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PPM分析とは?導入の手順や有名企業の成功事例、メリットを分かりやすく解説!

PPM分析とは、企業が経営資本を各事業に対して適切に配分するために用いるフレームワークのことです。

市場の変化が激しい現在において企業が売上を伸ばすためには、自社事業に対する適切な経営資本の分配が重要です。

本記事では、PPM分析における4つの分類や有名企業の成功事例について紹介します。

PPM分析の有効性や導入時のポイントについても解説しているので、自社の経営資本の配分を考える際に参考にしてください。

PPM分析とは?4つの分類と意味

PPM分析とは?4つの分類と意味

PPM分析とは複数の事業を展開している企業が、各事業に対して経営資本を適切に配分するための手法です。

PPM分析を使用することで、重点的に経営資本を投資すべき事業を見極めることができ、より良い経営戦略を立案できます。

具体的な方法として、自社の各事業における「市場成長率」と「市場占有率」を計算し、「花形」・「金のなる木」・「問題児」・「負け犬」の4つの枠に分類することで、各事業の将来性を見極めることができます。

市場成長率

市場成長率とは、前年度と比較した各事業の市場規模の伸び率を指します。

市場成長率は、以下の計算式で表すことができます。

場成長率=今年の市場規模÷前年の市場規模

例えば、インターネット広告事業の2020年度の市場規模が100億円だと仮定します。

その事業の2021年度の市場規模が120億円であった場合、市場成長率は120%です。

各事業に対する市場成長率を出すことで、自社が取り組んでいる事業の成長率を把握することができます。

市場占有率

市場占有率とは、ある市場において自社事業の売上が占める割合のことです。

市場占有率は、以下の計算式で表すことができます。

市場占有率=自社の売上(金額または数量)÷市場規模(金額または数量)×100%

例えば、取り組んでいる事業の市場規模が100億円だと仮定します。

自社の売上が3億円であった場合、自社事業の市場占有率は市場全体の3%です。

市場占有率を計算することで、市場における自社の立ち位置を把握することが可能です。

このように自社事業における市場成長率と市場占有率を計算し、下記の図のように市場成長率と市場占有率の高低によって各事業を4つの枠に分類することで、各事業のポテンシャルを明らかにすることができます。

市場成長率 市場占有率
花形
金のなる木
問題児
負け犬

1つずつ解説します。

花形

花形に分類される事業は、継続的に投資を行うことで将来的に大きな成長が期待できる事業です。

花形に含まれる事業は、現時点で大きな利益が出せていなくても市場全体が伸びていることから、継続的に投資を行うことで売上を伸ばせる見込があります。

花形に含まれる事業は、他事業と比べて将来的に大きな売上につながる可能性を秘めた分野であるため、継続的に経営資本を投資することがおすすめです。

金のなる木

金のなる木に分類される事業は、自社の中でも収益性が高い事業を指します。

金のなる木に含まれる事業は、市場において競合が少なく、少額の投資でも安定的な利益を生み出すことができます。

金のなる木に該当する事業で得た利益は、他の事業へ再投資することができ企業の売上拡大のために重要な資金源になります。

問題児

問題児に分類される事業は、今後の市場成長が見込まれる分野ではあるものの自社のシェア率が低い事業を指します。

問題児に含まれる事業は、市場の成長率が高く、シェア率を伸ばすことで大きな利益を期待することができます。

問題児に含まれる事業に対して継続的に経営資本を投資する場合は、まずはシェア率を獲得するための経営戦略を立てる必要があります。

負け犬

負け犬に分類される事業は、産業の成長率が低く市場におけるシェア率も低い事業を指します。

負け犬に含まれる事業は、仮に経営資本を投資した場合でも売上を伸ばすことが難しいため、早期の撤退を考えることが無難です。

前年度まで花形や金のなる木に該当していた事業が、市場の変化によって負け犬に転落することもあります。

負け犬に含まれる事業は今後売上につながる見込みが低いため、なるべく早いタイミングで縮小や撤退を検討して、成長が期待できる事業に経営資本を投資することが望ましいです。

