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ABMとは? シリーズ第3弾CRMでデータの基礎固めはできていますか?フォローアップする部署とカスタマーサクセスの役割(入門編③)

入門編1,2では、ウェビナーやセミナーに反応した個人をリードとして捉えてきました。

(前回までのレポート)
>ABMとは? シリーズ第1弾_言葉の意味やABM導入にあたり重要となるリードの定義付けを分かりやすく解説!(入門編①)
>ABMとは? シリーズ第2弾_2023年ウエビナーでフォーカスするポイント8点を分かりやすく解説!(入門編②)

尚、読者の皆様の会社では、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)を全社で一元管理・対応できているか、その検証はできていますか?

この確認作業、セミナーやウェビナー開催後に確認が必要な企業が意外に多いようです。

ABMの視点を取り入れ、アカウント(企業)単位で見ていくと、同僚や他部門の複数の営業が、同じ商材でターゲットとする企業や担当部署にアプローチしているといったことが実際起きています。

日本企業における購買決定、サービス導入までのプロセスは、今でも稟議制を採用しているところが多く、その特徴からも最新のウエビナーも踏まえ、ABMが適していると当社では考えます。

ここで、ABMに進む前提として、あらためてCRMの変遷を振り返り、「社内のCRM整理」と「取引先の取引先への理解」を高めていきたいと思います。

 

CRMとは

CRMとはCustomer Relationship Managementの略で、日本語では「顧客関係管理」と訳されることが多いですが、つまりは顧客情報や行動履歴等の顧客との関係性を管理し、顧客と良好な関係を構築・維持・促進することを指します。

以下ではCRMを取り扱う上でのポイントを整理していきます。

 

CMR上の注意点 取引先との関係(Relation)

CRMをふたつの側面からか確認してみます。

  • 自社のCRM整理      → 自社の複数部署から取引先の同一担当者へアプローチ
  • 取引先の取引先への理解  → 取引先の商材について複数のチャネルが、BtoB部門と BtoC部門に分かれており、取引先が個別にそれぞれアプローチする必要がある場合

 

自社のCRMの整理

取引先を下請けでなく「パートナー」として扱い、対等な関係を持とうとする企業が最初に確認することは・・・?

マーケティング部門は営業部門と同じ考え方のもとで業務を遂行する必要があり、顧客との交渉から商談化、収益化までを一貫して考える必要があります。

こうした状況で、自社の複数の営業部署が、同じ取引先の同一担当者にバッティングするような形でアプローチしているか、確認はできていますか?

取引先から「御社からは、別の○○部署の方とミーティングしたことがありますが・・・」と回答されているケース、意外と多いのではないでしょうか?

確認できていても、部署によっては、上司の意思により、「営業は早い者勝ちだ」と自社内の競合を前提でも、取引先に向かって営業をかける、ということが現実には起きています。

当社では、同じ企業の3部署から同時に営業を受けたことがあります。

各部署の営業担当者は他部署が営業していることを把握した上で、並行してセールスを続けてきました。いくら優秀なSFA(Sales Force Automation)やMA(Marketing Automation)ツールを駆使しても、まず自社の社内でのCRMの整理と営業モラルを確認した上で、取引先と向き合わないと、かえって取引先から信頼を失うことになりかねません。

今後は、特にダウンサイジング、ダウングレードの話題が増えると、上記の傾向はより強くなることが予想されます。

 

取引先のCRMへの理解

顧客のCRMは全く考慮されておらず、質の高いリードを議論できる体制になっているとは言い難い状況です。

取引先の取引先をどこまで俯瞰して、質の高いリードを提供できるかが、相手の立場に立って考えることのできる法人営業が今後の課題と言えます。

インサイドセールスにおいも同様です。

内勤職場の方にとって、取引先のインサイドセールスを理解し、クライアントのニーズ、意向を把握していくのは、至難の業です。

ビデオ会議が多くなり、優秀な営業担当者でも、最初からクライアントのニーズ、特に想定ターゲット、リードをすりあわせすることは難しい環境と言えます。

ここまでの事例は大企業同士で起きやすいケースとも言えます。

ABMを前提に、部署でのアカウント設定を行った際、営業する側、営業される側に、複数の対象部署が存在することとなり、混在・混乱しがちです。

自社も、取引先も、対象とするアカウント(部署)のすり合わせは大変重要になってきました。

 

