ABMとは? シリーズ第4弾地方の金融機関との取引を想定し、現在の金融機関の実態について解説
ABMの潮流について、BtoB企業をメインとして、シリーズ1~3で解説してきました。
(前回までのレポート)
ABMとは? シリーズ第1弾_言葉の意味やABM導入にあたり重要となるリードの定義付けを分かりやすく解説!(入門編①)
ABMとは? シリーズ第2弾_2023年ウエビナーでフォーカスするポイント8点を分かりやすく解説!(入門編②)
ABMとは? シリーズ第3弾_CRMでデータの基礎固めはできていますか?フォローアップする部署とカスタマーサクセスの役割(入門編③)
アカウントが法人単位、部署単位で、ビジネスを古くから作業してきた業界は、日本では、金融機関ではないでしょうか?
そこで金融業界の中でも、全国各地にある地方の金融機関の商流を考察していきたいと思います。
当社では、不動産のデータを取り扱うビジネスをしていますが、金融機関との取引が今後変わっていく時期に来ていると考えています。
現在、金融業界の中でも、地方の金融機関の勘定系、基幹系システムの見直しが話題になっています。金融インフラである銀行の勘定系システムの大手ベンダーは、金融業界のオープン化へ向けた対応が必要なタイミングに遭遇しています。
- 銀行のデジタル戦略とDX化は勘定系システムのベンダー各社がサービスを提供
- 個人アプリや法人ポータルの開発連携し、提携・協業行との基幹システム更新と並行
- 法人ポータル 自社の財務・非財務の指標を確認できる機能の導入
- 残高照会や入出金の明細など、個人分野で進捗したフィンテック各社との連携
基幹インフラが変われば、CRM、SFA、MA、デジタルマーケティング、ウェブサイトとの連携等も、顧客とのCX戦略も新たに検討、構築していかなければなりません。
金融業界の方々は、古くから業種、資本金、売上規模、地域性等の切り口で、融資先と取引を行ってきました。ある意味、ABMを実践で積み上げてきた業界とも言えますので、一旦舵を切り始めれば、地方の金融機関は地方創生のハブとなり、ABMの模範事例が生まれると確信しています。
民間企業の金融業界へのアプローチ
それでは、民間企業の金融業界へのアプローチを考察してみます。
ABMのカルチャーを実践してきた金融業界に対し、民間企業はどの部署をターゲットに攻略するのが有効でしょうか?
本稿では、地方の金融業界のDX関連部署、スタートアップ関連の部署にフォーカスします!
地方の金融機関の新しい部署=DX、スタートアップ関連部署
地方の金融機関がここ数年最も力を入れている新設部署、それは、DX、スタートアップ関連です。
以下に地方金融機関各行のDX関連部署のDX化に関連する部署名をピックアップしてみました。
デジタル戦略室、デジタルワーク推進室、法人デジタルソリューション部、デジタル推進室、デジタル企画部、デジタル戦略部、デジタルマーケティング部、デジタルイノベーション部、デジタル改革部、デジタル営業部、システムデジタル部、デジタルサービス企画部等
DX(デジタルトランスフォーメーション)化が急速に進展してきた背景は…?
