企業に求められる自然環境の保全への取り組みとは?具体的な課題や有名会社の活動事例を紹介!
近年、気候変動や異常気象など自然環境の悪化が世界的な問題として取り上げられています。
環境問題はますます深刻化することが予想されているため、対策を講じることが必要であり、各企業が環境や社会に配慮し、省エネ化や施設の有効活用を進めています。
本記事では、自然環境の保全に企業が取り組むメリットや有名企業の活動事例を紹介します。さまざまな事例をもとに、自社で自然環境保全への取り組みを進める参考にしてください。
自然環境の保全とは
自然環境の保全とは、自然環境の破壊を防ぎ環境負荷を低減させる取り組みのことを示します。
近年、私たちの住む地球では、地球温暖化や気候変動によって大きな災害が発生しており、地球温暖化などが原因で発生する自然災害を防ぐためには、自然環境の保全が大切です。
環境保全が必要な背景と課題
環境保全の取り組みが必要な背景には、人類の経済活動による自然環境の破壊が関係しています。
世界経済はこれまでにないほど急速な発展を遂げています。しかし、経済の発展に伴い、温室効果ガスの排出量や産業廃棄物の破棄量などは増加し、自然環境に多大な悪影響を与えています。
そのような現状を踏まえて、現代社会では自然環境の保全に関する課題として以下の3つの課題が挙げられています。
地球温暖化に伴う異常気象
地球温暖化による異常気象が深刻化しています。2022年の東京では、6月に最高気温が35度以上の猛暑日が9日連続で観測されました。
また、パキスタンでは、2022年6月以降の大雨による大洪水が原因となり国土の3分の1が浸水する事態も発生しています。
地球温暖化はこれまでに経験したことがない異常気象の発生につながっており、地球規模の課題として問題視されています。
森林の減少
木材の使用目的の半数は燃料です。発展途上国などでは、森林を伐採して確保した薪や炭を生活のための燃料として利用しています。
また、木材は紙やトイレットペーパーの原料ともなるため、経済活動を進める企業による森林伐採も加速しています。
森林の減少は、地球温暖化が進行する要因の1つです。今後も森林の減少が進むと、土地は水を含む力を失い砂漠化へとつながってしまうでしょう。
水質汚染と海洋ごみ
産業排水や生活排水、ゴミのポイ捨てなどによる水質汚染と海洋ごみが問題視されています。
化学物質や有機物の排出は水生生物の生活に悪影響を与え、生物多様性の危機にもつながります。
また、日頃口にする海産物に化学物質が含まれるようになると、健康被害を起こす危険性も高まります。
自然環境保全の重要性
今後、自然環境に関する問題の深刻化が予想されています。
具体的には、石油や石炭など主要エネルギーの枯渇などが予想されており、持続可能な社会を作るためにも、自然環境保全への取り組みはますます重要になると考えられます。
快適な生活環境や今後の人類の進歩を考えたうえでも、今後は自然環境保全への取り組みがより一層求められるようになるでしょう。
自然環境保全のためのグローバルな取り組み
グローバルな視点を持ち、自然環境保全のためにさまざまな取り組みが行われています。具体的な取り組みとしては、2015年9月に国連総会で掲げられたSDGsが挙げられます。
SDGsは、持続可能な開発のための17の国際目標と169の達成基準、232の指標からなる目標です。
各国の企業では、国際社会共通の目標であるSDGsの考えにもとづき、環境面や水質面などに関する世界的な課題に配慮した取り組みが増加しています。
自然環境の保全のための日本の取り組み
日本は、世界的に自然環境保全が求められる中で、政府開発援助(ODA)を通して自然環境保全に貢献しています。
具体的な取り組みとしては、発展途上国の自然環境の保全に関する取り組みを助けるために、日本の最先端の技術を教える支援を行っています。
また、各国に対するODA事業が不公平なものにならないようにガイドラインを作成し、環境社会への配慮の徹底に努めています。
企業こそ自然環境保全の取り組みが必要な理由とメリット
温室効果ガスの排出や森林の減少などの多くには、各国の企業の経済活動が関係しています。
そのため、各国の企業が自然環境の保全への取り組みを行うことによって、現状の環境問題の解決につなげることが可能です。
また、自然環境保全の取り組みを行うことで、企業側も大きなメリットを得ることができます。
