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ABMとは? シリーズ第1弾言葉の意味やABM導入にあたり重要となるリードの定義付けを分かりやすく解説!(入門編①)

当サイトでは、ABMに関し全5編にわたりABMとは何か基本的な整理から実務に沿った導入にあたっての留意点を解説してまいります。

今後、ABMを業務に取り入れる際のご参考に、是非ご覧ください。

ABMとは

ABM(Account Based Marketing)とは、見込みのある企業(=アカウント)をターゲットに設定し、その企業に効果的なアプローチをするBtoBマーケティング手法の1つです。

2010年代、デジタル時代に適応したキーパーソンをターゲティングする手法が主流となっていました。リードはBtoCのマーケティング活動の中心で、「個人」を対象にしてきました。特にコロナ渦においては、インサイドセールスを柱にリードジェネレーションからカスタマーサクセスへといった新規開拓する手法が増えてきました。

一方、Account Based Marketing(以下ABM)は企業&部署を対象に、デジタルを駆使し、BtoBマーケティングを行う手法として注目されてきました。

 

日本企業が得意な営業の考え方、それがABM

ABMは大手の企業や上顧客を専任で担当する従来の「アカウント営業」にあたる活動をマーケティング部門と営業部門がデジタルを駆使し、連携して行う点が特徴と言えます。

多くの日本の企業はもともと法人営業のアカウントは取引先企業を「部署」単位で把握し、営業組織が構成されていましたので、40歳以上のビジネスピープルには横文字、カタカナ3文字略語で説明されるよりも、「旧来の法人担当営業の延長」といった方が腹落ちしやすいと感じています。

20年強の時を経て、旧来の法人営業から、顧客のデータ管理、ターゲティング等をこなし、デジタルマーケティングの要素を加味し、現在のABMにたどり着きました。

法人から個人へ、個人から法人へと、法人営業の原点にグルっと一周したと説明することも可能です。

景気後退局面に突入し、BtoBのビジネスでは、人員削減、コストカット、業務縮小等を迎え、これまでの右肩上がりの営業から、右肩下がりの厳しい営業局面に迎っています。

過去もドットコムショック、リーマンショックと言わるような場面でも業績を伸ばす企業があり、こうした企業のスタンスは、「Back to Basics」すなわち「いま一度、基本に立ち返る」ことでした。

ABMの考え方を採り入れたMarketing Automation(MA)ツールが増加したことで、ABMの認知が上がり、BtoB企業のマーケティング戦略において有効な考え方としての評価が高まっています

 

<法人営業におけるITツールの導入とデジタルマーケティング採用>

 

ABM成功ポイント① ABMにおけるアカウントの定義 ―それは「企業」?それとも「企業内の部署」?―

アカウント認識に基づくBtoBマーケティングのターゲットとして、組織は個々の見込み客(リード)または顧客(アカウント)としてコミュニケーションを行ってきました。

それでは会議で皆さんが使用するアカウントとは、「企業」「企業内の部署」どちらを意味するのでしょうか?

当社では以下のように考えます。

ABMは導入において、主に大企業の営業組織で採用されてきました。

大企業ほどサイロ化や縦割りが続き、横串を刺さないと案件が決定しないためであり、合議制で決済が進むと言われています。

一方で、大企業でも一部署のリーダーシップにより、決済が進むケースも見受けられます。

どちらが良いか悪いかではなく、企業ごとの社風やカルチャーにあった進め方にABMはあわせて展開することが必要です。この見極め、洞察力が必要です。

そうした意味で、ABMは、企業単位と部署単位のどちらを対象に営業戦略を構築するか、関係者で事前に共有することが肝要です。

営業する側の企業内で、営業部は攻略したい部署単位で説明しているにもかかわらず、システム部門は企業単位で説明していることが往々にしてあります。

一方、中小企業のアカウントを検討する際、社長や担当役員をキーパーソンと考え、その他の決定者をどこまで包括するか、リードジェネレーションをベースに、その延長で、ABMを展開すれば、関係者の理解は早いと思われます。

アカウントの定義を明確にし、リードを意識する!

大企業のアカウント           ⇒「企業」または「部署」単位
中小企業のアカウント       ⇒「企業」単位

 

ABM成功ポイント② CRM、MAで培ってきたリードをどのようにケアしていくか?

Customer Relationship Management(CRM)、Sales Force Automation(SFA)、MAを理解していく中、マーケティング部門の商談活動として「デマンドジェネレーション」があります。「デマンドジェネレーション」はこれまでバラバラな組織と予算で実行されることの多かったマーケティング活動(展示会、セミナー、ウエビナー、メール、DM等)を統合し、有望見込み案件/顧客リストを営業部門へ渡す需要創出活動を総称したものです。

見込み客を創出・育成して営業部門へ提供するまでの流れが「デマンドジェネレーション」であり、その第1段階がリードジェネレーションとなります。

リードジェネレーションのステップは以下の通りです。

見込→育成→絞込のプロセスにおいて、顧客データの管理が最重要であることは言うまでもありません。

しかし、各企業、この顧客データ管理がボトルネックになっているケースがまだあるのではないでしょうか?