CRMをPDCA・ファネルで振り返る

顧客設定を丁寧に振り返るために、マーケティングの教科書通りにPDCAを2,3周回していても、成果が上がっていないケースもあると聞きます。

論理的に構築された手法ゆえ、以下の手法での振り返りを当社では推奨します。

 

1.右回りのPDCA → 左回りで戻って検証してみる

A 行動した前提は確認したデータを基本に動いた

C 実施されたデータ、結果をもとに確認、チェックした

D 実施の前提は、計画に基づいて行われた

P これまでの結果、データをもとに立案された計画

 

2.上から「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入・申込」の階層で絞り込んでいく逆三角形のファネル →上から絞り込みではなく、逆に下から検証してみる。

・逆三角形のボトムの母数、コアターゲットが想定していた顧客、ペルソナと合致していたか?

・逆三角形のトップに位置する最初の潜在市場は、正しいターゲット領域からの生け簀になっていたのか?

 

PDCAやファネルで確認したいことは、All or Nothing の議論ではありません。

本来はCRMやMAを駆使して、個人にピンポイントでターゲティングしてきた流れと部署に当てたABMとは相反するものではなく、二人三脚で展開されても良いはずです。

双方のアプローチで、ターゲットとする会社に、対象者にどちらが早く、的確にターゲティングできるかを精査する必要があります。

各社にそれぞれ適したABMのアプローチのレビューが、「丁寧にできているか?」「丁寧にできていたか?」ということです。

ターゲットを絞り込む際の検討時間にかけても、振り返りの際のその議論が少ないとPDCAは回せません。

振り返りの打ち合わせ時間=コミュニケーションの時間が、当初から予定に組み込まれているか、否かで、その検証は可能です。

リード(個人)とアカウント(会社、部署)は対立軸ではない

振り返りの際、リードとアカウント両方の目線から最適なアプローチ手法で潜在クライアントにコンタクトすることが肝要です。

 

リードとABMのポートフォリオ

リードの質を数値で図る

ABMその2で、解説した2023年ウエビナーでフォーカスするポイントの8点、どれも数字で計ることが可能です。

振り返りの際、感覚、観念で語らず、データで営業部門とマーケティング部門が向き合うことができるか、がABMを有効に活用できるか、否かの分岐点となります。

CRM、MA、ABMを高い費用を払って導入したのに、費用対効果が顕著に表れていない。この原因はソフトにあるのでしょうか?

各ソフトはお値段相応に機能が付加されていますが、使いこなしている企業、宝の持ち腐れになっている企業に分かれます。後者に関しては、他社のソフトに入れ替えたところで、ターゲットの設定と振り返りが、営業部門とマーケティング部門間で向き合えていないケースが多いようです。

当社の知る限り、各CRM、MA、ABMのソフトはそれぞれ優秀なソフトばかりです。

身の丈にあったソフトにするか、ハイスペックなソフトに切り替えていくか、は各社の決断次第です。

 

リードとCustomer Satisfaction(カスタマーサティスファクション)

顧客満足が「CS」と日常で使用されるようになったのは、1980年代。

日本の企業では、CS部門は以下の部署名で、発展、継続してきました。

お問い合わせ窓口

お客様相談窓口

お電話相談窓口

コールセンター

Customer Service  カスタマーサービス 昭和(アフターサービスは和製英語)

Customer Support カスタマーサポート 平成

Customer Success カスタマーサクセス 令和

といった感じでしょうか?

略語は同じCSですが、部署の変遷としては「受動的」から「能動的」なニュアンスに変わっていたようです。

 

アカウント内のリード

部署の絞り込みはできた、それでは、この部署のキーパーソンは誰と誰なのか?

リード目線から   個人→部長→担当役員→社長→企業

アカウント目線から 企業→社長→担当役員→部長→個人

 

リード目線、アカウント目線から抽出されたリスト

CRMでも、ABMでも、リストアップされたリストを確認する際、アメリカのLinkedInや、日本国内の名刺管理ソフトをもとに、新しい部署と個人名を探索、サーチします。

ここでの確認事項は以下の通りです。

例)
・同部署のデジタルリテラシー(会社公認のツールを対象企業の方々は利用しているのか?)
・同僚とのリレーション(会社が名刺管理ソフトを承認している中、部長や他のメンバーも登録済みなのに、営業対象となるリードの方だけが入っていない。)
・該当部署が他部署と連携が良いか、否か、メンバーのつながり度合いで確認
・つながりの中に競合他社の方が登録されているか、否か。
・閲覧HPに同業他社のHPが登録されていないか?等、まだ他にも多数確認する項目の見方があります。

上記の内容をマーケティング側と営業側で、事前・事後でコミュニケーションを取れるようになっているか?でリードの定義、アカウントの定義がより明確化するのではないでしょうか?