1.デジタルに精通したDX担当者の本格的な採用
これまで、地方の金融機関のDX人材において、キャリア採用での獲得は困難でした。
しかし、口述するフィンテックの潮流や電子決済、地方発のスタートアップのトレンドも後押しとなり、近年優秀な人材が入行するようになってきました。
それまでは、一般企業が金融機関にDX案件で新規提案をしても、金融機関側に目利きがおらず、行内でのコンセンサスが難しかったと言われています。
しかし、当該業務に精通している担当者の着任により、DX化が一気に進むようになりました。
2.DXの組織が本格的な稼働
優秀な人材が獲得できれば、以下のサービスが加速します。
- モバイルファースト(含む決済・認証)
- アプリの導入・連携・共同開発
- データ一元化・統合
- データ利活用
間接的な要因ではありますが、前述の通り、地方の金融機関は近年、基幹システムの大変革期にあたっています。行内の情報システム部門の方々にとっては大波が押し寄せてきています。行内のインフラの変更ゆえ、デジタルマーケティングと連携可能なITインフラの環境整備、検討を行う絶好の機会と言えます。
3.同業間での提携加速
- 地方の金融機関同士の業務提携
- 地方の金融機関同士の資本提携
- 地方の金融機関と大手銀行、証券会社等いわゆる金融プラットフォーマーとの業務提携
- 地方の金融機関と大手銀行、証券会社等いわゆる金融プラットフォーマーとの資本提携
4.同業間での協業加速
- 商品の共同販売(火災・がん・自動車等の保険、生命保険、住宅ローン向けに提供している団体信用生命保険)による販売チャネルの多様化。
- 決済(個人認証)、オンライン本人確認(eKYC=electronic Know Your Customer)等
- 遠隔地でもネットの世界では協業が可能
5.DX人材の増加
採用面において、DXに関心のある方々の応募者増、デジタル関連部署への配属希望者増と続き、DX人材がスタートアップのテーマとシンクロしていくことになります。
特に地方の金融機関の場合、地元経済の活性化 地元企業の支援・応援が課題です。
そうした意味で、スタートアップのテーマは、DXとの親和性はとても良いようです。
リモート環境、ワーケーション、シェアオフィス、空き家有効活用等も追い風となり、地方の金融業界にとって、関東・関西圏に本社の企業との協業、連携先も容易になりました。
6.スタートアップ関連部署とフィンテックや不動産テックの提携・協業
地方の銀行とフィンテックや不動産テックの提携、協業が加速し、異業種との提携・協業も加速することとなります。
例えば、会計ソフトです。個人を対象にスタートしたソフトが法人向けの市場にその活動範囲を広げてきました。
起業の際、会計ソフトの採用では以下のソフトが選択肢に上がることが多いようです。
- 弥生株式会社の「弥生会計」
- freee株式会社の「freee会計」
- 株式会社マネーフォワードの「マネーフォワード クラウド」
上記3社は各地の金融機関とも多数連携しています。
起業家向けに資金管理・経営に大変役立つソフトですが、地方の金融機関との連携も大変スムーズかつスマートです。
- ネットバンキングと連携して、出入金の情報を自動で記帳
- クレジットカードと連携して、利用明細を自動で記帳・経費管理が簡単に
- 交通系のICカードでの交通費精算
- スマホ決済などの決済サービス
- POSレジ・送金サービスとの連携と自動記帳
- 会社設立・各種届出書類作成
- 帳票発行・送付サービス
各アプリケーションソフトとAPI連携による出入金記録・明細などの経理データの取り込みも進むようになりました。⑤のDX人材で記載した通り、地方の金融機関にAPI連携を理解できるDX人材が採用されたからこそ、実現するようになってきたわけです。
7.政府の各省庁のレポートから地方の金融機関の具体的な取り組みや支援体制を確認
地方の金融機関とのビジネスチャンスを広げるために、以下の資料から、多数のヒントを読み取れるのではないでしょうか?