DX(デジタルトランスフォーメーション)の一丁目一番地は、全社統一の顧客管理です。

顧客管理のCRMを整備しないまま、SFA、MAを検討しても、振出しに戻って、CRMから、といったケースはいまだに多いようです。ここでも基本に返る「Back to Basics」の発想が必要です。

 

ABM成功ポイント③リードの定義を明確にする!

デジタルマーケティングの世界では、リードの中でも、見込のあるホットなリードをMQL(Marketing Qualified Lead)と呼びます。このMQLを営業部門に渡し、営業が引き受けたリードをSAL(Sales Accepted Lead)と言います。

インサイドセールスやマーケティング部門が獲得したリードを営業部門へMQLとして引継ぐと、営業から「使えないリードが多かった」「リスト内の当たりはずれの幅がありすぎる」といった課題に直面します。

ABMはマーケティング部門と営業部門で事前に、アカウント選定とリードを定義することが前提となります。

同じ会社の営業でも担当領域ごとに事情は異なっています。既存案件で手がいっぱいの営業はホットリードを渡されても対応は不可能、一方でちょうど来期の案件発掘を望んでいる営業はホットリードのフォロー率が高くなります。

営業部門は、プロジェクトやテーマに沿った売りたい商品、サービス、企画ありき、かつ狙いたい企業ありきが多いと推察されます。

マーケティング部門が事前に対象となるアカウントやリードの定義し、説明をしないまま、リード獲得に走る傾向がABMファーストの考えでは起きやすいので、注意が必要です。

営業部門と見込案件として獲得したいターゲット企業/部門と商材を具体的に共有、つまりは営業戦略を共有したうえで、その獲得に絞ってコンテンツも最適化します。

(コンテンツマーケティングはスペースの都合で触れませんが、ターゲットに沿ったコンテンツですので、最初にターゲットが決まっていなければ、コンテンツも作成できず、プランも策定できない、ということです。)

そうして獲得できたリードは既に合意済みということもあり、営業との意思疎通、営業側のフォローアップも向上します。

 

ABM成功ポイント④ウエビナーやセミナーで獲得するリードの定義を!

インサイドセールスやマーケティング部門が獲得したリードを営業部門へMQLとして提供する前に、事前に確認しておかなければならないのが、ウエビナーやセミナーで獲得したリード仕分けの定義です。

せっかくコストをかけて獲得したリードですが、「量」から「質」の時代に推移し始めています。

具体的な事例をご紹介します。

新たにマーケティング部門に採用されたAさんは、前職でリード獲得において高い評価を受けた経歴を持ちます。転職先ではこの手腕を買われて、同部門に採用されました。

早速、新規でウエビナーやセミナーの開催、となりますが、社内では以前のウエビナーやセミナー開催時の申込者数、実際の参加者数・視聴者数、PV,UUのみがKPIとして比較検証されることが分かっています。

こうした場合、Aさんが目指す目標は、「質」より「量」となり、「数」だけに固執することになります。誰しも転職後に同様の立場に立ったら、「量」より「質」が重要だと最初に説いて回ることは難しいと思われます。

しかし、先述の通り、「量」を求めて獲得したリードの中には有効でない件数も数多く含まれています。営業部門からは「数」も欲しいけど「ある程度の質」は確保してほしい、といった要望が必ず出てきます。初回は「数」で提供し、一定の評価を受けても、同様のウエビナーやセミナーの「二回目」「次年度」で、実績を上回る成果を達成することは極めて難しくなり、結果「焼畑農業」的な営業でクロージングします。

リードの「質」に関しても、必ずマーケティング部門と営業部門は事前にすり合わせが必要な時代となりました。

ABMでは、マーケティング部門と営業部門が一緒に、リードの「量」と「質」のポートフォリオで考えるように展開できることが理想と言えます。

 

ABMの原点は顧客の整理、顧客の最新情報の更新、リードの定義、リードの質の確認、アカウントの定義等、CRMの確認です。

基本に立ち返り、丁寧に「Back to Basics」をこなしていきましょう。

 

 

監修

株式会社デジタルマイス 代表取締役社長
菊地 伸行

大手新聞社入社後、アメリカ西海岸に駐在し、ロサンゼルス、シリコンバレー、サンフランシスコ、シアトルをカバー。現地から、グーグル、アマゾン、セールスフォース等の日本進出を支援。帰国後、G7伊勢志摩サミット特集、GDPRセミナー等を立案・運営。
直近では、(不動産テック)をテーマにNIKKEI PropTech Conference、個人情報保護法改正・電気通信事業法改正をテーマにNIKKEI Privacy Conferenceの立案、運営。
アドテク、マーテク分野での講師として、Exchangewire ATS tokyo、Ad Tech International Tokyo、Event Marketing Summit、日本パブリックリレーションズ協会等で講演を行う。
2023年1月に株式会社デジタルマイスを起業し、現在に至る。

社名のマイス(MICE)はMeeting、Incentive、Convention(Conference)、Event (Exhibition)の略語であると同時に、Media Relations(PR+AD)、Investors Relations、Corporate Communication、Engagementの頭文字でもある。
「広報・宣伝・デジタルをワンストップでアドバイス」をモットーに①コンサルティング業務(デジタル、PR、IR関連)②メディア・情報発信業務支援③コンテンツマーケティング業務を支援。
https://dmice.co.jp/