みを進めていきたいところです。

日本のSDGs達成度については、こちらの記事でも詳しく解説していますのでよかったらご覧ください。

【SDGs達成度ランキング2023】21位にランクダウンした日本の現状と今後の課題は?

目標達成のために私たち個人にできること10選

「飢餓をゼロに」といった、世界的で壮大な目標を目にすると、国や企業が中心となって取り組んでいく問題のように思えるかもしれません。

しかし、私たちにできることもたくさんあります。

具体的なアクションを10個ほど例に挙げてご紹介します。

①脱プラ(脱プラスチックフリー)

プラスチックごみは、海洋汚染問題の大きな原因となっています。

最近では、こうした問題を受けて「脱プラ」「プラスチックフリー」などという言葉も聞かれるようになりました。

レジ袋有料化や、プラスチック製ストローから紙製ストローへの変更、菓子などのパッケージを紙製のパッケージへ変更するなど、国や各企業も脱プラスチックに向けた取り組みを進めています。

プラスチックごみを少しでも減らすための具体的な方法として、エコバッグの使用は私たち個人が今すぐ取り組める簡単な方法です。

②節電

節電は、発電の際に使用される限りある資源を守ることや、温室効果ガス排出の削減に繋がります。

特に夏は、1年の中で最も消費電力が大きい季節です。

冷房は、設定温度を1度上げるだけで約10パーセントの節電効果があります。

また、エアコンは、頻繁に付けたり消したりする方が、付けっぱなしと比べると消費電力が大きくなってしまいます。

「使用しない時はこまめに電源をオフにすることが節電」というイメージがありますが、30分程度の外出であれば、エアコンは付けっぱなしにしておいた方が消費電力を抑えることができます。

③節水

限りある資源を大切にしていくために、節水も重要な取り組みの一つです。

水を1分間流しっぱなしにしてしまうだけで、約12リットルもの水を使用します。

節水は、「6.安全な水とトイレを世界中に」、「11.住み続けられるまちづくりを」、「14.海の豊かさを守ろう」などの目標達成に繋がります。

④地域製品の購入(地産地消)

「地産地消」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。

地域で生産したものをその地域で消費することは、海洋資源や陸の資源の保護に繋がるだけではなく、エネルギー問題や環境問題にも大きく寄与します。

日本は食事の多くを海外からの輸入に頼っていますが、地産地消の動きを高めることは、「輸出のための農地作りによる森林伐採」や「海洋資源乱獲」などを抑えていくためにも大切です。

⑤公共交通機関の利用

自動車の排気ガスは、環境問題に大きな影響を与えています。

自動車での移動に依存しているカリフォルニア州では、以前健康被害が起きるほど大気汚染が深刻化しました。

世界ではEV車(電気自動車)の開発も進められていますが、今すぐ私たちに取り組めることとして、公共交通機関の利用が挙げられます。

公共交通機関を利用することで、排出ガスの削減に貢献することができます。

3R(リデュース、リユース、リサイクル)への取り組み

環境保護のための取り組みとして有名な「3R」。

3Rとは、リデュース(ごみの発生を減らす)、リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)の3つのRを指す言葉です。

具体的には、簡易包装や詰め替え用の商品を使う、レンタルやシェアリングサービスを取り入れる、フードロスに配慮した食生活、フリマアプリの活用、資源ごみの分別など、今すぐ取り組めることがたくさんあります。

⑧エコフレンドリーな製品の選択

世界的な流れを受けて、環境に配慮した製品はたくさんあります。

こうした商品を選択することは、持続可能な消費を促進します。

具体的には、オーガニックコットンやリサイクル素材を使用した製品、エコラベルが付いた製品などがあります。

⑨エコツーリズムの推進

エコツーリズムとは、地域固有の環境や文化的な価値を持続させるような観光スタイルのことです。

魅力的な自然があるのに、それが観光客によって壊されてしまっては元も子もありません。

国は「エコツーリズム推進法」を制定し、自然環境や歴史・文化などの魅力を観光客に伝えることで、その価値や大切さが理解され保全につながっていくことを目指しています。

また、持続的な観光を通じて地域に経済効果を生み出すことで、その利益の一部を環境や魅力的な価値の保全に還元させる仕組みの構築も目指しています。

⑩教育・啓発活動への参加

SDGsの普及と理解を深めるための教育や啓発活動に参加することで、より多くの人々との連携を図り、社会全体としてSDGs目標達成へ向けた取り組みを強化することができます。