企業経営がPPM分析を取り入れるメリット

企業経営がPPM分析を取り入れるメリット

企業はPPM分析を取り入れて適切な経営資本の分配をすることで、多くのメリットを得られます。

PPM分析を取り入れることの具体的なメリットは以下の2つです。

  • 将来を見据えた経営ができる
  • コストの削減ができる

それぞれ確認します。

メリット①:将来を見据えた経営ができる

PPM分析を活用することで、将来を見据えた経営戦略を立てることができます。

PPM分析を活用して、自社の各事業のポテンシャルを把握し今後、自社の事業で成長が見込まれる分野に積極的に投資することで、将来的な売上の向上につながります。

また、経営資本を投資しても成長が見込めない事業を明らかにすることで、早期の撤退を検討できるため、無駄な支出を減らし安定した経営戦略を立てることが可能になります。

メリット②:コストの無駄を削減ができる

PPM分析を活用して自社の事業を4つの枠に分類することで、コストの無駄を削減できます。

負け犬に含まれる事業に対する投資を続けても、将来的な売上は期待できません。

そのような事業からは即座に手を引き、市場が伸びている事業に積極的に投資することで、資金を有効活用することができます。

PPM分析を取り入れることで無駄なコストを省き、将来性のある事業に社内の経営資本を多く配分することができるのです。

企業経営にPPM分析を取り入れるデメリットや問題点

企業経営にPPM分析を取り入れるデメリットや問題点

PPM分析は経営資本の最適な分配ができるなど多くのメリットがある反面、PPM分析を活用することによるデメリットもあります。

あらかじめ、PPM分析のデメリットを理解したうえで適切な場面で活用するようにしましょう。

PPM分析のデメリットは以下の2つです。

  • 事業間の関係を考慮する必要がある
  • 画期的なアイデアを生み出せない

それぞれ確認します。

デメリット①:事業間の関係を考慮する必要がある

PPM分析は各事業に対する効率的な経営資本の分配を考えるために有効な手段ですが、各事業間の関係を考慮した分類ができません。

会社の事業は、相互に影響し合うことで事業拡大・売上向上を目指します。

仮に各事業間の関係をふまえず、「負け犬」に分類される事業から撤退した場合に、その影響から「花形」や「金のなる木」に含まれる事業も衰退してしまう恐れがあります。

PPM分析を活用するなかで事業の撤退・縮小を考える際は、たとえ「負け犬」に含まれる事業であっても、他の事業との関係性を考慮しながら経営戦略を立てることが重要です。

デメリット②:画期的なアイデアを生み出せない

PPM分析は現状の事業を分析するフレームワークであるため、新たな事業の立案や商品の開発には不向きです。

PPM分析を活用することで、自社事業を花形・金のなる木・問題児・負け犬の4枠に分類したとしても必ずしも画期的なアイデアにはつながりません。

PPM分析を行う際は、自社の各事業を形式的に4枠に分類するだけでなく、常に新たな発見やアイデアを生み出す意識を持つことが重要です。

PPM分析を導入した企業の成功事例

PPM分析を導入した企業の成功事例

自社で効果的にPPM分析を取り入れるためには、これまでにPPM分析を導入して成功した企業の事例を参考にすることがおすすめです。

以下の4社がPPM分析を導入して成功しています。

  • キヤノン
  • ソニー
  • ソフトバンク
  • サントリー

それぞれ確認します。

成功事例①:キヤノン

キヤノンはカメラや映像機器を製造・販売する日本の大手精密機械メーカーです。

キヤノンが製造・販売する一眼レフカメラやコンパクトカメラは多くの利益が出る「花形」の事業でした。

しかし、近年のスマートフォンの普及に伴いカメラ市場の規模は大きく縮小しました。

キヤノンは「負け犬」となってしまったカメラ事業を縮小して、ページプリンタ事業やインクジェットプリンタ事業などの勝てる事業を見極め、多くの資本投資を行いました。

現在、キヤノンはページプリンタやジェットプリンタの市場で高いシェア率を獲得しており、カメラ事業に変わる経営の柱として高い利益を上げています。

成功事例②:ソニー

ソニーは日本の総合電気機器メーカーです。2000年以降、ソニーでは売上の中心であったAV機器やパソコンなどの販売業績が落ち込んでしまいました。

ソニーはPPM分析を活用して「負け犬」に分類されるAV機器事業の規模を縮小し、パソコン事業を売却することで、市場成長率の高いゲーム事業や音楽事業に多くの経営資本を投資しました。