中央官庁からの資料を報告書として読むのではなく、ビジネスのヒント・事例集として、ポジティブな意識での閲読をお勧めします。
・内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局
「令和3年度地方創生への取組状況に係るモニタリング調査結果」
https://www.chisou.go.jp/sousei/pdf/2203_research_kinyu1.pdf
・経済産業省関東経済産業局
「地域金融機関との連携プログラム2022」
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/kinyu_renkei/data/kinyurenkei_program2021.pdf
・総務省
「地域金融行政について」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000788026.pdf
地方の金融機関からの積極的な情報発信を見逃さないようにしましょう。
地方の金融機関とFinTech(フィンテック:金融と IT の融合)
地方創生への取組、地域密着型金融を踏まえ、FinTech をいかに取り入れるかという視点が重要です。
地方の金融機関発でプレスリリースは積極的に情報発信されています。
以下、社名は伏せていますが、実際に発表されたリリースのタイトルです。
- 〇〇社と〇〇銀行、包括提携基本合意書締結ならびにBNPLサービスにおけるビジネスマッチングを開始
- 〇〇銀行と 〇〇 銀行、包括業務提携(アライアンス)について発表
- 〇〇社、 〇〇銀行と金融サービス開発・地域金融機関への展開で業務提携に合意
- ネット銀行、〇〇銀行と業務提携に関する基本合意書を締結
- 〇〇銀行、〇〇銀行とデジタル分野における戦略的業務提携を締結
- 〇〇銀行、会計ソフトとの協業による創業支援で法人普通預金口座開設のインターネット受付開始
- 不動産テック〇〇と〇〇銀行、業務提携契約に基づく住宅ローンサービスを提供開始
今後民間企業と地方の金融機関とのつながりは、上記のリリースのような事例が各地から配信される機会がさらに増えていくと推察されます。
- ニーズに応じた金融サービス・経営支援の提供こそ地方の金融機関の大きな役割
- スタートアップとの協業の加速
- 業務提携による、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用したサービス
- 地域経済の活性化や中小企業支援への情報交換、人材交流
- フィンテック企業との連携による大都市圏の企業との交流
- QRやアプリによるスマホのPayment(決済)がもたらす地域経済活性化のノウハウの共有
地元経済の担い手として、地方の金融機関がDXの旗振り役になる時期が訪れています。
是非、地域の金融機関へABMを展開するよう、社内で作戦会議を展開することをお勧めます。
地方、地域からの目線で、「日経電子版 地域経済」から情報収集し、ABMに活かす!
最後に情報収集のTIPSをご紹介します。
「日本経済新聞 電子版」は、有料会員向けに、全国の「地域経済面」を読むことができます。地元の経済情報、取引先のチェックや、出張先の地方のニュースを知るのに役に立ちます。
「紙面ビューアー」の機能を使えば、PC画面で、スマホ画面で、紙の新聞を読んでいるかのように、地域経済面を閲読することが可能で、他地域の紙面と見比べることもできます。
北海道経済、東北経済、信越経済新潟、信越経済長野、北関東経済、首都圏経済、首都圏千葉、首都圏埼玉、首都圏東京、首都圏神奈川、静岡経済、中部経済、北陸経済、関西広域経済、関西経済、中国経済、広島経済、四国経済、九州経済、沖縄九州経済まで、全国20ブロックに分かれています。
紙の新聞購読だけでは、配達地域の地域経済面しか読むことができませんが、日経電子版有料購読により、全国各地の地域経済情報、地域金融機関の情報を日々把握することが可能となります。
地方の金融業界の目線で、「DX」「スタートアップ」をチェックすれば、毎日、新規開拓のテーマが見つかり、金融機関へのアクションを起こす動機となりうるのではないでしょうか?
これで、金融機関へ向けて、「待ち」の姿勢ではなく、「攻め」の姿勢で、そしてABM目線で、アプローチしてくことが可能となります。
監修
株式会社デジタルマイス 代表取締役社長
菊地 伸行
大手新聞社入社後、アメリカ西海岸に駐在し、ロサンゼルス、シリコンバレー、サンフランシスコ、シアトルをカバー。現地から、グーグル、アマゾン、セールスフォース等の日本進出を支援。帰国後、G7伊勢志摩サミット特集、GDPRセミナー等を立案・運営。
直近では、(不動産テック)をテーマにNIKKEI PropTech Conference、個人情報保護法改正・電気通信事業法改正をテーマにNIKKEI Privacy Conferenceの立案、運営。
アドテク、マーテク分野での講師として、Exchangewire ATS tokyo、Ad Tech International Tokyo、Event Marketing Summit、日本パブリックリレーションズ協会等で講演を行う。
2023年1月に株式会社デジタルマイスを起業し、現在に至る。
社名のマイス(MICE)はMeeting、Incentive、Convention(Conference)、Event (Exhibition)の略語であると同時に、Media Relations(PR+AD)、Investors Relations、Corporate Communication、Engagementの頭文字でもある。
「広報・宣伝・デジタルをワンストップでアドバイス」をモットーに①コンサルティング業務(デジタル、PR、IR関連)②メディア・情報発信業務支援③コンテンツマーケティング業務を支援。
https://dmice.co.jp/