SDGsの目標達成のために企業にできること9選

SDGsへの取り組みは、企業の社会的責任としての側面だけでなく、ビジネスの持続性やブランドの強化にも寄与します。

次は、企業がSDGs実現に向けて取り組める主な具体例を9つご紹介します。

①サステナブルな製品開発

製品のライフサイクル全体を考慮し、環境や社会に優しい製品の開発が求められています。

具体的には、リサイクル可能な素材の使用、耐久性の高い製品設計、エネルギー効率の良い製品の開発などが含まれます。

これにより、製品の使用や廃棄時の環境負荷を低減することができます。

②エコフレンドリーな製造プロセスの導入

製造過程でのエネルギー消費や排出ガスを削減するための取り組みです。

再生可能エネルギーの導入や、廃棄物のリサイクル、省エネルギー機器の導入などが考えられます。

③従業員の研修・教育の実施

SDGsに対する理解を深めるための研修や教育を実施し、従業員一人一人がSDGsに対する意識を持つことで、これにより、従業員が日常業務での意思決定や行動にSDGsを取り入れることができるようになります。

これにより、企業全体としての取り組みもより一層加速します。

④サプライチェーンのグリーン化

取引先やサプライヤーと連携し、サステナブルな取り組みを共同で推進することは非常に重要です。

生産過程や物流、調達など、サプライチェーン全体での環境配慮や社会的責任を重視することで、持続可能なビジネスモデルの構築を目指すことができます。

⑤エネルギー効率の向上策の実施

省エネルギー機器の導入や、エネルギーの有効活用を推進することは、CO2排出量の削減やコスト削減にも繋がります。

これにより、企業の経営効率と環境への配慮を両立することができます。

⑥サステナビリティレポートの公開

ESG投資額増加の背景も手伝い、企業が積極的にSDGsへの取り組みを公開することは様々なメリットがあります。

透明性の高い情報発信は、企業のブランド価値向上や投資家からの信頼獲得、ステークホルダーとの関係構築にも繋がります。

⑦環境保護への投資

環境保護への投資は、企業だけではなく持続可能な社会をつくる上で非常に重要な取り組みです。

具体的には、再生可能エネルギーの導入や、環境保全活動への投資などが挙げられます。

⑧ダイバーシティの推進

多様性を尊重し、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が活躍できる環境を整えることが求められています。

ダイバーシティの推進は、SDGsの目標達成への貢献はもちろんのこと、新しい価値観やアイディアが生まれやすくなるため、企業のイノベーションや競争力の向上も期待できます。

⑨グリーンマーケティングの実践

消費者の環境意識が高まる中、エコフレンドリーな製品やサービスの特長をしっかりと伝えるマーケティングが求められます。

製品のパッケージにリサイクルマークを明示する、広告やPR活動で環境への取り組みをアピールするなど、消費者とのコミュニケーションを深める手法が考えられます。

SDGsに取り組んでいる企業事例4選

先ほど取り組み例として挙げたように、SDGsへの取り組みは多くの企業にとって重要な課題となっています。

実際にSDGsに対する独自の取り組みを行なっている企業事例を4つご紹介します。

SMBCグループ

SMBCグループは、持続可能な社会の実現への貢献と、自社の長期的な企業価値向上を目的に、経営会議メンバーで構成される「サステナビリティ推進会議」を設置しています。

具体的には、気候変動への対応として、同グループが排出する「GHG排出量を2030年までにネットゼロとする」、「2050年までに投融資ポートフォリオ全体でのGHG排出量(Scope3:ポートフォリオGHG排出量)のネットゼロ実現」を目指しており、これに向けた一連の目標と行動を「移行計画」として体系化しています。