 

DMP (Data Management Platform)とCDP(Customer Data Platform)

かつてデジタルマーケティング業界で頻繁に使用されていた言葉にDMPがあります。

「インターネット上に蓄積された様々な情報データを管理するためのプラットフォーム」と解説されてきましたが、この「データ」の意味するところは、「数字」と「個人情報」に分けることができます。

DMPの「データ」の中でも、特に「顧客の個人情報」が主役となってきたことから、DMPという単語が使われなくなり、CDPという単語を用いて説明する方が増えているようです。

CDPは、もともとオフラインの顧客データの収拾、分析、統合等を意味する言葉でしたが、今やオンラインをも包括して、使用されるようになりました。

デジタルマーケティングの世界では、DMP起点で、プログラマティック取引、DSP(Demand Side Platform)、SSP(Supply-Side-Platform)との向き合いで、自動取引(RTB(Real Time Bidding))がネット広告でポピュラーとなり、活発に使用された感があります。

こうした背景から、DMPをも包括して、CDPを語る方も増えました。

一方、グローバルのプラットフォーマーは、データクリーンルーム、データクリーンセンターと称して、プラットフォーマーのDMP、CDPを構築しよう、という動きに映ります。

日本国内のデジタルマーケティングに関連する各社も日本国内でのデータクリーンルーム、データクリーンセンターとして、CDPの構築に動いています。

Cookielessの流れから起きたCDP構想は、1社で展開すれば、ID戦略、サブスクモデル、複数社で協業・連合すれば、巨大なCDPが出来上がります。

ポイントや決済も含め、個人情報の取り扱いが厳重に管理できる企業群、グループはどこなのか、個人情報の漏洩やデータの利活用の不備によるブランド棄損等がないよう、最新の注意を払いながら、顧客データを取り扱う、グループ関係者全員の総力戦と言い換えることもできます。

カスタマーデータに行動、位置情報、決済情報等が付加されてきたことの意味はとても大きく、個人情報もグローバルスタンダードの時代を意識して、個人情報保護法や電気通信事業法の改正が続きます。どちらの法律も国内ではありますが、海外で伍していける法を総務省や個人情報保護委員会が整備しています。

国内法に則り、かつグローバルの視点を持ち、ルールやポリシーを完備、遵守できている企業と企業グループが勝者となる時代に向かっています。

 

そこで、当社では、次回、決済、ポイント、個人情報、企業情報のデータに最も関係する金融業界を対象に解説していきます。

金融機関が対象とするABMではなく、金融機関との交渉・連携・協業を想定した際、不動産業界を始め、関連業界からのABMの目線で、金融業界にフォーカスし、ストーリー展開していきます。

金融業界のどの部署にアプローチすればよいのか、金融業界が関与するどの資料やデータを確認していくことが、ABMの展開で、有効かつ有意義な視点となるのか?

金融業界の新しい部署、プロジェクト、新規事業部をポジティブにアプローチしていきます。

 

 

監修

株式会社デジタルマイス 代表取締役社長
菊地 伸行

大手新聞社入社後、アメリカ西海岸に駐在し、ロサンゼルス、シリコンバレー、サンフランシスコ、シアトルをカバー。現地から、グーグル、アマゾン、セールスフォース等の日本進出を支援。帰国後、G7伊勢志摩サミット特集、GDPRセミナー等を立案・運営。
直近では、(不動産テック)をテーマにNIKKEI PropTech Conference、個人情報保護法改正・電気通信事業法改正をテーマにNIKKEI Privacy Conferenceの立案、運営。
アドテク、マーテク分野での講師として、Exchangewire ATS tokyo、Ad Tech International Tokyo、Event Marketing Summit、日本パブリックリレーションズ協会等で講演を行う。
2023年1月に株式会社デジタルマイスを起業し、現在に至る。

社名のマイス(MICE)はMeeting、Incentive、Convention(Conference)、Event (Exhibition)の略語であると同時に、Media Relations(PR+AD)、Investors Relations、Corporate Communication、Engagementの頭文字でもある。
「広報・宣伝・デジタルをワンストップでアドバイス」をモットーに①コンサルティング業務(デジタル、PR、IR関連)②メディア・情報発信業務支援③コンテンツマーケティング業務を支援。
https://dmice.co.jp/