企業が自然環境保全に取り組むメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
- 企業イメージの向上
- 持続的な資源の確保につながる
- 新たなビジネスを生み出すチャンスが生まれる
- ESG投資が期待できる
1つずつ確認していきましょう。
企業イメージの向上
自然環境の保全に力を入れることによって、顧客や消費者からの企業イメージが良くなると考えられます。
企業イメージを向上させることで、経営活動を行ううえでも大きなメリットを得ることができます。
たとえば、取引先の顧客からの受注が増えたり、自社商品が消費者に多く売れたりするなどの可能性が考えられるため、経営利益の増加にもつながるでしょう。
持続的な資源の確保につながる
自然環境の保全に力を入れることで、持続的な資源の確保にもつながります。
石油や石炭などの燃料は、近い将来枯渇すると予想されています。
そのため、地球環境を考えずにこれまで通り石油や石炭などのエネルギーに頼った場合、将来エネルギー不足問題に陥る可能性が高いです。
あらかじめ社会環境の変化に対応し、再生可能エネルギーの開発など、会社の将来的な資源確保を考えた取り組みを行うことが重要になります。
長期的な目線で企業の生存戦略を立てるうえでも、自然環境の保全に力を入れることは必要不可欠です。
新たなビジネスを生み出すチャンスが生まれる
自然環境の保全を検討することによって、新たなビジネスの創造チャンスが生まれます。
環境保全の取り組みを検討する際には、どのような取り組みが環境保全のために適切か、市場の調査が必要になります。
自社の専門分野でない市場の調査を行うことで、新たな市場を開拓することが可能です。
さまざまな情報を手に入れることによって顧客や消費者が求めているものが把握でき、自社の強みを活かした新たなビジネスチャンスに出会うことがあります。企業の新たな財政基盤の確保にもつながるでしょう。
ESG投資が期待できる
ESGは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)のそれぞれの頭文字を合わせた言葉です。
ESG投資とは、環境や社会に配慮した取り組みを行う企業に対する投資のことを示します。
近年、環境や社会に配慮した取り組みを行う企業へ投資家からの注目が集まっています。
投資家による投資は、企業の財政基盤を整えるために重要な役割を果たしています。ESGを考慮した経営を行うことで多くの投資家からの投資が期待できるため、企業としても大きなメリットを得ることができます。
自然環境保全のために企業に求められる取り組み
自然環境を保全するための取り組みにはさまざまなものがあります。
自然環境保全の取り組みのうち、企業経営が環境負荷の主要な原因となっており改善が求められる取り組みには、以下の4つが挙げられます。
- 温室効果ガスの排出削減
- 省エネ化
- 代替エネルギーの開発
- 産業廃棄物の削減
企業経営が環境に与える影響を考慮し、課題解決のための取り組みを行いましょう。
温室効果ガスの排出削減
近年、地球温暖化が進む中で、大洪水や50度に迫る高温などさまざまな異常気象が世界各地で発生しています。
地球温暖化の主な原因は、温室効果ガスの排出です。地球温暖化を防ぐために、温室効果ガスの削減が世界的な課題として挙げられています。
そのため、各企業は温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みを行う必要があります。
省エネ化
省エネ化を進めることによって、安定的なエネルギー供給を確保し、地球温暖化防止につなげることが可能です。
国際エネルギー機関であるIEAによると、2040年の世界におけるエネルギー需要量は現在の1.3倍に膨らむことが予想されています。
一方、エネルギーの供給面を考慮した場合、今後50年間で枯渇すると予想されています。
エネルギーの需要と供給のバランスを考えると、今あるエネルギーを長期にわたって利用するためにも省エネ化が必要不可欠となります。
代替エネルギーの開発
現在経済活動で使用されているエネルギーのうち、石油や石炭などのように枯渇が危惧されているエネルギー資源も多いです。
長期的に見ると、現在使用しているエネルギーのみに頼ることはできなくなると考えられます。
そのため、将来より良い経済活動を進めていくためにも、企業には現在のエネルギーに変わる代替エネルギーの開発が求められます。
産業廃棄物の削減