また、自然資本の保全・回復への対応として、TNFDフォーラムに参画しています。

2023年4月には、「SMBCグループ TNFDレポート」を公表し、TNFDの枠組みに沿って同グループの事業と自然資本との関係性や特に重視すべき分野を分析し、リスクと機会を整理することで取組の方向性を検討しています。

(出典:SMBCグループ公式サイト

日本航空株式会社(JAL)

JALは、グループ全体でダイバーシティの推進を行うことを目的として、2015年9月から組織横断プロジェクトとして「JALなでしこラボ(現在は、女性をはじめとする多様な人財の活躍を促進するという目的でJAL D&Iラボに改称)」を立ち上げています。

このプロジェクトにおける様々な取り組みが評価され、「2021 J-Winダイバーシティ・アワード」では、航空会社として初の企業賞・個人賞の同時受賞を果たしています。

この取り組みはほんの一例で、JALはSDGsで設定されている17の目標すべてに対して達成に取り組んでいる企業です。

「取り組みたいけれど、自社の事業とマッチする分野はどこなのか分からない」、「どのような取り組みから始めたらいいか分からない」といった企業は、ぜひ参考にされてみてはいかがでしょうか。

(出典:JAL公式サイト

NECグループ

NECでは、従業員一人ひとりが良き企業市民として「できることから少しずつ/Think Globally, Act Locally」をスローガンに、中長期的な社会課題解決に向けた企業市民活動を推進しています。

具体的には、2010年より取り組んでいる国連WFP学校給食プログラムへの支援が挙げられます。

これは、賞味期限が残り半年となった災害用備蓄米を、社内食堂・売店で提供・販売し、その売上の一部で飢餓と貧困の撲滅を使命に活動する国連WFPの「学校給食プログラム」を支援するという、社員参加型企業市民活動です。

こうした「備蓄米を寄付金にかえて社会貢献につなげる」という新しい寄付の形で多くの支援金を集めたことが評価され、2011年および2016年に国連WFPより感謝状が授与されています。

(出典:NECグループ公式サイト

島津製作所

島津製作所は、SDGsが採択される前から「科学技術で社会に貢献する」をモットーに企業活動を行ってきた企業です。そのため、持続可能な社会づくりへの取り組み実績は多岐に渡ります。

具体的には、新生児の先天性異常及び疾患の早期診断への貢献として、新生児マススクリーニング「タンデムマス法」を確立しました。

これにより、偽陽性例の数は著しく減少し、また、希少疾患が簡単に診断できるようになったため、小児科救急医療の現場にも大きな変化をもたらしているそうです。

また、水、大気、土壌中の環境汚染物質や環境ホルモンの測定、モニタリングを行なったり、適切な廃棄物処理とリサイクルを推進したりと、日本の最重要課題のひとつである環境への配慮にも積極的に取り組んでいる企業のひとつです。

廃棄物管理の目標は「リサイクル率99%以上」と設定しており、2022年度まで13年連続で達成中とのこと。

島津製作所のホームページでは、SDGsの目標達成に対する取り組み実績がターゲットレベルでまとめられており、SDGsに対する本気度が伺えます。ぜひ参考になさってみてください。

(出典:島津製作所公式サイト

【まとめ】私たちにできることから少しずつ

SDGsの目標達成に向けて私たちにできることを、個人、企業それぞれの観点からご紹介しました。

一見、壮大で規模の大きい目標ですが、その達成は一人ひとりの地道な取り組みが必要不可欠です。

また、企業におけるSDGsの取り組みは、ESG投資額の増加といった影響から、ステークホルダーとより良い関係性を築くきっかけになり得ます。自社事業と相乗効果の見込める分野に取り組むことができれば、経営指標においても良い影響をもたらすでしょう。

自分や自社にできそうな分野を見つけて、できることから少しずつ取り組んでいきたいですね。

 

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
不動産鑑定士
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超え、CRE戦略の立案から実行までを得意としている。
2019年9月に不動産テックを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。