その結果、ソニーはゲーム事業や音楽事業で大きなシェアを獲得することができ業績を回復させました。

成功事例③:ソフトバンク

ソフトバンクは、携帯電話などの無線通信サービスおよび長距離、国際通信を提供する日本の大手電気通信会社です。

ソフトバンクのメインとなる通信事業は、市場規模が大きいものの競合他社が強く高いシェア率を獲得することができません。

そのため、近年急速に成長しているキャッシュレス決済事業へ多額の投資をする経営戦略を立てました。

その結果、ソフトバンクのキャッシュレス決済である「PayPay」の国内シェア率は50%を超えるほどまでに成長を遂げています。

市場の流れを読み取り、これからの成長産業に多くの経営資本を投資したことがソフトバンクの成功につながっています。

成功事例④サントリー

サントリーは、清涼飲料水やアルコール飲料など幅広い事業を展開する日本の大手飲料メーカーです。

サントリーがビール市場に参入した当初は、競合他社のシェア率が高くPPM分析では「問題児」に含まれる事業でした。

サントリーは、ビール業界の今後の市場成長率が伸び続けることを考慮して継続的な投資を行った結果、ビール業界で多くのシェアを獲得することができ「花形」の事業へと成長させました。

PPM分析を活用して経営戦略を立てる際は、今後の市場成長率の伸びを考えて経営資本の分配を決定することが重要です。

PPM分析が学べるおすすめの本

PPM分析が学べるおすすめの本

PPM分析に関する知識やスキルを身に付けるためには、本によるインプットが有効です。

PPM分析に関する学びを深めたい方には、『ポートフォリオマネジメント教本』がおすすめです。

本の内容を紹介するので、PPM分析を学ぶ参考にしてください。

ポートフォリオマネジメント教本

『ポートフォリオマネジメント教本』には、PPM分析を導入する際の8つの心得が示されています。

本書を読むことで、PPM分析の導入方法を1から順を追って学ぶことができます。

これから自社でPPM分析の導入を検討している企業におすすめの一冊です。

『ポートフォリオマネジメント教本』でPPM分析を学んで自社の経営資本を効果的に配分するための参考にしましょう。

PPM分析に関するQ&A

ここまでPPM分析のメリットや導入方法など、網羅的に解説してきました。

最後に、PPM分析に関してよくいただく質問をまとめています。

Q&A形式で紹介するので、ぜひ参考にしてください。

PPM分析をするためには研修やセミナーが必要?

社内でPPM分析に関する知識やスキルを持つ人がいない場合は、研修やセミナーへの参加がおすすめです。

PPM分析を正しく理解できておらず経営資本をうまく配分することができなければ、効果的な事業の拡大にはつながりません。

社内にPPM分析の知識やスキルを持つ人がいる場合、研修やセミナーは必須ではありません。

その場合は、PPM分析を行うチーム内で知識やスキルを共有できる体制を整えておきましょう。

PPM分析はエクセルでもできる?

PPM分析は、エクセルで行うことが可能です。

エクセルのグラフ機能にあるバブルチャートを利用することで簡単にPPM分析ができます。

PPM分析の導入には、特別なツールが必要ないため自社で導入する際はエクセルを有効に活用しましょう。

PPM分析を取り入れて事業の撤退・拡大を進めよう!

自社の各事業に対して経営資本を効果的に配分するためにはPPM分析の活用がおすすめです。

PPM分析を活用することで客観的な指標をもとに経営資本を分配することができるため、より良い経営戦略を立てることができます。

今後、PPM分析の導入を考えている企業は、PPM分析による成功事例を持った企業の取り組みを参考にしてください。

PPM分析を上手く活用して、自社の事業拡大を図りましょう。

監修

ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
宮寺 之裕
大手リース会社、不動産鑑定事務所を経て、J-REITの資産運用会社の投資部門にて企業不動産(CRE)に携わる。
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。

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