産業廃棄物の増加は、さまざまな社会問題を引き起こすきっかけとなります。
たとえば、多量の産業廃棄物の処理に伴う大気汚染や二酸化炭素の排出、不法投棄による土壌・水質の汚染、大量のゴミ問題などが挙げられます。
そのため、各企業にはリサイクルやリユースなど産業廃棄物を削減するための取り組みが求められています。
自然環境保全に向けた有名企業の活動事例
これから自然環境の保全に向けた取り組みを行う場合、どのような取り組みを行うべきか具体的に決められない企業も多いのではないでしょうか。
以下で、自然環境保全に向けた取り組みを進めている企業の活動事例を紹介します。
有名企業15社を紹介するので、取り組みの参考にしてください。
事例1:ユニクロ
ユニクロは、資源を無駄にしないように不要になった商品をリユースする取り組みを進めています。
各家庭でいらなくなった衣服を集め、国連などを通して世界各地の難民や服を必要とする人に届ける取り組みを行なっています。
衣服のリユースを行うことによって、衣服の焼却時に発生する二酸化炭素の排出を抑えることも可能です。
ユニクロは、資源を無駄遣いせずに必要な人に衣服を届け、温室効果ガスも削減できるような取り組みを実施しています。
事例2:トヨタ自動車
トヨタ自動車は、戦後間もない1960年代より環境への対策の重要性を考えた取り組みを行ってきました。
現在は、長期的な未来を考えたうえで事業を進められるように「トヨタ環境チャレンジ2050」に取り組んでいます。
トヨタ自動車は、2050年の未来を見据えて温室効果ガスの削減目標を立てています。
また、温室効果ガスの削減のみならず再生可能エネルギーの開発にも力を入れており、将来的なエネルギー問題を考えた取り組みが進められています。
事例3:ニトリ
ニトリは、通常であればゴミとなる資源の再利用に力を入れています。
たとえば、捨てられたペットボトルを原料としたランドセルの開発や梱包材への発泡スチロールの不使用などの環境保全活動を行っています。
資源を無駄に使用しない取り組みはコスト削減にもつながり、自社の利益拡大にも影響を与えています。
事例4:キッコーマン
キッコーマンは、食品製造の全ての工場で二酸化炭素削減のための活動を進めています。
具体的には、各工場で使用するエネルギーを従来のものから「生産可能エネルギー」へとシフトしています。
また、大きな太陽光パネルを屋根に設置することによって、創エネにも取り組んでいます。
キッコーマンでは、このように会社全体を通して二酸化炭素削減と創エネの取り組みを進めています。
事例5:森永製菓
森永製菓は、2030年までにCO2排出量を30%削減し、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目標に活動しています。
具体的には、仕事で使用する営業車には低排出ガス車を導入し、工場で使用するボイラーはすべて都市ガス燃料仕様へと変更するなどの取り組みを行っています。
また、同業他社と協力し、共同輸配送による温室効果ガスの排出削減などの取り組みも進めています。
事例6:味の素
味の素は、商品の環境に配慮した容器包装に取り組んでいます。
Reduce・Reuse・Recycleの視点で、容器包装の再利用などによって必要な資源の削減に努めています。
また、「環境に配慮した商品を購入したい」と考える消費者のニーズに対応して、独自の環境マークである「味なエコ」マークを表示した商品の発売も行っています。
味の素は、このような家庭からエコを広げる活動にも力を入れています。
事例7:自然電力
近年、石油や石炭などのエネルギー枯渇が問題として取り上げられています。
株式会社自然電力は、太陽光・風力・小水力等の自然エネルギー発電事業を行うエネルギー企業です。
太陽光・風力・小水力等の自然エネルギーを有効活用できるように、エネルギー問題の解決に向けた取り組みを進めています。
事例8:サントリー
サントリーは、グループ全体で「水のサステナビリティ」と「気候変動対策」を柱に環境への取り組みを進めています。
具体的には、全工場で水の使用量の半減や2050年までにバリューチェーンで温室効果ガスの排出ゼロを目指しています。
また、水に関する啓発活動を通して安全な水の提供にも力を入れています。
事例9:ソニー
ソニーは、各家庭の省エネ化を促進できるような取り組みを進めています。
一般家庭で使用する電化製品も、日本全体や世界全体で見れば多くのエネルギーを使用しています。
そのため、ソニー独自の省電力技術を用いて、電源や充電などの効率向上や節電機能の充実、バッテリーの長寿命化などエネルギーを無駄にしない商品の作成に力を入れています。
ソニーは各家庭のエネルギー消費量を削減して、世界全体の省エネ化に貢献しています。
事例10:KDDI
現代では、1人1台スマートフォンを持つことが当たり前になりました。
しかし、スマートフォンの作成に使用するレアメタルは枯渇性資源です。
そのため、KDDIでは、資源を有効活用できるように不要になったスマートフォンの回収とリサイクルに取り組み、資源の有効な活用を進めています。
事例11:カルビー
カルビーは、食品フードロスや産業廃棄物削減など、菓子・飲食メーカーならではの取り組みに力を入れています。
グループ全体を通して「地球環境・コミュニティへの貢献」をテーマに、環境配慮に関する実績を残しています。
具体的には、2019年3月期と2022年3月期に11.8%ものフードロス削減を達成しており、2019年3月期と2022年3月期に7.2%の産業廃棄物排出量削減に成功しています。
2030年に向けて環境意識の高い目標を掲げた取り組みを続けています。
事例12:富士通
富士通は1935年の創業以来、環境保全を経営の最重要事項の1つとして事業活動を行なっています。
社長を委員長とする「サステナビリティ経営委員会」を社内で設置し、会社全体を通して高い意識のもと環境経営を推進しています。
具体的な取り組みとしては、再生可能エネルギーの普及・拡大を目指す国際イニシアチブ「RE100」への加盟が挙げられます。
国内外のグループ拠点で使用する電力への再生可能エネルギーの利用を、2050年までに100%にすることを目指した取り組みを進めています。
事例13:リコー
リコーでは、製造する商品に対して「省エネルギー・温暖化防止」と「省資源・リサイクル」、「汚染予防」の3つの観点で取り組みを進めています。
使いやすさと優れた省エネ性能の両方を持ち合わせた商品の開発のために、独自の省エネ技術「QSU(Quick Start-Up)」をはじめとした技術革新に力を注いでいます。
また、化学物質の影響を最小限に抑えるために、仕入先企業を含む製品づくりのフロー全体で「環境影響化学物質の削減と確実な管理体制の構築」を行い、社会や環境への配慮に取り組んでいます。
事例14:バイタル
バイタルは、長崎県に本社を置く介護施設の運営や介護サービスの提供を行う企業です。
バイタルは、銀行が行う「CSR私募債」を利用した社会貢献活動を行っています。
CSR私募債は、社債の発行額に応じて銀行がその手数料の一部を教育機関や公共機関などの団体に寄贈できるサービスとなります。
CSR私募債を通じて、各教育機関や公共機関の環境整備を手助けする取り組みを進めています。
事例15:キャノン
キャノンは、地球環境の汚染や健康への影響を防ぐために製造時に使用する化学物質の徹底管理に力を入れています。
使用する化学物質がどの程度環境や人体に影響を与えるのか、徹底的な調査を行っています。
調査の結果、化学物質の環境面や人体への安全面を「Aランク:使用禁止」「Bランク:排出削減」「Cランク:規制対象」の3レベルに分類し、レベルに応じた対策に取り組んでいます。
自然環境保全のために、まずは身近にできることから取り組もう
自然環境保全の取り組みを行うことによって、企業としてもイメージの向上や新規ビジネスチャンスの獲得などのメリットが得られます。
今後自然環境の問題が深刻化していく中で、企業にはますます自然環境保全の取り組みが求められるようになるでしょう。
予算の問題などもあるため、いきなり大掛かりな自然環境保全活動に取り組める企業も少ないと思います。
まずは、休憩時間中の電気の消灯など身近な取り組みやすいことから始めてみてはいかがでしょうか。
監修
ククレブ・マーケティング株式会社 CEO
大手事業法人のオフバランスニーズ、遊休地の活用等、数々の大手企業の経営企画部門、財務部門に対しB/S、P/Lの改善等の経営課題解決を軸とした不動産活用提案を行い、取引総額は4,000億円を超える。不動産鑑定士。
2019年9月に不動産Techを中心とした不動産ビジネスを手掛けるククレブ・アドバイザーズ株式会社を設立。
2021年10月にはデータマーケティング事業を主軸としたククレブ・マーケティング株式会社を設立し、現在に至る。
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